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「Daydream View」の実機を一足早く体験。J.K.ローリング氏監修の「Fantastic Beasts and Where to Find Them」は従来のモバイルVRを超えた美しさに
1か月ほど前にアナウンスされたばかりのDaydream Viewは,GoogleのVRプラットフォーム「Daydream」に対応する初のVR HMDである。SamsungやHTCなど,すでにほかのVRプラットフォーム向けの対応機器を販売しているメーカーはもちろん,LG,Xiaomi,Huawei,ZTE,そしてAsusなども次期リリース予定のスマートフォンで対応することを発表しているが,現時点で正式対応しているのはPixelのみだ。
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「Cardboard」からの明らかな進化が感じられるDaydream Viewは,スノー,スレート,クリムゾンという3色から選択できるようになっている。メカっぽいデザインのVRヘッドセットが多い中,ファブリック素材を使用している点は非常に新鮮で,79ドルという価格帯ながら,ある程度の高級感を演出している。
Daydream Viewはスマートフォンをフロントパネルに挟み込んで使用する方式で,スマートフォンを装着していない状態での重量は220gと軽量だ。フロントパネルにはNFCチップが組み込まれているとのことで,今回のデモではPixelをヘッドセットに装着した瞬間,敏速に認識してVRモードに切り替わっていた。今回のデモ機では,多人数での使用を想定してかマジックテープでしっかりと固定されていたが,マジックテープがなくても安定感は抜群だ。中心軸がずれてしまってもCardboardのように手で調整する必要がなく,自動補正されるという部分にも進化が感じられた。
専用コントローラはBluetooth LEでスマートフォン本体と交信する。非常に小型で,バッテリー容量は220mAhしかないが,最大で12時間の使用が可能で,USB Type-Cを搭載しているので急速充電にも対応しているという。明らかにコアゲームに対応できるようなボタン数ではないものの,おそらくはサードパーティのゲームパッドなどにも対応するはずだ。
基本的な操作は上部のパッドで行い,中央のマイナス印のボタンはホームボタン,その下のサークル印のボタンはキャリブレーション用のボタンになっている。コントローラのポイント位置がずれた場合,これを押すことで再調整される。右の側面上部には音量をコントロールするボタンも付いていた。
筆者が体験したのは,「ハリー・ポッター」でお馴染みのJ.K.ローリング氏が新たに書き下ろした「Fantastic Beasts and Where to Find Them」(邦題:ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅)のゲーム版。映画も11月23日には劇場公開が始まるが,ハリー・ポッターシリーズと同じ世界観を使った本作を,Daydream View販売地域のファンであれば,一足早く楽しめるというわけだ。
Googleのチーフ・ゲームデザイナー,Noah Falstein(ノア・ファルシュタイン)氏が講演で述べていたように(関連記事),これまでのモバイルVRでシャッタリングが発生していた大きな要因は,頭の動きを検知するヘッドトラッキングに80ミリ秒ほどかかっていたことだ。Daydreamプラットフォームの基礎になる最新版OS「Android 7.0 Nougat」ではこのあたりが大きく改良され,ヘッドトラッキングの認識速度が20ミリ秒台に向上したことで,VR酔いなども発生しなくなっているという。実際,筆者もPixelがDaydream Viewから落ちるのではないかと思えるほどの速度で頭を振ってみたが,トラッキングは非常に精密で,残像が残ったりカクついたりすることはまったくなかった。
もちろん,Fantastic Beasts and Where to Find Themのグラフィックスも,従来のモバイルVR向けコンテンツと比べてかなりの出来に仕上がっており,これが今後のモバイルVRゲームのボトムラインになると考えると,その進化には改めて驚かされる。
これまで,エントリーレベルのモバイルVRは「Gear VR」が300万ユニットを販売し,ほぼ独占状態にあった。Daydream Viewは特定のブランドのスマートフォンだけに絞り込むことなく,価格も安価に設定されていることもあり,今後のモバイルVR市場で広く普及しそうだ。VR市場のメインストリーム化の起爆剤として,日本でのローンチにも期待したい。
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