イベント
[SIGGRAPH ASIA]NTTが,スマホで作る2レイヤーホログラムボックス「Kirari!」を展示
ハコビジョンは,小さな箱の中に作り出した「飛び出す絵本」的な紙製の立体書き割りに対して,直上に置いたスマートフォンの画面でミニチュア的なプロジェクションマッピングを行うものである。現在までに初音ミク,ガンダム,ラブライブ!などの人気キャラクターをフィーチャリングした商品展開を行ってきている。
SIGGRAPH ASIA 2015で一般展示セクションのNTTブースで展示されていた「Kirari! for Mobile」は,ハコビジョンと,箱の直上にスマホを置くところまでは一緒だが,得られる効果とその原理は少々異なるものだったのでここで紹介してみたい。
2レイヤーのホログラムを箱の中に出現させる「Kirari! for Mobile」技術
日本電信電話(以下,NTT)では,「イマーシブテレプレゼンス技術」(Immersive Telepresence Technology)というものを研究していて,2020年の東京オリンピックまでの実用化を目指している。そのプロジェクト名が「Kirari!」である。
イマーシブテレプレゼンス技術とは,簡単に言うと,遠方の人間の存在感をそのまま別の場所に情報として転送しようとする技術のことだ。分かりやすく,スポーツでたとえて言えば,遠方の競技場で行われているサッカーの試合の様子を,ただカメラで捉えた映像ではなく,選手達の動きそのものと,音場などを,別のサッカー場で立体的に再現しようとする試みだ。
技術的には,空中に結像するようなホログラム技術を活用する方針で研究が進められているとのことだが,今回,SIGGRAPH ASIA 2015のNTTブースで展示されていたのは,その「Kirari!」のミニチュア版に相当する「Kirari! for Mobile」となる。
「Kirari! for Mobile」は,背景と近景の2レイヤーの映像を箱の中に結像させるものだが,原理自体はシンプルだ。
映像のソースはハコビジョンと同じく,箱の直上に置いたスマホの画面である。
そして箱の中手前に結像させる映像は,二組のV字配置したハーフミラー(入射光の半分を透過して半分を反射する特殊ミラー)を使って生成する。一方の箱の奥に背景として結像させる映像は箱の底に配置した全反射ミラー(入射光を鏡面反射するミラー。普通の鏡)で生成する。
詳細は下の写真を見てほしい。
スマホの画面としては,半分を手前映像用,もう半分を背景映像表の表示に使用する。下の図でいけば,縦画面のスマホ画面の映像を見る側(図では左側)に背景映像を表示させ,スマホ画面の奥側(図では右側)には表示したいメインキャラを表示することになる。
箱の中に,キャラと背景が,一定の間隔を開けて浮いて動いている様はなんとも不思議だ。
NTTとしては,ゲームやアニメの人気キャラを表示させるキャラクターグッズ用として展開する以外に,Kirari!本来の目的である,実在の人間の存在感を伝送する目的としても活用したいとのことであった。
例えば,家族とのテレビ電話で,話し手の人物を認識してこれを手前側に表示し,それ以外の要素を背景として,このシステム2レイヤーの立体像として表示できれば,たとえ小さく表示されるのだとしても,その人物の存在感は際だったものとなる。
スマホを箱内面に向けて直上設置してしまう関係上,表示されているホログラムキャラクターに対するインタラクションを実現する手段がないことが,当面の課題のようだ。
とはいえ,コストもそれほどかからないため,アイデア次第ではいろいろな商品展開も実現できるかもしれない。それこそ,ハコビジョンのような食玩展開は分かりやすくてよさそうだ。
SIGGRAPH ASIA 2015公式サイト
- この記事のURL: