テストレポート
ついに配信開始となるPC版「METAL GEAR SOLID V:GROUND ZEROES」テストレポート。グラフィックス品質はPS4より上で,「最も美しいMGSV」に
その後,国内のXbox One発売に合わせて,9月にはXbox One版も登場したが,かねてより予告されていたPC版も,ついに米国太平洋時間12月18日10:00(日本時間19日3:00)から全世界に向けてSteamで配信されることとなった。発売時の価格は2362円(税別)で,日本から購入可能。しかも日本語音声対応だ。
KONAMIは以前から,PC版の展開にあたって,日本よりも欧米市場を優先する姿勢をとってきた。それだけに,今回,MGSVGZのPC版が,海外市場と同じタイミングで国内でも配信開始となるのは大きなニュースといえる。
では,このPC版MGSVGZは,家庭用ゲーム機版と何が違うのだろうか。今回は,PC用のβ版を一足早く入手できたので,それを,発売済みのPS4版と比較してみたいと思う。
それに先だってお断りしておくと,今回入手したバージョンは12月12日にリリースされたβビルドで,「製品版に極めて近い」とされている。ただ,それでもβ版はβ版だ。配信日初日にリリースされるバージョンとは多少なりとも異なる可能性が否定できないので,その点はご了承のほどを。
PC版MGSVGZのグラフィックス設定
さて,そんなPC版MGSVGZだが,ゲームを起動し,「OPTIONS」メニューを開いてみると,PS4版との違いを確認できた。PC版には「グラフィック設定」と「キーアサイン設定」が追加され,前者では画質調整,後者ではゲームパッド以外に,マウスとキーボードで操作するための設定を行えるようになっている。
なかでも,PC版ならではのポイントとなるのが「グラフィック設定」だ。
その設定項目は下に示したスクリーンショットのとおりで,基本的には,PCゲームのグラフィックス設定でよく見るものばかりといった雰囲気である。
ただ,チェックしてみると,ユニークな挙動を示すものがあった。それが「垂直同期」と「フレームレート」で,前者の選択肢は「有効」「無効」,後者の選択肢は「自動」「30fps固定」。「垂直同期」を「無効」とし,「フレームレート」を「自動」にすると,GPUによるフレーム(≒映像)送出タイミングと,ディスプレイデバイス側でのリフレッシュ(≒Vsync)タイミングが同期しなくなる(※VsyncとGPUの関係については西川善司氏による解説が詳しい)。
と,ここまでは一般的なPCゲームと同じだが,MGSVGZでは,この設定を行っても,フレームレートの上限は60fpsとなり,それを大きく上回ることはない。「Fraps」(Version 3.5.99)から確認してみても,時折64fps程度を示すことはありこそすれ,それ以上には上がらない。要は,60fpsでキャップがかかっているのだ。
ユーザーが自分でその設定を追い込むのはやや面倒なので,多くの場合は,NVIDIAの「GeForce Experience」やAMDの「Gaming Evolved App」任せということになるのではなかろうか。
ちなみに,いま述べた「リッチな画質」関連の設定項目は,「モデルディティール」から「エフェクト」までの8項目が用意されている。「テクスチャフィルタリング」だと「Medium」「High」「Extra High」の3段階,「スクリーンスペースアンビエントオクルージョン」は「OFF」「High」「Extra High」の3段階で,残る6項目はいずれも「Low」「Medium」「High」「Extra High」の4段階から指定できるようになっていた。
フルHD解像度でPS4版と比較
以上を踏まえつつ,PS4版とPC版とで画質を比較してみることにしよう。
MGSVGZは起動時にNVIDIAの「The Way It's Meant to be Played」ロゴが出たので,今回は「GeForce GTX 980」(以下,GTX 980)が中心となるPCを,表のとおり用意した。
さて,まずはゲームスタート直後のシーンで比較してみよう。下に示したのは上から順番にPS4,標準画質設定,最高画質設定だが,一見して分かるのは,PS4,
具体的には,プレイヤーの目の前で広がる基地内における光源の数が異なっており,また,最高画質設定ではライトとともに環境光の表現がある程度行われている。おそらくスクリーンスペースアンビエントオクルージョンの強度が上がった効果だろう。
PS4 |
標準画質設定 |
最高画質設定 |
明るいシーンを使って,プレイヤーキャラクターである「スネーク」の衣装に寄ってみた結果が下の3枚だ。サムネイルでは全体から衣装部分のみを切り出し,4倍に拡大させている。
見比べてみると,アンチエイリアシングの滑らかさはPS4のほうがPCの標準画質設定より良好だ。サンプリング方法もしくはサンプリング数に違いがあるのではなかろうか。ただ,PS4では衣装のディテールが若干失われている。
PCの最高画質設定では,ディテールは失われず,かつ,アンチエイリアシングがきれいにかかっている。これはテクスチャフィルタリングの効果だろう。
PS4 |
標準画質設定 |
最高画質設定 |
エフェクトでは,PS4とPC版の標準画質設定とで,ほぼ共通の傾向があるようだ。
たとえば下に3枚並べたスクリーンショットのように,「地面の水たまりにオブジェクトが映り込む反射表現」に注目すると,PS4と標準画質設定にはそれがないのに対し,最高画質設定では,水たまりに,その隣のコンクリートブロックが映り込む描写が見られる。
PS4 |
標準画質設定 |
最高画質設定 |
一方,オブジェクトの数に着目すると,PS4と標準画質設定の間には,決定的な違いがあった。
下に3枚並べたスクリーンショットは,建物の上から基地内を見渡しているところだが,PS4ではただの土の道にしか見えないところに,PC版の標準画質設定では土の上に敷かれた渡し板と,それを囲む土嚢が現れるのだ。
ちなみに最高画質設定では,その奥にある金網製の柵を囲むところにも土嚢が現れ,さらにその奥の丘に樹木が増えている。
PS4 |
標準画質設定 |
最高画質設定 |
PC版でもグラフィックス設定を標準画質設定よりさらに低くすると土嚢の数は減るのだが,PC版では,どこまで下げても,渡し板と土嚢は消えなかった。要するにPC版は,「グラフィック設定」以前の話として,PS4版よりリッチなグラフィックス表現が実現されているというわけである。
PC版ならではの超高解像度設定も試す
前段では1920×1080ドット解像度で比較したが,PC版ではそれ以上の解像度も,もちろん設定できる。MGSVGZにはより高い解像度設定に対応したテクスチャが用意されているようで,PC版では,解像度が上がるほど,テクスチャの詳細感が上がっていく。
もっとも,3840×2160ドットのような,俗にいう4K解像度に対応したディスプレイデバイスを所持するゲーマーは,まだそれほど多くはないだろう。そのため,最近のグラフィックスカードでは,ドライバ側でディスプレイデバイスのネイティブ解像度を超えた解像度でレンダリングを行い,画面出力時に縮小して,最終的に表示される画質を引き上げる,ドライバレベルのスーパーサンプリング対応が始まっている。
先鞭をつけたのはNVIDIAの「Dynamic Super Resolution」(以下,DSR)で,12月になってAMDも対抗機能「Virtual Super Resolution」としてドライバに実装してきた(関連記事)。2014年におけるホットな機能の1つなのだ。
これらと対応GPUを利用すれば,ネイティブ解像度が1920×1080ドットであっても,2560×1440ドットや3840×2160ドットといった,より高い解像度で得られる精細感の一端を味わえるようになる。
しかし,今回は発売前ということで,GeForce ExperienceはMGSVGZに未対応。そこで,NVIDIAコントロールパネルの「3D設定の管理」に用意された「DSR - Factors」から設定することになった。
MGSVGZの場合は,「OPTIONS」−「グラフィック設定」にある「解像度」に,選択済み倍率に応じた解像度設定が表示されるはずだ。1920×1080ドット解像度のディスプレイデバイスと接続している場合,4.00倍設定時の解像度は3840×2160ドットとなる。
なおこのDSR,現時点では「SLI構成時にはサポートされない」という制限があるのだが,ここにはちょっとした補足がある。そのあたりは後段で触れることにしよう。
では,1920×1080ドット解像度の液晶ディスプレイを持っている人がDSRを有効化すると,MGSVGZではどういった画面が得られるのか。今回はDSR - Factorsを2.25倍にした2880×1620ドット設定と,4.00倍にした3840×2160ドット設定の2種類で,標準画質設定および最高画質設定を行ってみることにした。
下に示した3枚のスクリーンショットは,標準画質設定時のものだ。上から順にDSR無効,2.25倍設定のDSR有効,4.00倍設定のDSR有効となっているが,比較すると面白いことが分かる。前段で触れたとおり,標準画質設定では最高画質設定と比べてオブジェクト数が減るのだが,DSRの解像度を上げると,遠方の草木や土嚢の量が増えるのである。どうやらPC版MGSVGZでは,画質設定だけでなく,解像度によっても,画面内に表示されるオブジェクトの数を変えているようだ。
つまり,標準画質設定でもDSRを使ってレンダリング解像度を上げれば,失われているディテールの一部を取り戻せるということになる。
標準画質設定+DSR無効 |
標準画質設定+DSR 2880×1620ドット |
標準画質設定+DSR 3840×2160ドット |
もっとも,標準画質設定と最高画質設定とで比べると,やはり最高画質設定のほうが描画されるオブジェクトの数は多いということも,最高画質設定で取得した下のスクリーンショットを見れば分かる。
面白いのは,最高画質設定の場合,DSR解像度を上げても,草木や土嚢の数に変化は生じないこと。最高画質設定を選択した時点で,オブジェクト数は上限に設定されているのだろう。
最高画質設定+DSR無効 |
最高画質設定+DSR 2880×1620ドット |
最高画質設定+DSR 3840×2160ドット |
標準画質設定と最高画質設定で共通して見られるのは,DSRの有効化によって向上する草のシャープさだ。プレイ中にゲームを中断して,ゲーム側の解像度設定を上げてゲームに戻ると,画面がさっとシャープになることが分かるほどなので,これはインパクトが大きい。
また,アンチエイリアシングも,DSRによって滑らかになるようだ。スネークの背中に寄ってみると分かりやすいのだが,DSRを有効化すると,帯などのエッジがキレイになる。ただ,2.25倍設定と4.00倍設定とで,アンチエイリアシングの滑らかさには,それほど大きな違いは認められなかった。
ちなみに,MGSVGZをプレイしたことのある読者なら,冒頭に長いカットシーンがあることを覚えていると思うが,実はあのカットシーン,プリレンダであらかじめ用意されているムービーではなく,リアルタイムレンダリングによるものだ。そこで,PS4版と解像度1920×1080ドットにおけるPCの標準画質設設定,PCの最高画質設定,DSRで3840×2160ドットを設定した最高画質設定の4パターンを並べ,ムービーで見栄えを比較してみることにした。
結果が下のムービーである。4Kムービーになっているため“重い”点は注意してほしいが,見比べてもらうと,静止画とは別の違いに気づくはずだ。
※分割ファイル1(196MB),分割ファイル2(196MB),分割ファイル3(196MB),分割ファイル4(39.7MB)をダウンロードのうえ,「141218_ MGSVGZ _ comparison. part1. exe」 を実行すると,YouTubeへアップロードする前のファイル「141218 _ MGSVGZ _ comparison. mp4」 を生成できます。4Kムービーなので,再生するには相応のPCスペックが必要です。
4K解像度ではSLI構成が現実的な選択肢か
前段でDSRのもたらす画面上の効果を確認したが,DSRは「より高い解像度でレンダリングする機能」であるため,「負荷が高くなって,フレームレートが下がる」という問題からは逃れられない。では実際のところ,PS4を超えた解像度でゲームをプレイするというのは現実的な選択肢なのか。GTX 980のシングルカード構成と2-way SLI(以下,SLI)構成の2パターンで,解像度設定を変えながら,フレームレートを計測してみようと思う。
テストにあたっては,カットシーンのスタート直後から2分間のフレームレートを追う。序盤で紹介したとおり,MGSVGZは60fps程度がフレームレートの上限となるので,見どころは「60fpsをどれだけ下回らないか」だ。言い換えると,最小フレームレートがどこまで踏ん張れているかが重要になるわけである。
テスト条件は下記の4パターン。シングルGPU構成とSLI構成で,それぞれ4パターンの解像度をテストするから,合計では8パターンだ。
- 1920×1080ドット解像度のディスプレイと接続した状態のネイティブ解像度(以下,1920×1080N)
- 1920×1080ドット解像度のディスプレイと接続し,DSR 2.25倍設定(=2880×1660ドット)を行った状態(以下,2880×1660DSR)
- 1920×1080ドット解像度のディスプレイと接続し,DSR 4.00倍設定(=3840×2160ドット)を行った状態(以下,3840×2160DSR)
- 3840×2160ドット解像度のディスプレイにネイティブ解像度で出力した状態(以下,3840×2160N)
「3D設定」に「SLI」があり,しかもDSRを有効化できている証明カット |
PB287Q メーカー:ASUSTeK Computer 問い合わせ先:ASUSサポートホットライン TEL 0800-123-2787(平日9:00〜18:00,土日9:00〜17:00) 実勢価格:6万4500〜7万1000円程度(※2014年12月18日現在) |
調べたところ,どうやら,組み合わせるディスプレイによっては,SLI構成時にDSRが有効にならない「ことがある」。そのため,NVIDIA公式には今のところ「SLI構成時はDSR非対応」としているようだ。今回テストに用いたディスプレイはBenQ製でネイティブ解像度1920×1080ドットの「XL2410T」と,ASUSTeK Computer製でネイティブ解像度3840×2160ドットの「PB287Q」だが,両製品では何の問題もなかったので,将来的にはSLI構成時にもDSRが正式サポートされることになるのではないだろうか。
というわけでグラフ1〜8が,条件ごとのテスト結果だ。グラフ3で示した2880×1620DSRの標準画質設定までは,スコアが見事に上限へ張り付いている。ここまではシングルカードでもSLIでもスコアはまったく変わらない。
グラフ4,2880×1620DSRの最高画質設定で,ようやくGTX 980の最小フレームレートが59fpsを下回るが,まだ52fpsだ。GTX 980なら,2880×1620DSRまでは,性能面でのペナルティはほぼないままDSRを利用できるという理解でよさそうである。
グラフ5〜8では,GTX 980のシングルカード構成で最小フレームレートが50fpsを大きく下回る一方,SLI構成では最も描画負荷の高い3840×2160Nの最高設定でも最小47fpsを維持した。平均フレームレートに至っては58.02fpsだ。
甘く見た場合は,最小50fpsを少し下回った程度なら問題にならないが,それでも最小30fpsを割り込むようだとかなり厳しい。
その観点で振り返ると,GTX 980では2880×1620DSRの最高画質設定が上限で,DSRかネイティブ出力かを問わず,4Kを狙うならSLIが必須ということになるだろう。
ちょっと面白いのは,DSRよりネイティブの4Kのほうが,スコアは低い傾向になったことだ。筆者はテスト前,画面のスケール変換が入るDSRのほうが負荷の高い処理なのではと予測していたが,逆だった。3840×2160ドットという広大なディスプレイ空間に出力するというのは“重い”処理だというわけだ。
PC版MGSVGZは体験の価値あり。“本編”にも期待
以上,やや駆け足気味に,PC版MGSVGZのグラフィックスとその負荷を確認してきた。最大のポイントは,PC版であれば,標準画質設定であっても,PS4より高いグラフィックス品質が得られるということだろう。もちろん細かいことではあるのだが,FOX ENGINEの,そして新世代メタルギア ソリッドのポテンシャルを最大限に発揮させたいとき,その選択肢としてPCプラットフォームが浮上したことを歓迎するゲーマーは多そうだ。
また,冒頭でも触れたとおり,“あの”KONAMI製タイトルを日本でSteamから購入できるようになったというのも大きい。こうしてプロローグが出てきた以上,本編も日本から購入できるようになる可能性は十分にあり,その点でも楽しみが増えたと言っていいのではなかろうか。
すでにゲーム機版でMGSVGZをプレイ済みという人も,これまでPCで出なかったから最近のメタルギアはやったことがないという人も,PC版MGSVGZは,一度プレイしておくのが正解かもしれない。
SteamのMGSVGZストアページ(要年齢認証)
- 関連タイトル:
METAL GEAR SOLID V: GROUND ZEROES
- 関連タイトル:
METAL GEAR SOLID V: GROUND ZEROES
- 関連タイトル:
GeForce GTX 900
- この記事のURL:
キーワード
(C) Konami Digital Entertainment