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日本貿易振興機構(JETRO)がSteamで日本のゲームを特集する理由。担当者が語る,インディーゲームの海外PR展開[CEDEC 2024]
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印刷2024/08/24 17:49

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日本貿易振興機構(JETRO)がSteamで日本のゲームを特集する理由。担当者が語る,インディーゲームの海外PR展開[CEDEC 2024]

 2024年8月23日,ゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC 2024」にて,セッション「インディーゲームの海外PRについてJETRO担当者に聞く―『GDC2024×JETRO Steam』を事例にした取り組みと成果」が行われた。

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 このセッションでは,2024年3月に日本貿易振興機構(JETRO)がSteamで展開した特集「GDC2024 - MADE IN JAPAN GAMES MARKET -」の概要や効果,そして日本のゲームがどう見られているかを踏まえたうえで,海外に向けたPRの手法などが紹介された。
 スピーカーは以下の2名である。

  • 一筆社 代表社員 秦 亮彦氏
  • JETRO デジタルマーケティング部 主幹 牧野直史氏

(左から)秦 亮彦氏,牧野直史氏
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ゲーム分野におけるJETROの取り組み


 今回のセッションは,主に秦氏が質問を投げかけ,JETROの牧野氏がそれに回答する形式で進行した。そもそもJETROは経済産業省管轄の政府機関で,海外ビジネスを促進する団体である。ゲーム分野では,中堅・中小企業の海外展開支援の一環として,インディーゲームを含む日本のゲームの海外展開をサポートしている。

 JETROのゲーム分野における主な取り組みとしては,海外パブリッシャと日本のデベロッパなど事業者とのB2Bマッチングの支援が挙げられる。具体的には,JETROが招聘した海外パブリッシャ専用のオンラインカタログサイト(B2Bマッチングプラットフォーム)の「Japan Street」を展開している。日本のデベロッパがサイトにコンテンツを登録すれば,海外のパブリッシャから問い合わせが来る可能性があるというわけだ。

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 なおJapan Streetは,ゲームに限らず,アニメなどのコンテンツや雑貨,食品に至るまで日本製品全般を扱うプラットフォームであり,現在は7000社以上の事業者が登録している。コンテンツ分野は1000タイトル,その中でもゲームは100〜200タイトルが出展されているという。

 JETROも例年3月にアメリカ・サンフランシスコにて開催される「Game Developers Conference」(GDC)をはじめ,海外のゲーム展示会に積極的に出展し,海外パブリッシャにJapan Streetへの登録を促している。現在,コンテンツ分野全体で600〜700社の海外パブリッシャが登録しているそうだ。

 またヨハネスブルグやサンパウロ,アブダビといった新興国の都市で開催されるコミコンなど,ゲームと親和性の高いイベントにも積極的に出展して,Japan StreeetのPRを行っているとのこと。アメリカや中国といった重要なマーケットだけでなく,さまざまな国とのビジネスを後押ししていくことが,政府機関であるJETROの役割だと牧野氏は説明した。

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Steamにて展開した「GDC2024 - MADE IN JAPAN GAMES MARKET -」


 冒頭で記したとおり,JETROはGDCと連携し,2024年3月に日本のゲームを世界へ発信する特集「GDC2024 - MADE IN JAPAN GAMES MARKET -」をSteamで展開した。インディーズを中心に日本のゲーム企業43社が参加し,約100タイトルがこの特集に掲載された。

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 牧野氏によると,もともとJETROは日本のゲームIPに関心がある海外パブリッシャを東京ゲームショウに招聘し,日本のパブリッシャやデベロッパとのB2Bマッチングを行っていた。しかし,グローバルなオンラインプラットフォームであるSteamの台頭により,日本のパブリッシャ/デベロッパも自社で海外に展開することが可能になった。
 そのため,海外パブリッシャが日本のゲームのライセンスを取得して現地で販売するという,従来のB2Bスキームがもはや主流ではなくなりつつある。

 そこで日本のゲームを今まで以上にPRするために,牧野氏はSteamを活用することを考えたという。実際,世界を見渡すとさまざまな国が自国のゲーム産業を支援しており,JETROのような機関や業界団体が地域プロモーションイベントをSteamで展開している。

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 また,牧野氏自身も各国のゲーム展示会などに足を運び,海外パブリッシャのスタッフに「日本のゲームに興味があるか」と尋ねているそうだが,「自分のルーツは日本のゲームだ」という答えが多いと感じているとのこと。

 そうした状況を踏まえ,「日本」「Made in Japan」を前面に打ち出したプロモーションが海外のゲームファンやパブリッシャに響く可能性があると考えて,Steamにおける日本特集イベントを打ったというわけだ。そこには,Steamで販売されている数万タイトルのゲームの中で,いかにして自社のタイトルをアピールするかという課題を抱えている日本の企業を少しでもサポートしたいという思いもあった。

 なお,Steamで特集するにあたっては,最低3か月前に計画を公開する必要があるとのこと。しかし牧野氏によると,3か月では余裕がなくなってしまうので,半年以上かけて準備したほうがいいそうだ。

 Steamを運営するValveの対応は,極めて親切で前向きだったという。ただ「料金を払えばいい」というわけではなく,「ゲームファンにプラスになるのであればプロモーションをする」というスタンスであるため,牧野氏は企画の方針や打ち出し方を考慮する必要があると話していた。

 そして話題は,今回の特集に関するさまざまな点に及んだ。日本のインディーゲームデベロッパに向けて,どのようにして今回の特集への参加を促したのかという問いに対し,牧野氏は各関連団体に告知したり,2023年7月に開催された「BitSummit Let’s Go!!」などのイベントに出展したりしてアピールしたと回答した。

GDC 2024にブースを出展。ゲーム開発者向けのイベントだが,過去の出展経験から今回も出展することにしたという
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GDC 2024の開催に合わせて,オンラインプロモーションを展開。SNSなどで反響が見られたそうだ
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海外に向けてプレスリリースを発信している
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 GDC 2024では海外パブリッシャのスタッフとの会話の中で,「パブリッシャの役割は変わったが,重要性は変わっていない」と感じたと牧野氏は言う。具体的には,海外進出にローカライズが必要不可欠であること,とくに中東などの地域では言語だけローカライズすればいいというものではないと,あらためて認識したそうだ。

 加えてセールスは,地域ごとにプロモーションするほうが当然伸びる。しかし各地域向けのプロモーションには,現地のパブリッシャとの連携があったほうがやりやすい。これまでの売り手/買い手といった関係が,パブリッシャ同士のパートナーシップ的な関係に変わってきているとも指摘した。

 今回の特集の結果としては,まず400万以上のインプレッションを得られたとのこと。参加企業を対象とした事後アンケートでは,「ウィッシュリストへの登録が増えた」という回答が目立ち,実際の売上も上がっているようなので,一定の効果があったと捉えているという。

 その一方で,今回の特集はSteamのトップページに掲載されたものの,それは多くのインプレッションを得られたからであり,Valveからサポートを受けたわけではなかった。牧野氏は今回得られたさまざまな学びをもとに,次回はしっかり準備をして臨みたいと意気込みを語っていた。

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今後の取り組み


 JETROのゲーム分野における今後の取り組みについても紹介された。2024年10月から11月にかけて,Japan Streetを使ったオンライン商談会が開催される。Electronic ArtsやTencent Japanといった大手海外パブリッシャ約20社が参加する予定で,9月中に日本企業の参加募集を開始するそうだ。

 2024年10月には,Thailand Game Showに出展を予定。Steamで配信している日本企業のゲームの体験版を展示する。
 2025年2月には,Steamにて日本ゲーム特集を展開する。こちらも9月に日本企業の参加募集を開始する。出展タイトルは新作に限らず,既存の作品やアーリーアクセスでもOKだという。

 また,2025年3月開催のGDC 2025にも出展を予定しており,次回はゲームだけでなく周辺のテクノロジーなども含む出展を検討している。

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