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[CEDEC 2023]NFTゲームの「Free to Play and Earn」を実現するために。ゲームとNFTを連携させるコンセプトやノウハウなどを紹介
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印刷2023/08/28 20:35

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[CEDEC 2023]NFTゲームの「Free to Play and Earn」を実現するために。ゲームとNFTを連携させるコンセプトやノウハウなどを紹介

 2023年8月24日,ゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC 2023」にて,「Free to Play and Earnを実現したゲームを支えるNFT活用」と題したセッションが行われた。
 このセッションには,プレイシンク エンジニア 金澤秀知氏,オルトプラス 技術部 テックリード 勝城裕貴氏が登壇し,NFTゲームを実際に開発・運用した経験をもとに,ゲームとNFTを連携させる際のポイントや,運用時の注意点などを解説した。

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「Free to Play and Earn」の実現


 セッションの冒頭,金澤氏らが手がけるNFTゲーム・タイトルAにて掲げたコンセプト「Free to Play and Earn」について説明が行われた。これは「ゲームを楽しみながらお金を稼ぐ」を意味する「Play to Earn」(P2E)と,スマートフォンゲームなどの「無料でプレイを始められるゲーム」を指す「Free to Play」(F2P)を組み合わせたものだという。
 それでは,どのようにコンセプトを実現するのか。金澤氏らは,ユーザーがゲームを遊ぶときのモチベーションを次のように定義したそうだ。

 まずユーザーは,最終的にゲームで勝ちたいという目標を持つ。その目標を達成するための手段として,自身が集めたユニットを使い,相手に勝てる編成を作る。その編成を作るための手段として,必要なユニットを手に入れて育成する。

 一般的なF2Pタイトルの場合,ユーザーは必要なユニットを運営チームに課金して入手することになるが,金澤氏はこの部分をユーザー間取引(CtoC)にすることで,P2Eになると考えている。ゲームプレイに時間をかけられるユーザーがユニットを育成し,時間をかけずに勝ちたいユーザーがそのユニットを購入する。こうしたCtoCが加わることで,P2Eが組み合わさるという持論を展開した。

 このようなCtoC取引だが,従来のゲーム内取引やRMT(リアルマネートレード)とは性質が異なるという。まずゲーム内取引はゲーム内資産が動くだけなので,ユーザー自身のEarnにはつながらない。また,RMTは運営チームが公認する取引ではないため,詐欺などのトラブルが発生しやすく,ひいては犯罪にもつながりかねない。

 金澤氏が示すCtoC取引は,ブロックチェーン技術とNFTを用いて実現している。「ブロックチェーン技術を用いることで,すべての取引操作がログとして残ること」「ログを改ざんすることがかなり困難であり,不正改ざんの防止力が高いこと」「すでに信頼性のあるNFTマーケットで取引が可能になること」「ユーザー間の取引はすべてログに残るため,2次流通に伴う版権料も管理できること」を挙げ,ユーザーが安心・安全に取引できることを示した。

ブロックチェーンの仕組みやNFT,ウォレットといった基本的な用語の説明
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 ブロックチェーンにはビットコインやイーサリアムなど,いくつものプラットフォームが存在するが,タイトルAではLINE BlockchainのFinschiaを採用しているとのこと。

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 Finschiaを採用するメリットとして,LINE IDを持っているユーザーであれば,LINEが提供するウォレットアプリ「DOSI Wallet」を利用できることが挙げられる。金澤氏は,NFTゲームで最もハードルになるのがユーザーにウォレットを作ってもらうところだと述べ,「LINE Blockchainなら,LINE IDを持っていれば自動的にウォレットも持つことになり,またユーザー自身がウォレットの秘密鍵などを管理する必要がない」と説明する。
 さらにNFTゲームへのログインは,LINE Loginを用いて行うため,必然的にユーザーは全員LINE IDもウォレットも持っている状態を実現できると語った。

 また,ユーザー側でNFTの生成や移動などを行った場合には,ガス代(手数料)が発生しユーザーの負担が増えることも,従来のNFTゲームの抱える課題だった。しかしLINE Blockchainでは,サービス提供者側のコストに含まれる形になるため,ユーザーが負担せずに済むという。

 加えてLINE Blockchainでは,NFTを発行するためのスマートコントラクトを開発者が用意する必要がなく,LINE側が用意したコントラクトを利用できる。さらに,LINE NFTマーケットが用意され, 暗号資産を持っていないユーザーもLINE Payで決済可能であることもメリットとして挙げられた。

 一方,LINE Blockchainにはデメリットもあり,EVM(Ethereum Virtual Machine)互換ではないため,イーサリアムなどのEVM互換のブロックチェーンへの移植などが難しい。また,OpenseaなどのパブリックなNFTマーケットでは扱えない点もデメリットになるそうだ。

簡略化したサービスの構成図
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 タイトルAにおけるNFT利用のコンセプトは,「NFTを中心にして考えるのではなくて,あくまで一般的なゲームにNFT要素を入れる」とのこと。実際にゲームもそういったモデルとして設計されている。最終的な目標は「ブロックチェーンやNFT化が大衆化し,さまざまなゲームにNFTの要素が入っている」ことだという。

 また,NFTを手に入れることが目的ではなく,ゲームで勝つという目的を達成する手段としてNFTが存在するように配慮をしている。具体的にユーザーは「育成したキャラクターをNFTに変換する」「NFT化されたキャラクターを育成済みの状態でゲーム内に取り込む」「ゲーム外のNFTマーケットで,NFTをユーザー間で売買する」ということが行える。

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 ゲーム内データのNFT化では,ユーザーが所有しているキャラクターデータからNFTを生成できる。ただ,キャラクターが複製されないように,NFT化されたキャラクターはゲーム内で使用できなくなる。NFT化の際には一旦キャラクターを使えない状態にするわけだ。
 また,NFTはメタデータというデータ構造を持っており,その中にキャラクターのパラメータや,データベース上のデータに紐付けるためのIDが埋め込まれるとのこと。

 さらにゲーム上の制約(ブロックチェーンの制約ではない)もあり,まず一定レベル以下のキャラクターはNFT化できない。これは「育成したキャラクターをNFTとして取引する」という本来のコンセプトに則ったものだ。

 NFT化にはゲーム内の有償通貨を消費するが,これは1人のユーザーが複数のアカウントでゲームを始めて,それぞれで育成したキャラクターを1つのアカウントにまとめるような行為を防止する意図がある。加えて,NFT化が盛んになるとサービス提供者側が負担する手数料も大きくなるため,それを軽減する意味もあるという。

NFT化処理のフローやNFTのメタデータ,NFTのIDに関する解説
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 逆にNFTのゲーム内データ化では,NFT所有者に対してキャラクターを使用可能にする。その際,同じNFTが複数回取り込まれないように,NFTは削除される。そうしてデータ化されたキャラクターの性能は,NFTのメタデータに埋め込まれたシリアルIDを元にデータベースを参照し,NFT化が行われた時点のものとなる。

NFTのゲーム内データ化のフロー。一般的なブロックチェーンではユーザー自身が行う手続きも,LINE Blockchainではサービス提供者側が代行できる。ただし,ユーザーの承認を得る必要がある
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 タイトルAにおける2次流通の実績も示された。なかでも取引の最高金額は,金澤氏らも驚くほど大きなものになったそうだ。

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ゲームとNFTの連携


 ゲームとNFTを連携させる際の運用とノウハウに関して,勝城氏は4つのポイントを指摘した。
 1つめは「ユーザーの分かりやすい言葉を使う」だ。勝城氏はmintやburn,あるいは鋳造や償却といったブロックチェーンやNFTの関連用語を,ユーザーにとって馴染みがない言葉だと捉えているという。
 タイトルAでは,mintを「NFT化」,burnを「ゲーム内データ化」,NFT一覧を「NFTキャラ一覧」といったように,NFT関連の専門用語を分かりやすい形に言い換えている。「NFT周りの専門用語をできるだけ,ゲーム側の言葉に寄せることは重要」と勝城氏は述べた。

 また,チーム全体の理解度を揃えるために,ブロックチェーンの勉強会を開催したとのこと。サービスを提供する側の理解度が足りないとユーザーにも伝わらない,という考えから実施されたそうだ。実際にLINE NFTマーケット上でNFTを売買したり,ユーザー間のウォレットで転送したりして,ブロックチェーンの基礎知識の習得に努めたという。

 2つめの「LINE Blockchain側のメンテナンス,障害時の対応」では,タイトルAのNFT機能に外部のシステムを使っていることが紹介された。LINE Blockchainにメンテナンスや障害が発生した場合,ゲーム内のNFT機能だけを部分メンテナンス(アクセス不可)できる仕組みを導入しているそうだ。

 そのほか,LINE Blockchain側の緊急メンテナンスや障害を検知するために,ブロックチェーンの視覚監視を導入したことも紹介されている。

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 3つめは「ユーザーからのNFT機能に関する問い合わせ対応」。これは,NFT化やゲーム内データ化を行う際に発行されるblock_idやtx_hashを紐付けたユーザーIDを用いて行っている。LINE Blockchainでは,LINE Blockchain Explorerを使うとblock_idやtx_hashから該当の情報を調べることが可能だそうだ。

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 4つめは「NFTの価値を高めるためには」だが,NFTなどのデジタルアセットにはコレクション性があり,ゲーム内に取り込まずに集めるという楽しみ方が紹介された。そのため,タイトルAでは各NFTのメタデータにシリアルナンバーを付与して,コレクション性や価値を高めているという。シリアルナンバー1,いわゆるキリ番,あるいはキャラクターに関する数字だと,コレクション性や価値が上がりやすいそうだ。
 なお,NFTをゲーム内データ化すると,本来はシリアルナンバーも失われるが,関連情報をオフチェーンで管理することにより,再NFT化したときに同じシリアルナンバーを付与する仕組みを導入している。

 続いて,「ゲームとNFTを連携する際の注意点」に言及した。勝城氏によると「トークン生成/鋳造/焼却に時間を要する」ことであり,トークン1つあたりの生成には2〜3秒,鋳造および焼却は5秒ほどかかる。生成数が多かったり,ネットワークが混雑していたりすると,その時間は増加する。そのため,トークンの生成/鋳造/焼却時にはユーザーへのアプローチに工夫が必要となると指摘した。

トークン生成のメインネットへの反映タイミングや負荷テスト時の注意点
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 セッションの終盤,「タイトル運営の課題と改善案」が提示された。タイトルAでは,登録ユーザーの2%程度しかCtoC取引を行っておらず,これは想定よりも少ないとのこと。運営チームは「ユーザーが所有しているキャラクターの価値をゲーム内に表示できていない」「NFT化にはゲーム内通貨が必要になるため,ハードルになっている」といった課題を認識している。

 そこで各キャラクターの価格や相場を表示したり,直近の取引をグラフ化したりして,2次流通の情報を提示することでNFT化を促進していくとのことだ。また,初回のNFT化を「お試し」として,無料にすることでハードルを下げることを試みている。
 そのほか,ミッション形式でウォレット登録やNFT化,ゲーム内データ化をそれぞれ達成すると,ゲーム内アイテムがもらえるといった,NFTを促進する施策も行っているそうだ。

 勝城氏によると,ブロックチェーンやNFTはまだまだゲームに浸透し切れていないのが現状であり,「いかにたくさんのユーザーに使ってもらうかが課題。できることや改善案は多数あるので,1つひとつ取り組んでいく」と意欲を示していた。

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