企画記事
「そうだ,ダンジョンに行こう」──家にいながらにして行ける別世界はいかが? リアルタイム・ダンジョンRPGのススメ
しかし,「自粛疲れ」なんて言葉も生まれている昨今,普段は行かない場所に足を運んで憂さ晴らしをしたい……そんな人も多いはずだ。
じゃあ,家から出ないで,どこかに行こう。家にいながらにして行ける別世界──そう,ダンジョンだ(唐突)。というわけで,年末企画「そうだ,ダンジョンに行こう」と称して,魅力たっぷりのダンジョンゲームの世界をご紹介してみたい。
●紹介タイトル
●まとめ
- 閉じた世界だからこそ──
リアルタイム・ダンジョンRPGにしかない魅力
ダンジョンで生き抜くということ。
偉大なる「ダンジョン・マスター」
とはいえ,一口に“ダンジョンゲーム”と言っても幅が広すぎて説明が難しい。例えば,「真・女神転生」はゲーム中のほとんどが3DダンジョンをさまようRPGであり,「風来のシレン」もダンジョンをさまようローグライクなRPGだ。「ウィザードリィ」や「世界樹の迷宮」「エルミナージュ」といったタイトルも,ダンジョンRPGと呼ばれている。
みんな大好き,メトロイドヴァニアにも,いわゆるダンジョンを舞台にした作品が存在する。
今回,筆者がオススメしたいのはそれらではなく,“リアルタイムで時間が流れるダンジョンRPG”である。この手のジャンルは,Steamのストアページでは「ダンジョンクロウル(Dungeon Crawl)」というタグが付いていることが多いものの,この単語が必ずしも同ジャンルのゲームを指しているとは限らない。
筆者の知る限り,“リアルタイム・ダンジョンRPG”系統の最古のものは「ダンジョン・マスター」(1987年)だ。現在はGeorge Gilbert氏が制作したクローンソフト「Dungeon Master RTC」がフリーウェアとして公開されているので,誰でも気軽にクラシックなリアルタイム・ダンジョンRPGに触れることができる(ただし,英語)。本稿の「ダンジョン・マスター」に関するスクリーンショットは,この「Dungeon Master RTC」を使用している。
筆者はPC-98というパソコンで初めてダンマスに触れたが,とにかくリアルで,怖くて,斬新だった。リアルというのはグラフィックス面ではない。「今,自分がダンジョンにいて,すぐ近くをモンスターが徘徊している」というリアルだ。基本的にBGMはなく,どこかでモンスターが蠢(うごめ)いている音が聞こえたりする程度。しかし,これがダンジョンの孤独と現実を表しているようで,とても怖かったことを覚えている。
リアルタイムで時間が流れているため,近くにモンスターがいるときに自分がジッとしていると,相手は徐々にこちらに近付いてくる。メニュー画面を開いても,時間は止まらない。戦って倒すか,急いでその場から逃げるか,速やかに選ばなければモンスターに攻撃され続けて死ぬだけなのだ。壁のボタンを操作して扉を開閉できる部屋があれば,そこへ逃げ込むことで,ひとまずの安全を確保できる。
しかし,安全な場所を確保できたとしても,悠長にしてはいられない。「喉の渇き」と「空腹」という概念があるからだ。ダンジョン内には水場があり,水はそこで補給できる。問題は食料だ。モンスターを倒して食うしかないのである。これまた斬新だった。
ダンマスのリアルな要素は,それだけではない。「重量」の概念があり,各アイテムには重量が,各キャラクターには持ち運べる重さが,それぞれ設定されている。重量超過によって,移動速度が低下するといったペナルティも発生する。1人でも重量超過になるとパーティ全体が遅くなるため,必然的に荷物は分散させて持ち運ぶことになる。このあたりも,実にリアルだ。
また,受けたダメージやスタミナは「休息」,つまり睡眠によって回復できる。休息はどこでも可能だが,睡眠中にも容赦なくモンスターが襲ってくるため,「どこで寝るか」も重要になる。前述の「壁のボタンを操作して扉を開閉できる部屋」のような安全な場所があればベストというわけだ。
呪文の使い方も独特だ。それぞれの呪文に設定された「シンボル」を,特定の順番で並べてクリックしないと発動しない。この操作は実際に魔法の術式を構築しているかのような感覚がある反面,適切なタイミングで自由自在に魔法を使うには,全魔法のシンボルの並びを暗記する必要がある。
ダンマスには斬新で面白い要素が多いとはいえ,ゲームプレイが非常に煩雑であることは否めない。当時も一部のファンに熱狂的な支持を受けたものの,幅広い層に受け入れられたとは言い難かった。水や食料に関してはそこまで重要ではなくなるテクニックもあるのだが,そもそもゲーム内でマップを確認する手段がないので,これから初めてプレイをするとしたら,そこが最もキツいと感じる点だろう。
あらゆるゲームにはクリアするための“目的”があり,「ダンジョン・マスター」にもダンジョンの奥に向かうべき理由がある。しかし,それ“だけ”を描くのではなく,水を飲んだり何かを食べたり,傷ついたら寝たりするといったパーティメンバーの人間らしさのようなものを表現していることで,ダンマスは他作品にはない個性を手に入れている。
ダンジョンで過ごす時間。プレイヤーによって異なるであろう,ゲームクリアまでの過程。これらを楽しむことが,「ダンジョン・マスター」の遊び方だと言える。
「ダンジョン・マスター」の強烈なフォロワーとして,「アイ・オブ・ザ・ビホルダー」も外せない。ゲームシステム的にはかなり「ダンジョン・マスター」寄りだが,「喉の渇き」がなく,食料もそこまで重要ではない(空腹によるペナルティが軽微なうえ,高レベルの呪文で食料が作れる)ため,若干遊びやすいかもしれない。こちらは,GOG.comで海外版が購入できるほか,日本でもスーパーファミコン版とメガCD版が存在した。PC-98版もあったのだが,さすがに現在では入手困難だ。
衝撃の“フルマウス・オペレーション”!
「ブランディッシュ」
「ブランディッシュ」は,1991年に日本ファルコムが放ったリアルタイム・ダンジョンRPGだ。“フルマウス・オペレーション”を謳い,すべての操作がマウスのみで完結するという,まだマウスというデバイス自体が目新しかった当時では画期的な存在だった。アドベンチャーゲームならまだしも,アクション要素を含むリアルタイム・ダンジョンRPGなのにである。
傷ついたらどこでも「休息」できることや,休息中にも敵が襲ってくる可能性があり,安全を確保するためには小部屋に入って扉を閉めて……というあたりは,「ダンジョン・マスター」の精神を受け継いでいると感じる。それでいて,煩雑になることを嫌ったのか,食料や重量の概念は排している。
実際,「ブランディッシュ」というゲームにとって,これは正解だったと思う。プレイヤーが考えなくてはいけないことを減らし,「ダンジョン・マスター」から“ダンジョンを進んで,モンスターと戦って生き抜く”こと,そして“謎解き”の要素のみを抽出して特化したわけだ。
孤高の賞金首・アレスと女賞金稼ぎ・ドーラが対峙する場面から物語は始まる。ドーラがアレスに向かって攻撃魔法を放つが,それが地面に直撃した瞬間,大きな地震と共に足元が崩れ,2人は地底の奥深くに落ちていく……というオープニングだ。
プレイヤーは地底に落とされたアレスを操作して,地上への脱出を目指すことになるわけだが,地底世界は思ったよりも広大だ。かつて栄華を極めたビトールという小国が丸ごと地中に沈んでいて,そのほとんどが廃墟となりつつも,謎の魔力によって空間を維持している。アレスのほかにも地底世界に迷い込んでしまった人が大勢いるのだが,アレスと同じように地上への脱出を目指す者もいれば,志半ばにして白骨化してしまった者,とっくに諦めて店を営んでいる者など,地中とは思えない不思議な世界を形成している。
筆者があらゆるゲームの中からベスト1を挙げろと言われたら,「ブランディッシュ」を挙げる。その理由を一つ一つ見ていきたい。
まず,当時としては信じられないほどの完成度を誇る,フルマウスによる操作。アクションRPGをマウスだけで操作できるようにするだけでも難しいはずだが,それを実現した画面構成は発明の域だろう。
主人公・アレスの周囲にある枠内をクリックすることで各アクションが可能になっているため,マウスカーソルの移動をなるべく抑えつつ,すべてのアクションが行える。正面に敵がいる場合は,アレスをクリックして攻撃。ニュートラル状態であれば,自動的に盾を構えた防御になる。やってみると分かるが,ストレスが一切ない,理想的な操作方法だ。
基本的なアクションは前進,後退,ジャンプ,平行移動のみ。右クリックでカーソルが「手」と「目」に変化する。壁のプレートに書かれたヒントなどの文を読むには「目」,宝箱や扉の開閉には「手」を使うというわけだ。カーソルの形状が「目」や「手」のときに「前進」の枠をクリックしても目の前を調べるが,「前進」とアレスのあいだの枠をクリックすると,カーソルの形状を問わず前進になる。
これらの動きをフルに活用した仕掛けや謎解きがそこかしこにあり,「ダンジョン・マスター」よりアクション性とパズル性が高くなっている。
現在のマウスはマウスホイールだったり,サイドにボタンが付いていたりするものがあるが,当時のマウスは左右のクリックボタン2つのみのシンプルな構造だった。最初は「えっ,マウスでアクションRPGを?」と戸惑ったものの,しばらくしたら夢中になっていた。まるで未来のゲームを遊んでいるかのようなオーバーテクノロジー感があったくらいだ。
次に,ゲームシステムとストーリーの完璧な融合。地底深く落とされた主人公が,地上への脱出を目指して地下迷宮をさまよう……という内容だが,プレイヤーが自分から動き出さなければゲームは何も進まない。
ゲームをクリアするため,鮮やかにマウスを操作して先へと進むプレイヤー。地底から脱出するため,ディスプレイの中で剣を振るい,モンスターを薙ぎ倒しながらダンジョンの出口を目指すアレス。数え切れないほどのモンスターを黙々と斬り伏せて進むうち,両者が次第に重なっていく。この一体感が素晴らしい。アレスは勝手にしゃべったりせず,「プレイヤー=アレス」の構図が徹底されている。
また,これは当時の“あるある”なのだが,「ブランディッシュ」をクリアする頃にはマウスの左ボタンの効きが悪くなる……と言われていた。当時のマウスは耐久性があまり高くなかったことに加え,「ブランディッシュ」というゲームがそれだけマウスを酷使するということを示すものだ。
“Brandish”とは「剣で斬ること」を意味する単語だ。ゲームをクリアしたとき,プレイヤーはきっと「なるほど。完璧なネーミングだ」と感じるだろう。「ブランディッシュ」には剣の使用回数があり,これが尽きると剣は壊れてしまう。そう,自分の左クリックは確かにアレスの剣だったと気づくのだ。「ヘヘ,オレの剣(マウス)も壊れちまったようだぜ……。お互い,頑張ったよな」と。
来年に「ブランディッシュ」は発売から30周年を迎えるが,今プレイしてもまったくストレスもなく楽しめるどころか,これといって改良すべき点が見当たらない。30年前のゲームとは思えない,異常な完成度の高さだ。筆者は全人類にプレイしてほしいゲームだと思っている。
「ブランディッシュ」をこれから遊ぶなら,プロジェクトEGGで配信されているPC-98版をオススメしたい。
ブランディッシュシリーズは1993年に第2作「ブランディッシュ2 THE PLANET BUSTER」,1994年に第3作「ブランディッシュ3 SPIRIT OF BALCAN」,1996年にはクォータービューを採用した第4作「ブランディッシュVT」が発売されている。その後,第4作はリメイク版が「ブランディッシュ4 眠れる神の塔」と題された。
ちなみに,プロジェクトEGGでは第3作まで配信されている。
2009年に第1作がPSP向けにリメイクされたとき,筆者は歓喜したものだ。しかし,第2作以降のリメイクは音沙汰なし。孤高の賞金首・アレスと,そのアレスを「師の仇」と追う女魔術師・ドーラの物語は第3作で一応の完結を迎えているので,せめて「3」までのリメイクを期待している。筆者がもし石油王だったら,開発費を全額出すのに……!
蘇れ,ダンジョン・マスター!
「Legend of Grimrock」
「Legend of Grimrock」(2012年)の登場は衝撃的だった。この作品を一言で表すなら,“「ダンジョン・マスター」の復活”だ。
しかも,ただ蘇らせただけではない。ユーザーインタフェースをはじめ,すべてが見事に洗練されているのだ。リアルタイムであり,食料の概念があり,重量の概念もある。しかし,煩雑さはなく,とてもプレイしやすい。「ダンジョン・マスター」が進化するとしたら,こうなるべきだという形を見せてくれた。マップがゲーム内でいつでも確認できる幸せよ……。
「ダンジョン・マスター」は古いゲームのため,クローンである「Dungeon master RTC」以外はプレイ環境を用意することが難しく,システムの煩雑さや高い難度といった面も相まって,人には薦めづらいという悩みがあった。
しかし,「Legend of Grimrock」は楽しさの根幹が「ダンジョン・マスター」でありながら,環境のハードルはグッと低くなり,「ダンジョン・マスター」の楽しさを広く伝えたい筆者にとっても嬉しい作品だった。
「Legend of Grimrock」はSteamとiOSで配信されている。日本語には対応していないが,ゲーム内に英語力が必要なイベントはほとんどない。
2014年には続編「Legend of Grimrock 2」がリリースされたが,こちらは地上のフィールドも舞台となっている。全編英語だと分かっているゲームの発売日を待ち望んで購入し,夢中で一気にクリアしたのは後にも先にもこの作品だけだ。
そんなわけで,いまだに日本語化や他機種への移植が行われていないのかが不思議でならない。筆者がもし石油王だったら,ローカライズして,国内販売に向けて動くのに……!
「Legend of Grimrock」以後――
リアルタイム・ダンジョンRPGの新たな息吹
「Legend of Grimrock」の衝撃が大きかったのか,それ以降にリアルタイム・ダンジョンRPG界隈が急に活気づいた印象がある。ここからは,タイプは違えどスピリットを同じくする4作品をピックアップして紹介しよう。
入門編をアナタに……
「迷宮の塔 トレジャーダンジョン」
発売:レイニーフロッグ / 開発:Monkey Stories「迷宮の塔 トレジャーダンジョン」は,2017年に配信されたNintendo Switch用ソフトだ。2016年にSteamでリリースされた「Heroes of the Monkey Tavern」の移植作にあたる。
オープニングは酒場のシーンから始まり,「偉大なる4人の英雄が金を浪費していた 数日前までは,金は充分にあった しかし,それは数日前の事だ 今はパーティを維持するため装備を売らなければいけない 売るものがなくなるまで・・・」という衝撃的な字幕が飛び込んでくる。
そうなる前に浪費をやめればいいのでは……と思わなくもないが,その後,「お宝があるらしい」ダンジョンの話を聞いた4人はさっそくそこへ向かうことに。字幕は「冒険が彼らの生きがいなのだ」と締めているが,「いや,金だろ……」とツッコまざるを得ない。
しかし,これはRPGでよくある「そこそこの戦士のはずなのに,なんで初期装備が貧弱なのか?」という問いに対する,1つの答えなのかもしれない。浪費の果てに,売る物がなくなるまで売ってしまったのか──。
筆者はストアで「迷宮の塔 トレジャーダンジョン」を見つけたとき,スクリーンショットがあまりにも「Legend of Grimrock」っぽいので,ビックリして即買いしてしまった。マップ数は8なので少なめ,システムも「Legend of Grimrock」をコンパクトにしたような印象を受ける。食料の概念はなく,戦闘と探索に専念できるため,リアルタイム・ダンジョンRPGの入門編のような作品だ。
「ダンジョン・マスター」や「Legend of Grimrock」をバリバリ遊んでいる人ようなは物足りなさを感じるかもしれない。だが,コントローラでの操作にうまく落とし込んでいる点は特筆ものだ。「Legend of Grimrock」はマウスもしくはタッチパネルでないと無理が出そうな操作系であるため,家庭用ゲーム機への移植には高い壁があると思っていたが,「迷宮の塔 トレジャーダンジョン」によって光明を見せられた思いだった。慣れるまでは,ちょっと大変だが。
上の画像を見てほしい。パーティメンバーの顔に「逃げる」という表示が重なり,赤の数字が現れたシーンだが,敵と相対している最中に移動すると,逃げたと見なされてパーティ全体がダメージを食らってしまうのだ。リアルタイム・ダンジョンRPGでは,ヒットアンドアウェイ戦法(4マスを使って,グルグルまわりながら敵を攻撃する)が基本となることが多く,こうした仕様は珍しい。
また,特定の階層にはボスが待ち構えているが,一部のボス戦では移動がまったくできず,その場での殴り合いになる。移動を加えると,操作性が難しくなるからという判断なのだろう。総合的に見ても,ライト版「Legend of Grimrock」と言っていい。
なお,Nintendo Switch版だけでなく,Steam版も日本語に対応しているので,気軽に手を出してほしい作品だ。
和風の世界観でダンジョン・クロウル!
「百鬼城 公儀隠密録」
発売・開発:ハピネット2017年に登場した「百鬼城 公儀隠密録」は,ありそうでなかった和風の世界設定によるリアルタイム・ダンジョンRPGである。
舞台は17世紀半ばの日本,幕府転覆を謀った陰陽者・鬼潟道満(きがたどうまん)が百鬼島という絶海の孤島に流される。それから十余年,鬼潟道満から百鬼島の罪人と警護役人の首が江戸城に届けられる。さらに,百鬼島には奇妙な城が現れているとも伝えられ,鬼潟道満討伐の命を受けた公儀隠密が島へ向かう……といったストーリーだ。
キャラメイクではパーティメンバー4名を作成するのだが,種族は人間,鬼,天狗,猫又の4種類。実に濃いメンツだ。全員,同じ種族にすることもできる。
職業は侍,忍者(女性は“くノ一”),僧兵,神官(女性は巫女)の4種類。同ジャンルの中では少なめだが,この時代/世界設定で戦える職業を考えると,妥当な線かなという気はする。
「百鬼城 公儀隠密録」の特徴はパーティ分割システムだ。例えば,パーティメンバー4人を2人ずつに分けて同時に進行し,一方がスイッチを操作して扉を開き,もう一方がその先に向かうといった流れになる。
また,敵を背後から攻撃すると大ダメージを与えられるため,一方が囮になって,もう一方が敵の背後に回り込むという戦法が非常に有効だ。パーティ分割後,動かない(プレイヤーが操作しない)ほうのパーティは石のように硬くなるという設定があり,この戦法はチュートリアルで教えられるくらいの基本テクニックになっている。
ただ,「迷宮の塔 トレジャーダンジョン」でもギリギリな感があったコントローラ操作が,パーティ分割によってやや複雑になっている。慣れるまでは苦労するだろう。また,全般的に文字が小さいのも難点と言える。
「百鬼城 公儀隠密録」はPC版(Steam / DMM GAMES)をはじめ,PS4版とNintendo Switch版が配信中。和風好き,猫好き,ダンジョン好き……といった自覚がある人は,本作をプレイしない選択肢はない。
スチームパンクでダンジョン・クロウル!
「Vaporum」
発売:Merge Games / 開発:Fatbot Games「ダンジョンはファンタジーRPGだけのものじゃないんだぜ!」と言わんばかりに,スチームパンク界から殴り込みをかけてきたのが,2017年にリリースされた「Vaporum」だ。
記憶を失った主人公が海辺で目覚め,目の前にそびえ立つ巨大な金属製の塔のような建造物に誘われる……といった導入から物語は始まる。
序盤の回復手段が限られている点には注意が必要だ。スタート直後からダメージを受けまくって,回復アイテムを使い切ってしまうと,早々に詰んでしまう可能性が高い。リアルタイム・ダンジョンRPGのセオリーである,グリッド移動によるヒットアンドアウェイ戦法を守って,極力ダメージを受けずに進むことを心がけるしかない。
とはいえ,難度設定には「カジュアル」が用意されているうえ,ゲーム中に一時停止ができる「タイムストップモード」もある。突然,敵に襲われて「ちょ,ちょちょちょ待っ……」というときに便利な機能だ。
「Vaporum」はPC(Steam)やPS4,Xbox One,Nintendo Switch向けに配信されている。2020年9月には続編「Vaporum: Lockdown」もリリースされたので,リアルタイム・ダンジョンRPGの新風を感じたい人はチェックしてみよう。
理由なんかいいから,とにかくダンジョン潜ろうぜ!
「Dungeon of Dragon Knight」
発売・開発:HexGameStudio最後は2019年にSteamでリリースされた「Dungeon of Dragon Knight」だ。森をさまよっていた冒険者一行が女性と出会い,「良かったら,ウチで食事と雨宿りでも……」と誘われて家に入ったら,なんとそこは迷宮でした! そんなトンデモ展開で幕を開ける。
その後,手紙らしきものが表示されてゲームが始まるのだが,この手紙にもツッコミどころが多い。
「食事と雨宿りでも……」からの「君たちには世界を救ってもらいたい!」である。ちょっと落差がひどすぎませんか……こんなの騙し討ちじゃないですか……どうして……と言いたくもなる。
しかも,ダンジョンには「移送門」というポータルがあり,例の女性が「隠れ場所」と呼んでいる場所に飛べる。そこには女性が待ち構えていて,アイテムを売買したり,不要なものを預かってくれたり,休息をとったりできるのだ。……なぜ,1回いなくなった?
女性には言いたいことがいっぱいあるものの,移送門から隠れ場所に飛べることで従来のリアルタイム・ダンジョンRPGと比べて,だいぶ易しくなっている。
また,序盤から魔法によってパンが精製できるため,食料問題に悩まされることもない。
特徴としてはマップがところどころ,立体的になっている点が挙げられる。基本的にリアルタイム・ダンジョンRPGではマップを確認しながら進むことになるのだが,「Dungeon of Dragon Knight」は立体的な構造であるため,2Dマップでの把握がしづらく,ややクセがあると言える。
このようにシステムはカジュアル寄りだが,完全な初心者向けとは言いづらい。とくに終盤は「魅力的なダンジョンを探索する」というより,「扉を開閉するための仕掛けの解除に奔走する」感が強くなり,少々疲労感を覚える。
それでも,「Legend of Grimrock」タイプのダンジョン・クロウルを探している人には自信を持ってオススメできる作品だ。ただのフォロワータイトルではなく,オリジナリティに溢れる謎解きも用意されていて,それが解けたときの快感は言葉に代えがたい。
閉じた世界だからこそ──
リアルタイム・ダンジョンRPGにしかない魅力
当然ながら,リアルタイム・ダンジョンRPGはまだまだ存在する。たとえば,1989年のファミリーコンピュータ用ソフト「ダンジョン&マジック Swords Of Element」は(地上フィールドもあるが)リアルタイム・ダンジョンRPGと言えると思う。
また,同ジャンルは日本より海外で好まれている傾向があり,ローカライズされていないタイトルが多い。SteamやGOG.comから購入できるものの,非ローカライズであることに加え,操作性に難があるものもあり,初心者には厳しいだろう。こうした事情から,本稿では「初めての人がプレイしても,問題なく遊べそうな作品」を中心に紹介している。
筆者がリアルタイム・ダンジョンRPGに惹かれる理由は,ダンジョンを1つの「閉じた世界」として描き切っている点だ。リアルタイムであることから,空間そのものが“生きている”ようにも感じ取れる。
ゲームの世界は開発者が神となって創造しているものだが,無機物に生命が吹き込まれているかのように,「コンピュータゲームの凄み」とも言うべき真髄に触れている感覚がある。
リアルタイム・ダンジョンRPGにおいて,プレイヤーがダンジョンを出られるのは「ゲームをクリアしたとき」のみ。ゲームの開始から終了まで,プレイヤー(主人公)はダンジョンに囚われ続ける。ゲームの外にいるプレイヤーとゲーム内の主人公。両者の奇妙なシンクロが,独特の一体感と没入感を生んでいると思う。
「オープンワールド」という単語が市民権を得て久しいが,リアルタイム・ダンジョンRPGはその対極に位置する。言わば「クローズドワールド」だ。
テクノロジーの進化によって実現が可能になったオープンワールドに対して,“閉じた世界”は表現力や技術力が限られていたからこそ生まれた世界。しかし,そこには確かな魅力があったからこそ,「ダンジョン・マスター」以降も「Legend of Grimrock」をはじめとするタイトルが現れ,多くのファンに支えられているのだ。
ダンジョンが好きだ。トラップやモンスター,ときには暗闇の恐怖。そんな危険極まりない場所なのに,なぜか「居心地の良さ」を感じることがある。筆者が石油王だったら,無人島を買い取ってダンジョンを作り,隠しスイッチで扉が開閉する小部屋で暮らしたい。
人が観光地に赴く理由の1つに,「雄大な景色を眺めて,開放感に浸りたい」というのが挙げられると思う。大自然を前にして,普段どれだけちっぽけな世界で日々を送っているかを思い知らされる。凝り固まった思考や感覚を解きほぐしてくれる。そんなヒーリング効果を求めて,人は観光地に足を運ぶのだろう。
その一方,旅先から自宅に帰ってきたとき,どこかホッとする。また,百畳の部屋のド真ん中に布団を敷いて寝るなんて,どこか落ち着かないはずだ。寝室はほどよく狭いほうがいい。広大なオープンワールドに憧れと開放感を抱きながらも,“閉じた世界”に寄り添う,それが人間の性分なのではないだろうか。
……といった感じでまとめてみたが,脱炭素社会に向けて動き出している今日このごろ,夢見がちに「石油王」という単語が3回も出てきたのは……どうかと思っている。よいお年を!(唐突)
- 関連タイトル:
迷宮の塔 トレジャーダンジョン
- 関連タイトル:
百鬼城 公儀隠密録(Haunted Dungeons:HYAKKI CASTLE)
- 関連タイトル:
百鬼城 公儀隠密録
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百鬼城 公儀隠密録
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Vaporum
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