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[CEDEC 2023]PS VR2やDualSense Edgeの利用実態など,興味深いデータが明かされた「PlayStation 5 開発の振り返り」レポート
日本のPSVR2ユーザーが示した,特徴的な傾向とは。発売1か月後のデータが示す,VR利用の実態
最初のテーマとなったのは,2023年2月22日に発売されたPlayStation 5用VRHMDのPS VR2。発売時点では53本だった対応タイトルも,8月25日時点では97本になっているなど「着々と広がりを見せている」(秋山氏)状況にあるという。
単に先代機「PlayStation VR」(以下,PS VR)からスペックアップしただけでなく,VR空間への没入感を増幅させるためにテクノロジーを惜しむことなく投入。その甲斐あり,発売後の反響も良好だとのことだ。
こうした評価はプレイヤーエンゲージメントのデータとしても表れている。PS VRとPS VR2において,発売から1か月後までのヘッドセット装着時間を比較してみたところ,平均値と中央値の両方でPS VR2のほうが多いという結果が出た。つまり,発売後1か月では,PS VRよりPS VR2の方が長時間利用されているわけだ。
この傾向について,秋山氏が要因として考えているのは「PS VR2の軽量化を実現した最適な設計や,快適性の向上」「ヘッドセットをかぶったまま周囲を確認できるシースルービューの実装や,ケーブルが減ってセットアップが簡単になるなど利便性の向上」「ゲームコンテンツのクオリティ向上」の三つ。
秋山氏は「SIEはプレイヤーさんに没入感を損なわない,快適なVR体験を提供できていると実感している」と調査結果についてのポジティブな見解を示した。
PS VR2ではプレイエリアをカスタマイズすることにより,住宅事情に応じた楽しみ方ができるのも特徴だ。
ここで秋山氏が持ってきたのは「PS VR2発売1か月間,国・地域別でどのようなプレイエリア設定がされていたか」という興味深いデータだ。PS VR2では,2m四方のスペースを使って動き回る「ルームスケール」,椅子に座ってプレイする1m×1mの「シーテッド」,1m×1mのスペースで立ってプレイする「スタンディング」という三つのスタイルが用意されている。日本では座っての利用が非常に多く,ルームスケールで動き回るスタイルを選んだユーザーは少ない。これはほかの地域と比較しても,かなり特徴的な傾向だという。
座っての利用が多いというのは他地域でも同様だが,日本はルームスケールでの利用が際立って少ない,とも言い換えられるだろう。日本でのVR普及に役立つデータといえそうだ。
DualSense Edgeのユーザーは,月に30時間長くゲームをプレイする
続いてのテーマは高機能コントローラDualSense Edge。2023年1月26日に発売された本機はカスタマイズ機能が特徴だ。ボタン割り当てを自由に決めたものを「プロファイル」としてDualSense Edge側に保存したり,新設された[Fn]ボタンと他ボタンの同時押しに好きな機能を設定できるなど,自分好みにセッティングして使い込める。価格は2万9980円(税込)と通常コントローラDualSenseの7678円を大幅に上回っており,機能にこだわるゲーマーが買う高級モデルと捉えて差し支えないだろう。
ここで秋山氏は「DualSense Edgeを使うプレイヤー」「ほかのコントローラを使うプレイヤー」を比較したデータを提示。DualSense Edgeプレイヤーの月間平均プレイ時間は30時間,月間平均セッション数で18,月間平均プレイタイトル数では1.3も上回っている。
秋山氏は「DualSense Edgeのプレイヤーは,より長く,より頻繁に,より多くのゲームタイトルをプレイしていただいているという結果が出た」とコメントした。調査期間はPS5が発売された2020年11月から,DualSense Edge発売4か月後となる2023年5月とのこと。出ていたタイトルの影響もあるだろうが,月間平均プレイ時間が30時間上回るというのは顕著な差といえるだろう。
ボタンの割り当てやスティック感度などを調整した設定を保存した「カスタムプロファイル」の作成数は1〜3個が多く,これは本体側に保存できるのが3個だからではないか,と秋山氏。
設定項目の利用状況についてはボタン割り当てが圧倒的に多く,スティック感度,震動の強さ,トリガーエフェクトの強さ,ボタン無効化,トリガーのデッドゾーンと続く。同機の特徴である背面ボタンを使うためにはボタン割り当てを行わなければならないため,これが影響しているのではないかとのこと。
[Fn]ボタンに割り振られた機能で最も多いのはプロファイルの変更で,最も頻繁に使われているのはゲーム中。ゲーム中にプロファイルを素早く切り替えるため,[Fn]ボタンによるショートカットが使われていると分析しているという(これらのデータは,DualSense Edge発売〜5月までのものとのこと)。
PS5では「Access コントローラー」の発売など,今後もアクセシビリティ向上の取り組みが続けられる
講演では,PS5におけるアクセシビリティ向上の取り組みについても語られた。PS5のシステムソフトウェアはアクセシビリティを設定でき,文字を大きくしたり,字幕を読み上げたりといった機能が提供されている。何らかのアクセシビリティ機能を利用しているユーザーは全体の10%。こうしたユーザーは,アクセシビリティ機能を使わないユーザーよりも1.6倍長い時間ゲームをプレイしているという。
秋山氏によれば,障がいを持つ人はそうでない人よりもより頻繁かつ長くゲームをプレイする傾向にあるという調査結果もあるそうで,PS5のアクセシビリティ機能がゲームの楽しさを広げる一助になっているのは確かなようだ。
2023年12月6日にはPS5用「Access コントローラー」の発売も予定されており,円形のボディにボタンを自由に配置できるほか,ゲーム内でプロファイルを素早く切り替えたり,ボタンの長押しをトグル式にしたり,複数ボタンを一つのボタンで入力したり,DualSenseと併用したりといった使い方ができるという。
また,今後配信予定のシステムソフトウェア8.0では,アクセシビリティ機能として「アシストコントローラー」の設定が登場。アカウントに2個目のコントローラを割り当て,2つのコントローラで行った操作が一つのコントローラによるものとして扱われるようにもできるという(7月31日にベータ版が配信された)。
PS VR2やDualSense Edge,アクセシビリティの利用状況といったデータが公開された本講演。SIEのみが知り得る情報だけに,興味深い内容であると感じられた。中でもPS VR2については,日本の住宅事情からシーティングでの利用が多いだろうと漠然と予想するに留まっていたが,実際のデータとしても示されたことが意義深いといえるだろう。今後もこうした積極的な情報発信に期待したい。
PlayStation 5公式サイト
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