テストレポート
ゲーマーに適したタブレットはどっちだ!? 「iPad Air」2024年モデル vs Android最強タブレット「REDMAGIC Nova」を比べてみよう
一方で,ゲーマー向けに特化した製品ではないものの,高スペックで多くのゲームを快適に楽しめそうなタブレット端末として,Appleの「iPad Air」2024年モデル(関連記事,以下 iPad Air 2024)も見逃せない製品だ。
そこで本稿では,中国Nubia傘下のREDMAGICが開発したゲーマー向けAndroidタブレット端末の最新モデル「REDMAGIC Nova Gaming Tablet」(以下 REDMAGIC Nova,関連記事)とiPad Air 2024を評価して,どちらがゲーマーに適した製品なのかを見ていきたい。
iPad Air 2024:比較的安価な11インチ級タブレット
まずは,iPad Air 2024から見ていこう。
iPad Air 2024は,2024年5月に発売となった,本稿執筆時点で最新のiPad Airである。11インチモデルと13インチモデルの2種類がラインナップされているが,今回紹介するのは,11インチサイズで5G通信機能は持たない11インチモデルのWi-Fi仕様だ。
簡単におさらいしておくと,ハイエンド市場向けタブレット「iPad Pro」は,SoC(System-on-a-Chip)として最新世代の「Apple M4」を採用しており,ディスプレイパネルには有機ELパネルを採用するなど,タブレット端末としては現状最高クラスのスペックを有する製品だ。その代わり,11インチモデルの一番安価なモデルでも16万8800円と,かなり高価で人を選ぶ製品でもある。
それに比べてiPad Air 2024は,搭載SoCは2022年登場の「Apple M2」で,ディスプレイパネルも液晶パネルを採用するなど,コストを抑えた構成なのが目立つ。そのかわり,最も安価なモデルなら税込で10万円を切っているのがポイントだ。
本体の公称サイズは,縦置き時で178.5(W)×247.6(D)×6.1(H)mm。公称本体重量は約462gだ。Nintendo Switchが約420gであることを考えると,11インチ級としてはなかなか軽い。
側面や底面はフラットで,手に持ったときの質感が良いのは,さすがにApple製品といったところか。
11インチサイズのIPS液晶ディスプレイは,解像度2360×1640ドット,最大輝度500nitというスペックを有する。スペック的に特筆すべき点はないが,iPadならではの発色の良さは,ゲームだけでなく写真やビデオ,電子雑誌を楽しむのにも向いているだろう。
そもそもiPadという製品は,「リラックスしてソファに座り,コンテンツを楽しむ端末」というコンセプトの製品だった。iPad Air 2024は,このコンセプトに忠実なタブレットという印象だ。
対応ゲームはまだ多くないが(関連リンク),「原神」や「ゼンレスゾーンゼロ」,「PUBG Mobile」や「Call of Duty: Warzone Mobile」などが対応済みだ。今後も対応タイトルが増えていくことに期待したい。
メーカー | Apple |
---|---|
OS | iPadOS 18.2 |
ディスプレイパネル | 11インチIPS液晶 |
プロセッサ | Apple製「Apple M2」 ・CPUコア:8基 ・GPUコア:9基 |
メインメモリ容量 | 8GB |
ストレージ | 128GB |
アウトカメラ | 約1200万画素 |
インカメラ | 約1200万画素 |
無線LAN対応 | Wi-Fi 6E(IEEE 802.11ax) |
Bluetooth対応 | 5.3 |
バッテリー容量 | 非公開,28.93Wh |
連続駆動時間 | 最大10時間(※無線LANでビデオ再生時) |
USBポート | USB 3.2 Gen 1 Type-C (DisplayPort |
公称本体サイズ | 178.5(W) |
公称本体重量 | 約462g |
REDMAGIC Nova:小型冷却ファンで性能を引き出す
続いては,REDMAGIC Novaを見ていこう。
REDMAGIC Novaは,Qualcomm製の2024年ハイエンド市場向けSoC(System-on-a-Chip)「Snapdragon 8 Gen 3」を採用するAndroidタブレットだ。2024年時点では,最速クラスのAndroidタブレットと考えていい。
ハードウェアスペックは2種類のバリエーションがあり,本稿で扱うのはメインメモリ容量16GB,内蔵ストレージ容量512GBの上位モデルだ。税込価格は12万2800円である。メインメモリ容量12GB,内蔵ストレージ容量256GBの下位モデルの場合,税込価格は9万2800円だ。
本体の公称サイズは,横置き時で253.34(W)×164.56(D)×7.3(H)mm,公称本体重量は約530gだ。iPad Air 2024に比べると,サイズはほぼ同じだが少し重い。
ディスプレイは10.9インチサイズの液晶パネルを採用しており,解像度は2800×1800ドット,アスペクト比は16:10と,iPad Air 2024よりもわずかに横長だ。最大リフレッシュレートは144Hzと高く,60fpsを超える高リフレッシュレート表示に対応するゲームでは,より滑らかな映像を表示できるだろう。
REDMAGIC Novaにおける大きな特徴のひとつは,高スペックのSoCを安定して高速動作させるための冷却機構にある。内部には大きな銅製の放熱板やグラフェン製シートを内蔵するのに加えて,小型の冷却ファンを搭載。ファンによって内部に空気を循環させて冷やすことで,Snapdragon 8 Gen 3の性能を引き出せるという。
ファン部分にはカラーLEDイルミネーションが組み込まれていて,動作中はカラフルに光らせられるあたりは,ゲーマー向け製品らしい外連味といったところ。小型ファンとアウトカメラの部分は,背面から約1.8mmほど盛り上がっているので,テーブルに置いて使うとがたつくのは残念だ。
ファンの動作音はかなり静かなのだが,内蔵マイクに近い位置にあることを考慮してか,ボイスチャットアプリを使用中はファンを停止するといった,実用性に配慮した機能があるのは評価できる。
左右側面に計4基のスピーカーを内蔵する点は,iPad Air 2024と同じだが,REDMAGIC Novaのスピーカーは,DTSのオブジェクトベースオーディオ技術「DTS:X Ultra」に対応するというのが特徴のひとつとなっている。
ゲームのプレイテストでスピーカーからサウンドを聞いてみたが,目覚ましく音が違うというほどでもない。2基のスピーカーを使うスマートフォンやタブレット端末よりはサウンドの迫力がある,という程度に考えておけばいいだろう。
さて,ゲーマー特化型のスマートフォンやタブレット端末と言えば,周辺機器を組み合わせて使うための特殊機能やゲーム向けサポートソフトを備えていることが多い。とくに,ゲームプレイ時は動作クロックを通常よりも引き上げたり,ゲームパッドでの操作に対応しないゲームをゲームパッドで操作できるようにしたりする機能は,ゲーマー向け製品ならではで実用性も高い機能だ(関連記事)。
REDMAGIC Novaにも,「Goper」(RedMagicデバイスベース)というゲーマー向けの専用ソフトがあるのだが,残念なことに,これはREDMAGIC製周辺機器にしか対応していない。そのため,市販のゲームパッドをREDMAGIC Novaに接続した場合,ゲームパッド対応ゲームを操作することは可能だが,REDMAGIC Novaが持つ特別な機能は何も使えないのだ。
REDMAGICのWebサイトからダウンロードするのかと調べてみたが,そういうこともないようだ。
過去に4Gamerで紹介したREDMAGIC製のゲーマー向けスマートフォンでは,REDMAGIC製品でなくてもゲーマー向け機能を利用できた。iPad Air 2024ではできない,大きな利点になり得る機能だったので,REDMAGIC Novaが純正品以外に対応しないのはとても残念である。
メーカー | REDMAGIC |
---|---|
OS | Android 14 |
ディスプレイパネル | 10.9インチ液晶 |
プロセッサ | Qualcomm製「Snapdragon 8 Gen 3」 ・CPUコア:Kryo(最大3.4GHz) ・GPUコア:Adreno |
メインメモリ容量 | 16GB |
ストレージ | 512GB |
アウトカメラ | 約5000万画素 |
インカメラ | 約2000万画素 |
無線LAN対応 | Wi-Fi 7(IEEE 802.11be) |
Bluetooth対応 | 5.4 |
バッテリー容量 | 10100mAh |
連続駆動時間 | 未公開 |
USBポート | USB 3.1 Gen 2 Type-C (DisplayPort |
公称本体サイズ | 253.34(W) |
公称本体重量 | 約530g |
iPad Air 2024とREDMAGIC Novaのどちらが速いのか
さて,iPad Air 2024とREDMAGIC Novaの概要を踏まえたうえで,ではゲーマーが選ぶタブレットとしては,どちらが優れているのだろうか。簡単なベンチマークと実際のゲームプレイで確認してみたい。
ベンチマークテストでは,iPad Air 2024とREDMAGIC Novaに加えて,Snapdragon 8 Gen 3採用のスマートフォン「Galaxy S24 Ultra」の性能を計測してみた。ハイエンドスマートフォンと比べて,iPad Air 2024とREDMAGIC Novaがどの程度の性能を有するのかを確認しようというわけだ。
なお,各テストはタブレット端末を充電をしていない状態で2回行い,平均値で比較している。
まずは,素に近いCPUとGPUの性能を見るために,ベンチマークアプリ「Geekbench 6」で,CPUのベンチマークテストを実行した。結果はグラフ1である。
REDMAGIC NovaとGalaxy S24 Ultraは,約1%と僅差だった。一方のiPad Air 2024は,Single-Core性能でREDMAGIC Novaを約13%上回り,Multi-Core性能に至っては約40%も上回った。CPUコアの数自体は,Apple M2もSnapdragon 8 Gen 3も同じ8基だ。しかしApple M2のほうが,8基のCPUコアがフル稼動したときの性能が,かなり高いようだ。
続いては,3Dグラフィックスベンチマークアプリ「3DMark」で,グラフィックス性能を見てみよう。まずは,レイトレーシングを使わない現行ゲームの性能指標を目指して作られたマルチプラットフォーム対応テスト「Steel Nomad Lite」の結果を見てみよう。リッチなグラフィックスのゲームにおける性能を示す指標と考えていい(グラフ2)。
REDMAGIC NovaとGalaxy S24 Ultraのスコア差は1%に満たない程度で,ほぼ同等と見ていい。一方で,iPad Air 2024はREDMAGIC Novaを約18%も上回っており,Android最速のSnapdragon 8 Gen 3も形無しだ。
次に,3DMarkのマルチプラットフォーム対応テストでも,Steel Nomad Liteよりもやや非力なGPUでの実行を想定した「Wild Life Extreme」での結果をグラフ3にまとめた。
iPad Air 2024が最速でGalaxy S24 Ultraが最下位という結果は変わらないが,Steel Nomad Liteとはだいぶ異なり,スコア差はかなり縮まっている。REDMAGIC NovaとGalaxy S24 Ultraのスコア差は約4%で,iPad Air 2024とREDMAGIC Novaの差は約8%だ。恐らくだが,既存のスマートフォン向け3Dゲームにおけるグラフィックス性能差は,Wild Life Extremeでの差に近いのではないだろうか。
3DMarkの最後には,リアルタイムレイトレーシングも用いる高負荷の3Dグラフィックスベンチマークテスト「Solar Bay」を実行してみた。スマートフォン向けゲームで,リアルタイムレイトレーシングを用いるものはほとんどない。ただ,Snapdragon 8とApple Mシリーズは,2023年登場のものからGPUにレイトレーシングユニットを内蔵するようになったので,今後は増えてくるかもしれない。つまり,将来のスマートフォン向けゲームを想定したテストと言えようか。
結果はグラフ4のとおり。
これまでとはまったく異なり,Solar BayではiPad Air 2024が最下位に沈み,REDMAGIC Novaが最速となった。REDMAGIC NovaとiPad Air 2024のスコア差は,約20%もある。
実のところ,この結果は当然でもある。iPad Air 2024のApple M2は,リアルタイムレイトレーシング機能を備えていないのだ。それに対して,Snapdragon 8 Gen 3はリアルタイムレイトレーシングユニットを備えているので,Apple M2よりも高いスコアが出るのは当然なのである。
ちなみに,Solar BayにおけるREDMAGIC NovaとGalaxy S24 Ultraのスコア差は約5%で,Wild Life Extremeよりもやや差が付いた。冷却能力の差がREDMAGIC Novaの有利に働いたのかもしれない。
ベンチマークテスト結果から見るに,iPad Air 2024はレイトレーシング対応ゲームを除いたほとんどのゲームで,REDMAGIC Novaを上回る性能を発揮できそうだ。REDMAGIC Novaが搭載するSnapdragon 8 Gen 3は2024年登場で,iPad Air 2024のApple M2は2022年登場であることを考えると,驚くほどである。
Apple M2のiPad Air 2024でこの性能差なのだから,2024年登場のApple M4を搭載するiPad Pro 2024年モデルは,Androidタブレットの2年先を行く性能を有するのかもしれない。
PUBG Mobileとゼンレスゾーンゼロをプレイしてみる。ベンチマークほどの差は感じない
最後に,実際のゲームで性能差を体感できるのかを簡単に検証してみよう。
今回扱ったのは,バトルロイヤルシューティング「PUBG Mobile」と,アクションRPG「ゼンレスゾーンゼロ」だ。PUBG Mobileは新しいゲームではないが,グラフィックス設定を高くするとかなり描画負荷が高くなる。一方のゼンレスゾーンゼロは,2024年リリースのタイトルだけあって,グラフィックスはかなりリッチで描画負荷が高い。
まずはPUBG Mobileから。どちらのタブレット端末も,グラフィックス設定は現状最高負荷になるよう設定した。
スマートフォンの横長画面に慣れていたので,プレイを始めたときは少し戸惑ったが,最高負荷のグラフィックス設定でもヌルヌル動くのは実に快適だ。PCのようにフレームレートを常時表示しておくことができないので,数字で確認することはできなかったが,銃撃戦中やバイクで走っていても,表示が遅くなったと感じることはなかった。
続いてはゼンレスゾーンゼロをプレイしてみる。こちらもグラフィックス設定はすべて最高に設定した。iPad Air 2024は,最大フレームレートも「120」に設定したが,実際のフレームレートは数字で確認できていない。REDMAGIC Novaの液晶パネルは最大144Hz表示が可能なので,ゼンレスゾーンゼロで120を設定できないのは残念だ。今後のアップデートで設定可能になればいいのだが。
iPad Air 2024,REDMAGIC Novaのどちらでプレイしても,ゼンレスゾーンゼロは快適だ。本作はゲームパッドでプレイできるので,ゲームパッドを使えば,本当にゲーム機でプレイしている感覚と変わらない。
2タイトルを一通りプレイしてみたが,正直に言って体感レベルでは違いが分からなかった。フレームレートに差はないようで,グラフィックス描写にも違いは見受けられない。比較的グラフィックス負荷の高いPUBG Mobileとゼンレスゾーンゼロでこれだけ快適なら,どちらを選んでも,今ある,または来年登場するスマートフォン向けゲームは快適にプレイできそうだ。
将来性という点では,リアルタイムレイトレーシングに対応するREDMAGIC Novaのほうが優れているかもしれないが,GPUの実力はiPad Air 2024のほうが高いので,見劣りはしないだろう。
REDMAGIC Novaに,純正品以外でも使えるゲーム向けサポート機能があれば,現状でベストのゲーマー向けタブレットになったかもしれない。しかし,それがないとなると,iPad Air 2024に対する明確なメリットが見当たらないというのが正直なところ。REDMAGICには,ソフトウェアの改良を期待したいところだ。
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AppleのiPad Air 2024製品情報ページ
REDMAGICのREDMAGIC Nova製品情報ページ
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