連載
「投げて」飾る,クリスマスの新たな楽しみ方。「Light Up The Town」(ほぼ日 インディーPick Up!)
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例年飾り付けを担う父は足を痛め,動くことができない。おませなフェレットの少女ビーンは,曇り空の下,絡まった電飾を手に取る。
これは,ブリザードが訪れる前に,彼女が町に再び灯りをともすまでの小さな冒険の記録だ。
本日は,Meadow Studiosが手掛ける「Light Up The Town」を紹介しよう。本作はクリスマスの飾り付けを題材にしたシミュレーションゲームだ。プレイヤーはフェレットの少女ビーンとなり,活気を失った町に再び光を灯すことを目指していく 。
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このゲームの特徴は,なんといっても「投げる」ことにある。従来の配置型ゲームのように,マス目に沿って家具を置くような行儀の良さは求められない。電飾やオーナメントを掴んだら,狙いを定めて思い切り放り投げる。すると重力に従って電線がたわみ,木の枝に引っかかり,予測できない曲線が生まれるのだ。
ハサミを使えば長い電飾を好きな場所で切り離せるため,屋根から屋根へと空中に光の橋を架けることもできる 。
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町にはコインが隠されており,屋根によじ登ったり狭い隙間を抜けたりして集めることで,雪だるまや新しい色のライトを手に入れられる。失敗という概念はなく,時間に追われることもない。ただひたすらに,自分だけの感性で町を彩る喜びに浸れるだろう 。
「乱雑さ」がもたらすリアリティ
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きっちりと揃える必要はない。むしろ適当に投げた結果が,現実のイルミネーションのような自然な乱れを生み出す。電線が不格好に垂れ下がったり,木々に絡まったりする様子は,計算された配置では出せない味わいがある。完璧主義から解放され,混沌とした輝きを楽しむ体験こそが,本作の真骨頂といえる 。
語りすぎない親子の絆
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言葉少なに語られる背景も味わい深い。主人公ビーンと足の悪い父チャックのやり取りからは,互いを思いやる不器用な優しさが滲む。不在の母親については多く語られないが,町が光で満たされるにつれ,その寂しさが埋め合わされていくように感じるだろう。派手な演出に頼らず,作業を通じて変化していく景色そのものが,静かに物語を紡いでいる。
失敗のない穏やかな時間
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制限時間や落下ダメージといったストレス要因は一切ない。やり直し機能も完備されており,気に入らない配置はすぐに消せる。ローファイな音楽と雪を踏む音に包まれながら,自分のペースで作業に没頭できる。
「Light Up The Town」は,物理演算の予想できない挙動を「遊び」に変えた意欲作だ。美しい光景を作りたい人はもちろん,現実のクリスマスの準備が面倒だと感じる人にも触れてほしい。フェレットの視点で駆け回る冬の町は,きっと冷え切った心を温めてくれるはずだ。
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