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整理整頓が勝敗を分かつ,おもちゃ戦争「Toy Smash Kaboom!」(ほぼ日 インディーPick Up!)
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そこは想像力が支配する,極小の戦場。懐かしい記憶とおもちゃたちが入り乱れる,終わりなき「ごっこ遊び」の幕が開く。
本日は,Free Particleが手掛ける「Toy Smash Kaboom!」を紹介しよう。本作は机の中のおもちゃたちを指揮して戦う,インベントリ構築型のローグライトゲームだ。プレイヤーは少年フレッドのコレクションを操り,最強の「おもちゃ軍団」を編成して,卓上の戦場を勝ち抜いていく。
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本作の特徴は,戦闘の前に行われる「お片付け」のような編成フェーズにある。限られた「引き出し」のスペースに,おもちゃや武器,トラップを隙間なく詰め込むのだ。
これは単なる整理整頓ではない。アイテムを隣り合わせることで性能が変化したり,特定の並びで合体したりと,パズル的な思考が求められる。形状の異なるアイテムをどう回転させ,どの隙間にねじ込むか。その試行錯誤こそが,軍団の強さを決定づける。
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準備が整えば,物理演算が支配するオートバトルへと移行する。ここではプレイヤーの操作は不要だ。配置されたおもちゃたちが一斉に飛び出し,ぶつかり合い,弾き飛ばされる。緻密に計算した配置が機能することもあれば,予想外の爆発で戦況が一変することもあるだろう。勝利すれば新たなパーツや強化用のステッカーが手に入り,軍団はさらに強化される。
敗北すれば最初からやり直しだが,周回を重ねることで新たなアイテムやフレッドの記憶にまつわる断片が解放されていく。この「緻密な構築」と「カオスな乱戦」のループこそが,本作の核となっている。
隙間を埋める快感と苦悩
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本作の要は,限られたマス目をどう使い切るかにある。強力な武器も,形がいびつであれば場所を食い,他の支援アイテムを排除せねばならない。逆に,小さな隙間にぴったりハマる小物アイテムが,隣接効果で化けることもある。トランクに荷物を詰めるような地味な作業の中に,無限の選択肢と,ピタリとハマった時の快感が潜んでいる。このパズル要素が,単なる数値比べとは異なる面白さを生んでいる。
物理演算が招く予測不能な劇
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戦闘はオートだが,そこには「重さ」や「衝撃」が存在する。敵を場外へ突き飛ばして勝利することもあれば,味方の爆風で自軍が壊滅することもある。数値上の攻撃力だけでなく,物理的な「押し合い」が勝敗を左右するため,毎回異なるドラマが生まれる。おもちゃたちが派手に吹き飛び,連鎖爆発を起こす様は,見ているだけで笑いが込み上げてくるはずだ。計算通りにいかないもどかしさすら,本作では愛おしい。
記憶を収集する箱庭の物語
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本作に重厚なテキストによる語りはない。代わりに,手に入れたおもちゃのフレーバーテキストや,時折挟まる短い回想シーンが,少年フレッドの物語を断片的に伝える。「このおもちゃは誕生日に買ってもらった」「これは友達と交換した」といった些細な記憶が,無機質なデータに体温を与える。コレクションを埋めていく作業は,まさしく子供の頃の宝箱をひっくり返すような,純粋な収集の喜びを思い出させてくれる。
「Toy Smash Kaboom!」は,バックパック管理の緻密さと,おもちゃ遊びの無邪気なカオスが同居する作品だ。「Backpack Battles」のような構築パズルを愛する人はもちろん,子供の頃にフィギュアを戦わせて遊んだ記憶がある人にも触れてほしい。
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