稼いで鍛えて海を救うカメの物語「Shelldiver」（ほぼ日 インディーPick Up！）

　本日紹介するのはSpacewave Softwareが手掛ける「Shelldiver」だ。主役となるのは，長い時を生きてきた一匹のカメ。彼は自らの潜水艇を駆り，広大な海へと繰り出していく。


　プレイヤーはカメとなり，潜水艇の操縦しつつ，装備したバブルガンでクラゲを捕獲していく。捕まえたクラゲは，拠点となるショップで換金でき，そうして手に入れた資金を使って，潜水艇の性能やバブルガンの威力を高めていくわけだ。

　エンジンを積み替えて移動を速くしたり，一度に発射できる泡の数を増やしたりと，改造の幅は広い。さらに，枝分かれしたスキルツリーから好みの能力を選び取ることで，捕獲の効率は劇的に跳ね上がる。


　装備が整えば，火山の熱気が渦巻く海域や，水晶が輝く洞窟といった危険な場所へも足を踏み入れられるようになる。そこには，より高値で取引される珍しいクラゲたちが待っている。稼ぎ，鍛え，より深くへ潜る。この単純明快なサイクルの繰り返しが，プレイヤーを海の世界へと深く引き込んでいくのだ。




　本作はジャンルとしてインクリメントゲームに属しているが，画面を眺めているだけで勝手に数字が増えるような，いわゆる放置ゲームではない。潜水艇を操り，逃げ回るクラゲを追いかけ，狙いすましてバブルガンを撃つ。この一連の動作をプレイヤー自身の手で行うことに大きな意味がある。

　自分の操作で大量の獲物を一網打尽にしたときの手応えは，自動化されたシステムでは決して味わえない喜びだ。アクションゲームとしての面白さが，土台としてしっかり根付いている。



　最初は一匹ずつ捕まえるのがやっとの頼りない装備も，資金を投じて改造を施すことで，その姿を劇的に変える。画面を埋め尽くすほどの泡を乱射し，群がるクラゲを一瞬で吸い込むさまは圧巻だ。

　地道だった作業が，ある瞬間を境に爆発的な効率へと変わる。数字が桁違いに膨れ上がっていく様子は，脳の芯を痺れさせるような強烈な快感を与えてくれる。この成長の波に乗る感覚こそ，本作の醍醐味といえるだろう。



　終わりのない周回を強いるインクリメントゲームが多い中で，本作は明確なエンディングを用意している。だらだらと続けるのではなく，三時間から六時間ほどで物語はひとつの結末を迎える。

　村が豊かになり，自分の役目を終える瞬間には，心地よい達成感と寂しさが胸に残るだろう。忙しい日々の合間に，しっかりと完結する物語体験を求めている人にとって，この潔い設計は非常にありがたいものだ。

---

　「Shelldiver」は，自らの手で稼ぐ面白さと，加速度的に強くなるインフレの快感が同居する良作だ。ドット絵の温かみある世界で，短い時間で濃厚な達成感を味わいたい人には，間違いなく刺さる一本となるだろう。