インタビュー
[インタビュー]「ユミアのアトリエ 〜追憶の錬金術士と幻創の地〜」は,「次世代のアトリエ」を目指しRPGとして大きく進化
「ライザのアトリエ 〜常闇の女王と秘密の隠れ家〜」(PC / PS4 / Switch)から始まった「秘密」シリーズは,世界累計出荷本数が200万本を超え,シリーズで一番のヒットとなったが,これに続くコンシューマ新作はどういったものになるのか。プロデューサーの細井順三氏に話を聞いた。
4Gamer:
「アトリエ」シリーズの現状として,「秘密」シリーズのヒットと「レスレリアーナのアトリエ 〜忘れられた錬金術と極夜の解放者〜」のスマホとPC展開により,これまでで最もファンが多い状況にあるかと思います。その状況でコンシューマ新作が出てくるわけですが,どういうものにしようという話で企画が立ち上がったのでしょうか。
細井順三氏(以下,細井氏):
念頭にあったのは,「ライザのアトリエ3 〜終わりの錬金術士と秘密の鍵〜」を越えるクオリティの新作,「次世代のアトリエ」です。
おっしゃるとおり,「秘密」シリーズで多くのユーザーさんに「アトリエ」シリーズを知っていただけたことは,我々も実感していました。その中で,スマートフォンを介することでユーザーさんとコミュニティを作っていきたいと考えたのが「レスレリアーナのアトリエ」,そしてさらに進化したコンシューマでの新作を用意しようと考えたのが「ユミアのアトリエ」です。なので,この2作はほぼ同時に立ち上がっています。
細井氏:
「ユミアのアトリエ」をどういうゲームにするかというと,「『アトリエ』を作る」ではなく,「RPGを作る」ことから始めています。私が言ってよいものか迷いますが,正直なところこれまでは,ほかのRPGと比べて不足している部分があっても「『アトリエ』シリーズだから許されていた」部分があったと思います。
4Gamer:
物足りなさを感じても「こういうものだし」で納得できてしまう的な。
細井氏:
今回はそうではなく,きちんと「RPGとして」クオリティの高いものを作って,「アトリエ」を知らないユーザーさんからもより多く「いいね!」と思われるようなタイトルにしたかったので,RPGとしてきちんとすべてを見直して,進化したものをお届けしたいと考えました。
もちろん,これまでもつねにより良いものを目指して開発してきていますが,「秘密」シリーズが始まったころは,どうしても実現しきれなかった部分がありました。
ですが今回は,おかげさまで「秘密」シリーズで多くの方に評価をいただけたことで,開発の規模も大きくなりました。今後も「アトリエ」シリーズを続けていくためにも,今ここで技術的なものも含めてチャレンジしておかなければいけないなと。
4Gamer:
その点,今回はティザーPVの時点で,「秘密」シリーズからガラっと雰囲気が変わったように思います。普通にファンタジーRPGっぽいと言いますか。どういう世界観なんです?
細井氏:
本作は,錬金術が禁忌となった世界が舞台になっています。ユミア達は,文明が滅んだ大陸を調査するために赴いた調査団です。調査が難航しているため,禁忌とされる錬金術を使って大陸を探っていく,といった始まりで,ほんわかしたミニマムなストーリーではなく,シリアスなRPGとして描きます。
4Gamer:
「世界を救うのはもうやめた」ではないわけですね(笑)。
細井氏:
シリアスといっても暗くて重たいお話が展開していくわけではなく,「アトリエ」シリーズとしてのストーリー性や雰囲気はきちんと感じていただけるものになっていると思います。ユミア達は前向きに調査を進めていたところ,いろいろな出来事に巻き込まれていく形です。
それと,今回は明確にヴィランが存在するのも特徴です。
4Gamer:
そういえば,トレイラーにいかにもヴィランっぽいキャラクターが出ていましたね。
細井氏:
「アトリエ」でヴィランを登場させたのは「レスレリアーナのアトリエ」からですが,コンシューマの「アトリエ」としては初で,彼らのバックボーンもしっかりと設定されています。
探索はより広いマップに進化
戦闘はアクションっぽさを加えた形に
4Gamer:
「ライザのアトリエ3」で入った要素としてはオープンフィールドが大きかったと思いますが,本作での探索はどうなるんですか?
細井氏:
本作はより進化したオープンフィールドになっています。「ライザのアトリエ3」では,それほど大きくはないマップを数珠つなぎにすることで,シームレス感を大事にしていました。もちろん,それまでより広いマップではありましたが,我々が重視していたのはシームレスな移動や戦闘になります。
今回は,そうした数珠つなぎではなく,360度好きな方向に行けるサイズのマップになり,自由に探索できます。ランドマーク的なものを解禁してどこかに行くという体験は同じですが,それがより冒険感のある,オープンフィールドに即した遊びになっているとお考えください。
4Gamer:
戦闘などのシームレス感はそのままですか?
細井氏:
もちろんです。
また,今回は高低差のある場所の探索もしやすくなっています。壁ジャンプを使って,横だけでなく縦にも広がりのある探索ができるようになっていますので,ここも大きな変化に感じていただけるのではないでしょうか。
4Gamer:
それはかなり便利ですね。
次はバトルについてもお願いします。どういう仕組みになるのでしょう?
細井氏:
今回はバトル中に移動ができます。360度どこでも,というわけではありませんが,敵の範囲攻撃外に移動して避けることもできますし,敵との距離でアウトレンジ(遠距離)とインレンジ(近距離)が決まり,レンジごとに戦い方が切り替わるなど,新しい要素を盛り込みました。ジャスト回避もあったり,アイテムをスキルと同じようにスロットに装備して使い分けられたりと,よりアクションに近い体験の戦闘になっています。
4Gamer:
「近い」ということは,アクションゲームにしたいわけではないんですよね?
細井氏:
はい。敵の攻撃は避けたほうが有利にはなるものの,ある程度避けずに攻撃してもクリアできるようなバランスを想定しています。アクションが好きな人にはいろいろなシステムを組み合わせて使ってもらえたらいいな,アクションが得意でなくても直感的に楽しく遊べるような戦闘にしたいな,という考えのもとで設計しています。
RPGの戦闘において,思考以外のプレイヤースキルにどれだけ依存するかのバランスは難しいところではありますが,今回は,基本的には思考をめぐらせて戦っていただき,そのうえで,アクションっぽい気持ちのいい体験もできるような形にしています。
4Gamer:
アクションゲームというよりは,戦闘中にインタラクションがある,プレイヤーの操作に応えてくれるみたいな?
細井氏:
そのようなイメージです。「秘密」シリーズでも意識はしていたのですが,今回はもう少し色濃くなっていると思います。
4Gamer:
調合はいかがでしょうか。
細井氏:
我々としては,「秘密」シリーズの「リンケージ調合」は,分かりやすさと面白さのバランスの面で,一定の評価をいただけたと感じています。グラフィカルで,材料を入れるだけである程度のアイテムが完成する。見た目的にも,構造的にも分かりやすいものにはできたのではないかなと。ただ,アイテムの効果や特性については,もっと分かりやすくできるのではないかと考えたのが,今回の調合になっています。
細井氏:
輪っか上(上の写真の紫色の枠)にある丸い物体などに材料を入れていくのですが,基本的には材料が持つ円(青い範囲)がより広くなる材料を選べば,良いものを調合することができます。輪っかの1フェイズ目をすべて材料で埋めると,2フェイズ目(外側の枠)が出てきて,より深い調合が可能に……といった仕組みです。
4Gamer:
つまり,外側の枠はやりたい人だけやればいい?
細井氏:
極論するとそうですね。調合をどれだけ深くやりたいかは,人によって変わってきますから,深くやり込める一方で,手軽な調合もできるように,おまかせで材料を投入する機能も用意しています。
4Gamer:
本作の大きな新要素になりそうなのがハウジングですが,こちらはどのぐらいの自由度で拠点を作れるのでしょうか。
細井氏:
我々としては「けっこうできる」と思っています。建築できる場所は決まっていますので,地形をいじって好きなところで作るとまではいきませんが,それ以外は,ハウジングとして考えたときに「やりたい」と感じるようなところは一通り入っているかなと。
4Gamer:
床を置いて,壁を置いて,屋根を置いて,装飾を置いて……的な?
細井氏:
はい,できます。空中にベッドを設置したりもできます。ユーザーさんが楽しく個性的に遊べるようなものを用意したつもりです。
4Gamer:
今のご時世,広いフィールドをまわって材料を集めてアイテムを作って……というゲームとなれば,ハウジングをしたくなるプレイヤーは多い気がします。
細井氏:
なりますよね。
とはいえ,本作のメインはあくまでもRPG体験であって,ハウジングやクラフトではありません。ですから,自分で床や壁を作らなくても,プリセットから選んで建てるといった手軽な建築もできます。アイテムを作る喜びに,プラスアルファする要素として楽しんでいただけると嬉しいです。
4Gamer:
ハウジング用の材料って何を使うのでしょう? 家を作ったら調合用の材料がなくなった,みたいなことに?
細井氏:
それぞれの材料は干渉しない形になっています。探索で調合用の材料を入手するときに,それとは別にハウジング用の材料も手に入ります。
最初は同じ材料のほうが分かりやすいかと思ったのですが,「アトリエ」の基本サイクルである戦闘,探索,調合に別の要素が入ってくるのも違うのかなと思って,分けました。
ハウジング自体は,街づくりの「ネルケと伝説の錬金術士たち」や「秘密」シリーズで隠れ家を作ったときからチャレンジしてみたかったので,ようやく実現できました。JRPGのアニメ感があるファンタジーの世界を歩き回って,ハウジングができるというタイトルはあまり多くないと思いますので,ありそうでなかった体験を提供できると思います。
現代的なテイストを取り入れたキャラクターデザイン
今回の主人公であるユミアを含めた全体的なキャラクターデザインについてですが,「秘密」シリーズとはまた違った雰囲気ですね。等身が上がった感じというか。
細井氏:
はい。今回はかっこいい雰囲気にしています。
4Gamer:
「秘密」シリーズでライザが大きな話題になりましたから,コンシューマ向け新作の主人公で“次”を考えるのは大変だったのでは?
細井氏:
今回はやりたい方向性が最初から決まっていましたし,現代的なテイストも取り入れたいと思っていました。私としては,最先端のトレンドは,2,3年経つと定着したものとして見るようになる,という印象がありまして……。
4Gamer:
慣れるまで時間差がある?
細井氏:
はい,そう感じています。そうした印象から,今回現代的なデザインにするにあたって,「今,最先端を意識してデザインすれば,公開できるころには現代的ファンタジーのファッションデザインとして成立するのでは?」と思って,当時はいろいろなトレンドを参考にしました。
4Gamer:
となると,今回のキャラクターデザインはスムーズに?
細井氏:
それでも1年半かかりました……。当時の現実のファッションをそのまま取り入れて,ゲームにするとどうしても地味になってしまいますので……。衣装として現実でも着ようと思えば着られる,それでいてファンタジックなデザインを探るのに,何度も微調整を繰り返す必要がありました。最終的に,今回のキャラクターデザインをお願いした,イラストレーターのべにたまさんに,かっこいいユミアに仕上げていただけました。
4Gamer:
べにたまさんにもキャラクターデザインのお話はうかがってみたいので,1年半の苦労を語っていただけそうなら,ぜひお願いします(笑)。
それにしても,今回は「次世代のアトリエ」というだけあって,全体的に進化していそうで楽しみです。
細井氏:
はい,細かいところまで進化を感じていただけると思っています。例えば,ストーリー中に表示されるイベントスチルも,1枚の絵をただ画面いっぱいに表示するのではなく,エフェクトや動きのあるリッチなものにしています。リアルタイムムービーも,「アトリエ」シリーズでこんなに作ったのは初めてです。シリーズを知っている方ほど驚かれるかもしれません。
これまでずっと皆さんに応援していただけたおかげで,「アトリエ」シリーズは続けてこられていますし,このたび「ユミアのアトリエ」も発表することができました。ありがとうございます。そのご恩にお応えすべく,RPGとしてたくさんの方に楽しんでいただけるタイトルになるよう鋭意開発しておりますので,ぜひご期待ください。
「ユミアのアトリエ 〜追憶の錬金術士と幻創の地〜」公式サイト
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