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印刷2024/08/25 13:10

プレイレポート

スラヴ民話が織りなす美しき2Dアクション「Marko: Beyond Brave」――開発者が語るその魅力[gamescom]

 Studio Mechkaが手がける「Marko: Beyond Brave」は,スラヴ民話を題材にした2Dアクションゲームだ。美しい手描きアニメーションと独自の戦闘システムを特徴とし,2024年9月17日にPC版の発売が予定されている。

 そんな本作は,ドイツ・ケルンにて2024年8月21日から25日まで開催されているgamescom 2024に出展されている。Studio Mechka代表のBoyan Vasilev氏に解説してもらったので,本稿で紹介しよう。

Boyan Vasilev
画像集 No.001のサムネイル画像 / スラヴ民話が織りなす美しき2Dアクション「Marko: Beyond Brave」――開発者が語るその魅力[gamescom]

 「Marko: Beyond Brave」は,1980〜90年代生まれの開発メンバーによって生み出された作品だ。彼らはSaturday-morning cartoonやディズニー映画,そしてスタジオジブリ作品からインスピレーションを受けたそうで,その影響は本作で採用されたアニメーションに如実に表れている。

 ゲーム全体で約3万5000フレームものアニメーションが使用されており,これらはすべて1人のアーティストによって描かれたという。Vasilev氏は「描いたアーティストの手首が痛まないか心配でした」と冗談めかして語っていたが,この膨大な手描きアニメーションこそが「Marko: Beyond Brave」の大きな特徴だ。

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 本作のストーリーと世界設定はスラヴ民話に基づいており,Vasilev氏は「スラヴ民話に詳しくない人でも十分に楽しめる」と強調。スラヴ文化に馴染みのない人にとっては,むしろ新鮮に感じられるだろうと話していた。

 ちなみに,スラヴ民話に登場する生き物は,実はあまり記録されていないのだという。例えばスラヴ民話にも龍は出てくるが,絵はほとんど存在しない。そんな事情もあり,開発チームは自由な発想でキャラクターをデザインしたそうだ。

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 「Marko: Beyond Brave」のゲームプレイは,探索要素を重視している。多くのゲームでは右に進むのが基本だが,本作ではそうとは限らない。Vasilev氏は「探索を自然な形で,できるだけ簡単にできるようにしたい」と語った。そのため,「ここに行け」といった明示的な誘導はほとんど存在せず,プレイヤー自身の好奇心に基づいた探索が重要となる。

 戦闘には,コンボシステムが採用されている。戦闘時間が長くなるほど攻撃が強くなり,「勇気」というゲージが満タンになると,主人公のマルコの攻撃がさらに強力になる。
 また,本作では多くのアクションゲームで採用されているパリィ(敵の攻撃をはじくこと)の代わりに,ドッジ(回避)のメカニクスに重点を置いている。適切なタイミングで回避を行い,同時に攻撃ボタンを押すことで,敵の方向に向き直ることなく素早く反撃可能だ。これによって,よりダイナミックで自然な戦闘が表現されている。

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 本作では,ゲームを進めるにつれてマルコ自身が強くなるわけではない。その代わり,プレイヤー自身がゲームに慣れ,上達していくことが重視されている。ゲーム開始時のマルコは動きがぎこちなく,機動力に乏しい。しかし,プレイを重ねるにつれて,プレイヤーはマルコを自在に操れるようになる。プレイヤーは自身の成長を実感しながらゲームを楽しんでほしいと,Vasilev氏は語っていた。

 本作には,一見しただけでは気づかないような細部へのこだわりが随所に見られる。たとえば,ゲーム内の柱には実際の古代スラヴ文字が刻まれており,ネットで調べればその意味を知ることができる。また,「信頼できない語り手」(Unreliable narrator)という概念が取り入れられており,ゲーム内で見える文字の意味をそのまま受け取ってはいけないらしい。

 キャラクターデザインにも特徴がある。マルコは,マリオ以外ではあまり見られない口ひげを生やしている。また,マルコを含めゲーム内の人型キャラクターには首がない。これは「レイマン」シリーズへのオマージュとなっている。

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 音声面でも興味深い取り組みがなされている。キャラクターたちは意味のない言葉,いわゆる「ジブリッシュ」で会話する。これはブルガリアのテレビ番組「The Triples」からインスピレーションを得たものだ。
 どのキャラクターも何を言っているのか分からないが,意図は伝わるという。これにより,声優を使わずともキャラクターの個性を表現でき,また,ローカライズも容易になるという利点がある。ちなみにVasilev氏は,「お金があったら声優を雇ってちゃんとしゃべらせたかった」とも話していた。


情熱が生んだ独立開発の軌跡


 Studio Mechkaは,2016年に外注開発を行う会社としてスタートした。2020年になって自社IPを開発するだけの経験が積めたと判断し,「Marko: Beyond Brave」の開発を決意。2021年にKickstarterでクラウドファンディングを行い,700人のバッカーから支援を得て開発資金を調達した。

 フルタイムでの開発期間は2年半に及ぶ。Vasilev氏は「もし再び同じことをするなら,もっと早く完成させられると思います」と語る。今回は多くのことを自分たちで解決しなければならなかったために,時間がかかったという。

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 とくに難しかったのがマーケティングだ。ゲーム開発の経験はあったものの,マーケティングについては素人だった。自己パブリッシングを選択したため,マーケティングのノウハウを一から学ぶ必要があったという。Vasilev氏は「小さなチームだからこそ,すべてを適切に行う方法を学びたかった」と振り返る。

 この挑戦的な開発プロセスを経て,「Marko: Beyond Brave」のPC版は2024年9月17日にリリースされる。コンシューマ版については2025年の年明け,1月か2月ごろのリリースが予定されているが,具体的な日付は未定だ。

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 Vasilev氏は日本のプレイヤーに向けて「『Marko: Beyond Brave』は,レトロなゲームの魅力と現代的なゲームデザインを融合させた作品です。スラヴ民話の世界を探索し,手描きアニメーションの美しさを堪能しながら,チャレンジングな冒険を楽しんでいただければと思います」とメッセージをくれた。レトロゲームの魅力と現代的なゲームデザインの融合を目指す本作に,今から期待が高まる。

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