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空気感の妙味が刺さる人に刺さりかねない。一人称視点ADV&クォータービューの2DアクションRPG「黑色信标」[CJ2024]
現在のステータスは中国で事前登録中で,リリース日は未定だ。
また注釈しておくと,同社は韓国ネクソンの中国向け子会社であり,英名をTiancityとしている。
本作のパッと身の雰囲気は,昨今はありふれたアニメ調な美少女キャラクターがたくさん出るゲーム,に見えなくもないのだが。
世界観を練りに練ってきたのか,遊びはじめるとすぐに分かる妖艶でエキゾチックな,なんとも言えない空気感に襲われる。
実際の方向性はかなり異なるかもしれないが,個人的な所感としてはスクウェア・エニックスの「NieR Re[in]carnation」的な,どこか世界観を既存の売れ線とはズラしてきたような匂いを感じ取れた。
ゲーム構造としては,スマホゲームらしくホーム画面があり,キャラクター編成やガチャをいじり倒せて,選択式のストーリーやサブコンテンツにアクセスするような導線もあってと,そこに違和感はない。むしろ普通すぎてとっかかりもない,とまで言っていいかもしれない。
これは辛辣に評価したいわけではない。もはや群雄割拠もそれとなく終わり,数少ない定番枠を高品質な大名家が牛耳っているスマホゲーム界において,一目でパンチラインを効かせないタイトルは「ま〜た“こういうのか”」と判断されかねないからだ。広告業界も似たものか。
その点,出足はこんな評価を下すくらい普通に見えたのだが,実際にストーリーのプロローグをはじめてみると,体験は一変した。
本作は,主人公(プレイヤー)が一人称視点でアドベンチャーパートを展開していく。身体表現はときおり画面に現れる手足くらいのものだが,アート面のほの暗さがなんとも言えない味を出している。
そこのズレは,申し訳ないが文字で表現できそうにない。
一応,通訳を介しつつブース担当者に聞いた専門用語だらけの世界観について,当たり障りのない範囲で説明しておく。
この世界には「バベルの塔」と呼ばれる,古き時代から文明の発展とともに増築され続けて天を貫いてしまった構造物がある。普通の人には見えないそれが,あなたの目には映ってしまった。
塔の内部にはさまざまな秘密組織が潜んでおり,あなたはこの世の英知をすべて収めた図書館の女の子「零」に見つけられ,新たな館主になる,あるいはならされる物語をはじめていく。
零の見た目は,冒頭の「この子を覚えておこう」の子である。
冒険する先は,一度戻ればそこでの記憶を失ってしまうという別次元の世界。そこではさまざまな神話や伝説や美女と出会うようだが,敵対するは楔文派と呼ばれる組織。さらに危ないブラックビーコンなるものや,古代エジプトの文字(ヒエログリフ?)が関係しているやら,記録と時間の逆行などを表現しているのであろう演出やらと。
担当者の中国語による怒涛の早口を前に屈したため説明は諦めるが,なにか普通とは違うものを目指しているのはよく分かった。
とはいえ,一人称視点RPGのようなアドベンチャーパートを終えると,バトルパートではクォータービューの2Dアクションに移行する。
操作に関しては移動と攻撃と回避,クールタイム制の派手なスキル,仲間キャラクターとスイッチして操作キャラを切り替えたり,敵味方に属性相性があったりと,スマホゲームリテラシーの高い人であれば感覚で理解できそうなゲームシステムとなっていた。
動作も軽快で,カットイン付きの必殺技もある。超巨大なボスキャラクターもインパクトがあり,赤い範囲の予兆攻撃を走って避ける,なんてこともさせられる。このころにはもう,不思議な空気感と普遍的な楽しさがすり合って,気持ちのよいゲーム体験になっていた。
世界観の雰囲気はすごく変わっているように見えて,嫌な奇抜さはなく,この作品ならではの独特さを感じさせてくれる。
一方で,ゲームシステムとしては万人に受け入れられそうな形で,売れるゲームの定番の作り方を練ってきたのもよく分かる。
個人的には,現代のゲーム市場では文脈的にかなり薄まってしまった純ビジュアルノベルな作りで,この感じのストーリーだけに焦点を当てられていても食指が伸びていた……は言いすぎだが。
そうした感想を言いたいくらいには,やっぱり変わっていた。そう思えなかった人はいろいろ言ってくれても構わない。
この話はとどのつまり,私に鋭く刺さった,というだけなのだ。
ブース担当者は恐ろしい回転率の口で,チュートリアルストーリーの0から100まで教えてくれそうな勢いだったが,「あっ,そろそろ次の予定なので!」と勢いよく去っていった。おかげで海外定番の「日本でも配信されますか?」は聞けなかったが,まあいい。
「日の輝きを浴びて生きてきたのに,洞窟に来ることを選んだ者たちよ。あなたは長い時間をかけて,ここにたどり着いた」
――TapTap説明文の最後尾の意訳
私とこのゲームもまた,そんな感じになりそうである。
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