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IntelのデスクトップPC向け新世代CPU「Core Ultra 9 285K」は,ゲーマーが選ぶ価値のあるCPUなのか?
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印刷2024/10/25 00:00

レビュー

デスクトップPC向け新世代CPUは,ゲーマーが選ぶ価値のあるCPUなのか?

Intel Core Ultra 9 285K

Text by 米田 聡


 Intelから,新世代のデスクトップPC向けCPUである「Core Ultra 200S」(開発コードネーム Arrow Lake-S)シリーズが発売となった(関連記事)。

Core Ultra 9 285K
画像集 No.002のサムネイル画像 / IntelのデスクトップPC向け新世代CPU「Core Ultra 9 285K」は,ゲーマーが選ぶ価値のあるCPUなのか?

 高性能コアP-coreに「Lion Cove」を,省電力コアE-coreに「Skymont」を採用し,Intel製のデスクトップPC向けCPUとしては初めて,3Dパッケージング技術「Foveros」を使用して複数のシリコンダイで構成されたプロセッサである。従来のCoreプロセッサからは一線を画すもので,Intel製CPUの新時代の幕開けとなるものだ。

 本稿では,Core Ultra 200Sシリーズの最上位モデル「Core Ultra 9 285K」のゲーム性能を速報的にまとめていきたい。Intelは,Core Ultra 200Sシリーズでゲーム性能が大きく伸びているとはアピールしていないのだが,最上位モデルとして,競合製品や従来製品と戦える性能を持っているのかは気になるところだろう。そのあたりを重点的にチェックしてみたい。


ゲーマーとして押さえておきたいCore Ultra 200Sのポイントは?


 Core Ultra 200Sシリーズの特徴は,すでに4Gamerでも紹介済みだが,ゲーマーとして押さえておきたいポイントだけをざっくりとまとめていく。
 まず第1に,Core Ultra 200Sシリーズは,CPUソケットに新開発の「LGA 1851」を採用しているため,既存の「LGA 1700」とは互換性がない。

Core Ultra 9 285Kのパッケージ表側(左)と裏側(右)。第14世代Coreプロセッサよりも縦長になった
画像集 No.003のサムネイル画像 / IntelのデスクトップPC向け新世代CPU「Core Ultra 9 285K」は,ゲーマーが選ぶ価値のあるCPUなのか? 画像集 No.004のサムネイル画像 / IntelのデスクトップPC向け新世代CPU「Core Ultra 9 285K」は,ゲーマーが選ぶ価値のあるCPUなのか?

 写真のとおり,従来の第14世代Coreプロセッサまでと同じ長方形であるが,一回り縦長になった。そのほかにも,CPU基板の切り欠きが減っているなど微妙な違いはあるが,ソケットへの取り付け方はLGA 1700と変わらない。

 CPUクーラーは,クーラーのメーカーが対応を謳っていれば,LGA 1700対応CPUクーラーを流用できるはずだ。LGA 1700との大きな違いは,クーラーの取付圧力で,「従来よりはかなり大きくなっている」とIntelは説明している。つまり,LGA 1851に要求される取付圧力を満たしているかどうかが,クーラーの流用可否を決めるポイントになるようだ。
 ちなみに,4Gamerでリファレンスとして使用してきたASUSTeK Computer製の大型液冷CPUクーラー「ROG RYUJIN II 360」は,LGA1851に対応可能というお墨付きをメーカーから得ている。そのため,今回のテストでもROG RYUJIN II 360を利用した。

 2つめのポイントは,対応するメインメモリだ。
 Core Ultra 200Sシリーズでは,DDR5-6400メモリを正式にサポートしたが,この設定で利用できるメモリモジュールは,モジュール基板上にクロックドライバICを搭載する「Clocked Unbuffered DIMM」(CUDIMM)規格に準拠したモジュールに限定されている。従来型の,いわゆる「Unbuffered DIMM」(UDIMM)は,DDR5-5600が上限だ。
 ちなみに,メモリコントローラとメモリクロックのクロック比として,Core Ultra 200Sでは「1:2」(Gear 2)か「1:4」(Gear 4)の設定が可能で,もちろんクロック比が小さいGear 2のほうが,性能面では有利だ。

試用したMSI製マザーボード「MAG Z890 TOMAHAWK WIFI」におけるメモリクロック設定例。同一メモリクロックでGear 2とGear 4の設定が用意されていた
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 Intelによると,Gear 2の設定で安定動作が望めるのは,せいぜいDDR5-8200〜8400あたりまでだそうで,それを超えるとGear 4に切り替える必要があるとのこと。したがって,メインメモリをオーバークロックするのなら,DDR5-8000設定が「スイートスポット」であるそうだ。メインメモリのオーバークロックは,とくにゲームでは有用なことが多いので,参考になるかもしれない。

 3つめのポイントは,Core Ultra 200SシリーズはHyper-Threadingに対応しておらず,コア数=実行可能スレッド数になったという点だ。上位モデルでHyper-Threading非対応のCPUと言えば,2006年に登場した「Core 2プロセッサ」以来ではなかろうか。若いPCゲーマーなら記憶にないレベルなので,なかなかのインパクトではなかろうか。
 Hyper-Threadingを廃止することのメリットは,CPUコアの回路規模を抑えられるので,従来よりも高いシングルスレッド性能が得られることにある。一方でマルチスレッド性能は,若干だが低下する可能性があるだろう。それがゲームにとってどのような影響を与えるのかが,ひとつのポイントになりそうだ。

 そのほかにも,AIアクセラレータ「NPU」を搭載したとか,いろいろな特徴はあるのだが,当面これらがゲーマーに変化をもたらすことはなさそうだ。


パワープロファイルはIntel推奨設定を採用


「CPU-Z」でCore Ultra 9 285Kの仕様を確認したところ
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 というわけで,テストの設定に移ろう。今回は冒頭で述べたとおり,最上位モデルのCore Ultra 9 285Kのゲーム性能を,競合および従来製品と比べていく。

 比較対象として,第14世代Coreプロセッサの最上位モデルである「Core i9-14900K」と,Ryzen 9シリーズの最上位モデル「Ryzen 9 9950X」を用意した(表1)。

※1 P-coreの動作クロックを示す
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 テスト用のマザーボードは,Core Ultra 9 285K用としてMSI製マザーボード「MAG Z890 TOMAHAWK WIFI」(製品情報ページ)を,Ryzen 9 9950X用としては,最新チップセットである「AMD X870」を搭載するMSI製マザーボード「MAG X870 TOMAHAWK WIFI」(製品情報ページ)を借用した。

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MAG Z890 TOMAHAWK WIFI
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MAG X870 TOMAHAWK WIFI

 MSIの「TOMAHAWK」シリーズは,上位モデルと肩を並べる装備を採用しつつ,コストを押さえたミドルクラス市場向けマザーボードだ。今回の両製品は,ブラックの色調に統一されたマザーボードで,装飾的イルミネーションは省略したシンプルな製品である。一方で,16フェーズの強力な電源回路に大型のヒートシンクを組み合わせているのがポイントだ。
 ネットワーク機能としては,有線LANに5GBASE-T対応の「Intel Killer E5000」を,無線LANにはWi-Fi 7対応の「Intel Killer BE1750x」を採用するなど,上位モデルと同等の装備を備えている。

 また,ドライバーを使うことなく着脱が可能なヒートシンク付きのSSDスロットや,ボタンでロックを解除して簡単にグラフィックスカードを取り外せる「EZ PCIe Clip II」を備えるなど,利便性の高さも特筆できる点だ。ミドルクラス市場向け以下の製品では省略されがちなPOSTコード表示用の2桁7セグメントLEDも搭載するので,安心して利用できるマザーボードと言える。
 今回のテストでも,両製品ともノートラブルで利用できているので,Core Ultra 200SやRyzen 9000シリーズの導入を検討しているゲーマーにはおすすめできる製品だ。

 Intel製CPUで悩ましいのが,UEFIで選ぶ「パワープロファイル」の選択だ。第14世代Coreプロセッサまでは,限界に近いパワープロファイルがレビュー機材に設定されていることが常態化していた。しかし,例の故障問題が影響したか,Core Ultra 200S対応マザーボードは,わりとおとなしめの設定がデフォルトになっている。

 今回,Core Ultra 9 285Kのテストで使用したMAG Z890 TOMAHAWK WIFIでは,4種類のプリセットが用意されている。デフォルトは「Intel Default Setting」だった。「PL1」(Power Limit 1)と「PL2」(Power Limit 2)は最大250Wで,電流の最大値である「Current Limit」(CL)は347Aという,CPUのカタログスペックどおりの設定である。

MAG Z890 TOMAHAWK WIFIのパワープロファイルプリセット
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 上の画像を見ると分かるが,MSIは独自設定として,Power LimitやCurrent Limitを引き上げる3つのプリセットを用意している。ただ,これらを選ぼうとすると,画面の中央に「システムが不安定になる可能性がある」といった表示が出る仕組みになっていた。故障問題の影響で,マザーボードメーカーもかなり慎重になっているようだ。

 というわけで,今回のテストではパワープロファイルとしてIntel Default Settingを採用。同じように比較対象のCore i9-14900KとRyzen 9 9950Xでもデフォルトの設定を採用することにした。
 テストに使用した機材は表2のとおりである。

クリックすると詳細版を表示します
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 今回のテストでは,メモリモジュールとしてDDR5-8000設定に対応するG.Skill International製の「Trident Z5 Neo RGB」という,AMD EXPOおよびIntel XMP対応メモリモジュールキットを用意した。マザーボードのMAG Z890 TOMAHAWK WIFIでも,AMD EXPOメモリプロファイルが利用できたので,Core Ultra 9 285Kでは公式上限のDDR5-6400設定と,DDR5-8000設定(Gear 2)の設定でテストを実行して,メモリクロック設定の違いによるゲーム性能の差を調べることにした。

 またRyzen 9 9950Xでも,AMD推奨のDDR5-8000設定でテストを実行した。
 問題だったのはCore i9-14900Kで,筆者の手元にある個体では,DDR5-6000を超える設定だとストレージを見失うなど,安定性に問題が出てしまった。なのでCore i9-14900Kだけは,DDR5-6000設定に抑えているので,ほかのプラットフォームとは,ややメモリクロックが低いことをお断りしておく。
 そのほかに,機材の面で特記すべき点はない。使用したクーラーは,先述のとおり360mmサイズの大型ラジエータを搭載する液冷クーラーROG RYUJIN II 360で,すべてのプラットフォームで積極的に冷却を行う「Turbo」プリセットを使用した。

 実行するベンチマークテストは,4Gamerベンチマークレギュレーション30に準拠するが,「Fortnite」だけは,Core Ultra 9 285K環境で起動時にブルースクリーンが生じてPCが落ちてしまう現象が発生した。Fortnite以外ではトラブルが起きていないことから,ゲーム側に原因があると見て間違いない。テスト時点では未発売のCPUなので,CPU判定の部分で落ちてしまうのではないかと推測している。
 Core Ultra 9 285Kの発売後には,Fortnite側がアップデートされて問題がなくなっている可能性はあるが,今回はやむをえず省略した。

 また3DMarkは,CPU性能評価向けに実行するテストを変更している。UL BenchmarksがCPU評価向けに推奨する「CPU Profile」テストを採用する一方で,「Fire Strike」に関しては,Fire Strike“無印”のみとした。また,DirectX 12ベンチマークとして「Steel Nomad」「Steel Nomad Lite」「Speed Way」を実行している。

 ゲームテストの解像度は,3840×2160ドット,2560×1440ドット,1920×1080ドットの3種類。画質は高負荷よりの設定を採用するが,すべてのタイトルで超解像技術を用いて,レンダリング負荷を低減させたうえで,CPU性能の違いを引き出す設定とした。具体的な設定は各タイトルで触れていくことにしたい。


CPU性能はかなり高そうだがゲーム性能はそこそこか


 本稿で掲載するグラフでは,Intel製CPUから「Core」を省略して表記しており,Ryzen 9 9950Xは「R9 9950X」と表記していることを断ったうえで,まずは「3DMark」(Version 2.29.8294)から,CPU性能を物理シミュレーションによって測定する「CPU Profile」を計測していこう。
 CPU Profileでは,「Max threads」から「1 thread」まで6パターンでテストを行う。Max threadsは,CPUが実行可能な最大スレッド数で実行するテストパターンだ。したがって,一般的には実行可能なスレッド数が多いCPUほど有利になる。16 threads以下は,スレッド数を決め打ちで実行するテストパターンで,今回テストしたCPUは,すべて16スレッド以上の実行が可能だ。結果はグラフ1である。

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 「1 thread」を除き,すべてのテストでCore Ultra 9 285Kがトップになった。Max threadsは,基本的に実行可能なスレッドが多いCPUほど有利になるテストだが,テストしたCPUの中ではもっとも実行可能スレッド数が少ないCore Ultra 9 285Kが,ほかを圧倒しているのは,まず驚く点だろう。
 スコア差を見ると,Core Ultra 9 285KのDDR5-6400,8000設定ともに,Core i9-14900K比で1.2倍強,Ryzen 9 9950X比で1.2倍弱となった。

 16 threadsの成績も,Core Ultra 9 285Kが非常に優秀だ。Core Ultra 9 285KのP-coreは8基なので,16 threads実行時には,残る8スレッドがE-coreで実行されているはずだが,それでもCore i9-14900Kに対して約1.3倍,Ryzen 9 9950Xに対しては約1.4倍のスコアを叩き出した。Core Ultra 200Sでは,E-coreの性能が「従来比で32%向上した」とIntelは謳っているので,その効果が出ているのかもしれない。
 8 threads以下も,Core Ultra 9 285Kは優秀だが,1 threadになると,Core i9-14900KやRyzen 9 9950Xと同程度と見ていいスコアに落ち着いている。

 ちなみに,Core Ultra 9 285Kにおけるメモリクロック設定は,CPU Profileにはほとんど影響を及ぼしていない。1 threadは,DDR5-6400設定のスコアが有意に高いように見えるが,2 threads以上のスコアを見た限りでは,ブレの範囲だろう。

 この結果からすると,Core Ultra 9 285Kのマルチスレッド性能は,既存のCPUを圧倒するほど高いと言えそうだ。詳細な検証を今回は行えていないので,Core Ultra 9 285KがほかのCPUを圧倒する理由までは分からないのだが,CPUコアの性能自体は,かなり良好と見ていい。

 続くグラフ2は,Fire Strikeの総合スコアとPhysics scoreをまとめたものだ。

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 Fire Strikeでは,Ryzen 9 9950Xが総合スコアで圧倒している。Core Ultra 9 285Kとの比較でも,その傾向は変わっていないどころか,より開いてしまった。
 ただ,物理シミュレーションでCPU性能を測るPhysics testのスコアを見ると,Core Ultra 9 285KはCore i9-14900Kの約1.16倍,Ryzen 9 9950Xの約1.11倍と,CPU Profileほど極端ではないにせよ,ほかを上回るスコアを残している。やはりCPUコアの性能自体は優秀だ。ただ,メモリクロック設定は,Fire Strikeにおいてもほとんど影響を与えていない。

 グラフ3は,DirectX 12ベンチマークであるSteel Nomadの結果だ。

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 GPU負荷が高いSteel Nomadは,1%前後の差でほとんど横並びだが,GPU負荷が軽いSteel Nomad Liteでは,有意な差がついている。Core Ultra 9 285Kのスコアは,Core i9-14900Kよりも約8%低く,またRyzen 9 9950Xに対しては10%以上も低いというパッとしない結果だ。
 Fire StrikeのスコアがCore i9-14900Kよりも低くなっているのと同じ理由で,Steel Nomad Liteのスコアが低くなっている可能性はあるだろう。もしかすると,マルチチップ構成になったために,CPUコアから見てPCI Expressが遠くなったことが,グラフィックス性能の低下につながっているのかもしれない。もしそうなら,ゲーム性能もあまり期待できないことになる。

 一方で,Steel Nomad Liteでは,Core Ultra 9 285Kのメモリクロックの違いが有意な差になったことは,特筆しておいていいだろう。フレームレートが極めて高くなるSteel Nomad Liteで,メモリクロックが高いほど有利になるのは,理にかなっている。

 DirectX 12 Ultimateの性能を測る「Speed Way」の結果を,グラフ4にまとめた。

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 レイトレーシングのGPUアクセラレーションを含むSpeed Wayだと,CPUの違いはほとんど表面化しない。差は1%以下の横並びで,グラフィックス負荷が重いアプリケーションの場合,極論すれば「ハイエンドCPUは何でも構わない」というわけだ。

 以上,3DMarkを見てきたが,Core Ultra 9 285Kのマルチスレッドの性能は,とにかく高そうだ。一方で,Steel Nomad Liteを見る限り,高フレームレートが得られる描画負荷の軽いゲームでは,性能に期待できないかもしれない。そこを押さえたうえで,ゲームでのテストを進めていこう。

 「Call of Duty: Modern Warfare III」(以下,CoD:MW3)のテストでは,グラフィックス品質を「極限」に設定したうえで,「アップスケール/シャープニング」で「DLSS」を選択して,「NVIDIA DLSSプリセット」設定を描画負荷が軽い「パフォーマンス」としてテストを実行している。結果はグラフ5〜7のとおり。

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 Core Ultra 9 285Kの平均,最小フレームレートは,前世代にも届いていない結果となった。ただ,DDR5-8000設定の効果は見られるので,その設定であればCore i9-14900Kにおおむね肉薄する性能を発揮している。
 だが,Ryzen 9 9950Xに比べると,Core Ultra 9 285Kのフレームレートは低い。とくに差がついている1920×1080ドットでは,平均で6%以上,最小では実に約20%ほどもCore Ultra 9 285Kのフレームレートが低かった。ちなみに,Core Ultra 9 285Kの1920×1080ドット実行時には,CPUボトルネックが90%を超えてくるので,CPUが描画にまったく追いついていないようだ。グラフィックス負荷が軽く,フレームレートが上がるタイプのゲームは,やはりCore Ultra 9 285Kが苦手としていると見ていい結果だ。

 続く「バイオハザード RE:4」では,グラフィックス品質を「限界突破」としたうえで,GPUを用いた超解像技術「FidelityFX Super Resolution 2」を「Performance(速度重視)」に設定して,描画負荷を下げている。結果はグラフ8〜10のとおり。

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 Core Ultra 9 285Kは,DDR5-6400設定だと前世代に届かないが,DDR5-8000ならば前世代に肉薄できるという傾向が,バイオハザード RE:4でも表れている。1920×1080ドットの結果を見ると,DDR5-8000設定ならCore i9-14900Kと同程度のフレームレートが出せると判断してよさそうだ。
 バイオハザード RE:4は,Ryzenシリーズだとフレームレートが伸びないので,結果的にCore Ultra 9 285Kは,まずまずといえる結果に見える。だが,メモリクロックを上げないと前世代に届かないということは,押さえておくべきだろう。

 次の「Starfield」では,グラフィックス品質のプリセットに「高」を選択して,「アップスケーリング」に「DLSS」,「アップスケーリング品質のプリセット」に「パフォーマンス」を設定したうえで,「フレーム生成」は「オフ」で計測した。結果はグラフ11〜13のとおり。

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 Starfieldはこれまで,実行可能なスレッド数が多いほどフレームレートが伸びる傾向が見られていたが,今回はやや様相が変わってしまっている。まず目立つのが,Ryzen 9 9950Xのスコアが大幅に低い点だ。これだけの差がつく理由として,測定時にコアパーキングが働いて8コアが停止した可能性が考えられる。Starfieldはコアパーキングが働かないタイトルに挙げられていたが,ゲームのアップデートなどで事情が変わったのかもしれない。
 主役のCore Ultra 9 285Kは,CPU性能差が出やすい1920×1080ドットだとCore i9-14900Kに及ばないが,実行可能なスレッド数の差を考えれば妥当なところ。2560×1440ドット以上の解像度だとCore i9-14900Kとの差が小さくなる。また,DDR5-8000の効果も平均にして数フレーム程度は見られる結果となった。

 続く「ファイナルファンタジーXIV 黄金のレガシー ベンチマーク」(以下,FFXIV黄金のレガシー ベンチ)は,グラフィックス品質のプリセットを「最高品質」に設定したうえで,「グラフィックスアップスケールタイプ」として「NVIDIA DLSS」を選択。さらに「適用するフレームレートのしきい値」として,「常に適用」を選択することでGPU負荷を下げる設定を採用した。
 総合スコアはグラフ14だ。

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 Core Ultra 9 285Kは,前世代にまったく及ばず,差がつきやすい1920×1080ドットでは,前世代に対して7%以上,Ryzen 9 9950Xに対しては8%以上の差をつけられる低いスコアとなった。
 ただ,DDR-6400設定のCore Ultra 9 285Kでは,2560×1440ドットと1920×1080ドットのスコアがほとんど変わっていない。したがって,CPUボトルネックでスコアが上昇しなくなっていることが考えられる。それがDDR-8000設定だと,わずかながらも有意と言える差になっているので,高クロックメモリの使用に,まったく効果がないわけではないようだ。

 グラフ15〜17は,FFXIV黄金のレガシー ベンチにおける平均および最小フレームレートである。

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 平均フレームレートを見ると,Core Ultra 9 285Kにおけるメモリクロック向上の効果は,多少あるようだ。一方で,総合スコアで良好な成績を収めたRyzen 9 9950Xだが,最小フレームレートはCore i9-14900Kはもちろん,Core Ultra 9 285Kよりもやや低いというのも気になる点だ。最小フレームレートはゲームの快適さを左右するので,Core Ultra 9 285Kは,総合スコアほどはRyzen 9 9950Xに差をつけられてはいないという見方もできるだろう。

 次の「F1 24」では,グラフィックス品質のプリセットに「超高」を選択。「アンチエイリアス」には「NVIDIA DLSS」を,「アンチエイリアシングモード」は「パフォーマンス」というGPU負荷を軽減する設定を採用した。
 F1 24の平均および最小フレームレートは,グラフ18〜20だ。

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 Core Ultra 9 285Kでは,DDR-8000設定が一定の効果を見せているものの,すべての解像度で比較対象に届かなかった。差がつきにくい3840×2160ドットでも,Core i9-14900Kに対してはっきりと低いのが気になるところだ。ただ,Core Ultra 9 285KのDDR-6400設定における最小フレームレートは,ほかと比べてやや異常に見えるので,測定時に何らかのブレが生じた可能性はある。

 最後の「Cities: Skylines II」では,グラフィックス品質のプリセットとして「中」を選択するととともに,「アップスケーラー」として「NVIDIA DLSS Super Resolution」の「最大パフォーマンス」を選択した。結果はグラフ21〜23にまとめた。

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 Cities: Skylines IIはフレームレートの差がつきにくいゲームだが,Core Ultra 9 285Kは,DDR5-6400設定でCore i9-14900Kとほぼ同程度,DDR-8000設定では,わずかだが2560×1440ドットと1920×1080ドットでCore i9-14900Kよりも高い平均および最小フレームレートを記録した。Cities: Skylines IIは,グラフィックス描画と同意に都市シミュレーションの演算負荷が高いゲームタイトルだ。Core Ultra 9 285Kは,CPU自体の性能がかなり高いことが3DMarkの結果などから見て取れるので,それがCities: Skylines IIにおいて奏功した可能性はある。

 以上,3DMarkとゲームを見てきたが,今回のテストを見る限り,Core Ultra 9 285Kが高いゲーム性能を持つとは言えない。とくにグラフィック描画負荷が軽くフレームレートが上がるタイプのゲームを,Core Ultra 9 285Kは苦手とするようで,Ryzen 9 9950XやCore i9-14900Kに対して遅れを取る例が見られる。
 一方で,3DMarkのCPU Profileの結果などを見る限り,CPUの演算性能はかなり高そうだ。CPUを多用するタイプのゲームならば,Core Ultra 9 285Kも十分に戦える可能性があると期待はできそうだ。


Core Ultra 9 285Kの電力性能比はおおむね競合以上


 では最後に,IntelがCore Ultra 200Sシリーズの強みとして挙げている電力面を見ていこう。ベンチマークレギュレーション30に準拠した方法で,アプリケーション実行中におけるCPU単体の最大消費電力をまとめたのがグラフ24だ。

画像集 No.034のサムネイル画像 / IntelのデスクトップPC向け新世代CPU「Core Ultra 9 285K」は,ゲーマーが選ぶ価値のあるCPUなのか?

 Core Ultra 9 285Kは,3DMark実行時のピークが約192Wで,ゲームではStarfield実行時に約189Wを記録したのが最大だった。今回もピーク消費電力290W台を叩き出したCore i9-14900Kに比べると,圧倒的と言っていいほどピーク時の消費電力が減っている。とくに,CPUに全負荷をかけるCPU Profileを含む3DMark実行時に,80W近くピーク消費電力が低下しているのは素晴らしいと言えよう。CPU Profileのスコアが約1.3倍になっていることを考えれば,まさに圧倒的だ。
 競合のRyzen 9 9950Xと比べても,ピーク時の消費電力は同等かやや低めと言ってよさそうだ。

 ただし,DDR5-8000設定のピーク時の消費電力は,DDR5-6400よりも数W程度はピーク時の消費電力が高くなる傾向も見て取れる。ここは押さえておくべきだろう。
 アイドル時の消費電力もCore i9-14900Kから1Wほど高くなっているようだ。複数シリコン構成のCPUは,モノリシック構成のCPUよりもアイドル時の消費電力を押さえにくくなると推測できるので,1Wほどしか悪化していないというこの結果はまずまずだろう。

 グラフ25は,アプリ実行中の典型的な消費電力を示す消費電力中央値である。

画像集 No.035のサムネイル画像 / IntelのデスクトップPC向け新世代CPU「Core Ultra 9 285K」は,ゲーマーが選ぶ価値のあるCPUなのか?

 消費電力中央値は,ややばらつきが見えて評価しにくい結果となった。少なくともCore i9-14900Kよりは圧倒的に優秀といえるが,Starfield実行時にはDDR5-6400設定で約157W,DDR5-8000設定時には約161Wを記録している。競合のRyzen 9 9950Xも,FFXIV黄金のレガシー ベンチ実行時に約140W台を記録しているので大差ないとは言えるが,5タイトルで上回り,2タイトルは下回った。
 ちなみにIntelは,Core Ultra 9 285Kにおけるゲーム実行時の消費電力は,Core i9-14900Kに対して約70W低下していると主張している。消費電力中央値の結果を見る限り,Intelの主張はおおむねそのとおり,というところだろうか。

 消費電力計測の最後に,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて,各テストの実行時におけるシステムの最大消費電力をグラフ26にまとめておこう。

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 消費電力中央値の結果から見ても,Core Ultra 9 285Kのシステムの最大消費電力は,おおむね妥当なところだろう。750W超を叩き出したCore i9-14900Kに対して,Core Ultra 9 285Kは最大でも620Wに届いていない。システムの最大消費電力で見れば,競合のRyzen 9 9950Xよりも優秀かもしれないというレベルだ。


CPU性能が極めて高そうな一方で,ゲーム性能はほどほど?


 以上,Core Ultra 9 285Kのゲーム性能を見てきた。今回は,入稿直前にIntelから計測条件に関する追加情報が来て,テストのやり直しを強いられたこともあり,あまり突っ込んだテストができていないのが残念ではある。それでも,Core Ultra 9 285KのCPU演算性能は,非常に高いようだ。ただ,CPU性能に比べるとゲーム性能の伸びは限定的で,前世代であるCore i9-14900Kや競合のRyzen 9 9950Xを上回るとはいいがたい。
 とはいえ,膨大な発熱や消費電力と戦う必要があった第14世代Coreプロセッサに比べれば,消費電力を大幅に低くしてきた点は,大いに評価していいだろう。消費電力対性能比は,競合並みか競合を超えるかもしれない。

 アーキテクチャが大きく変わった新登場のCPUだけに,今後ゲームの最適化や対応が進めば,より高いゲーム性能が得られる可能性が期待できる。だが,導入にかかる初期投資の大きさなどを兼ね合わせれば,PCゲーマーとしては,まだ様子を見ていいCPUという評価に落ち着きそうだ。

IntelのCore Ultra製品情報ページ

  • 関連タイトル:

    Intel Core Ultra 200(Series 2,Arrow Lake,Lunar Lake)

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