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[プレイレポ]工画堂スタジオの新作「One-inch Tactics」先行体験。考えれば考えただけ勝てる,シンプルで骨太な戦術級ターン制ストラテジー
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印刷2024/05/14 07:00

プレイレポート

[プレイレポ]工画堂スタジオの新作「One-inch Tactics」先行体験。考えれば考えただけ勝てる,シンプルで骨太な戦術級ターン制ストラテジー

 工画堂スタジオは,新作PC用ソフト「One-inch Tactics」(ワンインチ タクティクス)を2024年5月20日に発売する。プレイヤーはロボット部隊の指揮官となり,ミッションを攻略していく戦術級ターン制ストラテジーだ。

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 工画堂スタジオのSLG作品としては「POWER DoLLS」シリーズがよく知られているが,本作はストラテジーとしての側面を強調したシンプルな作品を目指したという。


 今回,発売前に体験版を遊ぶ機会を得られたのだが,その内容は想像以上にシンプル,かつ骨太な内容だった。本稿ではゲームの内容を紹介しつつ,プレイフィールをお伝えしよう。

「One-inch Tactics」公式サイト



細かい管理をすっ飛ばして,戦術・戦略的な意思決定だけにハマれるAP制ウォーゲーム


 起動直後のメニュー画面には,ボードゲームのパッケージのようなものが映し出される。最初のミッションの前では大きな箱(本作)を机に広げる男の姿も見られるので,本作はミニチュアを用いたボードゲームをモチーフにしているようだ。

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 というわけで,さっそくキャンペーンを開始する。まずは世界観の解説などが行われるかと思いきや,即座にボードが広げられ,作戦目標が告げられた。それによると,プレイヤーは島に駐留していた部隊の指揮官であり,敵勢力に占拠された要塞の奪取が目標になるようだ。

 戦いに至るまでの背景の設定は存在するものの,ストーリーが伝わる要素は,ミッション開始前に行われる短いブリーフィングと,パイロットが稀に発するひと言ふた言のみ。メーカーの触れ込みどおり,かなりストラテジー要素を強く押し出した作品のようだ。

ロボットのパイロットはいずれも女の子。基本的に会話シーンは存在しないが,ミッションに特定のパイロットを出撃させると対応するセリフをしゃべってくれることがある
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 バトルはターン制を採用しており,指定されたミッションを所定の時刻(ターン数)までに達成すればクリアとなる。たとえ失敗してもキャンペーンは進むが,難度が「クラシック」の場合はパイロットと各装備をすべてロストしてしまう(難度「ベーシック」の場合はロスト自体が発生しない)。

 ユニットの行動システムは,古典的なウォーゲームに近い形式だ。それぞれが保有するアクションポイント(AP)を消費して,アクションを実行する仕組みになっている。

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 各アクションには回数の制限がなく,APや弾薬などのリソースが尽きない限りは何度でも行える。たとえば,最大20APのユニットがアサルトライフル(消費AP3)を使う場合,ほかのアクションを一切しなければ,1ターンで6回まで射撃できる。

 そして,これらのルールは敵ユニットにも適用される。APに余裕がある状態で敵が攻撃体勢に入れば,自軍のユニットはタダでは済まないだろう。移動にもAPが必要なので,相手よりAPに余裕がある状態で接敵できるように行動しなければならない。

装備は「右肩」「左肩」「右手」「左手」の4か所に加えて,追加アイテムを持つための「ポケット」が用意されている
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パイロットの基礎ステータスに,機体のAP補正,装備のAP負荷を加えたものがユニットのAP上限だ。重たい装備ほどAP負荷が大きく,あれもこれもと装備すると鈍重なユニットができてしまう
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 そこで重要になるのが,素早く敵の位置を発見する「索敵」,視線や射線を遮る「地形」および「遮蔽物」の概念だ。

 索敵は周囲の敵を探すアクションだが,一定以上の索敵能力を持つユニットは通常視界より遠くにいる敵ユニットを発見できる。遭遇戦になると移動にAPを使ったぶんだけ不利になるため,まずは敵の位置を知らなければ動けない。

 ただし,うまく敵を先に発見しても,必ず先に攻撃できるとは限らない。森林や瓦礫,高低差といった地形の状況によって,「相手の位置は見えても射撃できない」といった状況も起こりうる。敵ユニットに有効打を与えるためには,適切な装備の選定も必要だ。

索敵貫通の効果を持つ装備を用意しておけば,森林や瓦礫といった遮蔽の一部を無視して視界を確保できる
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遮蔽物の裏にいる敵に対して,直進する攻撃は当たらない。また,高さが変わった直後の1マスは死角になる
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 ここまで理解すると,ユニットのカスタマイズと戦術・戦略の幅が一気に広がってくる。
 索敵に特化したユニットを監視役として先行させ,発見した敵を長射程の砲撃で撃破する布陣を敷いてみたり,AP効率を重視した遊撃ユニットで森に隠れる敵を掃討したりと,さまざまな作戦を見出せるようになった。

 装備も多種多様だ。曲射で遮蔽物を無視するものや,重装甲の対象に大ダメージを与えられるものなどがあり,その組み合わせはもはや膨大。ブリーフィングを受けて敵の戦力を予想し,適切なパイロットと装備の組み合わせに頭をひねる……戦術ストラテジーならではの楽しさをしっかり味わえる。

武器の種別
D 遮蔽物で妨害される直射武器。一部,臨機射撃(敵ターンに接敵した対象への攻撃)が可能
R 任意の地点に着弾する曲射武器など。味方を巻き込む
M 特定の敵に向けて飛ぶミサイル
S そのほか
弾頭の種類
通常 一般的な弾
徹甲 装甲対象に効果大,飛行対象への命中率低下
爆薬 乱数が大きく作用するが,対象の種別による減衰が小さい
煙幕 D型/M型武器から狙われなくなる

 体験版の範囲をプレイした段階では,「AP制のウォーゲームにおけるユニットのカスタマイズ要素を拡張し,それ以外の要素をシンプルに削ぎ落としたゲーム」という印象を受けた。

 燃料補給だったり,破損したユニットの修理だったり,コアなデジタルウォーゲームにありがちな要素はほとんど存在しない。戦闘の演出も3Dだが簡潔にまとまっていて,「早送りモード」を設定すればサクサクと進行していく。

 要するに,本作はターン制ストラテジーの一番美味しい“戦術”を考える部分だけを食べられるように設計されているのだ。正式リリース版がどれくらいのボリュームになるのかは分からないが,発売されたらじっくりと腰を据えて遊んでみたい。

キャラクター要素は非常にささやか。微妙にキャラクター同士のつながりをうかがい知れるセリフもあり,なんとなくバックボーンを感じ取れるのがうれしい
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 あえて不満を挙げるなら,意思決定のための情報整理がやや難しいことだろうか。たとえば,各装備はすべて型番で表記されるため,慣れるまでは一覧から情報を正しく読み解くのが難しい。保存した装備プリセットに表示されるのも型番だけなので,最初は混乱するだろう。

 型番を覚えてデータを運用できれば,没入感が増して楽しい体験になることは間違いない。ただ,全体としてはフレーバー要素を小規模に留め,戦術・戦略的な意思決定を重視するシステムを採用しているように見えるので,意思決定の素材と言えるデータは把握しやすい形で提示するのが望ましいと思う。

 ユニットの足元に残りAPを示したり,機体のカラーを変えられたりするので,利便性を向上させる配慮がないわけではないが,もう少し遊びやすくする工夫があるとなお嬉しい。リリース後の調整やアップデートによって,各ユニットのタグ付けのような要素やプリセットの名称変更が追加されれば,より快適にプレイできるはずだ。

型番からデータを読み取るのはカッコいいが,ここから各機体の装備内容を把握するのは少々難しい。ARはアサルトライフル,SMGはサブマシンガン,APCは徹甲弾といった重要な性質を示す部分を覚えておくと便利だ
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