インタビュー
[インタビュー]岡本吉起氏が新プロジェクト「KUSOGeeeeee」にかける思い。「自分を育ててくれたゲーマーと業界を新天地に案内したい」
岡本吉起氏の新プロジェクト「KUSOGeeeeee」は,従来のNFTゲームが果たせなかったPlay to Earnの真の実現を目指す
2024年3月5日,「PROJECT K presented by OKAKITCHI」発表会が行われた。ゲームプロデューサー・岡本吉起氏が「人生の集大成」として挑む新プロジェクト「KUSOGeeeeee」および「ちゃんごくし!」シリーズが明らかになった。
発表会で語られた構想は,これまでNFTゲームに縁が無かった人はもちろん,ある程度知っている人にとっても驚くべきものだった。
いったいどんなカラクリでそんなことが可能になるのか,岡本氏の本当の狙いは何なのか。さまざまな疑問を持った人も多いはずだ。筆者もその一人だったわけだが,そこには従来の「NFTゲーム」を基準に考えてしまうがゆえの,バイアスが働いているような気がする。
発表会の終了後,KUSOGeeeeeeを運営するオカキチの発起人である岡本氏に話を聞く機会を得たので,その内容をお伝えしよう。
「KUSOGeeeeee」プラットフォーム
「ちゃんごくし!結魂しよう」公式サイト
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。先ほどの発表会では,たいへん驚かされました。
岡本吉起氏(以下,岡本氏):
これまでもPROJECT K(KUSOGeeeeeeのプロジェクト名)を取り上げていただき,ありがとうございます。めっちゃ緊張しました。
実は人前に出て話すのは好きじゃないんですよ。カプコンの開発本部長になるときも「取材を受けなくていいこと」を条件に引き受けたんですけど,その日のうちに取材があって(笑)。以後は人前に出るようになりましたけど,本来はクリエイター側の人間なんです。
4Gamer:
意外に感じる人が多いと思います(笑)。さっそくですが,KUSOGeeeeeeは従来のNFTゲームに対するアンチテーゼのような印象を受けました。
岡本氏:
そうですね。まず一番には,ゆっくりでいいからNFTが値上がりしていくようにしたいんです。もちろん,今もゲーム内では値上がりしているNFTはありますよ。でも仮想通貨(暗号資産)と連動しているから,仮想通貨が暴騰すればもっと上がるし,仮想通貨が暴落すればさらに下がってしまう。
さすがにそれは不安定すぎるので,どうしたら安定するんだろうと考えたときに,「仮想通貨を使わなければ安定する」と気が付いたんです。それで日本円と連動させることにしました。
4Gamer:
国内においては価値が安定していますからね。
岡本氏:
そうなんです。また,NFTが年間20%ずつ上がっていく仕掛けも考えています。
4Gamer:
NFTの総数をバーン(焼却)して減らし,流通量を少なくするとかではなく?
岡本氏:
いえ,NFT武将にはシリアルナンバーが振ってあり,総発行枚数が決まっています。そして翌年,同じ武将を再販(新規発行)するとき,いくらか割増の価格で販売するんですね。たとえば3000円だったものを3600円で販売すれば,年間20%のインフレ率を維持できるわけです。
ちゃんごくし! White Paper
「NFT武将のトークノミクス」
あるNFT武将の価格相場が5000円まで上がったとしても,再販を待てば3600円で買えるので「待つ」という人も出てくるでしょう。だから高騰しすぎる心配は少ない。そのように毎年,安定的なインフレを維持していく仕組みです。
そして,NFT武将で遊べるゲームを定期的にリリースしていくので,最初のゲームに飽きてきても次のゲーム,次のゲームと続けて遊べるんです。だからプレイヤーはNFT武将を持ち続けようと思えるし,いずれかのゲームの人気が落ち着いてきてもNFTが邪魔になったりはしない。
また,有償のNFTだけでなく,ゲーム内で手に入れたNFT武器を売買することもできるので,そこでもちょっとずつ儲かっていきます。世の中にはコレクターがいて,彼らはレアなアイテムを揃えようとします。NFT武将の値段は僕らがコントロールできるけれど,そちらは取引する方同士で値段を決めることになるので……。
4Gamer:
需要と供給のバランスで決まってくると。
岡本氏:
そうです。たとえばクラシックカーを買ったとき,そこで損した得したというのはなくて,欲しかったものが手に入っている。そういう考え方です。
4Gamer:
仮想通貨はプレイヤーに見えない形にしたのではなく,完全に切り離しているんですね。
岡本氏:
現状,そこがNFTゲームの最大のハードルになっていますので,このプロジェクトでは切り離してみたんです。というのも,NFTゲームの周辺にできあがりつつある「早く入った者勝ち」「早く抜けないと損をする」みたいなルールを変えたいからです。
多くの人にとって望ましい,「新大陸の憲法」ができる取っ掛かりになればと思っています。10年後,20年後にKUSOGeeeeeeの発表があった2024年3月5日が「大化の改新だった」なんて言われていたら最高ですね。
岡本氏:
もうお気付きだとは思いますけど,KUSOGeeeeeeってオカキチは儲からないプロジェクトなんですよ。
4Gamer:
確かにそうです。そこを不思議に思っていました。
岡本氏:
僕はゲーム業界に育ててもらった身なので,「業界に恩を返したい」「いいルールを作りたい」と思う気持ちが強くて,オカキチで儲けたいとはまったく思ってないですよ。大阪では「損して得取れ」と言って,「まずお客が喜んでくれればそれでいい。お金はあとからやってくるよ」という考え方がありますが,僕はそれを信じてずっとやってきましたから。
お客さんが喜んでくれて,滞留してくれさえすれば,商売はあとからでも考えられる。スマートデバイスのゲームも継続率やDAU(デイリー・アクティブ・ユーザー)さえ高ければ何とかなる。でも,それが低かったらどうにもならないという考え方ですね。
まずは顧客満足度を高めることが一番大事。同時にオカキチが儲かる絵を描けなかったのは,僕の才能が足りなかった部分ではありますが,ユーザーに損をさせない点ではかなり力を入れてやっているつもりです。
4Gamer:
システムこそ違いますが,遊びの感覚としては,国盗りシミュレーションゲームのようなコツコツと内政や取引をして,金や兵糧の数値が増えていくのを楽しむところにも近いでしょうか。
岡本氏:
けっこう近いですね! そのたとえだと,KUSOGeeeeeeプラットフォームのNFTは兵糧みたいなもので,収穫期にある程度の安定した価格で売買できることは分かっているわけです。でも相場を見て,ここまで値上がりしているなら一部だけ売ろうか……なんて考えながら遊んでほしいと思っています。そこは,僕らが数値の調整を失敗しなければうまくいくはずです。
4Gamer:
「絶対」はないですからね。
岡本氏:
それでも,先ほど(発表会の終了後)売り出したNFT武将はそこそこ売れ始めていますから,一応期待はしていただけていると感じています。NFT武将で気持ちよく遊んでもらいつつ,ゲーム内で手に入れたNFT武器を売却すれば,月に3回くらいはランチを食べられるかな……という設計にしています。
4Gamer:
初期投資ゼロでも遊べるのでしょうか。
岡本氏:
そうですね。NFT武将は必須ではありません。NFT武将を使えば,明らかにサイクルを早く回せるようになり,資産にもなるし,強いという位置付けです。しかも3000円から買えますからね。もはや10連ガチャと変わらない金額です。
しかも翌年には3600円で販売することを約束しているので,大きく暴落しないだろうとも思っています。まだゲームが面白いか,面白くないかも分からない段階では,それくらいの値段で味見をしてもらえればと。ハードルは低ければ,低いほどいいですよ。
4Gamer:
NFT武将にはランクがありますよね。
岡本氏:
現在のNFT武将は3000円,2万円,50万円の3種類です。当然,50万円の武将はゲーム内のメリットも大きいです。発行枚数も少ないので抽選販売になりますので,持っていればドヤれはします(笑)。
あとは僕のように,原資が大きいほうが楽しみが大きいと感じる人もいるでしょう。過去,自分がNFT絡みで溶かしたお金には大きく及ばないのですが……。
4Gamer:
ゲームの面白さ,キャラの魅力,収益性のいずれかに魅力を感じる人がいる限り,取引が成立しそうです。
岡本氏:
その点は,NFT武将を複数のゲームで使えるというのがポイントです。多数のライバルと競争するより,少し人気が落ち着いてきたゲームでトップを狙うという遊び方もあると思うんです。ランキングに応じて報酬がもらえるわけですから。面白いから遊ぶだけでなく,目標を定めて遊ぶのも楽しい。その2Wayを想定しています。
4Gamer:
お話をうかがい,従来のNFTゲームやブロックチェーンゲームの弱点に向き合っていることが伝わりました。
岡本氏:
できることなら,全部ひっくり返してやろうと思っているんです。僕の考えが間違ってるかもしれないけれど,どこの会社も「自分が儲かることを第一に考えすぎてませんか?」って言いたい。少なくともWin-Winを目指すべきなのに,「ウチの会社が儲かる」話ばかりのような気がして,話に乗ってくれた人への責任感を感じないんですよ。
僕はそれがすごく嫌だったんですね。そんなことでは,誰も新大陸に行きたくなくなります。だから「新憲法」なんです。「STEPN」なんかは本当に大嫌いですね。あのとき,一番気が利いている人たちが乗り込んでいったのに,みんなを焼け野原に放置したままで成功者のように振る舞っている。
4Gamer:
2023年はそうした業界のいびつさが目立つようになった年でもありました。
岡本氏:
ちゃんとしたゲームを作ろうと思えば作れるはずなのに,コロンブスのような人たちが収奪したような事態になっていました。コロンブスなんて,全然偉人じゃないですからね?
4Gamer:
近い目標としては「ユーザーの懐を少しずつ幸せにすること」ですが,最終的なゴールを設定していますか。
岡本氏:
こっちの世界は新大陸で,可能性がある世界だと,みんなに伝わることです。そこにはドリームがあって,プレイヤーがゲームを遊んだことによって高く評価される。そんな時代が来てほしいと思います。
ゲームでお金を稼げれば,親も「いつまでもゲームばかりやってるんじゃない」とは言わなくなるでしょう。eスポーツが出てきたことで,トップを獲って稼いだ人は評価されるようになりました。ゲームに打ち込んだり,努力したりしたことがそれなりに評価される時代になってほしいんです。
そして,僕らが果たせなかったとしても,せめてそこに行くための足がかりになりたい。今すぐは変えられないとしても,僕らが正しいと思う方向への「道しるべ」になれたら。それが,ゲーム業界に対する恩返しになるんじゃないかと思っています。
4Gamer:
現在,岡本さんはクリエイターとして,今回のプロジェクトにどれくらいの比重を置いているのでしょうか。
岡本氏:
KUSOGeeeeeeプラットフォームと,もう1つ動いている「Project C」を合わせると,80%ぐらいは注力しています。これが良いと感じた人は,ぜひご自由にやってもらいたいですね。むしろ,僕らを追い越していってくれたら本望です。
4Gamer:
とても刺激的なお話でした。本日はありがとうございました。
「KUSOGeeeeee」プラットフォーム
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(C)Okakichi Co., Ltd.
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