プレイレポート
[プレイレポ]「聖剣伝説 VISIONS of MANA」は,聖剣らしいビジュアルとストーリー展開,爽快なアクション,そしてフィールドの探索が楽しい
本作は1991年に「聖剣伝説 -ファイナルファンタジー外伝-」としてゲームボーイでリリースされ,その後「聖剣伝説2」以降はFFシリーズから独立し,現在も続く人気作となった「聖剣伝説」シリーズの完全新作だ。
作品ごとに設定や登場人物は異なるが,世界の根幹をなす世界樹の「マナの樹」に危機が迫り,主人公がそれを巡る壮大な戦いに巻き込まれていく……というテーマは基本的に共通しており,印象に残るストーリー面でも定評がある。
「聖剣伝説 VISIONS of MANA」公式サイト
作品自体は比較的コンスタントにリリースされているシリーズだが,近年はリメイク作やオンラインを前提としたモバイル向けの動向が目立ったりと,本流の完全新作がなかなか出てこないことに,やきもきしていたファンもいたかもしれない。
だが,本作は“原点回帰”を目指して開発が進められたタイトルで,ジャンルも当然のことながら初代から続く伝統的なアクションRPG。リメイク作などでファンになった比較的新しいプレイヤーはもちろん,筆者のようなゲームボーイやスーパーファミコンで初期作を楽しんでいた長年のファンにとっても,見逃せない一作になっていると言えるだろう。
今回は発売前に製品版の前半部分を自由に触ることができたので,さっそくインプレッションをお届けしたい。なおプレイしたのはPS5版だ。
世界と人々に恩恵をもたらすマナの樹を目指し
御子とそれを送り届ける魂の守り人の旅が始まる
本作の物語は,ティアナと呼ばれるとある村から始まる。火山の麓にあるこの集落は火の村とも呼ばれ,片田舎ながら火山の恩恵を受けて人々は平和に暮らしていた。主人公である少年ヴァルとその幼なじみの少女ヒナも,そんな村で育った2人だ。
ティアナには,4年に1度の大きなイベントが迫っていた。マナの樹に赴き,魂を捧げる「御子」を選ぶフェアリーが訪れることになっていたからだ。御子は世界に恩恵をもたらすマナの循環を支える存在であり,彼らが無事にマナの樹への旅を終えることで,人々は平和で豊かな生活を送ることができる。それゆえに非常に名誉な役割とされ,多くの人々は自らが御子に選ばれることを心待ちにしていた。
その一方,何らかの事情で御子が選出されない事態になると,マナが枯渇して集落や地域自体が滅亡してしまうと恐れられている。
ヴァルが今回初めて果たすことになった魂の守り人は,そんな御子をマナの樹まで無事に送り届ける護衛のような存在だ。今回,フェアリーは,火の御子としてヒナを選び出す。こうして護衛のヴァルと御子のヒナのコンビは,道中で各地から選ばれた(風や水などの)ほかの御子を集めつつ,マナの樹に向かう長い旅を始めることになった……というのが,導入部のストーリーとなる。
冒頭でも触れたが,本作はシリーズ伝統の正統派アクションRPGだ。プレイヤーは操作キャラを主人公のヴァルや,途中で加入する御子の仲間からリアルタイムで自由に切り替えつつ,フィールド上のザコや物語の区切りに登場する巨大なボスなどを倒していく。なお,操作していないキャラクターも戦闘時には自動で戦ってくれる。
グラフィックスは完全3Dのため,初期シリーズの見下ろし型から,近年のリメイク作同様の三人称視点に変更されている。とはいえスタンダードな画面構成なので,操作で迷うところはないだろう。
操作性についてもダッシュや二段ジャンプが標準で利用可能であるため,最初からキビキビ動ける。スタミナなどもないのでいくらでも走り続けられるし,セーブと回復ポイントを兼ねる「竜脈」と呼ばれるポイント(設備)をアンロックしていけば,自由にファストトラベルもできる。道中では,より高速の移動ができるようになる乗り物も比較的早く手に入ることもあり,移動面のストレスはかなり少ない印象だ。
敵をロックすれば補正は強めに効くので,空中戦もさほど苦にならない。回避を兼ねるダッシュをうまく使おう |
ステージ探索のベースとなる竜脈。フィールドに複数用意されていることが多いので,見つけたら触っておきたい |
さらに本作の見どころの一つが,多彩で美しいフィールドだ。ゲームシステムとしてはエリアクリア型に近いのだが(戻ることは基本的に自由にできる),それぞれのエリアはかなり広く,一度入ってしまえば大概は好き勝手に散策できる。
公式では「セミオープンフィールド」と名付けられており,確かに完全なオープンワールドとは違って区切りは明確にあるのだが,高低差を含めたフィールドの面積は十分確保されている。探索要素もサイドクエスト,アイテム収集,強力なネームドモンスター退治など複数用意されており,マップを見ながらウロウロしているだけでもけっこう楽しい。
また,エリアごとにまったく違う風景が描かれるのも,注目したいポイント。例えば最初のエリアは火の精霊の加護を受ける地帯なので,豊かな自然は広がりつつも後方にはマグマが流れる巨大な火山がそびえている。
同じように風の加護を受けるエリアは,気持ち良さそうな風が常に吹いている高原のような場所で,別のエリアは見るからに寒くて荒涼とした雪原で……と非常に特色豊かだ。物語が進むたびに,新鮮な気持ちでプレイでき,実際に長旅をしているような感覚も味わえる。
ちなみに,ビジュアルに関しても美しいがリアルすぎず,それでいてデフォルメもしすぎていない,“聖剣伝説らしい”幻想的な仕上がりになっていると素直に感じられた。
最初のエリアは緑豊かだが,画面の奥では火山が溶岩を噴き上げている。どれも固有の生態系を感じられる |
風の精霊の力を借り,高い段差を超えるギミック。エリアによっては複数,こういった場所が用意されている |
もちろん先の展開が気になるならあまり寄り道せず,最低限のイベントをこなして進めるだけでもいいだろう。ただし本作はレベル制なので,あまりに敵を無視しすぎると,入手できる経験値が足りずにボス戦などで苦戦する可能性がある点は,忘れずにいたい。
複数種の武器の活用や伝統のリングコマンドなど
シリーズらしい要素も見逃せない
前述のとおり,本作のキャラはレベルアップで強化するのが基本ではあるが,ある意味でそれより重要なのが,「精霊器」と呼ばれる器具の活用だ。これは精霊の力を宿した特殊な道具で,これを装備することによって精霊の力を借り,キャラクター自体が変身(強化)することができる。平たく言えば“クラスチェンジ”の機能だ。
例えば主人公のヴァルは最初はスタンダードな片手剣しか使用できない「モリビト」というクラスだが,風の精霊器を使用すれば振りは遅いが攻撃範囲が大幅に広がる大剣を装備する「ルーンナイト」に変わり,月の精霊器ならランス(槍)と盾を構えるイージスというクラスに変わる。
これらは見た目はもちろん,ステータスや攻撃のモーションと効果範囲,ゲージがたまると使用できる必殺技など多くのステータスが変化し,キャラの操作感覚そのものがかなり変わってくる。
「イージス」はランスを使うようになるので,攻撃が剣とは違い直線的になる |
スキルも基本的にクラスごとに覚える仕組み。当然,よく使うクラスを優先してスキルを取得した方がいい |
精霊器は複数のキャラで同時に使用することこそできないが,力を借りた精霊ごとに複数入手できるので,例えば使い勝手の良い精霊器はよく使う主人公に,少し使いにくい精霊器は別の仲間に……といった使い分けも可能。聖剣伝説というと伝統的にいろいろな武器を使えることが多いが,本作では装備変更をするかわりに,「精霊器の脱着によるクラス変更」という形でこの仕組みが採用されていると言えるだろう。
なお,聖剣伝説らしさは武器や前述のビジュアルだけでなく,例えばアイテムや魔法を選択するUIは「聖剣伝説2」から採用された「リングコマンド」がきちんと採用されているし,シリーズを象徴するザコ敵の「ラビ」や「マイコニド」,今聞いてもインパクトが強い名前の回復アイテム「まんまるドロップ」など,恒例のネタを外さずにちゃんと盛り込んでいるのもうれしい。
ゲームの見た目やシステムは非常にモダンになっているが,オールドファンも懐かしさを感じながら楽しめるだろう。
ちなみに,敵に関しては全体的な世界観に合わせ,見た目がカワイイものも少なくないのだが,ゲームを進めていくと嫌らしい状態異常を多用するタイプが複数出てきたり,ネームドはかなりタフだったりと,相応の歯ごたえを感じる場面もある。
基本は攻撃と回避を適切に組み合わせるだけでいいが,場合によってはちゃんと敵の挙動を確認するほうがいいかもしれない。ただし,味方も頼りになりけっこうしっかり戦ってくれる印象なので,あまりストレスはたまらないはずだ。
今回はプレイ時間の関係から前半の一部分を触ることしかできなかったが,全体的なクオリティは高く,新生した聖剣伝説としてシリーズファンはもちろん,名前しか知らなかった世代もチェックしておいて損はないように思う。ネタバレを避けるために触れなかったが,物語も序盤から含みを持たせる場面も多く,先が気になる。8月29日に迫った発売日を,楽しみに待ちたい。
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