プレイレポート
[プレイレポ]精巧な邪神ミニチュアに注目。新作ボドゲ「クトゥルフ 〜死もまた死すべし〜 未知の恐怖」,日本語版ファンディングが本日開始
Kickstarter「クトゥルフ 〜死もまた死すべし〜 未知の恐怖」プロジェクトページ
「未知の恐怖」は,アークライトが2019年に日本語版を発売した「クトゥルフ 〜死もまた死すべし〜」(以下,基本セット)の独立型拡張セットだ。各プレイヤーはシナリオに登場する探索者となり,時空を越えて現れる邪神の撃退を目指していく。
パッケージには6つの新シナリオと,新たに登場する巨大なボス邪神のミニチュア,10人の新たな探索者など,多数の新要素が収録される。これらの要素は単体で遊べるだけでなく,基本セットの要素と組み合わせて遊ぶことも可能だという。
今回は,そんな本作の先行プレイレポートをお届けする。なお,プレイに使用したのは英語版であり,コンポーネントの固有名詞などは日本語版リリース時とは異なる可能性がある点は留意してほしい。
※「Cthulhu」の日本語表記には諸説あるが,本稿では「クトゥルフ 〜死もまた死すべし〜 未知の恐怖」のタイトル名に合わせ「クトゥルフ」としている。
Kickstarter「クトゥルフ 〜死もまた死すべし〜 未知の恐怖」プロジェクトページ
探索者が想像以上に強い。クトゥルフ系とは思えない爽快感のプレイフィール
本作の目的は,カルト教団が復活を目論む“ボス邪神”を撃退することだ。各シナリオにはボス邪神が復活に至るまでの手順が設定されており,それを妨害することで儀式を不完全なものにできる。儀式を完遂されてしまうと(ほぼ)ゲームオーバーなので,なんとしてでも止めなければならない。
シナリオとボス邪神の組み合わせはとくに決まっておらず,ゲーム中に出現する強敵も含めて自由に組み替えられる。プレイヤーが担当する探索者もすべてユニークな能力を持っているので,組み合わせ次第で1つのシナリオを何度でも楽しめる。
今回のプレイでは,かつて行われた魔女狩りの怨念が残る土地を舞台に,魔女の怨念を贄として邪神を復活させようと企むカルト教団と戦うシナリオに挑戦することになった。ボス邪神として選ばれたのは,惰眠を貪る邪神「ツァトゥグァ / Tsathoggua」だ。
復活の儀式を止めるには,根源となっている魔女たちの怨念を晴らすしかない。探索を進めて,魔女狩りの被害を受けた人々が冤罪だった“証拠”(Evidence)を集め,マップの各所に配置された「陪審員」たちの霊体と接触。彼らを説得して魔女の冤罪を証明するのだ。
マップには最初から複数のカルト信者や神話生物が待ち構えているが,探索者たちも負けてはいない。各探索者は各3系統の特殊能力を持ち,正気度が一定を下回るごとに各能力が成長していくほか,判定に使用できるダイスも増加する。正気度が0になると死亡してしまうが,逆に言えば0にさえならなければとくにデメリットがなく,狂気に陥るほど強くなっていく。
その代わりに体力の上限は5と低めで,0に達すると即脱落となる。むやみに特攻して生き残れるほど強くはないので,プレイヤー同士でキッチリ相談し,各自の能力を生かして探索を進めるべきだろう。心持ちとしては,怪異ハントの専門家集団として挑むのが丁度いい良いかもしれない。
手番が来たプレイヤーは「移動」「攻撃」「休憩」「アイテム受け渡し」「シナリオ固有アクション」の中から自由な順番で3回実行できる。同じアクションを連続して行うことも可能で,一気に3連続攻撃を繰り出したり,1ターンで長距離を移動したりも可能と,かなり自由に行動を組み立てられる。
判定のルールは非常にシンプルで,規定数のダイスを振って,出た「!」のアイコンの数を数えるだけでOK。例えば指定したユニットに攻撃を宣言した場合,探索者が持つダイス(基本3個)をすべて振って,出たアイコンの数がそのままダメージになる。
筆者が担当したバーンズは拳銃を所持しており,1マス離れた場所に対して攻撃ができる。さらに,同じマスに別の探索者がいれば,攻撃時のダイスを増やすことが可能だ。ということで,さっそく道を塞ぐガストやカルト信者を遠距離から撃破しつつ,手近な陪審員の元へと移動していった。
途中で攻撃アイコンの数が足りずに撃破が難しい場面もあったのだが,探索者が持つ「ストレス値」を消費することで,任意のダイスを1つ指定して振り直せる。払えるストレス値が残っている限りは何度でも連続して振り直せるので,ここぞというタイミングで一気に使うこともできるわけだ。
また,ダイスには触手のマークも描かれており,出た数だけ正気度が低下していくが,先述のとおり正気度は0にさえならなければメリットしかない。狂気を受け入れつつ成長しながら戦う探索者たちの姿は頼もしく,クトゥルフ系の作品とは思えないほど爽快感のあるプレイフィールを味わえる。
とはいえ,カルト教団も大暴れする探索者たちを,ただ傍観しているわけではない。
探索者が3回のアクションを終えると「神話(MYTHOS)カード」がランダムに1枚公開され,何らかの特殊効果が発揮される。もちろん,その内容は「ボス邪神が特殊効果を発揮する」とか「新たな神話生物がポータルから出現する」とか,ロクでもないものばかりだ。
加えて,特殊なアイコンが描かれた神話カードが一定枚数溜まるとボス邪神トラックが進行し,このトラックが最大になるとボス邪神が復活してしまう。これが実質的なタイムリミットとして機能しているので,あまりターンを消費しない攻略法を考える必要がある。
戦闘以外の要素もスッキリとまとめられていて,とくに探索の要素はシンプルながらも面白い処理方法が導入されている。
本作には「探索」という固有のアクションは存在せず,ターンを終えたときエリア内に敵がいなければ自動で探索が行われる仕組みだ。一方,敵がエリア内に存在すると自動で攻撃を仕掛けてくるので,こちらから戦闘を仕掛けて敵を倒しきれないと,探索の機会を失ったうえにダメージを受けてしまう。
「じゃあ攻撃後に移動したらいいんじゃないの?」と思うかもしれないが,移動で敵がいるエリアから離脱しようとすると,自動で敵ユニットが追跡してくる。探索を重ねなければ新たな情報が出てこないが,攻撃しなければ敵はどんどん湧いてくるので,攻撃と移動の判断はかなり悩ましい。
首尾よく探索ができた場合も,必ず良い結果が得られるとは限らない。探索時には専用デッキから「探索カード」を獲得できるのだが,効果は左右のブロックに別れており,入手時にどちらの面を使用するかを選択する。
シンプルに強力な効果を得られることもあれば,特定の効果を得るためにはコストとして体力やストレスを支払うこともあり,デメリットを受け入れざるを得ない場面も少なくないのだ。
またゲームのストーリー面を語るのも探索カードの役割だ。今回のシナリオでは「かつて裁かれた魔女の夫の霊体」が探索カードとして登場し,陪審員の説得に使用する“証拠”として活躍してくれた。
邪神と神話生物はもっと強い。仲間とツァトゥグァに立ち向かえ!
雑魚を蹴散らしながら1人目の陪審員のもとに到達し,魔女の夫たちに力を借りつつ説得に成功するも,2人目の陪審員の確保にはかなり苦労することになった。というのも,陪審員の近くには「ドール」と呼ばれる神話生物が居座っていたのだ。
邪神並みの威圧感を放つドールは,シナリオに任意の神話生物を出現させられる「未知の恐怖」の新要素「UNKNOWN MONSTER」で選ばれた敵ユニットだ。手前のエリアには「同じスペースに他のモンスターがいる間はダメージを与えることができない」という能力を持った「名状しがたきもの」(THE UNNAMABLE)が存在しており,簡単には倒せそうにない。
今回は仲間と相談し,ストレス値を惜しみなく使って名状しがたきものを遠距離攻撃で撃破。そのスキに近接攻撃を得意とする味方が飛び込んでドールを叩くことにした。事前に周囲の敵集団を一掃していたことが功を奏し,作戦は成功。攻撃アクションを連打して無事に撃破成功となった。
そんなこんなで,どうにか残りの陪審員も説得成功。邪神復活の儀式は阻止され,晴れてゲーム終了! ……とはならないのである。あくまで儀式が不完全だっただけで,目標を達成すると即座にツァトゥグァがマップに降臨した。
とはいえ,ツァトゥグァは不完全な状態なので,今なら人間の物理的な攻撃でもダメージを与えられる。というわけで,最後はツァトゥグァの撃破が目的となった。
ボス邪神との戦闘も通常の敵ユニットと同じように処理されるが,1回倒しただけでは勝ったことにならない。体力を0にすると「ステージ」が移行し,能力が強化された形で再び復活。最終段階を撃破してはじめてシナリオクリアなので,最後まで気を抜かずに戦おう。
ツァトゥグァは強大な邪神だが,探索者たちも正気度がいい具合に削れて能力が強化され,攻撃時に使用できるダイスの数も大きく増えている。これまで蓄えたアイテムやストレス値をフル投入し,仲間とともに一斉攻撃を仕掛ければ勝機はある。
“証拠”を提供し終えて用済みになった協力者を身代わりにしたり,足りなくなったストレス値を酒で補ったりしながら一気に攻撃を叩き込んだ探索者たちは,なんとか第1段階を撃破。「これなら勝てるか?」と思った矢先,さっき倒したドールが神話カードの効果で復活してしまった。
各自の正気度,体力,ストレス値がいずれも危険域に達しはじめ,2体を相手にするのは無理かと思われたが,ここで近接攻撃を得意とする仲間がボス邪神&神話生物がひしめく部屋に特攻を仕掛ける。敵ユニットの移動は,多くの場合「近くの最もダメージを受けている探索者」に向けて行われるため,こうすれば遠距離攻撃を持つ探索者は外から安全に攻撃ができる。
最後にはドールを無視し,全員が3回のアクションをすべて攻撃につぎ込むことで,本プレイにおける最終段階のツァトゥグァを撃退することに成功。正気度には多少の余裕があったものの,ストレス値はほぼ使い切り,体力もギリギリの状態での辛勝であった。
今回はショート版でのプレイとなったが,ゲーム終了までにはルール説明を含めて約2時間ほどを要した。しかし,プレイ中には時間経過をあまり感じられず,夢中で遊んでいるうちにゲームが終わっていたような感覚だ。
というのも,本作は重量級のターン制ゲームでありながらダウンタイム(待ち時間)が非常に少ない。敵のアクションは神話カードの効果や,こちらの行動へのリアクションとして処理されるため,暇な時間が発生しにくくなっている。
そうした構造はルール理解の助けにもなっており,各プレイヤーが自分のターンで行う処理を覚えておけば,それだけで問題なくゲームが進行する。正気度やストレス値といった基本システムは,全体的にプレイヤーが有利になるように作られていることもあって,2時間級のゲームとは思えないほど軽快なプレイフィールだった。
そこにダイス,探索カード,神話カードといったランダム要素と,精巧に作り上げられたミニチュアの魅力が合わさって,かなり熱中して遊べる協力ゲームとなっている。
クトゥルフ神話というテーマながら,探索者がやたら強いところは好みが分かれそうだが,神話生物に真っ向から立ち向かうハリウッドスタイルの冒険が楽しみたい人には,これ以上ない作品だろう。
本日,Kickstarterでスタートしたクラウドファンディングでは,海外向けのクラファンでアンロックされたストレッチゴールが,最初からすべて付属する形になるという。リテール版(通常版)には収録されないボス邪神やUNKNOWN MONSTER,探索者が多数用意されるので,この機会を逃す手はない。
支援プランは複数用意され,数量限定の高額なプランでは超巨大なクトゥルフミニチュアと,それを活用した特別ルールが収録されるとのこと。これらの詳細は,Kickstarterのプロジェクトページを確認してほしい。
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