プレイレポート
[プレイレポ]ランダム生成される殺人事件の犯人を推理せよ。「探偵死神は誘う」はローグライトと犯人当てが融合した意欲作だ
本作は“ローグライト+推理アドベンチャー”を謳うタイトルなのだが,この文言だけではイマイチ内容が予想できない人も多いことだろう。早速,ローグライトも推理ものも大好きっ子である筆者が挑戦してみたので,その内容をお伝えしよう。
嘘つき=犯人。ロジックを組み立て,事件の犯人を暴き出せ
突然だが,“嘘つき村と正直村のクイズ”をご存じだろうか。あなたは,片方が必ず嘘をつく住人が住む嘘つき村,片方が必ず正直に答える正直村に続く2つの道の前に立っており,正直村に行きたい。しかし,どちらへ進めばいいのかが分からない。そこへ,どちらの村人か分からない人がやってきた。この村人に1回だけ質問をして,正直村へ行くにはどうすればいいか……という有名なクイズだ。
答えは,どちらかの道を指して「あなたの住んでいる村に行く道はこっちですか?」と聞くこと。指した道が正直村に続く道であれば,正直村の人間でも嘘つき村の人間でも「はい」と答える。指した道が嘘つき村に続く道であれば,正直村の人間でも嘘つき村の人間でも「いいえ」と答える。つまり,村人が「はい」と答えたらそちらの道を進めばいいし,「いいえ」と答えたら,それとは逆のほうの道に行けばいいことになる。
前置きが長くなったが,本作はこうしたロジックをメインにした「犯人当てゲーム」だ。犯人は必ず嘘しか言わず,犯人でない者は必ず本当のことを言う。このルールを元に殺人事件の犯人を絞り込み,プレイヤーは探偵死神として殺人犯を“執行”していく。
実際に例を見てみよう。上の画像は筆者が最初に挑んだ回の,1ステージ目のもの。D・B・Fの3人が容疑者で,犯人は1人。それぞれの主張は,
D「犯人はFじゃない」
B「犯人はDだ」
F「犯人はBだ」
……といった感じになっている。これを読んでいるあなたも,この先を読む前にちょっと考えてみてほしい。
まず,Dが犯人だと仮定してみよう。D曰く,「犯人はFじゃない」らしいが,犯人は嘘をつくので,犯人はFということになる。つまり,Dが犯人だと仮定すると「DとFの2人が犯人」となり,矛盾が発生してしまう。犯人は1人のはずだ。
ということは,Dが犯人だと仮定した考えは間違っており,Dは犯人ではないということになる。そして,Dが犯人でないなら,Dの言っている「犯人はFじゃない」は真実となり,残ったBが犯人ということになる。
こんな感じのロジックで犯人を特定していくわけだが,これは序盤のステージなので推理しやすい内容になっている。ステージが進むと,容疑者がまったく役に立たないことを言っていたり,犯人が2人になったりして,だんだんと複雑になっていく。
序盤の容疑者たちは「推理の役に立つことを言っている」「推理の役に立たないことを言っている」「何も言っていない」の3パターンのうちどれかだ。先程の例は,全員が推理の役に立つことを言ってくれていたうえ,「犯人は1人」という条件下でDの言っていることがクリティカルな内容だったため,運良く最初の情報だけで犯人を推理できた。しかし,いつもこういうわけにはいかないため,カードを使って推理材料を増やしていくことになる。
基本的には,まず「何も言っていない」容疑者がいたら「質問」のカードを使って新たな情報を引き出し,容疑者全員から何かしらの推理材料を得るのがスタート地点だ。
すでに何らかの証言をしている容疑者でも,「質問」カードを重ねて使用することで,最大で3つまで情報を提供してくれる。
それでも分からない場合は,そこからさらにカードを使って絞り込んでいくわけだが,各カードにはコストが設定されていて,使用するごとに所持金が減っていく。
所持金が尽きるとカードを一切使用できなくなるため,情報不足で推理不可能になり,手詰まりになることもある。時には節約も重要となるのだ。
マップ上のイベント選択も重要だ。所持金を使ってカードを購入できるマスや,何らかのアイテムが手に入る宝箱が開けられるマス,何が起きるか分からない「?」のマス,問答無用でお金が引かれるマスなど,種類はさまざま。
しかし,推理を有利に進めるためにカードを購入したのに,所持金切れでカードを使えなくなって,余計に危険になることもある。
エリアを1つクリアするごとに,主人公である探偵死神がなぜこんなことをしているのか,その謎に迫るストーリーイベントが展開される。このイベントシーンに「・」を5つつないだような図があることから,全5エリアではないだろうかと推測したものの,筆者は3エリアくらいでゲームオーバーになることが多かった。
ゲームが進行すると,「犯人の数」と「容疑者の証言」以外に,「殺害された部屋」と「その部屋にいた人数」「殺害された時間にどの部屋に何人いたか」といった要素も加わってくるため,推理も一筋縄ではいかない。
5エリアに到達して,さらに最後まで行って,ラストの難事件まで誤答せずにクリアする……と考えると,至難の業すぎて絶望の淵に叩き込まれたが,回数をこなしていると,ある程度の慣れが出てくるもの。
容疑者の証言に対する着眼点や運さえ良ければカード未使用でクリアできることも多くなってきて,お金をしっかりと節約していける。後半は役に立つ情報をカードで引き出していかないとどうにもならないことが多いため,序盤〜中盤で節約に成功すれば,クリアが見えてくる。
こういった事情が,回数をこなすうちに体で理解できてきて,ついに,本稿の締切間際にクリアに成功。最終ステージをクリアできたときの達成感は凄まじかった。頭が良い人ならスイスイいけちゃうのかもしれないけど。
とにかく,頭を使うゲーム……というか,頭しか使わないゲームなので,きっぱりと好みが分かれるゲームだろう。個人的にはバッチリ楽しませてもらった。クリア時の結果を見ると,クリアタイムは50分だったので,1エリアあたり10分で駆け抜けたことになる。慣れとは恐ろしい。まあ,累計では何時間もかかっているのだが。
やや荒削りな部分も見受けられるが,新たな分野に足を踏み出した意欲作
「ローグライト×犯人当て」という,他に類を見ないゲームなので,とにかく新鮮な感覚で遊べた。事件の内容は毎回変化するので,プレイ回数を重ねても,ローグライト系の序盤にありがちな“消化試合感”がない。後々に備え,いかに序盤を節約して進むか。良いカードを引けるかの運否天賦。ゲーム内のキャラが育つのではなく,プレイヤー自身にスキルが蓄積していくのがローグ系というジャンルだが,変わった題材でありながら,本作もまた確かにローグライトだと感じさせてくれる。
ただ,改良の余地はあるように感じる。例えば,「4人中2人が犯人」というステージで,証言が4人とも「私は犯人ではない」の場合があった。「犯人は2人。ということは,この中の2人は嘘をついている」わけだが,全員に「犯人ではない」と主張されると,「犯人ではないので本当のことを言っている=犯人ではない」,「犯人なので嘘をついている=犯人ではない」になり,推理の取っ掛かりがなく,運に任せて選択するしかなくなってしまう。
もちろん毎回こんなことにはならないし,ここからカードを使っていけば打破できることもあるが,お金が残り少ない状態で,容疑者が何も言っていない状態から「質問」カードで引き出した情報がこれだった場合は詰んでしまう。ローグライトなので,運次第で「そういうこともある」と言われればそうではあるのだが。
なお,本作は発売日以降定期的にアップデートが行われており,5月27日には難度の緩和を目的としたバランス調整も行われている。筆者がプレイしたのはそれ以前のため,上記の問題点も取り除かれているかもしれない。
詰まる人はとことん詰まりそうではあるが,「何度も楽しめる,ランダム生成の犯人当てゲーム」というだけで貴重なタイトル。頭の体操が好きな人にはぜひプレイしてみてほしい作品だ。自信のある人は,ぜひ,“2周目”にも挑戦していただきたい。
「探偵死神は誘う」公式サイト
- 関連タイトル:
探偵死神は誘う
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