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[インタビュー]仮面の主人公がダークな世界で戦う「Venture to the Vile」。デモ版のインプレッションとプロデューサーインタビューをお届け
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印刷2023/07/25 15:09

インタビュー

[インタビュー]仮面の主人公がダークな世界で戦う「Venture to the Vile」。デモ版のインプレッションとプロデューサーインタビューをお届け

 2023年7月14〜16日に京都府のみやこめっせにおいて,インディーゲームイベント「BitSummit Let's Go!!」が開催された。アニプレックスブースには,PC用新作メトロイドヴァニア「Venture to the Vile」デモ版が出展され,来場者の注目を集めていた。まだまだ明かされていない部分が多い作品だが,デモ版のインプレッションプロデューサーインタビューをお届けしよう。

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アニプレックスブースの「Venture to the Vile」コーナー
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仮面の主人公がダークな世界で戦う「Venture to the Vile」


 主人公は鹿の仮面を身に付けた謎の人物。腕を刃物のように変形させたり,ダブルジャンプをしたりと,どうやらただ者ではないようだ。デモ版の舞台となるのは陰鬱な沼地で,行く手を阻んでくる昆虫のような敵を,腕の刃物で斬り付けて倒していく。敵の攻撃に合わせてタイミング良くパリィすれば,弾いて強烈な一撃を叩き込めるため,動きを観察するのも重要。倒した敵からは,オレンジ色に輝く結晶のような物体が飛び散り,主人公はこれを集めることができる。この結晶が何に役立つかは不明だが,敵の身体から出たものをわざわざ集めるあたりに,物語のポイントがありそうだ。

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 システム的には,ダブルジャンプを駆使して障害を越えていく横スクロールアクションだが,“奥”や“手前”のフィールドに移動できるのが大きな特徴となっている。沼地に置かれたスイッチを操作することで,奥側に橋を架けたり,手前に行ける道を渡ったりできるため,フィールドは横方向だけでなく立体的に広がっている。「“奥”に怪しげな場所が見えるから,行く方法を考える」など,周囲の景色が探索のモチベーションを上げてくれるのが面白い。

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フィールドの奥にも道が続いている
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歩いて行くと奥のフィールドで冒険できるようになった

 ステージの奥では,バッタのようなボスが登場。素早い動きで体当たりしてくるだけでなく,身体からツタか触手のようなものを伸ばしてくる。果たしてこの世界では何が起きているのだろうか? ボスを倒すと「Beast Dash」なる能力が手に入った。Beast Dashを使うと前方へ素早くダッシュできるようだ。マップのあちこちで試してみたくなるが,残念ながらデモ版はここで終了となった。デモ版は物語よりもアクションにフォーカスした内容になっていたが,ストーリーも謎に満ちており,ゲーム本編が楽しみに感じる。

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ステージの奥にはバッタのようなボスが
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倒すと主人公に異変が起こる
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新たな能力「Beast Dash」を手に入れた。前方へ素早くダッシュできるようだが,デモ版では試せなかった


メトロイドヴァニアにオープンワールドのエッセンスを取り入れ,“聖地”日本のユーザーに新体験を届ける


 ここからは,「Venture to the Vile」を開発するCut to Bitsで同作のプロデューサーを務める,小林正男氏にゲームのあれこれについて聞いてみた。

「Venture to the Vile」を開発するCut to Bitsで同作のプロデューサーを務める小林正男氏
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4Gamer:
 よろしくお願いします。まずは「Venture to the Vile」の概要について教えてください。

小林正男氏(以下,小林氏):
 「Venture to the Vile」は2Dと3Dの性質を併せ持ったメトロイドヴァニアです。主人公は「ヴァイル」の力を得てさまざまな能力を獲得し,これを駆使して多彩な仕掛けのあるフィールドを冒険していきます。昼夜のサイクルや天候変化といった,オープンワールドゲームの要素が盛り込まれているところが特徴となっています。

 現在は,いかに従来作とは違ったメトロイドヴァニアを提供できるかを考えて開発を進めている状態です。それというのも,メトロイドヴァニアのゲームデザインはここ20年ほどほとんど変わっていないと考えているからです。

4Gamer:
 なるほど。そこでメトロイドヴァニアのゲームデザインに変化を加えようと。

小林氏:
 我々Cut to Bitsは,AAAタイトルのオープンワールドに携わった5人で起業したデベロッパです。メンバーはメトロイドヴァニアというジャンルが好きなので,これまでの開発経験を活かし,オープンワールド要素を取り入れたメトロイドヴァニアを作ろうと決めました。そのため「Venture to the Vile」は,オープンワールド的なストーリー性やサブクエストシステム,風景による誘導といった要素を持つ,独特なものとなっています。

フィールドでは時間の経過と共に昼夜がサイクルしていく
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4Gamer:
 昼夜のサイクルや天候変化を取り入れることで,プレイヤーが動かなくても世界が変化するわけですね。

小林氏:
 そうです。同じ場所であっても,昼と夜,天候の違いなどにより,出現する敵やアイテム,NPCの種類・配置が変わってきます。メトロイドヴァニアというジャンル的に同じ場所を行き来することもありますが,行きと帰りで景色が違うどころか,出てくる敵も変化します。また,一定の時間しかNPCがいないとか,特定の天候にならないとアイテムが出現しないといったことも起こります。我々は,ユーザーさんの探検に対し,発見や驚きを提供していきたいと考えています。

4Gamer:
 プレイ中は,画面の奥に向けて橋が架かり,ついさっきまで背景だった場所で冒険できるのも印象的でした。

小林氏:
 オープンワールドゲームのフィーチャーをメトロイドヴァニアに取り入れた「Venture to the Vile」ならではの遊びとなります。オープンワールドゲームでは,遠くに見える山や街などに向けて旅をし,そこにたどり着くことができます。遠景の場所まで世界が広がっており,「面白い場所が見えるから,歩いて行こう!」という行動に意味があるわけです。

 一方,メトロイドヴァニアなど2Dアクションゲームの遠景は単なる背景であり,そこにたどり着くことはできません。前へ前へと歩いて行くのみです。しかし,「Venture to the Vile」の世界は2Dアクションゲームのようでありつつも世界に奥行きがあります。その先に面白そうな建物があるなら,実際に探索へ赴ける。“見えるところには行ける”のが「Venture to the Vile」のポリシーなんです。

スイッチを入れると奥のフィールドに向けて橋が架かった
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4Gamer:
 ゲームを進めると主人公が「ヴァイル」の力を得ていくそうですが,どのような能力になるのでしょうか。

小林氏:
 現在公開されているのは,「刃物のような手による基本攻撃」「ダブルジャンプ」「ウォールジャンプ」「腕から触手のようなものを伸ばし,空中のオブジェクトに絡めての特殊移動」といったところです。これ以外にも色々な能力を得ることができ,そのたびに行動範囲が広がっていきます。どのようなものになるかはゲーム本編を楽しみにしていてください。

4Gamer:
 戦闘システムを作っていくうえでは,どういった部分に気を付けていますか?

小林氏:
 ユーザーさんがサクサク快適にプレイできるレスポンスの良い戦闘を目指しています。なるべくユーザーさんからコントロールを奪わないように,演出の長すぎる技は作らないといったことを心掛けています。

主人公は刃物のような腕で攻撃できる
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4Gamer:
 物語の雰囲気はどのようなものになるのでしょうか。

小林氏:
 アートワークでお分かりいただけるように,英国のビクトリア朝的な雰囲気を目指していて,物語のトーンも少し暗めものとなります。NPCはたくさん登場し,それぞれがサブクエストと,そこで展開するストーリーを持っており,「Venture to the Vile」の世界観が深彫りされていきます。サブクエストにはコメディタッチのものや,恋愛がテーマのものなど,暗めでない話も用意してあります。ただ,興味のないサブクエストはスルーしても大丈夫な作りになっています。

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4Gamer:
 オリジナルコミックを出版するKickstarterキャンペーン(リンク)が展開されているのがユニークだと感じられました。

小林氏:
 我々はモントリオールにスタジオを構えていますが,そこでコミックアーティストたちとワークスペースをシェアしていて,そこからオリジナルコミックの製作が実現しました。スタジオの半分が我々,もう半分がコミックアーティストという状態なんですよ(笑)。

オリジナルコミックを出版するKickstarterキャンペーンを展開中
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4Gamer:
 それは面白いですね。

小林氏:
 単にゲームクリエイター同士で固まるのではなく,異なるジャンルのクリエイターとワークスペースをシェアできたら面白そうだというのが元々の発想です。知り合いのKarl Kerschlというコミックアーティストがワークスペースを探していたので,「じゃあ一緒にやろうよ!」となったのが2019年のことです。そして彼はLethal Comicsというインディーコミックレーベル(リンク)を立ち上げ,我々はCut to Bitsとして「Venture to the Vile」を開発することになりました。いつのまにか彼にモンスターデザインを手伝ってもらったり,「Venture to the Vile」のコミックを作ってもらい,私は私でマーケティングやビジネスコンサルティングでリーサルコミックを手伝う……といったコラボ状態になっているわけです。

4Gamer:
 お互いが得意分野で助け合い,刺激し合っているわけですね。

小林氏:
 そうですね。トレイラーやキーアートに出てくるウサギのモンスターがKerschlのデザインです。我々が難航しているときも,Kerschlが素早く手直しをしてくれるので助かっていますよ。Kerschl自身はDCコミックで「Teen Titans:Year One」「Adventures of Superman」「ゴッサム・アカデミー」などの作品を手がけ,「Abominable Charles Christopher」で2011年アイズナー賞のベストデジタルコミック部門で受賞しています。もう1人のAndy Belangerは,DCやImage Comics,Wildstormといった出版社で仕事をし,最近はメガデス35周年のコミックアンソロジーに参加しています。

4Gamer:
 オリジナルコミックの内容はどんなものなのでしょうか。

小林氏:
 NPCたちを主人公にし,ゲーム本編の前日譚を描きます。「Venture to the Vile」の開発コンセプトの1つは,“世界が面白い,NPCたちが面白い”というものです。ただ,これはゲーム本編をプレイしてもらうまでは伝わりにくいものでもあるため,オリジナルコミックでの展開を考えました。オリジナルコミック自体はゲームの発売前に発送しますので,世界観に興味を持たれた方はぜひ読んでみてください。

4Gamer:
 オリジナルコミックの日本語版はありますか。

小林氏:
 Kickstarterキャンペーンで日本人ユーザーさんからご支援いただけるようなら,日本語対応を考えます。オリジナルコミックを日本語で読みたい方は,ぜひお願いします。

4Gamer:
 では最後に,読者に向けてメッセージをお願いします。

小林氏:
 メトロイドヴァニアは日本から始まったジャンルであり,ある意味,日本は“聖地”なんです。「Venture to the Vile」はメトロイドヴァニア好きが作ったゲームですし,“聖地”のユーザーさんに喜んでもらえるならば我々も光栄です。興味を持たれた方は,ぜひプレイしてみてください。

4Gamer:
 ありがとうございました。

 「Venture to the Vile」の対応機種は「Steamほか」となっており,発売日は2024年が予定されている。すべてが謎めいた本作,これからの続報に期待しよう。

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(C)Studio Cut to bits / Aniplex


「Venture to the Vile」公式サイト


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