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ドリルで真っ直ぐ突き進め。世のドリラーとアクション好きにもっと知ってほしい,クセありな爽快アクション「Pepper Grinder」
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印刷2024/05/05 12:00

レビュー

ドリルで真っ直ぐ突き進め。世のドリラーとアクション好きにもっと知ってほしい,クセありな爽快アクション「Pepper Grinder」

今までこれほどまでに“ドリル感”のあるゲームがあっただろうか――

 そんな衝撃を与えてくれたのが,2024年3月29日にリリースされた「Pepper Grinder」(ペッパーグラインダー)。インディーゲーム開発者Riv Hester氏のスタジオAhr Echが手掛ける2Dプラットフォームアクションだ。

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 巨大なドリルを手に,岩場に溶岩地帯,雪山に街中と,どんなところもドルドルドルッと突き進み,どんなものも粉々にする。そんなスリリングなドリリングで尖ったドリルゲームであり,これまた尖ったインディーレーベルのDevolver Digitalがパブリッシングを担当している。

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 ドリル。それは真っ直ぐ突き進むもの。螺旋を描くその力はあらゆるものを切り開き,そして天と地と明日をも貫く。不器用で荒々しく,その打算のない純然たるロー・パワー(Raw Power)によってサーチ&デストロイ(Search & Destroy)し,ときに深く潜り,ときに天元を突破する。

 このように,人の心を突き動かすなにかを感じさせてくれるもの――それがドリルだ。

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 そんなドリルだが,子どものころに電動ドリルのおもちゃで遊び,アニメや特撮のドリルメカ・ドリル装備にロマンを感じ,大人になった今も心にドリルを持ち続けている人たちはけっこういらっしゃるかと思う。もちろん,現役ドリル世代も。

 このペッパーグラインダーというゲーム,そんな皆さんの心のドリルがドルルルンッと回転して止まらなくなる魅力にあふれた作品なのだ。

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「Pepper Grinder」公式サイト



ドリル界に衝撃! 人の心を突き動かすドリル感,ドリル精神を熱く感じる2Dアクション


 ゲームの物語は,主人公のペッパーが乗る船が難破し,海岸に打ち上げられたシーンから始まる。ナーリングスという悪者たちに積み荷の財宝を盗まれ,それを追いかけるペッパーだったが,つり橋に差し掛かったところ橋を切られ転落。わわわっ,たいへんなピンチである。

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 そのときペッパーはとっさにあるものを掴む。そう,それはもちろんドリルである。
 ペッパーは,自身の身体ほどある大きなドリルが付いたグラインダーを手に,奪われた財宝を取り戻すべくナーリングスを追いかけるのだ。

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 この導入,いかがでしょう? 「あっ! 危ないっ」の状況で手を伸ばしたところにあるドリル。なにかを突き動かしてくれるような,実にドリル的でたまらないものがありますよね?
 ペッパーはそのまま転落し,スタッと着地した採掘地(ステージ1)にて初めてドリルを起動させるのだが,このときなにかを決意したかのようにブルーンとドリルを回すところがこれまたクールでたまらない。

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 プレイヤーの目的は単純明快。ひたすらドリルで突き進むだけ。ステージを選択し,掘削できるところをドゥルンドゥルンと掘り進み,ギミックを動かしたり敵をバチンと弾いたりしながらゴールを目指す。

 基本操作は「ドリルを回す」「ジャンプ」くらいで,ほかにドリルでギミックを動かしたりワイヤーフックでピョンピョン進んだりするアクションはあるものの,複雑な操作は求められない。
 基本,ドリルは回しっぱなし。岩場に水中,氷,溶岩とどんな場所だって,ドリルが突破口を開いてくれる。

掘って移動しているときはドリルを回すボタンから指を離してもいいのだけど,でもなんだか押しっぱなしにしたくなる。このへん「アクションは基本Bダッシュ!」みたいなアティチュードも感じる
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 さてここからが本番,“ドリル感”の話だ。ペッパーの身体ほどあるドリルは,それだけに強大な力を持っており,「スティックを右に傾けたら右,上にすれば上」なんて簡単には動かせない。ちょっと曲がろうにもとにかく振り回され,思いもよらぬ方向に向かったり飛び出したりする。

 この,けっして制御しきれない,「制御されてたまるか」というドリルの意志すら感じるドリル表現が実に素晴らしいのだ。

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 「えっ,さっき『ドリルとは真っ直ぐ突き進むもの』って言ってたけど,それじゃ真っ直ぐ突き進めなくない?」という声が聞こえた気がするので言い訳……じゃなくて解説すると,ステージはただ真っ直ぐな一本道ではない。グネグネと曲がった場所があれば,障害を避けながら進まなければならないわけである。

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 また,ちょっと外れたところにオタカラが埋まっていたり,ひびの入った怪しい壁があったりと「ちょっと見てこよっかな?」という気持ちになるものがいろいろがあって,こういった内外的要因で道を逸れることも少なくない。だが,それらも含めて真っ直ぐ突き進んでいると言えるのだ。

 周囲からは道を逸れているように見えるものの,物理的な意味ではなく“自分の選んだ進みかた”を突き進んでいるわけで,つまりそれはドリル的突き進みであり,人生の歩みすら感じさせるものでもある。

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 ……うん? なにを言っているんだか分からなくなってきたぞ? なんだか話が変な方向にいったので仕切り直します。

 ドリルドリルと言ってきたが,これだけ推せる理由にはアクションゲームとしての完成度や爽快感がすこぶる高いということが大前提にある。


 アクションはその挙動にクセがあるぶん,うまく地中に埋まっているオタカラを一筆書きのように集められたり,狙った方向にタイミングよく飛び出せたりしたときに得られる達成感や爽快感はかなりのものだ。
 挙動にクセはあれどアクションは軽やかで,リズムに乗ってポンッポンッと進んでいくことがクリアにつながるところも心地よい。

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 数あるギミックもユーモアにあふれ,「なるほどこう動かすのか!」と気がついたときに得られる感覚を含めてよくできている。もちろんそれらを動かすのはドリルで,自らを大砲で打ち上げたり,めちゃ強なメカを動かして建物をぶち壊しながら進んだりと,とにかく楽しい。

ナーリングスたちの船に船底から潜入。ドリルで突き進んでいくとどんどん浸水していき……これは一体,どうなっちゃうんだ〜?
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ヒャッホーイッ! って感じで走らせるスノーモービルも爽快
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 難度ややり応えもしっかりあり,初見で乗り越えるのは困難な場所や簡単に倒せないボスがけっこうある。それらをトライ&エラーで乗り越えていくわけだが,やられたときのリスタートが早いので「うくくっ……もう一度」となったときにストレスなく繰り返し挑める。それによってやめられない,とまらない。ドリルの回転のように。

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 衣装やステージ開放などに使うガイコツのメダルを集めるという収集要素もあるのだが,「そういうのって序盤は簡単にコンプリートさせてくれない?」と思うくらい,これまた最初からしっかり探さないと見つからないというやり応えだ。

みんな大好き,ガチャガチャもあるよ
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 色鮮やかなグラフィックス,キャラクターのしぐさや表情豊かなアニメーションといったビジュアル面も大きな魅力だが,サウンドエフェクトやBGMも同じように注目してほしい。
 ドリルの起動音や掘削音のドリル感はもちろんのこと,回復アイテムのカブをドリルで掘り起こしたときのポリッという音や,道に落ちているしゃれこうべを砕いたときのカリッという音など,細かいところまでこだわり抜かれている。ちょっと気の抜けた感じがあるのもなんかいい。

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 BGMは,ドラムンベースにデジタルロック,シンセポップ,浮遊感あるエレクトロなど,ステージや場面によってガラッと変わり,音楽好きにはめちゃ刺さるはず。ゲームのBGMでは珍しい感じのソウルやファンク,アフロビートなものもあって,これまた「The funk soul brother, Check it out now!」なんて歌いながら勧めたい気持ちになる。

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 それらSEやBGMの一つひとつは尖っているのだが,その使われ方は全体的にはミニマルに収まっているというか,過度に盛り上げたり煽ったりしてこない感じもいい。
 気持ちの高まりはドリル音が多くを担っているわけであり,このあたり絶妙なバランスとセンスの良さを感じる。めっちゃ渋いしビビるで。

やられたときも,「アッ」という声とシュルシュルシュル……とドリルのパワーが落ちていく感じでスッと終わり,そしてすぐリスタートする感じがとても刹那的でよい
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 ゲームのボリューム的には,クリアを目指すだけなら5〜6時間あれば終わるくらい。アイテム収集のコンプを目指すとなるともう少し遊べるとはいえ,「ちょっと物足りないな」と感じるところはわずかながらの残念なポイントだろうか。
 といっても,空いた時間にぱっと遊べる気軽さ,さくっとプレイで満足できる爽快さがあるので,「これだけ……?」みたいなことはないはず。
 かくいう筆者,クリアして1か月経った今も,さっと立ち上げドルドルドル……と1ステージ遊んで「みたされる〜!」という日が続いています。

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 Steamではリリースからこれまで「非常に好評」と評価されている本作だが,個人的には「もっと注目されていいはず!」と言いたいくらいに,なんか……あまり知られていないんじゃ? とも感じる。
 アクションの完成度はもちろん,ドリルゲームのエポックメイキングな作品とも呼べそうな「Pepper Grinder」。興味を持ったらぜひぜひディグってみてほしい。

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