レビュー
[レビュー]まったり遊ぶ? それともテキパキ進める? 「Station to Station」はどちらのプレイスタイルでも楽しめる鉄道敷設パズルゲームだ
気分は小旅行? 気軽にまったり&テキパキ遊べるゲーム性と温かみのあるアートが魅力の鉄道敷設パズル
メインのゲームモードは,6つのエリアを順番にクリアしていくというもの。各エリアにはそれぞれ5〜6個のステージが用意されており,それをすべてクリアすると次のエリアが開放される。
ステージでプレイヤーがすることは,基本的に“駅と駅をつなぐ”ことのみ。ステージのあちこちにある都市や建物に隣接するよう駅を配置し,線路を敷いて駅どうしをつなぐと,線路の上を蒸気機関車が走り出す。
小麦を生産する「小麦畑」や,小麦から小麦粉を生産する「製粉所」といったように,建物にはそれぞれ「生産できるもの」「必要なもの」が設定されている。それらを鉄道でつなぐと「小麦畑の小麦で小麦粉が作れるようになった」といった形で産業が生まれ,プレイヤーは資金を獲得。さらに駅を中心に地域が活性化し,一定の条件をクリアすることで新たな建物や町がアンロックされていく。
小麦粉を使ってパンを作る「パン屋」を「製粉所」と線路でつなぐとパンの生産が始まり,それで得た資金で今度はパンを必要としている「都市」と「パン屋」をつなぎ,さらなる資金を得る。このように,需要と供給を考えて駅と駅を結び,鉄道網を拡大していくのだ。
駅や線路の設置には資金が必要となるので,スタート時の予算や駅どうしをつなぐことで得られる資金をやりくりしながらクリアを目指すことになる。中盤のステージからは,線路の価格が半額になる「安価な線路」や,通常価格の30%で鉄道橋を作れる「安価な橋」といったカードがアンロックされるので,それらも効率よく使用し,鉄道網を広げていこう。ステージに登場する建物や街のすべてに駅を設置し,鉄道でつなぐ(全部の駅を線路でつなぐ必要はない)とステージクリアだ。
見た目は鉄道経営SLGっぽいが,資金は線路をつないだときに得られるだけで,経営シムのような経営要素はない。パズルとしてはなかなかの難度で,中盤のステージ以降は,カードをうまくやりくりしないと資金が尽きてしまうステージもある。失敗してもじっくり考えて,何度もトライしてクリアを目指そう。
大きな魅力となっているのが,やはりアートや演出といったビジュアル面。居心地の良さを感じさせる,温かみのあるボクセルアートはもちろん,線路がつながったことによる地域の活性化を表すときの,モノクロな世界に鮮やかな色が広がっていく演出はとても感動的だ。
まるでドミノ倒しかのように「パタパタパタパタ……」と敷かれる線路,空から「ストーンッ」と落ちてきて設置されるアンロックされた建物などの表現も楽しく,うまく線路が敷けたとき/つなげられたときの気持ちと相まって,とてもいい感じの心地よさが得られる。
影の品質や視覚効果,被写界深度,モーションブラーの強度など,グラフィックス設定で調整できる項目がたくさんあるので,好みの映像でミニチュア世界を描き出せるのもうれしい。
といったわけで,美しいビジュアルを眺めながら,時間をかけてじっくりと楽しみたいゲームだが,実はけっこうアクティブにも遊べる。むしろ鉄道経営シムなどのシミュレーション好きならば,否応なくアクティブになるであろう要素がたっぷりあるのだ。
ステージにはクリア条件のほかに,「○○ドル以上を残してクリアする」「○○メートル以上の線路を敷く」などのチャレンジが用意されているのだが,これが「線路の長さの合計を○○メートル以内に収める」「カードを使って○○ドル以上節約する」といった,シム好きの心に火をつけてくるようなお題が多い(逆に,「ステージにいるラクダを4匹見つけて」という,ゆるふわ? なチャレンジもある)。
チャレンジを抜きにしても,「きれいに線路を敷きたい」「少しでも資金を減らさないよう,駅と駅を効率よくつなぎたい」といったこだわりのある遊びもできる。そして,一度設置した線路や駅は動かせないことにより,「ぐぬぅ……○手前につないだ線路をもう少し外側にしておけば,この1本をきれいなカーブで設置できたのにぃ」といった,悔しいが,しかしたまらない感覚も味わえるのだ。
自身のこだわりをもった鉄道計画のとおりに線路が敷けて,さらに各チャレンジをクリアしたときの達成感は格別なものがある。シミュレーションゲームをしない人に,経営シムの面白さの一部にちょっと触れてもらう……なんて勧め方もできるかもしれない。
ステージの大きさや自然環境の種類,崖の高さ,産業の種類,資金の量(難度)を設定して遊べるモード「カスタムゲーム」を選択すれば,お金を気にせず駅や線路を置いて街づくりを楽しむサンドボックス的な遊びもできるし,高難度の条件でやり応えあるパズルにも挑戦できる。
地域が活性化しても極端に風景が変わるわけではなく,また森林地帯や砂漠,渓谷とステージの種類はあるものの,自然環境の特性によるパズル的なプレイ感の違いもほぼない。そのため,「一度遊び始めると止まらなくなるけど,一気に何ステージもやるとすぐ飽きを感じてしまうかも?」と思うところもあるが,1日に1,2ステージをプレイし,まったりと癒しの時間を過ごす(または,高難度設定のステージに集中して遊ぶ)というプレイスタイルに合っていそうだ。
ゲームの温かみのある空気感とアート面の魅力を味わいながらゆっくり遊ぶもよし,さまざまな達成条件のクリアを目指しつつ,計画的な路線網の構築をするもよし。気軽にまったり&テキパキ遊べる「Station to Station」は,ちょっと空いた時間に小旅行気分で楽しめる良質なパズルゲームだ。
- 関連タイトル:
Station to Station
- この記事のURL: