プレイレポート
[プレイレポ]「ペルソナ3 リロード」でペルソナデビューを。現在のシリーズ作品の礎となったP3が,美しく,遊びやすくなって帰ってきた
ゲームファンにはもう説明不要であろう,国内外で高い人気を誇るペルソナシリーズだが,現在の躍進のきっかけになったのが,それまでのシリーズ作品から大きくイメージを変えた「ペルソナ3」だった。その作品が,一新されたグラフィックスや現代風に遊びやすく改良されたUIや操作性で,PCや現行ハードで楽しめるわけだ。
これを機に,現在のペルソナシリーズの礎を築いたペルソナ3に初めて触れる人,初めてペルソナシリーズに挑む人も少なくないだろう。ぶっちゃけた話,実は筆者もその一人。ペルソナ3という作品に興味を持ち続けながらも,タイミングが合わずしっかりとプレイできていなかったのだ。
そんな,ペルソナ3をほぼ知らないに等しい人間(筆者)の視点をとおして,本作序盤のプレイレポートをお送りする。この作品でペルソナデビューを考えている人,「なんとなくは知っているけど遊んだことはない」や「ペルソナ5はプレイしたけどそれ以前の作品は未プレイ」といった人たちの参考になれば幸いだ。
「ペルソナ3 リロード」公式サイト
いきなりの異変,特別な力への目覚め。出だしから畳み掛けてくる物語
物語は,転校生である主人公が,転入先の学生寮へ向かうところから始まる。最寄りの駅に着いた主人公だが,なんだか様子がおかしい。空の色はおかしいし,街のあちこちに棺が立っている。地面にも,めっちゃ血みたいなのがあるけど……ゲームが始まっていきなり「えっ,な,なな何これぇ……」な展開だ。
寮に着くと,先輩や同年代の寮生が出迎えてくれた。ひとりは一学年上の学年の生徒会長・桐条美鶴,もうひとりは同学年の岳羽ゆかり。ひとつ屋根の下で暮らすことになる仲間が,こんな可愛い女の子だなんて。トゥンクと胸が高鳴る……が,アレ? ふたりとも,何やら銃のような物を身に着けている。なんだか物騒だな……流行りのファッションとか?
寮に入ると,何やら署名をさせられた。寮生名簿かな? 我が名は不王芸魔(4Gamer)……っと |
こんなときに,なぜ? という感じで困惑するゆかりと,どうやら自分がくることを知っていたらしい美鶴 |
入ってみて思ったけど,この寮,内装スゴくない? 高級ホテルみたいなんですけど…… |
銃もそうだが,それにしても不思議なことばかりである。さっき外で見た棺みたいなのも説明がないし,「さっきの署名は何?」とゆかりに聞いても「何それ?」と返され,プチホラー的な雰囲気。何なんだろうなぁ。怖いなぁ,怖いなぁ……と思いつつも,転入した私立月光館学園での学園生活がスタートした。
……と思ったその矢先。とある夜,寮に地響きが! 寝ていた主人公の部屋にゆかりが部屋にやってきて,一緒に屋上へ逃げることに。
屋上に着くと,そこに現れたのが巨大な謎の化け物。ゆかりは持っていた例の銃を自分に向けて引き金を引こうとするが,敵の攻撃によって銃を弾かれてしまう。それを拾い上げ,何者かの意思に操られるかのようにこめかみに当てて引き金を引く主人公。すると,不気味な月夜に,「オルフェウス」というこちらもまた謎の存在が現れる。主人公の意思で動くオルフェウスの力で化け物は撃退できたが,これは一体,何が何やら……?
美鶴たちの話によると,夜中の0時を過ぎると「影時間」と呼ばれる特殊な世界が発現し,世の中には,この影時間を認識できる人とできない人がいるらしい。認識できない人は棺のような状態になり,影時間の記憶は残らない。認識できる人は,主人公やゆかりのように影時間でも行動でき,「ペルソナ」と呼ばれる力に覚醒することがある。
そして影時間にはシャドウと呼ばれる,寮の屋上に現れたような謎の敵が徘徊しており,この学生寮に住む学生たちは,影時間にシャドウたちと戦っているというのだ。
なるほど。寮に着いたあの日はまさにこの影時間に入っていて,それを知らず普通に歩いていたというわけだったのか。そして,自分にはその特殊な時間に動けて,特別な力でもって敵と戦えると。……己の中二心をビンビンに刺激してくれる設定である。
昼は学園生活,夜はダンジョン探索
日常×非日常な青春エブリデイを過ごそう
こうして主人公は,昼間は普通に学生生活を送り,寮に帰宅した後は,影時間に出現するタルタロスというダンジョン探索に乗り出すことになる。ペルソナ3の物語はカレンダーで進行し,プレイヤーの選択による日々の行動が,物語の展開につながっていく。
ストーリー進行に深くかかわるのが,影時間でのタルタロス探索である。影時間やシャドウといった怪異はなぜ発生するようになったのか。そもそも,なぜ影時間というものが生まれたのか。どうやらペルソナ使いの先輩たちは,タルタロスの頂上にその謎を解く何かがあると確信しているようだ。そういうことであれば,タルタロスの踏破を目指しましょう。
タルタロスはフロアの構造が毎日変化するダンジョンになっている。そこにはシャドウが徘徊しており,接触すると戦闘となる。宝箱や破壊可能なオブジェクトなどもあり,それらをチェックしながら隅々まで探索。マップを確認し,「あらかた調べ終えたな」と思ったら,上のフロアへと続く階段を上がる……という感じで進めていく。
戦闘はターン制で,武器やペルソナを駆使して弱点を突くスタイルの戦いが繰り広げられる。シャドウには何らかの弱点が設定されていて,主人公と仲間のペルソナによる攻撃で,弱点を狙っていく。「火炎」や「氷結」といった属性のほか,物理攻撃にも「斬撃」「打撃」「貫通」といった種類があり,それらが弱点となるシャドウもいる。
弱点を突けると,そのシャドウはしばらく行動不能になり,弱点を突いた味方キャラは「1MORE」という,再行動が可能な状態になる。ゲームが少し進むと,仲間にターンをまわす「シフト」も可能になるので,「このシャドウの弱点は,えーと……疾風か。じゃあ,ゆかりのガル(※疾風属性攻撃)だな」という感じで,弱点を突く→次の敵の弱点を調べる→その敵の弱点を突ける仲間にターンをまわす,といった流れで的確に弱点を突いていくことで,「ずっとこちらのターン!」みたいな立ち回りも可能になる。
属性と弱点があるのはこちらも同じ。シャドウに弱点を突かれると,その一手次第でパーティ全体が大ピンチになることもある。相手がどんな属性攻撃を使ってくるか,気を抜かずに見極めよう。
こうしてシャドウの弱点を突いて全員をダウンさせると,味方の「総攻撃」が可能になる。これは,味方が一斉に襲いかかってボッコボコにするという爽快感のある攻撃で,普通に攻撃するよりも大きなダメージを与えられる。「敵の弱点を突いて大ダメージ!」というのはRPGでよくあるシステムだが,本作の場合はどちらかというと弱点突きは行動不能にするためのもので,最終的にはこの総攻撃を発動させるのが目当てと言ってもいい。
戦闘に勝つと,経験値を得て主人公たちやペルソナがレベルアップしていく。ときおり「シャッフルタイム」というものが発生し,追加で経験値やお金,新たなペルソナなどを獲得できる。その名のとおりシャッフルされたタロットカードからひとつを選ぶというものなのだが,このご褒美タイム感がけっこういい。
強敵たちと戦ううえで大事なのが,パーティメンバーと主人公のペルソナの強化。ふつう,ペルソナはひとりに1体なのだが,何やら不思議な力をもつ主人公は,複数のペルソナを持ち,自由に付け替えられる。先述のベルベットルームでは,入手したペルソナを合体が可能で,新たなペルソナを生み出し,育てていく楽しみがある。
効率よく弱点を突いて総攻撃を決めたときの爽快感で戦闘がマンネリ化せず,戦闘後のシャッフルタイムで何が得られるかのワクワク感もある。また敵はシンボルエンカウントなので,探索メインで戦いたくないときはダッシュなどを活用して避けることも可能だ。
「サクサクと楽しめて,得るものも大きい」という,探索とバトルその両方が理想的なつくりとなっていると言えるだろう。
タルタロス内ではたまに1階への帰還装置が見つかることがあり,これを使えば,いつでも1階に戻ってタルタロスから出る=その日の探索を終えることができる。固定階には転送装置もあり,これを起動することで1階とその階を行き来できるようになる。基本的には転送装置の発見を一区切りとしつつ,戦闘で消耗したなと感じたときに帰還装置を見つけたら,その日の探索はそこで打ち切るという流れになりそうだ。
このように,タルタロス内の探索を少しずつ進めていくのが“夜”の主な目的となるが,では“昼”はというと,まぶしいほどアオハルな学園生活が待っていた。ついつい眠くなる授業中や,放課後,一緒に帰る友だちとの会話。部活動。お店に寄り道。どこかゆったりとした時間が流れるような,学生生活特有の空気を存分に味わおう。
昼の行動は主人公の成長につながる。主人公には「学力」「魅力」「勇気」という3つの「人間パラメータ」があり,それらがバトルのレベル上げとは違った形の成長要素になっているのだ。
人間パラメータを上げるチャンスは,日常のあちこちに隠れている。たとえば授業中。ときどき先生に当てられて,それに答えなければいけない場面があるが,このとき正解するとクラスメイトから尊敬の眼差しで見られて「魅力」がアップしたり,「居眠りをする」という選択をすると,その度胸からか「勇気」が上がったりする。
このふつうな一学生の行動がゲームの仕組みとしてパラメータ向上につながっているところが「ゲームとしてうまくできているなぁ」と感心させられる。
もうひとつの重要な主人公の成長要素が,ペルソナ3の特徴的なシステムである「コミュ」システムだ。特定の人物との会話や部活動などが,タロットカードの名称が付いた「コミュ」になっており,会話イベントを進めることでつながりが強くなる。
この,日常のふとした行動でコミュが発生するところも自然で良いなと感じた。たとえばクラスメイトの友近健二。学校帰りに一緒にラーメン屋に行く話になり,なんとなく会話を進めていくとコミュ「魔術師」が発生した。
その後もつるんでいると,コミュ「魔術師」のレベルが上昇していき,「魔術師」に属するペルソナを新たに生み出す際にボーナスを得られた。こうして彼との関係性を深めることで,魔術師に属するペルソナに恩恵が与えらえるのだ。
部活への入部,街のお店での会話,寮の自室での行動。人間パラメータ向上と同じく,コミュのはじまりのきっかけも日常のあちこちに隠れている。
このように昼の学園生活パートも,夜のタルタロス探索において役立つ強化要素として機能しており,ガチでやり込むのであれば,強化したいペルソナから逆算して特定のコミュレベル上げに勤しむことになりそうだ。
だが,まずはメインの物語を追いかけようというくらいであれば,何も考えず,思うがままにプレイするのが楽しいと思う。思いがけない出来事がいろいろと起こるし,オシャレな高校生活を仮想体験していくうちに,何気ない毎日の繰り返しが楽しくなっていくからだ。
コアなゲームだけど気軽に楽しめる。洗練されたビジュアルとカッコいい演出の数々
本作をプレイして感じたのが,確かにゲームをプレイしているのに,体感的には「続きが気になるアニメを観続けているような感覚」で楽しめるということ。コアなゲーム性がありながら,気軽な気持ちでゲームを進められる,絶妙なバランスで仕上げられているのだ。
その大きな役割を果たしていると感じるのが,洗練されたビジュアルとカッコいい演出の数々だ。
とにかく,あらゆる場面のビジュアルがスタイリッシュで,メニュー画面を開いてステータス画面を確認するだけでも,カッコ良すぎて見惚れてしまうほど。メニュー画面を開いただけでカッコいいし,シャドウとエンカウントしただけでカッコいいし,勝利画面までカッコいい。商店街を歩いているだけで英語ボーカルのBGMが流れてくるオシャレ具合だ。
ペルソナと言えばスタイリッシュなビジュアルとオシャレな音楽というのは,なんとなくくらいしか知らない人でも思い浮かべるはず。実際にゲームをプレイすると,それらはただオシャレなものではなく,プレイする側の気持ちを乗せてくれる大きな効果を発揮しているのだ。
自由度の高さにも触れておこう。部活動に入ると,放課後の行動が制限されるのでは……と懸念していたが,行かないと何かしらのデメリットがあるというのはない。あくまで自分がいまやりたい行動を優先できる。
誘いの連絡があればそれに乗ってあちこち回るもよし,効率よく主人公の育成やコミュ強化を進めるために選択してもよし。オートである程度の過去まで段階的にプレイデータが記録されるので,少し前から気軽にやり直せるのもまたありがたい。
夜のタルタロス探索にしても,毎日行く必要はない。寮に帰宅すると「今夜はタルタロスに行こうぜ!」と鼻息を荒くして語りかけてくる仲間もいるが,「バイトがあるんで」といった感じでスルーし喫茶店のバイトを優先してもいい。
タルタロス探索は,それ自体が本作のある種の進行度みたいなものになっており,「○月○日までに○階まで行く」という段階的なクリア期限があるのでそこには要注意だ。しかし期限までにどう進めるかはプレイヤー次第。無理せず数日をかけて進めるのもいいし,自信があればわずかな日数でいっぺんに進めてもいいわけである。
筆者の場合,RPGは武器・防具をキッチリと充実させながら進みたい派なので,地道にお金を稼いで,皆の装備を買い換えてから進めることにしている。「いつでも行けるから,行くときは声をかけてくれよ」とウズウズしている仲間を横目に,そんな調子で1か月ほどタルタロスをご無沙汰していたことすらあった。そうしたプレイも許容してくれる,プレイヤーファーストなゲームシステムの懐の深さが好感触だ。
また,日を重ねるごとに,各登場人物に愛着が湧いてくるのを実感する。影時間を認識・自覚して共に戦うことになる寮の仲間たちもだが,昼間に学校でのみ接するクラスメイトや知り合いと会話をしていくうちに,新たな出会いや,小さなイベントが次々と発生するところが楽しい。
それ自体のひとつひとつは本当に些細な内容ではあるのだが,こうした何でもない1日1日の積み重ねが,後で振り返ったときに「これが青春だったんだ」と気付くような,絶妙な時間を過ごしている感覚がある。
さて,遊びやすさはどうなのか。オリジナルのペルソナ3は,2006年に発売されたPS2用ゲームだ。およそ18年前のゲームなので,「どれだけリメイクで最適化されたといっても,不親切さは残っているのでは?」と思う人もいるかもしれないが,そのへんは安心してほしい。「ペルソナ3 リロード」は操作性において何の違和感もなく,ローディングもとくに気にならなかった。今のゲームとして遊びやすい仕上がりになっている印象だ。
こちらはイベントシーンの早送り機能。画面に白い横線が入るのが,ビデオテープの早回し風でオシャレ |
マップからファストトラベルでサクッと移動。現代的なプレイスタイルに合わせた親切なシステムは当然完備されている |
シリーズの転換点となったペルソナ3が,さらにパワーアップして生まれ変わった「ペルソナ3 リロード」は,これからペルソナシリーズに触れる人やシリーズから派生したアニメなどでペルソナを知った人にとって,ペルソナデビューのまたとない機会となるだろう。
RPGと聞くと「なんだか重たそうで,なかなか手を出しづらいんだよな〜」と思っている人も,身構えずにプレイしてみてほしい。(ゲーム時間で)最初の2か月をプレイしただけでもかなりのボリュームではあるゲームだが,演出や遊びやすさの工夫のおかげでぐいぐいと進められるはずだ。
戦いに明け暮れて味方やペルソナを強化していくだけでなく,高校生として学園生活を謳歌する,今でも色あせない新しいRPGの形がここにはある。予想した以上にスンナリと入れて,そして,次へ次へとゲームを進めたくなって,やめどきを失っている自分がそこにいるはずだ。
「ペルソナ3 リロード」公式サイト
- 関連タイトル:
ペルソナ3 リロード
- 関連タイトル:
ペルソナ3 リロード
- 関連タイトル:
ペルソナ3 リロード
- 関連タイトル:
ペルソナ3 リロード
- 関連タイトル:
ペルソナ3 リロード
- この記事のURL:
キーワード
(C)ATLUS (C)SEGA All rights reserved.
(C)ATLUS (C)SEGA All rights reserved.
(C)ATLUS (C)SEGA All rights reserved.
(C)ATLUS (C)SEGA All rights reserved.
(C)ATLUS (C)SEGA All rights reserved.