プレイレポート
[プレイレポ]「プリンス オブ ペルシャ 失われた王冠」はハイスペックな主人公を操り,手応えのある探索とバトルを楽しめるメトロイドヴァニア
「時の力」を駆使し,発想力とテクニックで難関を突破する
「プリンス オブ ペルシャ 失われた王冠」の舞台となるのは,魔法の力が存在する太古のペルシャ。霊鳥シムルグに守護されるペルシャだが,現在は他国からの侵略を受けている。主人公であるサルゴンは,ペルシャを守る精鋭戦士「不死隊」の一人であり,敵の将軍を倒して侵略を跳ね返したが,王子がさらわれてしまった。王子を助けるべく,サルゴンは不死隊の仲間とともに,魔法に満ちた「カーフ山」へと向かうのだった。
既に体験版も配信されているため,プレイした人も多いと思うが,本作は操作性とレスポンスが良く,操作していて楽しいタイトルだ。プレイヤーのさまざまな操作にキビキビ反応し,壁を蹴っての三角跳び,バックステップやダッシュから派生するスライディングや特殊攻撃,立ち・しゃがみ・ボタン長押しで変化するコンボ,攻撃ボタンタメ押しでの飛び道具,敵の攻撃をタイミング良く弾いて隙を作る「受け流し」といった多彩なアクションを出せる。
最初からバトル系アクションゲームで主人公を張れそうなほど多彩なアクションを繰り出せるが,サルゴンにとってはこれが初期状態。メトロイドヴァニアによくある「最初はフル装備でスタートするが,途中で力を奪われ,それなりのスペックに収まる」なんてイベントとも無縁で,ここからパワーアップしていくばかりなのだから頼もしい。
もちろん,ゲームを進めると敵やトラップの歯ごたえも増していく。さまざまな特殊能力を組み合わせる頭の発想力と,正確に操作する指先のテクニックがともに問われることになるのだ。
本作のジャンルは,横視点の広大なマップを探索する,いわゆるメトロイドヴァニアだ。初期状態では進めない場所も,ボスを倒して手に入れる特殊能力「時の力」で突破できるようになっていく。メトロイドヴァニア要素に,やり応えのあるアクション性が絡むのが本作らしさだといえる。
例えば時の力のひとつ「シムルグの猛進」は空中でダッシュできる能力だ。これ自体は他のアクションゲームにも見られるが,“グルグルと回転する巨大な刃物が上下に配されている隙間を,タイミング良くシムルグの猛進を使って通り抜ける”なんてシビアなシチュエーションが当たり前のように出てくる。つまりはサルゴンの高性能を駆使してのチャレンジが待ち受けているというわけだ。
シビアである同時に,遊びやすさも追求されているのもポイントである。難所でミスしても,体力こそ減らされるものの,難所の手前からすぐリトライできるし,ゲームオーバーになってもペナルティは存在しない。思う存分練習することができるというわけだ。
加えて,“難所をパスして先へ進むポータルを作る”というオプションも存在しており,これを使えばとりあえずゲームは進められる。さすがに物語の本筋に関わる難所やパズルはスルーできないが,“ひとまず自力で突破した後にポータルを使ってショートカットする”というように,自分で難度を調整できるのが嬉しい。
指先のテクニックだけでなく,発想力を求められる,本作らしい特殊能力が「シムルグの幻影」。自分の幻影を作り出してその場に残し,後からボタン一押しで幻影の位置にテレポートできるという能力だ。
例えば,左右に動く柱の罠があったとしよう。柱は通路を完全に塞いでおり,スライディングやジャンプで先へ進むことはできないし,トゲもついているので触れるわけにはいかない。どう突破すればいいのか頭を悩ますところだが,“柱が左右に動いている”というのがポイントになる。
目指す出口が左にあった場合,まずは柱が左に寄ったところに幻影を残しておく。それから柱が右に移動しきったところで,幻影の位置へテレポートすれば,柱を越えた左側へ出ることができる。単に前方へテレポートする能力ではなく,自分が到達した位置にテレポートする能力なので,ちょっと捻った発想が求められるわけだ。
この性質を利用すれば,いくつもの狭い足場が飛び渡らなければならず,失敗が予想されるような地形でも,少し進む度に幻影を残しておくと,もしミスしても幻影の位置へ戻れるわけだ。近年のレトロゲーム移植でおなじみの巻き戻し機能のようにも使えて面白い。
「千里眼」は隣接する異次元に入り,通常空間にはない壁や足場を使える能力。ぶっちゃけてしまえば壁や足場のON・OFFを切り替えるスイッチのように使えるのだが,“千里眼で壁のON・OFFを切り替えつつ三角跳びしなければならない”なんてシチュエーションもあり,頭と指先がこんがらがってくる。
時の力を駆使する謎解きはパズル的だが,ステージギミックにより,こうした側面がさらに強化されることもある。ある場所では,同時に複数のスイッチを作動させないと先へ進めない。サルゴンの身体は一つ,スイッチは複数,この手のゲームでおなじみの「スイッチに乗せる重り」もない……と途方に暮れてしまうところだが,ステージギミックを作動させると,自分の動きをゴーストとして残せるようになる。
“1人めの自分は床のスイッチを踏んで通路を開き,2人目の自分で通路の先にあるレバーを下ろして壁を動かし,3人目の自分が壁を三角跳びして出口へ登っていく”という,パズルとアクションを融合させたプレイを求められる。それぞれのゴーストが動ける時間には限りがあり,正確かつスピーディな動きが必要。あらかじめ何度も練習してから本番に挑まなければならず,まるでRTA(リアルタイムアタック。ゲームを解くまでの時間を競う遊び方)におけるチャート作りと本走のようだ。
このように,プレイ中は何度も突破不可能に思える難所が立ちはだかるが,試行錯誤しているうちに解法を思いつき,操作精度を上げてクリアできた時の喜びは大きい。その先には,アイテムを買ったり装備のアップグレードに使う通貨「結晶」や,サルゴンに特殊なパッシブ能力を付与する「アミュレット」といったアイテム,サブクエストをくれるNPCがいるため,苦労のしがいがある。
こうしたごほうびは,ちょっとした行き止まりや怪しげな物陰など,細かい場所にまで用意されている。メインシナリオを進めるために出発したはずが,いつのまにか寄り道して難所と格闘していた,なんてこともあり,メトロイドヴァニアの醍醐味である探索がより楽しく感じられた。
ハイスペックな主人公とボスが真っ向激突する,やりがいのあるバトル
本作ではバトルの駆け引きも充実しており,単に連打しているだけでは勝てない。受け流しをミスした際に攻撃を食らうとカウンターダメージを受けるし,敵の中には大技を使ってきたり,こちらのコンボに受け流しを狙ってきたりする者もいるなど,状況に合わせた対処が必要となる。
中でもバトルに深みを与えているのが2種の大技だ。赤く光る大技は受け流し不可なので,ジャンプやスライディングで回避しなければならない。黄色く光る大技は攻撃範囲が広かったり,高速突進してきたりと危険だが,受け流しに成功すると特殊演出で一撃必殺できる。相手に攻め込みつつもその動きを観察し,受け流しされたら仕切り直し,赤く光るならスライディングで避け,黄色い光はこちらも受け流しを準備するといった具合でスリリングだ。
バトルでもサルゴンのハイスペックが光る。初期状態から使える技に,ゲームを進めると手に入る「弓」と「チャクラム」,そしてシムルグの猛進やシムルグの幻影,敵や弾を吸い込む「次元の爪」といった時の力を駆使すれば,バトルのバリエーションも広がっていく。
耐久力の高い敵が相手なら,受け流して隙を作り,ショートダッシュからの打ち上げ攻撃で浮かせ,空中で敵を切り刻んだ後に弓をブチ込み,あらかじめ地面に配しておいたシムルグの幻影へテレポートしてさらに地上技を継続する,といった変幻自在の攻撃で一気に仕留めればいい。
例え遠くから飛び道具を撃たれても,次元の爪で吸い込んでそのままお返しし,シムルグの猛進で肉薄してそのままコンボに持ち込める。ブーメランのように往復するチャクラムとサルゴン本体で挟み撃ちにするというのもありだ。時の力は謎解きだけでなくバトルにも活用できるので,なかなかに爽快である。
個人的な好みに刺さったのが次元の爪だ。敵を捕らえて持ち歩くことができ,解放すると仲間として戦ってくれる。こちらを苦しめた飛び道具や大技を駆使して戦ってくれるため,敵にけしかけて眺めているだけでも面白いし,複数の敵に襲われた際に片方を仲間に任せ,自分はもう片方と戦うなんてこともできる。仲間を殴ると再び敵に戻ってしまうのが残念なところだが,いろいろな敵をゲットするのが楽しく感じられた。
攻撃や受け流しで溜まる「アスラ」を使えば,格闘ゲームの超必殺技に相当するアスラの神技を使うことが可能だ。無敵の突進攻撃,回復フィールドの設置,対空攻撃,貫通飛び道具などバリエーションがあり,連続技に組み込むこともできる。アスラは受け流しを決めると大きく増加するが,ダメージを受けると減少するため,リスクとリターンを天秤にかけつつ管理していくのが肝になる。
RPGにおけるビルドに相当するのが「アミュレット」のカスタマイズだ。カーフ山のあちこちにはアミュレットが落ちており,これをサルゴンの首飾りにセットすることで,パッシブ能力の恩恵を受けられる。強力なアミュレットほど多くのスロットを占有し,首飾りに用意されたスロットには限りがあるため,取捨選択が重要だ。
トラップ地帯がメインになるなら,生存能力を重視し,体力上限アップ+死亡時に復活するアミュレットをセットしたり,雑魚が多いなら,剣のコンボが増えるものと,受け流し時に敵の動きを遅くするフィールドを発生させるものを組み合わせて戦闘能力を追求したり,探索する際は,宝箱が近くにあると音が鳴るアミュレットを用意する……といった具合で,いろいろなセッティングを試せる。
アミュレットはかなり種類があるうえ,本筋に関係ない場所に置かれていることも多い。中にはチャクラムの攻撃範囲が広がったり,シムルグの幻影の移動時に軌道上にいる敵にダメージを与えるなど,能力を変化させるものも存在しており,じっくり探索していくとそれだけプレイが有利になる。また,敵や宝箱から手に入る結晶でスロットを買ったり,アミュレット自体を強化したりできるため,バトルや探索へのモチベーションもアップする。
こうして強化した能力を総動員しなければならないのが,ボスとの戦いだ。耐久力が高い上に多彩な攻撃を持っており,体力が減少するとそのパターンがさらに増えるのだから恐ろしい。
受け流し不可の大技はもちろんのこと,回避不能に見える広範囲攻撃や,こちらを眩惑するような包囲攻撃,何も考えずに受け流しを連打するとカウンターダメージを受ける配置をされた弾幕など,殺意が高い。幸い,やられても即座にリトライできる。死んでは覚え,死んでは覚えを繰り返した末にボスを倒せれば,格別の達成感を味わえるのだ。
探索とバトルの両面で歯ごたえのある本作だが,豊富なオプションで難度を調整できる。前述した難所をスルーするポータル,敵のHPや攻撃力,トラップから受けるダメージ,弓のエイムアシスト,受け流しの難度など,さまざまな項目を調整できるようになっている。
また,メトロイドヴァニアファンには嬉しい「今は先に進めない場所」や「シナリオが進む場所」を自動マーキングする機能や,任意の位置のスクリーンショットをマップ上に貼り付ける機能も用意されている。中盤以降は難度も上がり,触れると一発でアウトになるトラップが敷き詰められているうえに幻影での巻き戻しができないといったこともあるが,ポータルが用意されているため,ひとまずは先に進むということも可能だ(なお,本筋となるアスレチックやパズルはスルーできない)。
ハイスペックな主人公を使い,危険なボスと探索しがいのある広大なマップに立ち向かう「プリンス オブ ペルシャ 失われた王冠」。本稿ではネタバレ防止のため,あえて触れていないが,二転三転するシナリオも面白く,プレイしていて引き込まれるものがあった。
アクションゲームが苦手な筆者には,難度を細かく調整できるのが特に嬉しいポイントである。遊び応えと遊びやすさを両立する本作を遊んでみてほしい。
「プリンス オブ ペルシャ 失われた王冠」公式サイト
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