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ありがたき哉 日本語化:ドット絵のハクスラで題材は東南アジアの民間伝承。パズル風能力カスタマイズにも注目の「Ghostlore」をご紹介
「ありがたき哉 日本語化」は,ここ最近で日本語対応となった海外作品を良い機会だからあらためて紹介しようという,フワッとしたコーナーです
少し変わったテイストのハクスラ(ハック&スラッシュ)ゲームを探しているなら,PC向けアクションRPG「Ghostlore」を試してみるといいかもしれません。本作は「東南アジアの伝承にまつわる怪物と戦う」という作品で,東南アジア然とした舞台,レトロなピクセルアートのグラフィックス,パズル要素を盛り込んだキャラクター能力カスタマイズなどが魅力のタイトルです。こちらは2022年4月からSteamでアーリーアクセスが展開されておりまして,2023年3月23日にローカライズβという形で,日本語を含む複数の言語が追加されたんですよね。ありがたき哉。
開発者いわく“イーストパンク風”の世界設定で展開するハクスラ
Ghostloreは,シンガポールを拠点に活動するAndrew Teo氏とAdam Teo氏が2人で開発しているタイトルです(ちなみに2人に血縁関係はないのだとか)。本作は「Diablo」シリーズや「Titan Quest」シリーズといった定番ハクスラ,そして「呪術廻戦」にインスパイアされ制作されたタイトルなんですよね。斜め見下ろし視点で展開すること,いわゆる体力の「HP」,スキルを使うことで消費する「MP」があること,通常攻撃を軸にスキルを駆使して敵と戦うこと,スキルや装備を自分の好みのとおりに構成してキャラクターのビルドを楽しめる作りであることなど,遊んでみれば,プレイフィールはいわゆるハクスラのそれだなということが分かるでしょう。
ただ本作は前述のとおり東南アジアの民間伝承を題材にしていることから,その舞台は,シンガポールやマレーシア,インドネシアにちなんだ建築物,ランドマークが並ぶ世界です。時代は正直言ってよく分からないのですが,点在している工業製品を見る限りは現代か,あるいはちょっと未来だと言って差し支えないでしょう。開発者は本作の世界設定を“イーストパンク風”と紹介しています。
主人公は「魔鬼」(要するに敵のモンスター)をハンティングする「魔鬼狩りの老師」の弟子です。現在,現実世界と霊的世界を隔てる次元の壁がなんらかの理由で弱くなっており,霊的世界から魔鬼が侵入し,さまざまな場所で暴れている――と。2つの世界を分離する装置を仲間が作っているので,そのために資金を集めて(人助けで報酬を得て)きなさいといった流れで,主人公は冒険を開始します。
登場する魔鬼としては,アチラの伝承,神話,都市伝説で伝えられる,ご存じ死体妖怪・キョンシー(Jiang-Shi)を始め,マレーシアやインドネシアといったムスリムが多い東南アジア諸国の幽霊・ポチョン(Pocong),マレー半島やインドネシアの神話に登場する吸血幽霊・ポンティアナック(Pontianak。ちょっとだけ関連記事)などがいます(※いずれもカタカナ表記はゲーム内のものに準拠)。馴染みのない名前も多いですが,こういったキーワードを基に伝承に興味を持ってアレコレ調べるといったムーブをきめると,「東南アジアのさまざまな民間伝承を広めたい」との想いも込めて本作を作った開発者は喜んでくれると思います。
パズルの要素を含むキャラ能力カスタマイズが新鮮
ハクスラの醍醐味といえば,キャラクターの能力をさまざまな要素によって好みのものにカスタマイズする,いわゆる“ビルド”でしょう。本作のビルドは主に,キャラクタークラスとそれに付随するスキル,「魔印」,「食事」,そして魔鬼狩りのドロップで入手したりショップで購入したりできる装備品で行います。装備品はまあ想像の範囲内の要素ですし,ここではそれ以外の,本作ならではのところを紹介しましょう。
・クラスは全6種。スキル構成決めにはパズル要素があり,第2,第3のクラスを選んでスキルを組み込むシステムも
ゲームの開始時にプレイヤーが選べるキャラクタークラスは以下の6種類です。
※せっかく日本語化されているので以下,そのままゲーム内テキストから引用します
達人:肉体だけでなく精神も磨く神秘の戦士。
悪魔祓い:霊魂の世界を感じ取り、邪悪な霊魂を追い払うことができる。
元素遣い:自然の力を意のままに操る達人。
暗殺者:速度とステルスを駆使して敵を倒す、影の暗殺者。
野獣:血の魔法の力を授かった恐れを知らぬ戦士。
森の番人:動物とコミュニケーションをとる能力を持つ、森の守護者。
クラスにはそれぞれ,割り当てたキーを押下して発動させる「アクティブスキル」と,常時発動する「パッシブスキル」(「クラスボーナス」とも呼ばれています),そしてスキルの効果やクールダウン(再使用までの時間),MPコストなどに変化をつける「スキルモディファイア」が用意されています。
スキルやスキルモディファイアは,専用の画面で,レベルアップごとにマスが開放されていく最大7×7のグリッドに対象のアイコンを配置することで使えるようになります。スキルモディファイアは,アクティブスキルを配置したマスの縦1列,横1列のどこかに置くことで,当該スキルの使い勝手や能力を変化させられるものですね。どのように配置すればスキルの力を最大化できるか――と,ここがちょっとしたパズルになっているのが面白い点です。
なお本作では,レベル20で「第2クラス」,レベル30で「第3クラス」を,初期で選んだクラスを除いた5クラスの中から選ぶことができます。第2,第3のクラスを開放すると,これらのクラスのスキルとスキルモディファイアもグリッドに配置できるようになります。異なるクラス同士のアクティブスキルのアイコンをグリッド上で隣り合わせて置くことで,2つのスキルの特性を組み込んだ上級スキル「コンボスキル」を新たに形成することができるのもポイントです。
・さらにパズル要素の強い「魔印」
こちらも本作の特徴の一つですね。魔印の効果は,1秒ごとにHP/MPを回復するもの,HP/MPの最大値を上げるもの,攻撃のダメージを上げるもの,召喚して戦わせるミニオンを強化するものなどとさまざまで,スキルやスキルモディファイアと同様に,(別途用意された)グリッドに配置することで効果を発揮します。
面白いのは,魔印には配置に1マスを使う「単純魔印」と,5マスを使う「複合魔印」があるという点でしょう。後者はメインとなる魔印の1マスと空(枠だけ)の4マスで構成されていまして,空の部分に指定の単純魔印を配置することで,追加の効果を得ることができます。複合魔印にはさまざまな形があることから,スキルと同様,いやそれ以上のパズル要素に,頭を悩ませて楽しめるでしょう。
・粗めの実写グラフィックスで表現される「食事」
本作では冒険中のさまざまな場所で食材が手に入ります。ネギ,きのこ,ピーナッツ,ラディッシュ,ニンニク,パンダンリーフ,魚,エビ,イカなどと種類はさまざまで,これを専用のNPCに渡すことで,食事をとることが可能です。
ゲームで食事といえば「モンスターハンター」シリーズのように一時的なキャラクター強化要素といったイメージが(少なくとも筆者には)ありますが,本作の食事の効果は永続的で,どちらかというとパッシブスキルに近いものです。NPCに食材を届け,粗めの実写グラフィックスで表現された料理のリストを見て,それぞれの効果を確認して,開いたスロットにセットしていくといったところでしょうか。スロットはレベル10から15,20,25――という具合に増えていく仕組みですね。
もちろん料理はいずれもアチラの風を感じられるものでして,辛みを加えた甘いあんかけソースに麺やもやし,ゆで卵などを絡めた「ミーレブス」,ココナッツベースのスパイシーなカレーである「ロントン」,炒めた大根餅の「フライド・キャロット・ケーキ」などと,結構いろいろあります。今挙げた3つの料理の味を筆者がまったく想像できていないというのはここだけの話ですが,本作の東南アジア感をより強めているのが,この食事でしょう。
正式リリース目前のゲームです
Ghostloreはメインの2人が中心となって開発しているインディー作品ですが,最大4人でのローカル協力プレイ(Remote Play Together対応)や,ほかのキャラクターを味方のNPCとして一時的に召喚する非同期型のマルチプレイ機能(利用すると,交換の形で自らのキャラクターデータがアップロードされる),エンドコンテンツなど,思ったよりも(?)盛りだくさんのゲームとなっています。
前述のとおり本作はアーリーアクセス中で,2023年2月の時点で5月第1週の正式リリースが予告されていたので,まもなく製品版が登場するでしょう。まだ不具合があったり,戦闘が単調になるタイミングがあったりと気になる部分もありますが,今後のアップデートで良くなると期待しています。ストアページによればアーリーアクセス版は割引価格として登場しているので,興味のある人は今のうちに入手しておくといいかもしれません。
「Ghostlore」公式サイト
- 関連タイトル:
Ghostlore
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