プレイレポート
[プレイレポ]テキストメッセージがないADV「SUBWAY MIDNIGHT」は,地下鉄で巻き起こる不思議な旅をビジュアルのみで描く異色作だ
不思議な地下鉄に乗り,不穏な世界をさ迷い歩く
主人公の少女・リズは,目覚めると真夜中を走る地下鉄の車両にいた。そこでは何者かがリズを追ってきており,なんとかして逃げるため,冒険を繰り広げることになる。
本作の大きな特徴として挙げられるのが,テキストメッセージが一切存在しないということである。ゲーム内に出てくるテキストは,冒頭に表示される作者の氏名とゲームタイトル,メニュー項目とエンディングの種類を示す「○○エンディング」という表示,ポスターやネオンの文字くらいだ。
登場人物のセリフやモノローグはなく,リズが何者で何を考えているのかは,画面を見てプレイヤーが想像するという形になっている。
リズが冒険する地下鉄の中では,摩訶不思議な出来事ばかりが起こる。車両内に用途も分からぬ機械がズラリと並んでいたり,地下鉄の中なのに,なぜか首だけのサメが空中を泳いでいたりする。そのほかにも誰とも知れぬ謎の男による演劇が始まることもあり,何が何だか分からない。メッセージも表示されないため,今何が起きていて,何をするべきなのかは,ゲーム画面の状況から予想しなければならない。
この体験はなかなか不思議なもので,“夜中にふとテレビを点けたら,前衛的な映画をやっていて,物語の筋も分からないのについつい見入ってしまった”という感覚だ。
メッセージが存在しないからこそ,物語はどのようにも解釈できるし,新しい情報を得るたびに解釈が二転三転していく過程が面白い。いわゆる“考察勢”であれば,より楽しく物語を探っていけるだろう。
目まぐるしく変化していく車両の中だが,エリアごとに目的も変化していく。単に通り抜けるだけで良いエリアもあれば,周囲から少しずつ謎の影が集まってきて,触れるとゲームオーバーになるエリアもある。何の説明もなく行き止まりの地形に放り出され,よくよく観察すると仕掛けがあった,なんてこともあり,車両をつなぐドアの先に何があるのかは,本当に予想がつかない。
そうこうしているうちに,どうやらリズを追いかけている謎の黒い影のほかにも,彼女に仇なす存在がいることが分かってくる。そして,地下鉄から広がる謎の世界は幻覚じみた明滅を繰り返し,リズの心中にはどんどん不安が膨らんでくる。そして,奥でリズを待ち受けるものとは……?
本作は不思議な世界の雰囲気を体験するタイプのゲームであり,特別なテクニックなどは必要ない。インタラクティブな側面のある実験映画とでもいったところだろうか。演出重視なゲームなので,操作性にクセがあるところもあるが,インディーズゲームらしい尖った作品といえるだろう。ゲームの特性上,何をどう書いてもネタバレになってしまうため,多くを語ることはできないが,リズの冒険の行く末が気になるという人はぜひプレイしてほしい。
「SUBWAY MIDNIGHT -サブウェイミッドナイト-」公式サイト
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SUBWAY MIDNIGHT -サブウェイミッドナイト-
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