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東欧の陰陽師? デーモンを操り人々の心の中を読み解いていくアクションRPG「The Thaumaturge」のデモ版をチェック
「The Thaumaturge」公式サイト
「The Thaumaturge」は,東欧の交差点として周辺の大国に翻弄されてきたポーランドを舞台にした斜め見下ろし型視点のRPGだ。首都ワルシャワがロシア帝国の支配下にあった1905年を背景にしており,そこは,過半数を占めるポーランド市民はもちろん,ロシア人兵士やユダヤ商人といった多様な人々が夢と希望を追って集まる,混沌とした大都市として描かれている。
しかし,市民の中には,憎悪や欲望が凝り固まった悪霊のようなモンスター「サルター」(Salutor)に支配されている人々も少なくない。主人公のヴィクターは,サルターを操ることができる超能力者「ソーマタージ」として人々の心の中からサルターを取り除き,意志に影響を与えることで,ポーランドの未来を変えていくという。
ソーマタージとは,東欧キリスト教文化圏で16世紀以降,「奇跡を起こす聖者」のような意味で使われていた言葉だが,近代になると単に「魔術師」を指すことも多かったという。「ダンジョンズ&ドラゴンズ」や「マジック・ザ・ギャザリング」「ファイナルファンタジーXIV」「ゼノブレイド3」といったゲームをプレイしたことのある人なら,クラス名やキャラクター属性として聞いたことがあるかもしれないが,本作のソーマタージは,式神を手懐けていたといわれる日本の「陰陽師」のイメージに近い。ヴィクターは,陰陽師のような超能力を使えるといった役柄だ。
筆者がプレイしたデモは,ポーランド辺境にある古い木造の駅からスタートした。ヴィクターが,駅長と何度かやりとりし,妹のレジア(Legia)に電報を送るというシーンだが,自分の名前のスペルが「Viktor」ではなく「Wiktor」だと訂正するあたりに,われわれ日本人にはちょっと分かりにくい,当時のポーランド人が抱いていた民族の矜持のようなものが見え隠れする。それはともかく,ゲーム序盤だと思われるのに,ヴィクターの顔色は随分と悪い。
おそらくヴィクターは,この場面以前に何らかの形で自分の能力に目覚め,毒気に冒されてしまったという状況のようだ。そのため,難病を治療する能力を持つ人物の跡を追って,山里の村にやってきたというのが,ミッションの設定になっている。その人物とは,実在した怪僧ラスプーチンだ。
史実のラスプーチンはこの時期,巡礼の旅に出ており,すでに多くの信奉者を率いて病気の治癒や治療を行っていたとされる。大きな居酒屋のような場所で,すぐにヴィクターはラスプーチンを見つけ,自分はソーマタージであると打ち明けで治療を懇願するが,ラスプーチンは「ソーマタージについての知識は持っているが,自分はソーマタージではない」と語り,まずは自分がソーマタージであることを証明するため,ラスプーチンにとって非常に重要なもの3点を,この屋内で見つけるよう指示される。
ソーマタージとして使えるアビリティはいくつかあるようで,ここで登場したのが「パーセプション」という能力だ。これを使用すると場面がモノトーンになり,特定の人物や事件に関連のあるものへ近づくと,それが赤いパーティクルを発し始める。それらをじっくり吟味することで謎解きを進めていくというのが,本作の捜査における主要なゲームメカニクスだ。ソーマタージは,人が触れたオブジェクトを通して,持ち主の感情やストーリーが読み取れるという。
本作の世界観によれば,ソーマタージは現実世界という表層の下部にある4つの次元を見ることができ,これらの次元は,「心情」(Heart),「知性」(Mind),「行為」(Deed),「Word」(言葉)となっている。これらは,レベルアップに応じてポイントを振り分けていくテクノロジーツリーのようなもので,それらの成長とオブジェクトの持つパワーによって,選択肢が与えられる。例えば,オブジェクトの知性が自分のもつ知性より強いと解読できず,別の次元を使ったルートで捜査を進めていくことになる。それによって,ストーリーが分岐していくわけだ。
ラスプーチンは,ヴィクターの病を部分的に直してくれたものの,奥底に潜む深い闇は彼の手ではどうしようもない。そこで彼は,自分が手懐けているサルター「Upyr」を使って,ソーマタージに飼い慣らされていない「ワイルドサルター」から流れる「フロー」(気配の流れ)を追って,近くの村へと向かった。
村で出会った物売りの女性「ヴェスナ」(Vesna)は,よそ者だけでなく身内も毛嫌いしているような横柄な態度だったが,売り物のリンゴに触れると,彼女の心の奥底にある恐怖心を感じ取ることができた。また,村の離れにあった民家が火事による人身事故が数か月前に発生していることも分かったが,それについてヴェスナは,家主の娘でありながら,それほど悲しんでもいないようだ。
民家の焼け跡を調査するなど,必要以上に目立ってしまったためか,ヴィクターのもとに村の兵士3人がやってきて,結局は乱闘になってしまう。カードシステムを利用したバトルはターン制で行われるが,ここでプレイヤーはUpyrの力を使うことができ,具体的には,Upyrが敵兵士の背後から切りつけたり,羽交い絞めにしたりといった複数のチョイスが用意されていた。
敵兵にはサルターが見えていないので,体力を奪われるたびに後ろをみて不思議そうな顔をするといった,細かなアニメーションも確認できる。Upyrは,ヴィクターを治癒する能力があるほか,相手の集中力を奪う魔力もあり,ヴィクターの攻撃とのコンボで,敵に大きなダメージを与えることが可能だった。
今回のデモでは,最終的に凶暴そうなワイルドサルター「Bukavac」と対決し,それを捕獲して自分の手下にすることになるが,BukavacとUpyrとは,見た目も能力も異なる。プレイヤーが何体のサルターを操れるのかは定かでないが,プレイヤーはバトル中にサルターを交換することができ,敵のタイプに対応したり,自分の攻撃をつなげていくうえで活用できるようだ。しかし,それぞれのサルターのフローと結合することで,ヴィクターに何らかのネガティブな効果が加えられていくそうなので,このあたりは慎重に選んでゲームを進めていくことになるだろう。
ヴィクターの肉体を病んでいたと思われるBukavacを手懐けたことで,ヴィクターはワルシャワにいる妹のもとへと帰ることになるが,その直前のラスプーチンとの会話では,彼がオデーサ(オデッサ)で流血が起こるという啓示を受けたと話していた。この年から始まるロシア第一革命を意味していると思われるが,それを止めるため,ヴィクターはラスプーチンとしばらく行動を共にすることになるようだ。
近代東欧史や,それに絡んだ歴史的な人物,そしてスラブの神話世界などを織り交ぜつつ,陰陽道を感じさせる,日本人にも分かりやすいテーマが楽しめる「The Thaumaturge」。デモのあとは,瀟洒な街並みが続くワルシャワを見物して終わりとなったが,壮大なストーリーと,「意味のあるゲームプレイ」をモットーにする11 bit studiosがパブリッシングを担当した理由だと思われる「人々の心の内」というテーマが今回のデモで確認できた。現時点で,発売予定日や日本語化の予定などについては発表されていないが,続報を楽しみにしたい作品だ。
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