［プレイレポ］人間嫌いが人類を救う――？　過酷な世界を戦い抜くアクションRPG「クライマキナ」体験版のインプレッションをお届け

　2023年7月27日の発売が予定されている，フリューのアクションRPG「クライマキナ/CRYMACHINA」（PS5 / PS4 / Switch）。その体験版の配信が本日（7月13日）スタートした。
　本作は，2018年10月にリリースされた「CRYSTAR -クライスタ-」の流れを汲む作品だ。少女たちが叫び，涙しながらも過酷な世界で戦い生き抜く，カタルシスのある物語が特徴となっている。


　Switch向け体験版を一足早くプレイできる機会を得たので，インプレッションをお届けしよう。世界観や物語，アクション，そして“お茶会”といった気になるところをチェックしてみたので，実際にプレイした感想をたっぷり交えて紹介しよう。

「クライマキナ/CRYMACHINA」公式サイト

“本物の人間”になるため，過酷な世界を戦い抜く少女たち

　「クライマキナ」で描かれるのは，人類が滅亡した後の世界の物語だ。人口の2割以上を減少させた，謎の奇病「離心病」の蔓延に，枢軸国の弱体化と資源の枯渇による世界大戦の勃発。それらによって人類が滅亡してから2000年経ったある日，離心病を発症して世界滅亡前に亡くなった人間嫌いの少女，レーベン・デスティルが目を覚ますところで物語は始まる。

目覚めた先は，とても現実とは思えない世界。ここは一体……？

　目覚めた場所は，宇宙空間に浮かぶ巨大な構造体エデン。ここでは人類再生を目的に作られた自立進化する人工生命――神機たちが稼働していた。だがあるとき，神機たちを統括していた第一神機をロストするという，原因不明の事態が発生する。
　統括担当がいなくなった神機たちは，目的意識の違いによる争いを起こすようになり，エデンの秩序は乱れていく。

神機は全部で8種類。それぞれに人類を再生するために必要な役割が定められている

　神機の暴走を止められるのは，エデンのシステムに認められた“本物の人間”のみ。神機を止めることを目的に行動する第8神機エノアにより選ばれたレーベンは，目的を同じくする紫藤アミ，千菊ミコトとともに，本物の人間となるための戦いに巻き込まれていく。　

ミコトは“かっこよさ”を追い求める少女。芯の通った言動がかっこいい

かわいいは正義，な柔和で思いやりの深いアミ。ミコトのことが特別好き，らしい

人間の精神再生を担うエノア。人類のやることなすことを全肯定しており，よく「はなまる」と口に出して褒める

　「……えっ？　復活したレーベンって，本物の人間じゃないの？」と思う方もいるかもしれない。そう，彼女たちは“まだ”本物の人間ではない。人間の精神をデータ化した人格データをもとに，エデン上で再生されたE.V.Eと呼ばれる存在だ。ほかの神機たちを壊し，搭載されている人格データ……つまり“人間性”を奪い，成長することで，システムに本物の人間だと認めさせなければならないのである。

人格データを手に入れる時には，人間の意識が漏れ出しているかのように多数の文字が躍る特別な演出が入る

　「すべて壊（コロ）してでも，生きてやる。」キャッチコピーのとおり，本作は敵を壊（コロ）し，争いを止めることで生き残ろうとする少女たちが描かれている。体験版の範囲では，まだタイトルにもある“クライ（cry）”らしき，泣き叫ぶような要素は少なかったが，この先にそういった展開が待ち受けていることは想像に難くない。製品版ではどのようなドラマが繰り広げられるのかに注目だ。

ジャスト回避にパリィも。豊富な武器種による多彩なコンボが魅力の爽快アクション

　さて，ここからは実際にその手で敵を壊してきた感想を述べていこう。本作のバトルは，あくまで個人的な意見だが，かなり手触りがいい。モーションの素早さによる爽快感や各種アクションにおけるボタン配置の適切さ，さまざまな武器を使い分けることで多様な戦術をとれる点など，「動かしていて楽しい！」と素直に感じられるものになっていた。

相手を攻撃することでWEAK状態にし，さらに攻撃を続けることで，強力な攻撃であるフィニッシュアサルトを相手に与えられるDAWN状態にできる

　とくに好印象だったのが，ボタン配置の適切さである。主武装による基本攻撃に，2種類の眷属機と呼ばれる副武装による攻撃，敵の攻撃に合わせたカウンター攻撃（いわゆるパリィ）に回避といった防御行動。ほかにもエノアによる支援行動の選択など，本作はバトル中やれることがかなり多いが，感覚的にも指の役割的にも動かしやすい配置がなされているのだ。

一部攻撃に対して行えるカウンター攻撃は，相手を一気に弱体化させられる効果がある

　やれることが多いゲームほど「指が足りない！」という現象に襲われがちになるというのは“アクションゲームあるある”だと思うが，本作にはそれがない。戦闘中，同時に操作したい2つのボタンに対して，同じ指が割り当てられている（主に親指）なんてことが結構あったりするが，基本攻撃がYボタン（右手親指），副武装による攻撃が左右のLR（左右人差し指），支援行動は上方向ボタン（左手親指）といったよう振り分けられており，ストレスを感じることがほぼなく直感的に操作できた。

とにかく動かしやすい。攻撃しながらカウンターにも意識を割いて……みたいな行動が自然と行える

　操作に感じるストレスがほとんどないからこそ，バトルの爽快感をよりダイレクトに味わえる。冒頭で述べた手触りがいいという部分はこれに起因するものが大きい。現状，体験版ではキーコンフィグが実装されていないものの，筆者個人としては，正直なくてもまったく問題ないのではないと感じるほどだ。

エフェクトもりもりの戦闘画面。複数の武装を同時に，そして無理なく動かしながら戦えるのでとても気持ちがいい

　3つの武装による，カスタマイズ性が高い戦闘も見逃せない部分だ。とくに副武装には「思想」というさまざまな行動を設定することができ，単純な近接攻撃や遠距離の攻撃に加え，敵に与えるデバフなどの支援的な行動まで存在する。どういった組み合わせが一番強いのかを考えるのも非常に面白い点だった。

副武装は状況に応じて行動が変わる。敵が無防備なときに大ダメージを入れられるような行動を組むこともできる

武装は強力な敵を倒したりすることで入手できる，特殊な人格データをエノアに解析してもらうことで入手可能。眷属機だけでも70種類以上存在しているようだ

拠点だけでなく，フィールドでも兵装のカスタマイズができるのも大きい。その場でアクションを組み替えて，手早く実戦で試すことができる

　一点だけ気になる部分を上げるならば，各種大技のモーションやエフェクトの重厚さ，リッチさが少々物足りなく感じる武器があったところだろうか。ただ，これはあくまでも体験版の範囲の印象であり，ミコトが初期から持っている主武装デルフィングの「フィニッシュアサルト」はかなり派手だったので，武器の種類によるところも大きいかもしれない。ゲームを進めると豪華な演出を伴った強力な武器が出てくるかもしれないので，その辺りを期待しながらゲームを進めてみてもよさそうだ。

レーベンの初期主武装であるグングニルはちょっと物足りない感じがあったが，ミコトのフィニッシュアサルトはかなり派手。このあたりは武器の種類や個人の好みによるかも

かわいい女の子たちのキャッキャウフフなお茶会を見逃すな

　本作のストーリー進行に欠かせないのが，拠点となる箱庭で行われる「お茶会」だ。次の行動方針や自分たちの現状を確認することもあれば，お茶を飲みながら何でもない会話が交わされることもあり，バトルとは異なる少女たちの姿が描かれる。
　……と，かた苦しい感じで書いたが，何が伝えたいかというと「美少女たちが会話していて非常に目によい」ということである。

説明でもしっかり「お茶会でのガールズトーク」書いてある。とてもよい

　比較的真面目な性格で，まだ事態を呑み込み切れていないレーベン。そんなレーベンをからかいつつ，エデンの先輩として相談にのるミコト。レーベンたちを家族と呼び，（とくにミコトに対して）愛を振りまくアミ。そんな皆を見て，柔らかい言葉と笑みを浮かべるエノア。それぞれ違った雰囲気を持つ4人が織りなす会話劇を眺めるその時間は，プレイヤーにとって眼福のひとときとなるだろう（実際，なった）。

ちょっとテンション高めのギャグっぽい会話や，ストーリー進行に欠かせない，物語の根幹に関わるシリアスな会話まで，その内容やトークテーマはなかなかに幅広い

ストーリー進行に欠かせないのが「必要会話」。それ以外は「自由会話」として分けられている。「いや，語彙力！」と突っ込まれてしまいそうだが，それらの会話は体験版の範囲だけでも「すごくよかった」ということだけは伝えたい

もちろんボイスもあるので耳にもよい。本作の早期予約特典にはエノアによるASMRまでついてくるので，気になる人は予約を忘れずに

　ほかにも拠点では，キャラクターたちの強化や各種情報などの見直しが可能だ。バトルに役立つTipsや用語なども収録されているので，物語に詰まったら積極的に確認していくといいだろう。

戦闘で獲得した経験値などはここでキャラクターに還元できる。ほかにもエノアによる戦闘支援の強化なども可能だ

　戦闘や物語中で流れる音楽も聴くことができる。とくに戦闘曲は，電脳的な雰囲気がありながらも壮大さを感じさせる曲調で本作の世界観とマッチしており，つまるところめちゃくちゃ“アガる”。正直，このBGMを聴くだけでも体験版をプレイする価値ありだと言ってしまえるほどだ。もしPVなどを見て，少しでも曲に興味を持ったならば，ぜひともプレイしてみてほしい。

筆者的なイチオシは「Beat Beat Beat」。激しい戦闘曲の中に挟まれる透明感のあるコーラスが非常にいい

　今回配信されている体験版は，もちろんではあるがストーリーとしては本当に冒頭部分。最初の大ボスを倒す直前までを体験できるものである。プレイ時間は，だいたい2時間ほどだろうか。


　試遊範囲が短くてあっという間かといえばそうではない。戦闘の爽快感やキャラクターの魅力，兵装のカスタマイズ性など“できること”はたっぷりあり，本作の面白さを堪能するには十分なものだと感じた。とくにアクションとしての手触りや，ボイス，BGMといった音の部分は実際にプレイしないと分からない部分でもあるので，ぜひとも一度手に取ってみてほしい。

体験版から製品版へ，データの引継ぎができることも確認済み。どれぐらいの要素が引継ぎできるのかは分からないが，集められる眷属機をすべて集めてから製品版へ臨むのも一興かもしれない

「クライマキナ/CRYMACHINA」公式サイト