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「シブサワ・コウ40周年記念コンサート」レポート。「信長の野望」「三國志」などの名曲がオーケストラ演奏で復活,さまざまな記憶を呼び起こす
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印刷2023/04/11 07:00

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「シブサワ・コウ40周年記念コンサート」レポート。「信長の野望」「三國志」などの名曲がオーケストラ演奏で復活,さまざまな記憶を呼び起こす

 コーエーテクモゲームスは2023年4月8日,KT Zepp Yokohamaで「シブサワ・コウ40周年記念コンサート」を開催した。これは「信長の野望」「三國志」など,シブサワ・コウ作品の楽曲がオーケストラ編成で生演奏されるというもの。抽選で選ばれた幸運な1100名が現地で,3300名がオンラインで名曲に酔いしれた。

撮影:大山雅夫
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会場のKT Zepp Yokohamaには,入場を待つ行列が
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最新作「Wo Long: Fallen Dynasty」から呂布もお祝いに駆けつけた
コーエーテクモゲームスの原点となった「川中島の合戦」「信長の野望」。メディアはカセットテープ。「川中島の合戦」のパッケージデザインは美大出身の襟川恵子氏が手がけたもので,新聞に掲載されていたフォークランド紛争の記事をコラージュしたのだという(撮影:大山雅夫)
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歴代シブサワ・コウ作品のパッケージアートも展示
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シブサワ・コウ40周年記念グッズ(撮影:大山雅夫)
こちらは「ゲームパッケージ入りTシャツ」
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「シブサワ・コウ40周年記念 ゲームパッケージ風 アクリルキーホルダー 生?範義コレクション」。当時の記憶がよみがえる
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リアル甲冑も展示

「シブサワ・コウ40周年記念コンサート」特設サイト

記念コンサートグッズ特設サイト



●「シブサワ・コウ40周年記念コンサート」出演者(敬称略)
指揮:志村健一
演奏:シブサワ・コウ40周年記念管弦楽団
出演:平原綾香,新居昭乃,シブサワ・コウ(襟川陽一),襟川恵子,浜村弘一

写真左から,浜村弘一氏,新居昭乃さん,シブサワ・コウ(襟川陽一氏),襟川恵子氏,平原綾香さん,志村健一氏(撮影:大山雅夫)
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●「シブサワ・コウ40周年記念コンサート」セットリスト(敬称略)
1. 「桃園の誓い」 / 作曲:菅野よう子
 「三國志」(1985年)
2. 「黄河〜揚子江」 / 作曲:菅野よう子
 「三國志」(1985年)
3. 「魏のテーマ、呉のテーマ、蜀のテーマ」 / 作曲:向谷実
 「三國志II」(1989年)
4. 「華龍進軍」 / 作曲:服部隆之
 「三國志V」(1995年 )
5. 「三國志 続貂」 / 作曲:池瀬 広
 「三國志X」(2004年)
6. 「飛龍乗雲」 / 作曲:大塚正子
 「三國志14」(2020年)
7. 「覇道、その黎明」 / 作曲:坂部 剛
 「三國志 覇道」(2020年)
8. 「悠然と進むもの」 / 作曲:五十嵐一歩
 「Winning Post 9」(2019年)
9. 「夢の旅人」 / 作曲:川上進一郎
 「蒼き狼と白き牝鹿・ジンギスカン」(1987年)
10. 「合戦 -武田軍-」(作曲:小六禮次郎)
 「決戦III」(2004年)
11. 「オープニング 〜無頼の宴〜」 / 作曲:木下伸司
 「水滸伝・天命の誓い」(1989年)
12. 「龍馬」 / 作曲:菅野よう子
 「維新の嵐」(1988年)
13. 「勇躍」 / 作曲:高木庸旬
 「大航海時代IV PORTO ESTADO」(1999年)
14. 「Freed From This Mortal Coil」 / 作曲:菅野祐悟
 「仁王」(2017年)
15. 「William」 / 作曲:菅野祐悟
 「仁王2」(2020年)

・休憩

16. 「時の調べ」 / 作詞:霜月智恵子 / 作曲:菅野よう子 / 歌唱:新居昭乃
 「信長の野望・戦国群雄伝」(1988年)
17. 「傍にいるから」 / 作詞:霜月智恵子 / 作曲:山本光男 / 歌唱:新居昭乃
 「信長の野望・戦国群雄伝」(1988年)
18.「覇道 -疾駆」 / 作曲:平松建治
 「信長の野望 覇道」(2022年)
19. 「オープニング 〜群雄決起〜」 / 作曲:菅野よう子
 「信長の野望・戦国群雄伝」(1988年)
20. 「狼煙」 / 作曲:菅野よう子
 「信長の野望・武将風雲録」(1990年)
21. 「風雲」 / 作曲:川井憲次
 「信長の野望 Online」(2003年)
22. 「現世夢幻」 / 作曲:菅野よう子
 「信長の野望・全国版」(1986年)
23. 「天下攻防」 / 作曲:菅野よう子
 「信長の野望・全国版」(1986年)
24. 「Shine -未来へかざす火のように-」 / 作詞:松井五郎 / 作曲:平原綾香,菅野よう子 / 歌唱:平原綾香
 「信長の野望・創造」(2013年)

・アンコール

25. 「Jupiter」 / 作詞:吉元由美 / 作曲:グスターヴ・ホルスト / 歌唱:平原綾香
26. 「決起、戦に臨まん」 / 作曲:吉田孝志
 「信長の野望・新生」(2022年)
27. 「OVERTURE 〜信長の野望〜」 / 作曲:菅野よう子
 「信長の野望・全国版」(1986年)
※全編曲:穴沢弘慶


シブサワ・コウ40周年

その歴史を彩る名曲をオーケストラで演奏


 この日はシブサワ・コウが携わったゲームから選りすぐりの名曲が,オーケストラ用に編曲されて披露された。バックに流れる映像も,できるだけ初出時のハードにおけるプレイ画面を使い,最後にはパッケージイラストが現れる……というリスペクトにあふれたもの。心に残るフレーズ,夢中になって遊んだゲームの映像,あの日ワクワクしながら手に取ったパッケージに描かれていたイラスト……といった相乗効果で,記憶を辿るような体験ができた。
 例えば,コンサートの開幕は「桃園の誓い」「黄河〜揚子江」という「三國志」の名曲が演奏されている。ゲームを遊びながら聴いたフレーズが懐かしいのはもちろん,映像もツボを押さえている。合戦では「三國志」で猛威を振るった火計を決め,内政シーンでは軍師に「他にすることはないのですか」とたしなめられているのだからたまらない。

撮影:大山雅夫
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撮影:大山雅夫
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 2曲の演奏が終わると,満場の拍手の中,コーエーテクモホールディングス 代表取締役会長 襟川恵子氏と,シブサワ・コウことコーエーテクモホールディングス 代表取締役社長 襟川陽一氏がそれぞれスピーチを行った。ゲーム会社としての光栄(コーエーテクモゲームスの旧名)は,陽一氏が染料問屋の経営に失敗した当時,恵子氏から誕生日プレゼントとして贈ってもらったPCからスタートしている。

※この辺りの歴史は,陽一氏が2018年に東京大学で行った講演レポートに詳しいので,興味のある方は参照されたい(関連記事

 恵子氏はこのエピソードに触れ、「自分が誕生日プレゼントに贈った1台のPCから,こうしたコンサートを開けるようになったのは夢のよう」と語り,PCゲームには音楽が必要だと感じていたことから,当時は無名だった菅野よう子さんを紹介してもらって作曲してもらったところ,非常に出来が良かったため追加発注をしたという秘話を明かした。また,「信長の野望・創造」のテーマ曲も,「どうしても女性に歌ってほしいということで平原綾香さんにお願いした」と同社の音楽史について語った。

すべての始まりとなったパソコン「MZ-80C」(撮影:大山雅夫)。1979年に発売された機種で,2017年にはハル研究所から1/4サイズの「PasocomMini MZ-80C」が発売されている
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 また,陽一氏は「PCをプレゼントしてもらったことから,会社でも家庭でも上下関係がついている。今回の演奏曲目については,大好きな曲を選んだ。自分はゲーム好きで,今も朝5:00から夜の22:00まで,自社はもちろん他社のものも含めてゲームを遊び,ゲームの話をしている。ゲームは私にとっての空気であり,ないと生きていけない」とゲーム作り,そしてゲームそのものに抱く熱い思いをユーモアたっぷりに語った。

 「覇道、その黎明」までの演奏が終わったところで,陽一氏と,「信長の野望」の存在をきっかけに業界入りしたという浜村弘一氏によるトークコーナーがスタート。
 陽一氏は「PCをプレゼントされてからは,当時の4大ゲーム誌に掲載されていたプログラムリストを,マシン語のものも含めて入力して遊んでいて,入力を間違えて直すことすら楽しいものがあった。自分は歴史好きで,当時は歴史を題材にしたゲームがなかったため『川中島の合戦』(1981年)を作ったところ,これが売れた」と自身の原点を語った。
 マシン語入力とは,二桁の英数字(例えば,0F 7E 05 43……という感じ)を延々と打ち込んでいくもの。ほかのプログラミング言語なら,命令が英単語になっているので処理内容の予測が付き,これが打ち込みを続けるモチベーションにもなる。しかし,マシン語だとプログラミングに詳しくない限り,何が書かれているか分からないうえ,入力ミスをしやすい。その修正作業も「楽しい」というのだから,さすがだ。
 「川中島の合戦」当時,ゲーム部門は染料会社である光栄の一部門だったが,これがヒットしたことからゲーム専門の会社になっていく。こうした発展の背景には陽一氏のゲーム愛があるというわけで,貴重な証言と言えるだろう。
 また,「光栄の歩みがゲーム業界を作った」という浜村氏の言葉に対し,陽一氏は「そうした気負いはなく,楽しいゲームを作ろうということでずっとやってきた。好きだからやっていられるし,お客様からご支援いただくことがやる気の素になっている」とコメントした。

撮影:大山雅夫
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 そして,競馬シミュレーションゲーム「Winning Post 9」「悠然と進むもの」,戦略シミュレーションにして男女の関係を扱った「蒼き狼と白き牝鹿・ジンギスカン」「夢の旅人」,“ダーク戦国アクションRPG”を謳う「仁王2」「William」など,多彩なジャンルのシブサワ・コウ作品の楽曲が演奏されて前半は終了となった。

撮影:大山雅夫
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 後半は,新居昭乃さん「時の調べ」「傍にいるから」をしっとりと歌い上げる幕開け。新居さんはオファーされた当時はゲームに関する知識がなかったうえ,当時の曲名には「コマンド」などゲーム用語のものもあったそうで,面食らいつつ歌っていたと語った。

撮影:大山雅夫
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 そして,2013年に行われた30周年記念ユーザーアンケート「あなたの好きな『信長の野望』」で1位を獲得した「信長の野望・武将風雲録」「狼煙」,戦国時代をMMORPGで体感できた「信長の野望 Online」「風雲」,ファミコンを始めとしたさまざまな機種に移植され,戦略シミュレーションの楽しさを広めた「信長の野望・全国版」「現世夢幻」「天下攻防」と,シリーズの歴史を振り返るかのような選曲で演奏が続く。

撮影:大山雅夫
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撮影:大山雅夫
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 さらに「信長の野望・創造」のテーマソング「Shine -未来へかざす火のように-」では平原綾香さんが登場。「『信長の野望』は歴史があって愛されているシリーズなので,歌うのは勇気がいることだった。菅野さんの作った『OVERTURE 〜信長の野望〜』のメロディーを発展させてみてはどうかというアイデアで加筆させていただき,作詞の松井五郎さん達とみんなで愛を込めて作っていった」と制作秘話を披露。
 陽一氏も,「(平原さんの代表曲)『Jupiter』が素晴らしい曲だったので,オファーを受けていただけて嬉しかった。素晴らしい原曲にプラスしていただき,(タイトルになっている)“創造”のフレーズも歌詞に入れてもらえて嬉しかった」と当時の喜びを語った。

 アンコールでは平原さんの代表曲「Jupiter」が歌われたあと,「信長の野望」シリーズ最新作の「信長の野望・新生」から「決起、戦に臨まん」,そして「信長の野望・全国版」の「OVERTURE 〜信長の野望〜」と演奏され,40周年を記念するコンサートが締めくくられた。

撮影:大山雅夫
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 今回の公演では曲とともに当時の思い出が甦ってきて,なんとも懐かしい気分にさせられた。聞き慣れたフレーズもオーケストラ編成になることで新しい味わいが生まれてくる。
 演奏のバックに流れていた映像も印象的だ。劉備をはじめとする「三國志」の英雄達は,当時のPC版の時点ですでにカッコイイ。2023年の今見ても華があり,キャラクターデザインとこれを再現するドット絵の妙が光る。「信長の野望」シリーズでは,UIが数値の直接入力からGUIへと進化していく過程が見えて興味深いものだった。「仁王2」の映像も,タイトルになっているウィリアムとの戦いや,DLCのクライマックスなど見どころを盛り込みつつ,最後はすべての始まりかつ泣けるポイントである十三桜での出会いで締める……といった具合に,取り上げるシーンのセレクトからも愛を感じられた。
 もしも映像化されることがあれば,ぜひこれらの映像も収録していただきたい。細部まで確認しつつ,じっくりと繰り返し鑑賞してみたいと強く思う。

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