プレイレポート
[プレイレポ]現代の技術で23年ぶりに蘇った「SILENT HILL 2」は,オリジナル未体験の人にこそ勧めたい良質リメイクタイトルだった
4Gamerでは,今年8月に開催された「SILENT HILL 2 Tokyo Media Premiere」でも序盤の試遊レポートをお届けしたが,今回はPlayStation 5版の製品版ROMをKONAMIから提供いただいたので,エンディングまでひととおりプレイしてのレポートをお届けしていく。
世界初公開のリメイク版「SILENT HILL 2」が体験できた,Tokyo Media Premiereをレポート。開発陣への合同インタビューも
KONAMIから2024年10月8日に発売されるサイコロジカルホラー「SILENT HILL 2」のメディア向けイベント「『SILENT HILL 2』Tokyo Media Premiere」が,東京のesports 銀座 studioで開催された。23年ぶりのリメイクで現代に甦った本作を一足先に体験してきたので,その模様をレポートする。
なお筆者は2001年のオリジナル版「SILENT HILL 2」は未プレイであり,ほぼ予備知識のない状態でプレイしている。そのため本稿でもオリジナルとの比較などは最低限しか行わず,筆者同様,今作で初めて「SILENT HILL 2」に触れる人向けの内容になっているので,その点はご留意いただきたい。
またストーリーのネタバレは極力行わない方針だが,公式サイトや各メディアのインタビューなどで明かされている情報には触れているので,気になる人は注意してほしい。
「SILENT HILL 2」公式サイト
主人公ジェイムスの肩越しに体験する,廃墟となったサイレントヒル
タイトルにもある「サイレントヒル」とは,本作の舞台となる架空の観光都市のことだ。かつては流刑地だったことから刑務所や病院は元々あったようだが,その後は鉱山の街となり,炭鉱業が廃れたあとは観光業へと転換,隣接するトルーカ湖を中心とすると避暑地として大きく発展していったという。
ちなみに前作「SILENT HILL」も同じ街を舞台としているが,本作の登場人物やストーリーに直接のつながりはなく,前作をプレイしていなくてもとくに支障はない。
観光都市として発展したサイレントヒルだが,本作の舞台となるその場所は,人の気配がまったく感じられず,常に濃い霧に包まれたゴーストタウンと化している。
主人公のジェイムス・サンダーランドは,死んだはずの妻・メアリーから届いた手紙を頼りに,このサイレントヒルにやってくる。ここが廃墟になっていることを彼は知らない様子で,メンタル的にはプレイヤーと同じであり,初プレイの筆者は感情移入がしやすかった。
画面を見ていただければ分かるように,本作はジェイムスの肩越しの視点で進行する,三人称視点を採用している。全体的に探索要素が強く,クリーチャーと遭遇する機会も多いので,肩越し視点の視界はプレイしやすく,ホラーゲームとしての適度な緊張感を生んでいる。
この探索要素だが,オプションの「インタラクト」設定で難度を任意に変更が可能だ。本作の通常の難度だと調べられる場所に丸いアイコンが出るのだが,これを見えなくしたり,あるいは近寄らないと見えないようにできたりするのだ。
このアイコンを表示しない設定はオリジナル版のゲームデザインを再現したもので,代わりにジェイムスが何かある場所に近づくと,そちら側を向く演出が入るようになる。これを頼りにプレイするわけだが……それだけでも難度はかなり高くなる。
本作にはこうした視覚に関連した設定が充実していて,銃装備時の照準マーク(レティクル)の大小や色,残弾数表示のオンオフ,字幕のサイズ・太さ・色,色覚特性者向けの色味変更など,難度に関わるものからプレイヤーの好みや個性に配慮したものまで,実に多彩なものが用意されている。
ゲームはチャプターごとに進行し,サイレントヒルのさまざまな場所を,現地に残された地図とヒントを頼りに探索していく。オープンワールドではないので,原則として一度クリアしたところに戻ることはない。
屋外では多くの場合,周囲に霧が発生している。「『SILENT HILL 2』Tokyo Media Premiere」のレポートでも触れたが,本作の象徴とも言える霧は,最新のグラフィックスでリアルに表現されており,実に不気味だ。画面全体をフィルターのように霧が覆っているのではなく,同じ場所でも濃淡があり,場合によっては薄いところから向こうが見えることも。リアルな一方で,決して晴れることがない霧は非現実的でもあり,プレイヤーの不安を煽ってくる。もちろん近くにいる敵も見えにくくなるが,アクションの難度をあげるための演出ではないためか,その点を煩わしく感じることはなかった。
緊張感のあるクリーチャーとのバトル。カギとなるのは回避アクション
物語の舞台となるサイレントヒルには,正体不明のクリーチャーが無数にうごめいていて,ジェイムスの存在に気づくと襲いかかってくる。近くにいるとラジオのノイズが聞こえてくる本作ならではの演出もあるが,動き出すまでラジオが反応しない敵もいるので注意が必要だ。
それらに対し,ジェイムスは現地調達した武器を使って戦うことになるが,基本的に倒しても得られるものはなく,体力が減っているときなどはスルーしてかまわない。ただし屋内などでは謎解きのため,何度も同じ場所を行き来することがあるので,遭遇したときに倒しておいたほうが,のちの探索が楽になることもある。筆者の場合も,出会った敵は基本的に倒してから進むようにしていた。
クリーチャーの種類はそれほど多くないが,そのルックスは実に奇怪で,かつ心理的な恐怖を与えてくる個性的なものだ。コンセプトアーティストの伊藤暢達氏がデザインを手がけた,これらクリーチャーは,リメイクに当たってリファインが施され,彼らもまた本作の象徴として存在感を放っている。
クリーチャーに対するジェイムスの攻撃手段は,近接攻撃には道すがら手に入れた角材や鉄パイプを,遠距離攻撃には銃を主に使用する。とくに前者は,弾丸を消費することもなく何度も攻撃できることから,本作における戦闘の基本となるだろう。
後者の銃には「ハンドガン」「ショットガン」「狩猟用ライフル」の3種があり,どれも相手の攻撃範囲外から大きなダメージを与えられる。ヘッドショットも可能で,ライングフィギュアやバブルヘッドナースの頭とおぼしき部位にヒットさせると,大ダメージを与えられた。またハンドガンやライフルは構えている時間が長いほど,正確に射撃できるのも覚えておきたい。なお弾丸は入手できる数が限られているため,必然的に敵が複数現れたときや,ジェイムスの体力が少ないとき,強力なボスとの戦闘時などに使うことになるだろう。
敵との戦闘で重要になるのが,リメイクにあたり追加された回避アクションだ。ボタンを押すとジェイムスが素早くかがんで移動するのだが,かなり長い無敵時間があるので,敵の攻撃にうまく合わせれば反撃のチャンスが生まれる。アクション重視のタイトルのようにタイミングがシビアだったり,スタミナを消費したりするようなことはないので,積極的に使って戦闘を有利に進めたい。
本作には体力ゲージなどの表示はないので,戦闘で消費したジェイムスの体力は,画面のエフェクトや彼の動きでしか確認できない。何段階かのダメージ演出があるようだったが,正確な数値はプレイヤーには分からないのだ。
体力の回復は,アイテムの「栄養ドリンク」(回復量小)と「シリンジ」(回復量大)によってのみ行え,例えば特定の場所で全回復できるといった要素は用意されていない。ゆえに数が限られた回復アイテムをどう使うかは,本作においてかなり重要になる。またセーブポイントが近いなら,こまめなセーブも忘れずに。
初見プレイの緊張感を味わってほしいので,ゲームをとおして弾丸を含む消費アイテムをどの程度の入手できるかは,ここではあえて触れないが,マップを隅々まで探索することで入手できる数は必然的に増えるので,堅実に進みたい人はじっくり歩き回ってみるのもいいだろう。
懲りに凝った謎解きギミックは,今の時代にもマッチする?
「SILENT HILL 2」の攻略において主題となるのが,多彩な謎解きのギミックだ。金庫やダイヤル錠,パネルキーなど一般的なものから,家具などに仕込まれた大がかりなものまで,種別を考えてもかなりの数がある。
後者はオリジナル版発売当時のゲームらしい,「なんでこんな仕掛けが……!?」と思わずにいられない非現実的なものなのだが,そもそも奇妙なクリーチャー達が闊歩するゴーストタウン自体がまともではないので,あまり気にはならない。
大仕掛けのものは大抵,次のエリアへと進むためのものなので,ヒントや作動アイテム自体も謎解きによって入手しなくてはならない。筆者がとくに印象深かったのは物語の中盤で訪れる病院で,3つの錠を1つ外すたびに病院内の構造が変わり,移動ルートが変化するというものだった。錠を1つ開けたら,探索やセーブのために移動していた道が突然塞がれて通れなくなり,大いに混乱させられた。
ここに限らず謎解きはかなり巧妙に作られていて,この病院の謎解きには同じ場所で数時間悩まされたが,「これってこうするのかも!」といった突然降りてきたひらめきでクリアできたときは本当に痛快だった。
これらの謎解きは,周囲にあるメモや落書きなどがヒントになっているので,それらを見つけるためにも探索は重要となる。見つけたヒントはジェイムスがマップにその都度書き込んでくれる親切設計なので,詰まったらあらためて地図を見ると新しい発見があるかもしれない。
ちなみにゲームをロードしたときや周回プレイなどでダイヤル錠やキーパッドなどの数字を知っていると,その謎に関連したゲーム内の情報を持っていなくてもクリアできたこともお知らせしておきたい。
近年の謎解きイベントなどの隆盛により,この手の謎解きが好きな人や得意な人も多そうなので,そういった人は大いに楽しめることだろう。一方で,苦手な人はゲーム開始時に難度(ゲーム中では「パズル」と表記)を3段階から選べるので,優しいものを選んで始めるといい。
ちなみに「パズル」の難度を変更しても,謎解きそのものに変化はなく,ヒントの表現が変わるようだ。ただし一度ゲームを始めると変更ができないので,今回のプレイでは具体的にどう変化するのかは確認できなかった。
サイレントヒルに迷い込んだ人物達。彼らの目的とは……
本作にはジェイムスのほかにも,ストーリーに深く関わる人物が何人か登場する。人の気配がないサイレントヒルにおいて,人物と出会うシーンはいずれも大きなイベントであり,ゲームを進めるにつれ,彼らの人物像も分かっていくだろう。
リメイク版では各キャラクターに俳優がキャスティングされているそうで,ボイスだけではなくその表情まで,フェイシャルモーションキャプチャによる演技がつけられている。YouTubeの公式チャンネルでは,ジェイムス役のLuke Roberts(ルーク・ロバーツ)さんとメアリー&マリア役のSalóme Gunnarsdóttir(サロメ・グンナスドッティル)さんのインタビュー映像が公開されているので,ゲームプレイ後に見てみてほしい。きっと印象が変わるはずだ。
ちなみに音声は日本語吹き替えにも対応している。筆者は映画も吹き替えを見ることが多いので,本作でも吹き替えでプレイしたが,とくに違和感なく楽しめた。
恐怖がなぜかクセになる。繰り返し遊びたくなるジェイムスの物語
本作はホラーゲームではあるものの,ゴア表現などグロテスクな直接的なものは控えめで,“サイコロジカルホラー”を謳うだけあって精神的な怖さにフォーカスしたものになっている。霧に包まれる街や,クリーチャー達の得体の知れなさがその象徴だ。
また,それほど露骨ではないものの,虫や汚物など不快感のあるシチュエーションもあるので,そのあたりは覚悟しておくべきだ。
シーンによっては常時恐ろしげな音が聞こえてくるし,そんななかクリーチャーが接近してきたときのラジオノイズが少しずつ大きくなってくると,それに比例するように緊張感は増していく。チャプターごとの環境がまた怖さを引き立て,とくに屋内のシーンは暗くてほとんど周囲が見渡せず,かつ迷路のような構造がプレイヤーの行動を制限してくる。一刻も早く脱出したいところだが,かといって先に進めば広い場所に出るかというと,そうとも限らないのだが。
こうした演出は恐怖を煽ると共に,次は一体どんなギミックが来るのかと期待している自分に気付いたりして,ちょっとした中毒性が感じられた。これがまた,本作の魅力の一つなのだろう。
筆者はひとまずのエンディングまでたどり着き,物語を通してジェイムスや妻のメアリー,ほかの登場人物が,このサイレントヒルにどう関わっていたのかは,おおよそ半分ぐらい掴めたように感じている。とはいえ,まだ謎に包まれた要素は多く,それは恐らく,今後の周回プレイによって明らかにされるのだろう。
本作は,条件により結末が異なるマルチエンディングを採用しており,今回のリメイクにあたって新たなエンディングが追加されたことも,開発陣より明らかにされている。
純粋なアクションゲームとしての完成度も高く,敵とのバトルも楽しかったので,周回プレイは苦にならず,筆者としてはすぐにでも,もう一度ゲームを始めたい気持ちにさせられた(実はTGS 2024終了後に2周目を始めてしまった)。
さらに,本作はエンディングを迎えると「NEW GAME+」が開放され,「グラフィックモード」に新たな項目が追加されるなど,周回プレイのモチベーションを上げる要素も用意されている。もちろんゲームの難度も変更できるので,イージー設定でサクサク進めてもいいし,ハード設定で手応えのあるゲームプレイのもとに進めるのもいいだろう。ちなみに戦闘の難度は,ゲーム開始後でも変更できる。
今回のプレイをとおし,霧に包まれたサイレントヒルを取り巻く舞台設定や,登場人物のバックストーリー,クリーチャーのデザイン,ゲーム全般におけるプレイフィール,BGMを含む音響効果など,筆者としてはそのすべての虜になり,オリジナル版がファンから高く評価された理由がある程度分かった気がした。
当時を知る人にとっては,もしかするとリメイクで印象が大きく変わる部分があるのかもしれないが,そこはオリジナル版の熱心なファンだというBloober Teamの開発チームと,再集結したオリジナルスタッフの伊藤暢達氏(コンセプトアーティスト)や山岡 晃氏(コンポーザー)の手腕に期待していただきたい。
リメイクによって23年ぶりに扉が開かれたサイレントヒル。この機会にぜひ訪れて,そこで体験したことを新旧ファン同士で共有していただければと思う。
※画面は開発中のものです。
「SILENT HILL 2」公式サイト
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(C)Konami Digital Entertainment
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