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世界初公開のリメイク版「SILENT HILL 2」が体験できた,Tokyo Media Premiereをレポート。開発陣への合同インタビューも
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印刷2024/08/19 16:00

イベント

世界初公開のリメイク版「SILENT HILL 2」が体験できた,Tokyo Media Premiereをレポート。開発陣への合同インタビューも

 コナミデジタルエンタテインメント(KONAMI)から2024年10月8日に発売されるサイコロジカルホラー「SILENT HILL 2」PC / PS5)のメディア向けイベント「『SILENT HILL 2』Tokyo Media Premiere」が,東京のesports 銀座 studioで開催された。

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 国内外のメディア関係者を招いて行われたこのイベントでは,約4時間にもおよぶ試遊時間が設けられたほか,開発陣による解説合同インタビューも開催された。本稿ではその模様をレポートする。


「SILENT HILL 2」公式サイト



三人称視点で自由度が増した新生「SILENT HILL 2」


 まずは「SILENT HILL 2」の概要から確認しておこう。
 本作は2001年に発売されたシリーズ第2弾「SILENT HILL 2」をフルリメイクし,最新のグラフィックスで現代に甦らせたリブート版だ。プレイヤーは3年前に死んだはずの妻メアリーから届いた手紙をきっかけに,かつて2人で訪れた街「サイレントヒル」を再訪した主人公・ジェイムスとなり,深い霧に包まれた街を探索していくこととなる。しかし,街はすでにゴーストタウンと化しており,あまつさえ謎のクリーチャーが徘徊しているのだった。

 開発を手がけるのは,「The Medium」「Layers of Fear」といったホラー作品の開発に定評があるポーランドのデベロッパBloober Team。またプロデューサーに岡本 基氏,コンポーザーに山岡 晃氏,コンセプトアーティストに伊藤暢達氏と,オリジナルの「SILENT HILL 2」に深く関わったメンバーが起用されている。

登壇者左からBloober TeamのLead ProducerであるMaciej Glomb氏,Creative DirectorのMateuz Lenart氏,岡本 基氏,伊藤暢達氏,山岡 晃氏
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 今回試遊できたバージョンは製品版に近い内容とのことだが,もちろん実際の製品とは異なる可能性がある。また試遊の範囲はゲーム開始から,クリーチャーの「レッドピラミッドシング」と戦うところまでとなっていた。
 なお筆者は,オリジナル版のプレイ経験はほぼない状態で試遊に臨んでいる(現在配信中の「SILENT HILL: The Short Message」はプレイ済)。ゆえに本稿で紹介しているのは,基本的に試遊の中で体験した事実に基づくものであることをお断りしておく。

試遊会の様子。会場には欧米,アジア,日本のメディア関係者が集められた
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 さて,それではゲームを開始していこう。
 物語は,主人公のジェイムスがサイレントヒルの近郊にたどり着いたところから始まる。彼の語りと音楽,高台の駐車場から見える霧のかかった景色がとてももの悲しい。

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 ここから林道や墓地を通ってサイレントヒルへと向かうのだが,歩みを進めるたびに,霧が少しずつ濃くなっていく。やがて霧は先が見渡せないほど濃くなるが,まったく見えないことはない。画面全体がぼやけているのではなく,場所によって濃淡がある状態で,近づきさえすれば何があるのかはしっかり分かるのだ。霧は本作の象徴的な存在であるだけに,その表現にはやはりこだわりが感じられる。

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 霧が覆う街の表現もまた素晴らしい。かつて人々が生活していた環境から突如人が消え去り,そのまま朽ちて廃墟になったような街並みが細部まで作り込まれていて,それが霧に見え隠れする様は,本作の世界観を見事に表している。
 オープンワールドではない,閉鎖されたフィールドならではの作り込みで,街のシチュエーションは現実味にあふれ,プレイヤーは本当にそこにいるかのような感覚に陥るだろう。序盤のレコード店やバーに足を踏み入れたときの,ホラーゲームならではの緊張感と高揚感は格別なものがあった。

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 ゲームは古き良きサバイバルホラーといったプレイフィールで,特定の場所を調べて何かを見つけたり,謎解きをしたりして進行していくスタイル。シチュエーションによってはあまり現実的でない要素もあるが,これをどう捉えるかで評価は変わるのではないだろうか。
 元となる作品が2001年のゲームであり,謎解きなどは当時の内容を踏襲している部分もあるようだが,ヒントもあり,各種インタフェースも快適で,ノスタルジックな感触をノンストレスで楽しめた。

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 ちなみにオリジナル版は少し離れたところからジェイムスを見下ろす視点でプレイするゲームデザインだったそうだが,本作では彼の肩越しの三人称視点となって,カメラも自由に動かすことができ,プレイフィールや臨場感が向上しているという。

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 謎解きや移動において頼りになったのが方向キー[↑]で開けるマップだ。今回のプレイ範囲では,ジェイムスが特定の場所を訪れるとマップが手に入るのだが,その範囲内で何かを発見すると,彼がマップにメモを書き込んでくれるのだ。
 オリジナル版にもあった機能とのことだが,これが実に便利で,手詰まりになったときにマップを眺めてみると,進むべきルートや行き忘れた場所などがなんとなく分かるようになっている。
 今回の試遊の後半で足を踏み入れた広大な「ウッドサイドアパート」では,移動をすることで,入れない部屋や,鍵で開く扉,何らかの原因で封鎖された通路などが細かく書き込まれていき,それによってあまり迷うことなく行き来することができた。また近くに何かがあるときは,ジェイムス本人がそちらのほうを向くという演出もゲーム進行のヒントとなっている。

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 序盤でジェイムスの行く手を阻むクリーチャーは,腕と顔がない「ライングフィギュア」と,虫のような姿の「クリーパー」,手と脚だけの作り物のような「マネキン」の3種類だ。ゲーム序盤でのジェイムスは道中で拾った角材による打撃で攻撃することになるわけだが,その後ハンドガンを入手し,ある程度距離を取っての戦闘も可能となる。

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 前者は何度でも攻撃できるぶん攻撃範囲は狭く,敵から反撃されるリスクが大きい。後者は離れた場所から比較的安全に大ダメージを与えられるものの,弾の数が限られるという大きなデメリットがある。クリーチャーは神出鬼没で,倒しても見返りはなさそうなので,無視して進むのも選択肢となりそうだ。

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 ジェイムスは戦闘で体力が減ると画面の周囲が赤くなり肩に手を添え,よろけながら歩くようになり,スムーズな移動ができなくなる。回復は「栄養ドリンク」(体力を一定量回復)か「シリンジ」(体力を大きく回復)を使うしか手段がなく,これらも見つけられる数は限られている。さらにこのあとの展開でどの程度必要になるか分からないので,無理はせず,こまめにセーブをしながら進むのが確実に思えた。

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 予備知識なしではあったが,サイレントヒルの東側からウッドサイドアパート,そして次のブルクリークアパートに入るところまで進めて,目標だったレッドピラミッドシングとも対峙できた。とはいえ,この段階ではその存在を確認しただけで,本格的に戦うのはもう少し先のことだったようだ。
 この続きをすぐにプレイできないのがとても残念だが,開発陣によれば本作は周回プレイを前提に作っているとのことなので,この試遊の経験値を製品版のプレイに生かせればと思っている。

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 約4時間プレイした総評としては,ホラーゲームとはいえ本作は精神的に怖がらせるタイプの作品で,血みどろのゴア要素は控えめ。またいわゆるビックリ箱のように突然驚かせてくる要素も,敵が思わぬところから登場して驚くことこそあれ,演出で多用されることはないようだった。ゆえにその手の要素が苦手な人でも,楽しめそうである。
 加えて,音響面にも少し触れておきたい。楽曲の完成度はもちろんだが,本作は効果音による空気感と恐怖の演出が素晴らしく,ラジオのノイズで敵の接近を知らせるギミックなど,本作ならではの要素もある。ぜひともサウンド環境を整えてプレイしたいところだ。

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 最後に,オプション設定にも言及しておこう。本作は14か国語に対応しており,もちろん日本語表示,および音声も選択できる。また,難度の設定では「戦闘の難しさ」と「パズルの難易度」をそれぞれ変更できる。
 さらに「インターフェイスプリセット」なる設定では,「モダン」「レトロ」が選択でき,前者では画面内のアイテムや調べられる場所が丸印のアイコンで強調表示されるなど,遊びやすさを重視したインタフェース表示が可能になる。一方,後者ではこうしたインタフェースがほぼすべて非表示になり,ゲームの雰囲気を重視したプレイ画面となる。なお両者の中間の「デフォルト」もあるので,好みに合わせて選択するといい。

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 もう一つ,面白かったのは「グラフィックモード」の設定だ。「デフォルト」は本稿で使用している画像のとおりの画面になるが,「90年代」に設定すると,画面全体にくすんだようなフィルターがかかる。かつてPS2で発売された頃のグラフィックスの再現だろうか。
 ほかにも字幕のサイズ設定や色覚多様性者に向けた色設定があるなど,幅広いプレイスタイルに対応できる内容であった。

イベント当日は,作中に登場するピザ箱に入ったオリジナルグッズ(Tシャツやボトル,マルチクロスなど)が,来場者にお土産として手渡された。すべて非売品とのことだ
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ファンの皆さんが納得できる「サイレントヒル」を――「SILENT HILL 2」開発陣インタビュー


 ここからは,メディアイベント内で行われた開発陣への質疑応答と,イベント後に行われたメディア合同インタビューの内容をまとめて紹介する。なお,ここでの質問はすべて試遊後に行われている。それを踏まえたうえで読み進めてほしい。

――岡本さんにうかがいます。今回,オリジナルの「SILENT HILL 2」に携わられていた山岡さん,伊藤さんと共に開発に当たられたわけですが,手応えはいかがでしょうか。

岡本 基氏(以下,岡本氏):
 「SILENT HILL 2」は非常に長く愛されている作品で,また後続作品も多くリリースされているタイトルでもあります。オリジナル版の開発者であるお二人と一緒に仕事することで,深い考察や設定の掘り下げなどができたのはよかったと思っています。

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――山岡さんへの質問です。今回新たに書き下ろした曲はありますか。

山岡 晃氏(以下,山岡氏):
 曲は全曲書き直しています。オリジナルの曲もパートは使っていますが,基本は全曲書いてます。トータルでは9時間ぐらいあるんですけど(笑),これでもしサウンドトラックを作る場合はどうすればいいのかを考えています。
 23年前の音楽が今も愛されているのは凄く嬉しいですけど,今回は新しい「SILENT HILL 2」ということで,初めて遊ぶ人にも感動や興奮を味わってほしいと考え,オリジナルのパートを使いながらも全曲変えることにしました。

――本作に登場するクリーチャーについて伊藤さんにうかがいます。本作のクリーチャーはオリジナルと何か違いはあるのでしょうか。

伊藤暢達氏(以下,伊藤氏):
 まったくの新しい存在はいませんが,原作のストーリー的に当時「こうすればよかった」と思っていたところをリファインしています。原作との違いを考察していただくのも,今作の楽しみの一つだと思います。

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――開発会社として注目してもらいたい点はどこでしょうか?

Mateuz Lenart氏(以下,Lenart氏):
 我々Bloober Teamの開発チームは,原作の「SILENT HILL 2」に対して非常に深い愛情と思い入れがあります。今回の作品では,レベルデザインからあらゆる要素を見直して,マップからUIまで一体感のあるゲームプレイを実現するべく制作しました。

Maciej Glomb氏(以下,Glomb氏):
 今日の体験会で皆さんが試遊しているところを後ろから観察し,開発関係者ではない方々がどのような反応をしているのかを間近で見られました。開発者として,大きな知見を得ることができたと思います。

――開発チームとしてBloober Teamを選んだ経緯を教えてください。

岡本氏:
 「サイレントヒル」シリーズをリブートするにあたって,世界中のスタジオが候補に挙がりましたが,我々としてはやはりシリーズに対する愛情が強いチームをにお願いしたいと考えました。実際にBloober Teamにお邪魔して,彼らが非常に強い愛情を持っていることを確信し,お願いすることを決定しました。

――オリジナル版と比較すると,本作は冒頭の部分のテンポがかなりよくなった印象があります。全体的なプレイフィールの改善は意識されましたか?

Lenart氏:
 おっしゃるとおり,とくに原作の序盤は間延びしているところがありました。今の作品らしくアクションを詰めたり,盛り上がりを加える方策も検討しましたが,最終的には極力原作の内容を尊重しつつ,現代のプレイスタイルにマッチするよう変更を加えた形になっています。

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――「サイレントヒル」シリーズにおいて,「SILENT HILL 2」のリメイクは,一体どのような存在なのでしょうか。

岡本氏:
 「SILENT HILL 2」はファンの皆さんの思い入れが深い作品で,またシリーズのスタンダードを作ったタイトルだと思っています。本作をファンの皆さんにご納得いただけるクオリティでお届けできれば,シリーズのほかのタイトルについても自信を持って送り出せる。そう考えています。

――以前のインタビューで,オリジナル版のチームとBloober Teamの間で,どの程度改変を加えるかで意見の相違があったという発言がありました。この議論は本作にどんな影響を与えましたか。

岡本氏:
 伊藤さんと山岡さんは,リメイクであれど完全新作として制作したいという気持ちがあったようです。なので,企画当初はクリーチャーのデザインをまるごと変えようとか,サウンドもより新しい方向性を追求しようという議論がありました。

Lenart氏:
 現在のエンタメ市場で通用する作品にしたいと考える一方で,変えないほうがいいという意見もありました。現在の形に落ち着いたのは,そうしたさまざま議論を重ねた結果ですね。

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――山岡さんと伊藤さんは23年越しのリメイクということなりましたが,お気持ちはいかがですか。

山岡氏:
 23年前に自分が「SILENT HILL 2」を作ったとき,一体何を考えていて,どんな生活をしていたのか。本作の作業は,それを思い出すところから始めました。でも,結果として思い出せなかったんです。それがすごく苦しかった。
 当時はお金がなくて,皆が好きな「Theme of Laura」「Promise」も,実はベースが入ってなくて,代わりにギターのチューニングを下げてベースにしていたんですよ。そんなギリギリの中で,それでもいいものを作りたい。そういった葛藤があったはずなんだけど,まったく忘れてしまっていて。
 だから,なんとか思い出そうと自問自答しながらの作業でした。当時のまま作るのはある意味簡単だけど,23年が経過した今,これを多くの人に受け入れてもらうにはどうすればいいのか,というようなことを,ずっと考えていましたね。

伊藤氏:
 僕の場合は,2019年頃に岡本さんから「リメイクの開発に参加してくれないか」というDMをいただいたんですね。その時点では,オリジナル版をいじる必要はまったくないと思っていました。
 それでも参加を決めたのは,作品のコアの部分は引き継ぎたいと思ったからです。とくにオリジナル版を遊んだことがない人に,当時のインパクトをどうすれば伝えられるか。自分としては,それを目標にしたつもりです。

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――新しいマップが追加されたとのことですが,そのコンセプトを教えてください。

Lenart氏:
 視点を肩越しのカメラに変更したことで,マップ周りは再考する必要がありました。今回試遊いただいた東地区の屋外のマップは,あまり改変していませんので,細かい違いはあれ,概ね原作どおりだったと思います。
 一方,アパートなどの屋内のマップでは,肩越し視点で探索するうえで,それがゲームとして面白くなるように,原作から一新しているところがあります。

――カメラの変更により,オリジナル版は映画的な印象が強かったのに対し,リメイク版では没入感が高まっているように感じました。こうした演出面の変化について,見どころや苦労されたポイントをお聞かせください。

Lenart氏:
 自由にカメラを動かせるようになったことで,先ほどもお話したマップの再構築が必要になりました。そのうえで,オリジナル版から印象が変わらないようにする工夫を随所に設けています。
 またオリジナル版では扉を開けるときに画面が暗転し,ロードが挟まっていましたが,本作ではシームレスに移動できるようになり,その部分のプレイフィールが異なっています。なので,その分の緊張感や恐怖感を演出で補うようにしています。

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――本作で「サイレントヒル」シリーズに初めて触れる人に向けては,どんな施策が用意されていますか。

岡本氏:
 オリジナル版もそうでしたが,初めて遊ぶ人でも楽しめるよう,難度を選択できるようになっています。戦闘とパズルでそれぞれ別に設定できるので,ぜひ活用してみてください。またこれは日本のプレイヤー限定ですが,字幕でゲームを遊ぶのに慣れていない人のために,吹き替え音声も用意しています。

――パズルの難度調整とはどのようなものですか。

Glomb氏:
 大きく二つありまして,一つは探索中に見つかるメモなどに書かれている情報量が変わります。もう一つは周囲の探索で得られるヒントの量が違い,またパズルの解法自体も変化します。

岡本氏:
 パズルはシリーズ伝統の要素ですので,Bloober Teamの皆さんにはかなり頑張って作っていただきました。

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――アクションも再構築されているとのこと。例えば銃を撃つときのエイムの伸縮が,クリーチャーの動きのスピード感と合っていて,それがスリルにつながっていると感じました。そうしたアクション部分の演出方針がありましたら教えてください。

Glomb氏:
 これもまたカメラに関係していて,肩越しの視点でクリーチャーに対峙したときの恐怖演出は,必然的にオリジナル版とは異なるものになります。具体的には,クリーチャーの挙動が,今作の視点に合わせて変化しています。
 また操作の自由度が増していますので,それに伴い各クリーチャーの挙動も強化しています。例えばマネキンなら,飛びかかりから回避行動をしたり,主人公から離れると離脱して隠れてしまったり。そうした動きを盛り込むことで,何をしでかすか分からない,不安感を煽る演出を作り出しています。

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――PS2時代から定評のある本作のグラフィックスですが,リメイクにあたってとくに意識したことはありますか。

Glomb氏:
 ビジュアルは伊藤さんともかなり検討を重ねて,その結果として辿り着いたものが反映されています。とくにこだわったのは霧の演出です。また高解像度になったとはいえ,ゴア表現を過剰にするのは本作の趣旨と合わないので,そうはならないよう徹底しました。

伊藤氏:
 霧の表現は,かなり口を酸っぱくして注文した覚えがあります。Bloober Teamの皆さんは,もしかすると僕に対して嫌な感情を持っているかもしれません(笑)。本作の霧は単なる自然現象ではなく,ジェイムスの曖昧な記憶を映像的に表現したものでもあるわけですから。その甲斐あってか,霧の表現は今作で最もうまくいったポイントだと自負しています。

――キャラクターの表情演出について,かなりのクオリティだと感じました。Bloober Teamはこれまで一人称視点のゲームを多く作られてきた印象ですが,なぜここまでの作り込みを実現できたのでしょうか。

岡本氏:
 三人称視点ゲームの経験がBloober Teamにあまりなかったことは,我々としても認識していました。しかし,それを差し引いても強い情熱を持っていましたので,信じてお任せしたところがあります。

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――アンジェラなど,デザインに一部原作とは異なる印象のあるキャラクターが見受けられましたが,その意図を教えてください。

岡本氏:
 キャラクターをリアルに表現するにあたり,本作では人間を一からモデリングするのではなく,俳優さんの顔をキャプチャすることから始めています。ですので,実在する俳優さんの顔がキャラクターに反映されていますね。
 それぞれの俳優さんも,容貌のみならず演技力なども鑑みてキャスティングしていますので,見た目が昔と違っていても,彼女を表現するのにベストな表現になっていると確信しています。

Lenart氏:
 本作は感情や情緒に訴える作品ですので,リメイクに際してファンの皆さんからの絶大な期待を背負ったものになるだろうことは覚悟していました。ですので,チームや岡本さんと十分に話し合ったうえで,カットシーンやキャラクターの表情は「完璧なものでなければ許されない」ぐらいの気持ちで開発に臨んでいます。
 とくに表情や口の動きは,キャラクター表現に大きく影響するものです。俳優の容貌や演技,そしてモデリングにおいても優秀なパートナーの助力を得て,完璧なものになったと自負しています。

会場に用意されていたスペシャルケーキ。禍々しくて,食べるのがもったいない
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――伝説的なタイトルである「SILENT HILL 2」ですが,皆さんの思い入れのほどを聞かせてほしいです。

Lenart氏:
 私が「SILENT HILL 2」を特別な作品だと思うのは,やはりストーリーです。プレイヤーの心に直接に刻まれるような深いストーリーは,決して外せないものだと考えています。そしてもう一つ重要なのが,作品全体の雰囲気ですね。当時多くの作品がある中でも,同作が持っていた雰囲気は,ほかの作品には決してないものでした。

Glomb氏:
 私はキャラクターに大きな魅力を感じました。ゲームのみならず,さまざまな物語は時間が経てば大筋を忘れてしまったり,印象が薄まってしまったりが普通ですよね。しかし「SILENT HILL 2」のキャラクターは非常に深いところまで設定されていて,まるで実在していたかのようでした。いつでも彼らを思い出せるほどで,それがとても印象に残っています。

岡本氏:
 私も同じになってしまいますが,ストーリーだと思います。とくにエンディングの苦さ,決して安易なハッピーエンドにならないことが,「SILENT HILL 2」を特別なものにしています。

山岡氏:
 僕としては,「SILENT HILL 2」はホラーというより,ジェイムスとメアリーの夫婦愛を描いた作品だと思っています。当時のメンバーがほかの作品とは違うものを作りたくて生まれたのが,この「サイレントヒル」というシリーズです。初代「SILENT HILL」から25年もの間,シリーズを通して育まれた“体験”が,今もまだ皆の記憶に残っている。もしかすると,これからまだ50年100年と続くかもしれない。それがこのシリーズの魅力なんじゃないでしょうか。

伊藤氏:
 オリジナル版の制作当時は,デザイナーが僕を入れて数人しかいなかったんです。その状況でどうやって戦えばいいのか分からなくて,だけど開発期間や予算は決まっていて。ディスカッションしかできない時期もあったくらいです。バトルデザインよりもストーリーに特化して,周回プレイで謎を解き明かしていく「2」のゲームデザインは,そんなときに決めたものです。なので,これをホラーゲームに分類してしまうには,若干語弊のある世界観になってしまったんですが……でもそれがまさか25年も愛される作品になるとは。当時はまったく思っていませんでしたね(笑)。

――ありがとうございました。

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※記事中の映像・画面は開発中のものです。

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