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メモリ16GB&クロックアップしたミドルクラスRadeon「Radeon RX 7600 XT」の実力を検証。増えたメモリが効果を発揮するゲームはどれか
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印刷2024/01/25 19:15

レビュー

メモリ16GB&クロックアップしたミドルクラスRadeonの実力は?

ASRock AMD Radeon RX 7600 XT Steel Legend 16GB OC

Text by 米田 聡

 2024年1月24日,AMDのRDNA 3アーキテクチャを採用するミドルクラス向けのGPU「Radeon RX 7600 XT」(以下,RX 7600 XT)のレビューが解禁となった。
 ASRockから1月26日に発売となる「AMD Radeon RX 7600 XT Steel Legend 16GB OC」(以下,RX7600XT SL)を試用する機会を得たので,本稿ではRX 7600 XTのゲーム性能について検証してみた。

AMD Radeon RX 7600 XT Steel Legend 16GB OC(型番:RX7600XT SL 16GO)
メーカー:ASRock
メーカー想定売価:6万2800円前後(税込)
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GPUクロック向上とグラフィックスメモリ容量増で1.2倍の性能を謳う


 RX 7600 XTは,新型GPUではあるものの,1月9日にGPU自体の概要を報じたとおり,実際はエントリー〜ミドルクラス市場向けGPU「Radeon RX 7600」(以下,RX 7600)のグラフィックスメモリ容量を,8GBから16GBへと倍増させたうえで,GPUの動作クロックを向上させた一種のバリエーションモデルである。そのため,GPUそのものについて,語るべきことはあまりない。
 今回,テストに使用したRX 7600 XTとRX 7600,そして比較対象の「Radeon RX 7700 XT」(以下,RX 7700 XT)や,性能面で競合製品となる「GeForce RTX 3060 Ti」(以下,RTX 3600 Ti)の主なスペックをまとめた表1を見ても,ベースモデルとの差が少ないことが分かるだろう。

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 なお,表1ではRX 7600 XTの補助電源仕様を,試用機のRX7600XT SLに合わせて「PCIe 8ピン×2」としたが,電力的には「PCIe 8ピン×1+PCIe 6ピン×1」でも対応可能なので,そのような製品が登場する可能性はある。

 話を戻すと,RX 7600 XTとRX 7600の違いは,GPUの動作クロックとグラフィックスメモリ容量のみだ。ゲームプレイ時の典型的な動作クロックを示すゲームクロックは約10%,ブースト時の最大クロックでは約5%向上している。その分だけ高い性能が得られるというのは分かりやすい。
 ちなみに,RX 7600 XTは,リファレンスモデルがAMDから登場することはないそうだ。通例では,グラフィックスカードメーカーの製品は,メーカーレベルでのクロックアップを施したオーバークロックモデルである場合が多いので,市場に出回るRX 7600 XT搭載カードは,リファレンス仕様よりも高い動作クロックで動くものが多くなるだろう。

 一方,グラフィックスメモリ容量は倍になったが,メモリインタフェースやメモリクロックはRX 7600から変わっておらず,メモリバス帯域幅に変化はない。メモリ容量の違いだけで,それがゲームにどのような変化をもたらすかは,少しイメージしにくいところだ。
 一般的にPCゲームは,グラフィックスメモリの総容量すべてを食いついぶさない程度に使用量を抑えるように作られている。レンダリング解像度が高いほど,グラフィックスメモリに占めるフレームバッファの容量も大きくなるし,グラフィックス品質の設定を高めるほどグラフィックスメモリの使用量やアクセス頻度も増える。つまり,解像度やグラフィックス品質設定が高いほど,グラフィックスメモリ容量は大きいほうが有利になる。

 AMDは,いくつかのゲームについて実測値を示しているのだが,たとえば4Gamerベンチマークレギュレーション28でも採用している「F1 23」の場合,16GBのグラフィックスメモリ容量を搭載するGPUでグラフィックス品質「超高」を設定すると,解像度1920×1080ドットでグラフィックスメモリ使用量が9.24GB,フレームレートへの影響は約7%,解像度2560×1440ドットでは同10.1GBで,約21.2%というデータを提示している。

 というわけで,RX 7600 XTはRX 7600に対してGPUクロックによる上積みとグラフィックスメモリによる上積みをあわせて,理想的な状態ではざっくり2割程度の性能向上を得られるという理屈だ。実際のところはゲームや解像度の違いによってかなり変わるはずなので,そこを検証していこう。


大型3連ファンを備えた「Steel Legend」のグラボ

RX7600XT SLの実機をチェック


 それでは,テストに用いるRX7600XT SLを写真で見ていこう。

AMD Radeon RX 7600 XT Steel Legend 16GB OC
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 写真のとおり,RX7600XT SLは90mm径の3連ファンを搭載するカードだ。それだけに,カード長は実測で約302mmとミドルクラスとしては大型だ。白い見た目の高級感もあり,バイク乗りの人に分かる表現だと,400ccクラスの車格がある排気量250ccのバイクといった感じだろうか。

カード長は約302mm。大柄で1クラス上のグラフィックスカードに見える
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バックプレートに窓が開けられており,後方のファンは前後にエアが抜ける構造だ
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 300mmを超えるカード長に対して,基板部分の長さは実測約202mmしかなく,後方のファンひとつ分,GPUクーラーが基板からはみ出た形になっている。バックプレートも後方ファン部には窓が開けられているので,エアが後方に抜ける構造だ。NVIDIAのGeForce RTXシリーズで良く見かけるデザインだが,Radeonでは比較的珍しい構造ではなかろうか。

 カードの厚さは,実測で約50mm。実質3スロットを占有するが,カード長からすると極端に厚いわけではない。重量は実測885gと1kgを切っているので,PCへの取り付けや固定は楽にできる製品だ。

カードの厚みは2.5スロット程度。長さのわりには薄いほうだ
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実測重量は約885g。それほど重い方ではないので,マザーボードのスロットにかかる負荷も低いだろう
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 GPUクーラーは,直径約6mmのヒートパイプ3本で結合された2分割式となっている。隙間から測定した値になるが,ヒートシンクの厚さは25mmで,GPU側のサイズが105(W)×90(D)mm,カード後方側のサイズは105(W)×140(D)mmだった。
 冷却性能はかなり高そうで,アイドル時にはファンを停止させる「0dB Silent Cooling」という機能も備える。

GPUクーラーは前後2分割式で,3本のヒートパイプで結合されている。基板がクーラーの途中までしかないのも見てとれよう
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GPU-ZでRX7600XT SLにおけるRX 7600 XTの動作クロックを確認したところ
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 「GPU-Z」で確認したところ,RX7600XT SLでは,GPUの動作クロックがゲームクロック時で2539MHz,ブースト最大クロック時は2810MHzに引き上げられ,さらにメモリクロックも2.25GHzへと,リファレンス仕様よりも大幅に上がっていた。その分だけより高い性能が期待できるだろう。

 映像出力インタフェースは,DisplayPort 2.1×3とHDMI 2.1×1という構成だ。標準的だが,どちらも最新のVersion 2.1に対応しているのが特徴と言える。

映像出力インタフェースはごく一般的なDisplayPort×3,HDMI×1の構成だ
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 GPUクーラーには,フルカラーLEDが組み込まれており,ASRockが配布している設定ソフトで発光パターンを制御できる。また,基板に設けられているスイッチで,LEDを完全にオフにできる仕様だ。
 なお,先述のとおり補助電源コネクタはPCIe 8ピン×2基で,オーバークロックモデルとして余裕をもたせた構成だ。ほかのRX 7600 XT搭載カードでは,異なる電源構成の製品もあり得るだろう。

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カラーLEDをハード的にオフにするスイッチを搭載する
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補助電源コネクタは8ピン×2基。300Wまで対応できる余裕のある構成だ


RX7600XT SLを上位モデルや下位モデル,競合と比較


 RX7600XT SLの性能を,4Gamerベンチマークレギュレーション28に準拠したテストで調べてみた。先述のとおり,RX 7600 XTにはリファレンスカードがない。RX7600XT SLはオーバークロックモデルであるが,各社から登場するRX 7600 XT搭載カードの多くも,同様にオーバークロックになると思われる。そのため,今回はRX7600XT SLの仕様どおりのクロック設定でテストを実行した。

 テストに使用した機材は表2のとおりだ。CPUには,現時点で最高クラスのゲーム性能を持つ「Core i9-14900K」を利用している。RX 7600 XTの性能に対して,CPU性能は高すぎるほど。この構成であれば,ボトルネックの多くはGPUになるので,GPU性能がはっきりと出るはずだ。
 比較対象にRTX 3060 Tiを選んだのは,最新世代の「GeForce RTX 4060」よりも高性能であるためだ。つまり,RX 7600 XTがRTX 3060 Tiよりも高性能であれば,RTX 4060も上回る性能を有するという理屈である。

表2 テスト環境
CPU Core i9-14900K(P-core 定格クロック3.2GHz,P-core 最大クロック5.6GHz,24C32T,Intel Smart Cache容量36MB)
マザーボード ASUSTeK Computer ROG MAXIMUS Z790 FORMULA(Intel Z790,BIOS 0801)
メインメモリ G.Skill International Enterprise TRIDENT Z5 NEO DDR5-6000 16GB×2(DDR5-6000の30-38-38-96設定で利用)
グラフィックスカード ASRock AMD Radeon RX 7600 XT Steel Legend 16GB OC
(Radeon RX 7600 XT,グラフィックスメモリ容量16GB)
Radeon RX 7600リファレンスカード
(Radeon RX 7600,グラフィックスメモリ容量8GB)
ASRock Radeon RX 7700 XT Challenger 12GB OC
(Radeon RX 7700 XT,グラフィックスメモリ容量12GB)
GeForce RTX 3060 Ti Founders Edition
(GeForce RTX 3060 Ti,グラフィックスメモリ容量8GB)
ストレージ GIGABYTE AORUS NVMe Gen4 SSD 2TB
(PCIe 4x4接続,容量2TB)
電源ユニット SilverStone Technology SST-ST1200-G Evolution(定格1200W)
OS Windows 11 Pro 22H2(Build 22621.3007)
チップセットドライバ Chipset Software 10.1.19557.8395
グラフィックスドライバ RX 7600 XT:AMD Software Adrenalin Edition 23.40.01.15 Win10-Win11-RCP4-Radeon-RX7600XT
Radeon:AMD Software Adrenalin Edition 23.12.1
GeForce:GeForce 546.33 Driver

 RX 7600 XTのディスプレイドライバには,レビュワー向けに配布された「AMD Software 23.40.01.15」を使用した。これは,RX 7600 XTにしかインストールできない特別版だ。なお,RX 7600 XT発売に合わせて「AMD Software 24.1.1」がリリースされたが,テストには間に合わなかった。
 ちなみに,AMD Software 23.40.01.15は,RX 7600 XTにしかインストールできない点を除けばAMD Software 24.1.1のプレビュー的な内容で,ドライバソフトによる動画アップスケーリング機能「Radeon Video Upscaling」が実装されている。さらにAMD Software 24.1.1では,ドライバによるフレーム生成技術「AMD Fluid Motion Frames」(AFMF)も実装されているが,これらの機能はRX 7600 XT固有というわけではない。

 ゲームのテストでは,解像度として3840×2160ドット,2560×1440ドット,1920×1080ドットを選択。グラフィックス品質は,すべて高負荷寄りの設定を採用した。ミドルクラスのグラフィックスカードにとってはやや荷が重い設定であるが,フルHD解像度でプレイアブルなフレームレートが得られれば,合格と判断していいだろう。
 なお「Fortnite」では,レギュレーション28で使用しているベンチマーク用のクリエイティブマップ「TILTED TOWERS BENCHMARK」が削除されたようなので,筆者が実際にゲームに参加したリプレイデータから,特定部分のプレイを1分間再生した様子を,フレームレート計測ツール「CapFrameX」を使って計測した。テスト方法が異なるので,過去のグラフィックスカードレビューにおけるFortniteのテスト結果とは比較できない点には注意してほしい。


3DMarkではGPUクロックの向上の効果を確認


 では,3DMark(Version 2.28.8217)の結果から順に見ていこう。Fire Strikeの総合スコアをまとめたものがグラフ1だ。

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 RX 7600とRX 7600 XTを比較すると,4K解像度相当のFire Strike Ultraと2560×1440ドット相当のFire Strike Extremeでは約4%,フルHD相当のFire Strikeで約2%のスコア向上を確認できる。Fire Strike Ultraと同Extremeでは,倍増したグラフィックスメモリが効いたためにFire Strikeよりスコア向上率が高いのかも,と言える結果だ。
 ちなみに,RX7600XT SLのゲームクロックは,RX 7600リファレンスモデルに対して約14%高い。そう考えると,このスコア向上率はスペックどおりとまでは言えない。

 一方,上位モデルのRX 7700 XTとの比較では,RX 7600 XTは7〜8割程度のスコアに留まった。上位モデルに対しては,相応の性能差があるようだ。今回,競合に位置付けたRTX 3600 Tiと比べると,Fire Strike ExtremeとFire Strikeで1〜2%上回った。RX 7600だとRTX 3600 Tiに届かないスコアがRX 7700 XTだと肩を並べたわけだ。

 グラフ2は,Fire Strikeの総合スコアから「Graphics score」を抜き出したものだ。

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 Graphics scoreも総合スコアと同傾向だが,RX 7600に対しては3〜4%程度上回り,上位のRX 7700 XTには約70%のスコアとなった。RTX 3600 Tiとの差はより開いていて,Fire Strikeで約4%,同Extremeで約3%ほどRX 7600 XTが上回っている。これがRX 7600 XTのFire Strikeにおける実力と見ていいだろう。

 グラフ3は,GPUとCPUの双方を使ってグラフィック性能を測る「Combined test」の結果をまとめたものだ。

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 RX 7600 XTのスコアは,総合スコアやGraphics scoreとおおむね同傾向だ。ただ,RTX 3600 Tiが全般に好成績を記録しており,RX 7600 XTを上回っている。どうもドライバの成熟具合によるものなのか,RX 7600 XTはFire StrikeのPhysics scoreが低めだった。そのため,CPUとGPUの両方を使うCombined testのスコアは,抑え気味になっている可能性がある。

 続いて3DMarkのDirectX 12のテストとなる「Time Spy」の結果を見てみよう。グラフ4が総合スコア,グラフ5がGraphics scoreをまとめたものだ。

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 RX 7600 XTの総合スコアはRX 7600よりも約3%強高く,RX 7700 XTの約70%ほどという傾向はFire Strikeと変わらない。一方で,RTX 3600 Tiが優秀なスコアを記録して,RX 7600 XTを5〜6%程度上回った。Graphics scoreも同傾向だが,RTX 3600 Tiとの差はより開いている。

 これらの結果から,RX 7600 XTは,DirectX 12ではRTX 3600 Tiに届かないと言えそうだが,DirectX 12のテストであるSpeed Wayも見ておくことにしょう。グラフ6がその結果である。

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 Speed Wayでは,RX 7600 XTとRTX 3600 Tiの差がさらに開いてしまい,RX 7600 XTは,RTX 3600 Tiの70%弱に留まった。Speed WayはDirectX 12 Ultimateで追加されたグラフィックス機能がテストに加わり,その中にはRadeon勢が相対的に苦手としているレイトレーシングも含まれる。それらの性能差がTime Spyに上乗せされた結果として,RTX 3600 Tiがより有利になったのだろう。
 なお,RX 7600に対しては約3%上回り,RX 7700 XTに対しては70%弱のスコアという傾向は,Speed Wayでも変わっていない。

 Speed Wayのスコア差の原因になっていそうなリアルタイムレイトレーシングの性能を計るPort Royalもテストしてみた。その結果がグラフ7だ。

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 Port RoyalにおけるRX 7600 XTのスコアは,RTX 3600 Tiの約80%で,RX 7600よりは約4%ほど高くなった。RTX 3600 Tiに対してはSpeed Wayほどのスコア差にはならなかったので,「Mesh Shader」など,Speed Wayに含まれるDirectX 12 Ultimateのほかの要素の性能差もそこそこあるのだろう。

 以上,3DMarkの結果を見てきたが,RX 7600に対してはGPUクロックやメモリクロックの強化が効果を発揮していることを確認できた。3DMarkでは,おおむね3〜4%程度の向上として反映されるようだ。
 一方,グラフィックスメモリ容量が倍増した効果は,3DMarkでは少々分かりづらい。Fire StrikeやTime Spyでは,高解像度ほどRX 7600に対するスコア差がわずかに大きくなる傾向はあるものの,それがグラフィックスメモリ容量の差だとは断言できない程度の差でしかないからだ。その点はゲームで見ていく必要があるだろう。

 それではゲームでのテスト結果を見ていこう。「Call of Duty: Modern Warfare III」(以下,CoD:MW3)の結果をグラフ8〜10にまとめた。

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 RX 7600 XTの平均フレームレートに注目すると,RX 7600比で3840×2160ドット時は約9%,2560×1440ドット時で約15%,1920×1080ドット時では約11%と,向上具合は良好だ。グラフィックスメモリ容量の倍増も,効果がしっかり出ているようで,とくに2560×1440ドット時の向上率が高くなった。
 一方,RTX 3600 Tiに対しては2560×1440ドットと1920×1080ドットで10%以上フレームレートが上回っているので,まずまずだろう。4K解像度のフレームレートがRTX 3600 Tiと横並びになるのは,意外と言えば意外だが,どちらにもプレイアブルとは言い難いフレームレートなので実質的な意味はないだろう。一般的な解像度であれば,RX 7600やRTX 3600 Tiと比較して快適さが実感できる程度の違いは得られたと評価できる結果だ。

 続くグラフ11〜13は,「バイオハザード RE:4」の結果である。

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 RX 7600 XTとRX 7600を比べると,なかなか興味深い結果だ。3840×2160ドットでは約1.6倍,2560×1440ドット時約1.9倍と図抜けた差を付けており,これは間違いなくグラフィックスメモリ倍増の効果だ。ただ,1920×1080ドットでは,ごくわずかだがRX 7600が上回った。バイオハザード RE:4ではテスト時にユーザーによる操作が必要なので,それによる誤差を考慮すれば,差がない程度の結果と言える。
 高解像度,とくに2560×1440ドットで高いフレームレートの伸びが見られ,その点では理屈どおりと言えるのだが,残念ながらいずれの解像度も快適にプレイできる目安である80fpsには届いていない。RTX 3600 Tiは少なくとも,1920×1080ドット時に80fpsを超えているので,ゲームを快適にプレイできるのはどちらかといえばRTX 3600 Tiに軍配が上がると言わざるをえないわけだ。
 RX 7600 XTでバイオハザード RE:4をプレイするなら,もう少しグラフィックス品質の設定を落とすか,超解像技術を使ったほうがいいだろう。

 次に,Fortniteの結果をグラフ14〜16にまとめた。

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 RX 7600 XTの平均フレームレートをRX 7600と比較すると,3840×2160ドット時が約17%と大きく差を付けたが,2560×1440ドット以下は3%台に留まっている。2560×1440ドットで効果が薄いのは残念だが,グラフィックスメモリ容量倍増の効果は見えたようだ。
 ただ,いずれの解像度でもRTX 3600 Tiには届いておらず,その点ではRX 7600 XTにとって厳しい結果と言えよう。本テストでは,GPUに高負荷をかけるためにレンダリング解像度を100%としているが,Fortniteは超解像技術を利用できる。そのため,この結果をもって,RX 7600 XTでは最高画質設定のFortniteがプレイアブルではないとは言えない。とはいえ,快適さにおいては,RTX 3600 Tiや上位モデルのRX 7700 XTに差を付けられているのは明らかだ。

 「Starfield」の結果がグラフ17〜19となる。

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画像集 No.033のサムネイル画像 / メモリ16GB&クロックアップしたミドルクラスRadeon「Radeon RX 7600 XT」の実力を検証。増えたメモリが効果を発揮するゲームはどれか

 RX 7600 XTの平均フレームレートは,3840×1440ドット時でRX 7600に約8%,2560×1440ドットでは約12%,1920×1080ドットは約13%の差を付け,解像度が低いほど差が大きい結果となった。Starfieldにおいては,グラフィックスメモリ容量よりもGPUやメモリクロックの向上のほうが,フレームレートに寄与しているようだ。結果として1920×1080ドットでは快適にプレイできる60fpsを超えてきている。
 また,RTX 3600 Tiに対しても,2560×1440ドット以下では平均フレームレートが約8%以上高く出ているなど,全般的にRX 7600 XTが良好な結果を残したゲームとまとめられる。StarfieldはRadeon向けに最適化されているようなので,その効果がよく出ているのかもしれない。

 グラフ20は「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」(以下,FFXIV暁月のフィナーレ ベンチ)の総合スコアをまとめたものだ。

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 RX 7600 XTとRX 7600のスコアを比較すると,2〜3%弱程度の向上率に留まった。もっともスコアが伸びたのは2560×1440ドット時だが,それでも向上率が3%には届いていない。グラフィックスメモリ倍増の効果はあまり見られず,またクロック向上の効果も,スコアからすると物足らないものといえる。
 FFXIV暁月のフィナーレベンチでは,RTX 3600 Tiの成績が全般に良好で,本作がNVIDIAのゲーム技術を利用していることを考慮すると,その差が出ていると考えて良さそうだ。

 とはいえ絶対的なスコアで見ると,RX 7600 XTは2560×1440ドットと1920×1080ドット時に,スクウェア・エニックスの基準で「非常に快適」となるスコアが得られているので,ゲームを快適にプレイできるかどうかという観点で言えば,まったく問題がない性能を持つ。

 参考までにFFXIV暁月のフィナーレ ベンチにおける平均フレームレートと最小フレームレートをグラフ21〜23にまとめている。

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 RX 7600 XTとRX 7600の比較を細かく見ると,2560×1440ドットおよび3840×2160ドット時の最小フレームレートで,やや高めの向上率が出ている。高解像度で差が広がるという点は,グラフィックスメモリ容量が倍増した効果かもしれない。

 グラフ24〜26は,「F1 23」の結果だ。

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 RX 7600 XTの平均フレームレートをRX 7600と比べると,3840×2160ドット時に約70%,2560×1440ドット時で約16%と,極めて大きな差を付けた。高解像度時の伸びが大きいのは,グラフィックスメモリ増量の影響だろう。
 ただ,RTX 3600 Tiと比べた場合,おおむね約80%前後に留まっている。また,快適にプレイできる目安である80fpsに届いたのは,最上位モデルであるRX 7700 XTの1920×1080ドット時のみだった。F1 23をプレイするなら,グラフィックス品質を落とすか,超解像技術を使うという点では,RX 7600 XTとRX 7600で大きな差はなかった,とまとめられそうだ。

 ゲームテストの最後となる「Cities: Skylines II」の結果が,グラフ27〜29である。

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 RX 7600 XTの平均フレームレートをRX 7600との差で見ると,3840×2160ドット時に約10%の差を付けたものの,実数では1.5フレームの差しかないのでブレの範囲かもしれない。もともと描画負荷が非常に高く,フレームレートが出にくいCities: Skylines IIに関しては,差はあるかもしれないが分からない程度,と言うほうが妥当そうだ。
 1920×1080ドット時には,快適にプレイできる目安である30fpsを超えており,RTX 3600 Tiよりもわずかに高い平均,最小フレームレートを記録しているので合格といって良い。
 Cities: Skylines IIは複雑な映像を描いているが,テクスチャのサイズはあまり大きくなさそうで,グラフィックスメモリの容量差は出づらいタイトルかもしれない。

 以上,ゲームでのテストを見てきたが,RX 7600 XTとRX 7600を比較すると,タイトルにより多少のばらつきが見られるものの,高解像度におけるフレームレートの向上率が大きい傾向が見られる。ただ,GPU自体がミドルクラスなので,高解像度で多少フレームレートを上積みできても快適にプレイできるレベルにはならない。
 快適にプレイできそうなフルHD解像度におけるフレームレートの差は,せいぜい7%程度のようだ。ここをどう評価するかが,RX 7600 XTの価値を決めそうだ。


RX 7600 XTの消費電力はRX 7600の約1.2倍


 今回はNVIDIA製の消費電力計測ツール「PCAT」を用意できなかったので,グラフィックスカード単体の消費電力は,GPU-Zで「Total Board Power」のログを記録する方法で調べてみた。Total Board Powerはグラフィックスカード上の電力センサーの値で,AMDとNVIDIAでは測定している内容が異なるとNVIDIAが注意喚起している(なので,NVIDIAはPCATを開発した)。
 したがって,今回はRTX 3600 Tiを除く3製品のTotal Board Powerを比較する。同じAMD製同士で,絶対値ではなく相対的な比較を行うためにTotal Board Powerを使うのならば問題ないだろうという判断だ。

 グラフ30は,3DMarkから比較的,Total Board Powerが高めに出たSpeed Way実行時のTotal Board Powerの推移を示したものだ。

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 RX 7600 XTは,Speed Way実行中に200W弱程度で推移した。RX 7600は160W台で,ざっくり言うと,RX 7600 XTの消費電力はRX 7600の1.2倍弱といったところだ。動作クロックを高めたうえで,メモリも倍に増えているだけに,2割程度の上積みは決して高いとは言えないが,スコアやフレームレートの上昇率からすると微妙な値だろう。

 ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて,システム全体の最大消費電力を計測してみた。テストにあたっては,Windowsの電源プランを「バランス」に設定。さらに,ゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイ出力が無効化されないよう指定したうえで,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点をタイトルごとの実行時,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」としている。
 その結果がグラフ31だ。

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 タイトルごとのばらつきが大きいが,CPU性能テストを含む3DMarkを除外してゲームだけで見ると,RX 7600 XTで最大を記録したのはFFXIV暁月のフィナーレ ベンチ実行時の約500Wだった。RX 7600は500Wを超えておらず,FFXIV暁月のフィナーレ ベンチ実行時は482Wと,約20Wの差を記録した。先のTotal Board Powerの違いを見るに妥当なところだろう。
 ちなみに,RTX 3060 Tiは複数のタイトルで500Wを大きく超えており,ここはグラフィックスカードの世代差が現れたと言っていいだろう。RX 7700 XTもRTX 3060 Tiに比べれば電力性能比は有意に高いといういことが言える。

 なお,RX 7600 XTのアイドル時の消費電力はなかなか優秀だったが,RX 7600よりも低くなった理由は分からない。もしかしたら,RX7600XT SLが賢い制御をしている可能性はあるが,ブレの可能性も否定できない。

 最後に,GPU-Zを用いて計測したGPU温度も確認しておきたい。室温22℃前後で30分放置後をアイドル時,その状態から3DMarkのSpeed Wayを実行し,GPU-Zから最大の温度を取得した結果を高負荷時とした結果がグラフ32である。

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 RX 7600 XTの高負荷時の温度はなかなか優秀だった。これは,RX7600XT SLの冷却システムが有効に機能した結果と言っていいだろう。実際,同じASRock製のRX 7700 XTも,なかなか優秀な高負荷時の温度を記録している。
 一方,RX 7600は,小型のリファレンスモデルのためか高負荷時の温度はかなり高かった。また,RTX 3060 Tiも70℃を超えている。これは世代差が出ているためだろう。


ゲームだけを考えるとかなり微妙なRX 7600 XT


RX7600XT SLの製品ボックス
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 RX 7600 XTの性能を見てきたが,RX 7600に対するフレームレートの上積みがせいぜい7%に留まること,高解像度時の上積み率は大きいが,高画質設定だとプレイが快適とは言えないことを考えると,微妙と言わざるを得ない。

 ちなみに,RX7600XT SLのメーカー想定売価は6万2800円(税込,以下同)とのこと。デュアルファンモデルの「AMD Radeon RX 7600 XT Challenger 16GB OC」は,やや安価な5万9800円とのことなので,おおむねRX 7600の同クラス製品と比べて,1万円ほど高い設定になっているようだ。

 この価格差を考えると,RX 7600 XTをゲームのためだけに選択するのは難しいかもしれない。AMDは,RX 7600 XTについて文章生成AIで用いる大規模言語モデルが修正なしに動作すること,また画像生成モデルの性能が高いこともアピールしている。それらAI性能込みでなら,RX 7600 XTを選ぶのもありというところではないかと思われる。

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ASRockのRX7600XT SL製品情報ページ(英語)

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    Radeon RX 7000

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