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RTX 40 SUPERシリーズの2番手「GeForce RTX 4070 Ti SUPER」レビュー。メモリ16GBが特徴のRTX 4070最上位モデルの実力はいかに
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印刷2024/01/23 23:00

レビュー

メモリ16GBが特徴のRTX 4070最上位モデルの実力はいかに

Palit GeForce RTX 4070 Ti SUPER JetStream OC

Text by 宮崎真一


 NVIDIAのデスクトップPC向け新型GPU「GeForce RTX 40 SUPER」シリーズの2製品めである「GeForce RTX 4070 Ti SUPER」(以下,RTX 4070 Ti SUPER)のレビューが解禁となった。今回はその性能を,Palit Microsystems(以下,Palit)製「GeForce RTX 4070 Ti SUPER JetStream OC」(以下,Palit 4070 Ti SUPER OC)を用いて検証してみよう。
 はたして,ミドルハイクラスの新GPUであるRTX 4070 Ti SUPERは,魅力あるGPUに仕上がっているのだろうか。

GeForce RTX 4070 Ti SUPER JetStream OC
メーカー:Palit Microsystems
メーカー想定売価:未公開
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RTX 4080と同じAD103コアを採用。メモリバス帯域幅は672GB/sに向上


 RTX 4070 Ti SUPERは,名称から分かるとおり「GeForce RTX 4070 Ti」(以下,RTX 4070 Ti)の上位モデルにあたり,RTX 4080の下位に位置する。聞くところによると,現行のRTX 4070 Tiは生産終了になるそうで,RTX 4070 Ti SUPERは,それを置き換えるGPUと言っていい。

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 RTX 4070 Ti SUPERは,ほかのGeForce RTX 40シリーズと同様に,Ada Lovelace(以下,Ada)世代のGPUで,TSMCのNVIDIA向けにカスタマイズされた4Nプロセスで製造されている。GPUコアには,上位モデルの「GeForce RTX 4080」と同じ「AD103」を採用しており,約379mm2のダイサイズに約459億個のトランジスタを備える点も変わらない。

 AD103コアについておさらいしておくと,Adaアーキテクチャでは,シェーダプロセッサである「CUDA Core」を128基と,L1キャッシュメモリやテクスチャユニット,そしてレイトレーシングにおける光線の生成と衝突判定を行う「RT Core」を1基,さらにAI処理向けアクセラレータ「Tensor Core」を4基まとめたものを,「Streaming Multiprocessor」(以下,SM)としている。そのSMを12基集めた単位が「Graphics Processor Cluster」(以下,GPC)で,AD103は,GPCを7基備えている。しかしAD103では,7基あるGPCのうちの1基で,SMが8基に減っているので,SM総数は80基,CUDA Core総数では10240基となる計算だ。
 RTX 4080の場合,残る6基のGPCのうち2基分は,SMを2基無効化した10基となっており,SMの総数は76基,CUDA Coreの総数は9728基となる。今回の主役であるRTX 4070 Ti SUPERの場合,AD103のフルスペックからSMを14基を無効化した66基となっているので,CUDA Coreの総数は128×66で8448基だ。これは,RTX 4080の87%ほどの規模と言っていい。
 なお,NVIDIAがブロック図を公開していないので,RTX 4070 Ti SUPERにおける正確なGPCの構成は分からない。ただ,資料によるとRTX 4070 Ti SUPERのGPC数は6基となっているので,SMが8基構成のGPCを無効化したうえで,残る6基のGPCのうち,1基でSMを6基,もしくは3基のGPCでSMを2基ずつ無効化しているのではないだろうか。

 RTX 4070 Ti SUPERでも,1基のSMにつき第3世代のRT Coreを1基組み合わせているので,RT Core数も66基となる。また,第4世代Tensor Coreは1基のSMにつき4基を組み合わせているので,総数は264基となる。RTX 4070 Ti比で見ると,どちらも1割増加した格好だ。

NVIDIAコントロールパネルからシステム情報を確認したところ
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 動作クロックは,ベースクロックが2340MHzで,ブーストクロックが2610MHz。RTX 4070 Tiと比べると,ベースクロックは30MHz引き上げられているものの,ブーストクロックは変わりがない。一方でRTX 4080比では,どちらも100MHz以上も高くなっている。回路規模が小さくなったことで,動作クロックを引き上げやすくなったのだろう。
 ただ,後述するテスト環境において,負荷をかけた状態のコアクロックを「GPU-Z」(Version 2.57.0)で追ってみたところ,2700MHzまで上昇しているのを確認した。同様のテストで,RTX 4080は2775MHzまで上がっていたので,このあたりは,メーカー独自モデルとFounders Editionの違いによるものと言える。

 メモリ周りに目を移すと,RTX 4070 Ti SUPERは,グラフィックスメモリとして容量16GBのGDDR6Xメモリを組み合わせている。メモリインタフェースはRTX 4080と同じ256bitだが,メモリクロックは21GHz相当と,22.4GHz相当のRTX 4080より若干低いため,メモリバス帯域幅は672GB/sとなる。
 ちなみにRTX 4070 Tiは,メモリクロックこそ同じだが,メモリインタフェースが192bitだったので,メモリバス帯域幅は504GB/sであった。RTX 4070 Ti SUPERは,33%も向上した。メモリ容量を含めて,メモリ周りはRTX 4070 Tiからかなり強化された印象だ。

 また,大容量L2キャッシュも健在で,その容量はRTX 4070 Tiと同じ48MB。RTX 4080は64MBだったので,同じAD103コアだがしっかりと差別化が図られている。

CUDAの開発キットに付属している「devicequerydrv.exe」の実行結果。L2キャッシュの容量は「50331648 bytes」(=48MB)だ
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 RTX 4070 Ti SUPERのTGP(Total Graphics Power)は285W。これはRTX 4070 Tiと同じで,RTX 4080よりも35W低い値だ。NVIDIAによると,RTX 4070 Tiにおけるゲームプレイ時の平均的な消費電力(Average Gaming Power,AGP)は226Wで,こちらもRTX 4070 Tiと変わらない。
 なお,今回テストに用いたPalit 4070 Ti SUPER OCは,補助電源コネクタとして12VHPWRに対応した16ピンコネクタを1基備えており,2系統の8ピンを1本の16ピンに束ねる変換コネクタも付属していた。

Palit 4070 Ti SUPER OCの本体と,付属の変換コネクタ
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 なお,NVIDIAによるとRTX 4070 Ti SUPERを動作させるためには,電源ユニットは定格出力700W以上のものを推奨するそうだ。RTX 4070 Tiも700W以上の電源ユニットが推奨されていたので,そのあたりも大きな変更はなさそうだ。

 そんなRTX 4070 Ti SUPERの主なスペックを,RTX 4070 TiやRTX 4080と合わせてまとめたものが表1となる。これを見ると,RTX 4070 Ti SUPERは上位モデルのAD103コアをベースとしつつ,RTX 4070 Tiに近くなるように性能を制限したモデルと捉えることもできる。

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ブーストクロックを30MHz引き上げたOCモデル。GPUクーラーは分厚くサイズも巨大


 それでは,Palit 4070 Ti SUPER OCのカードそのものについて見ていこう。

Palit 4070 Ti SUPER OCの前面(上)と背面(下)
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GPU-Z(Version 2.57.0)でPalit 4070 Ti SUPER OCのスペックを確認したところ
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 動作クロック設定は,ベースクロックが2340MHzでリファレンスと変わらないが,ブーストクロックは30MHz引き上げられたクロックアップモデルとなっている。なお,メモリクロックは21GHz相当で,こちらはリファレンスと同じだ。

 Palit 4070 Ti SUPER OCは,Palitが提供する設定アプリケーション「ThunderMaster」(Version 4.14)を使用することで,ブーストクロックを−1000〜+1000MHzの範囲で1MHz刻みに増減可能だ。また,メモリクロックも−2000〜+6000MHz相当で2MHz刻み(アプリ内表記では−1000〜+3000MHzで1MHz刻み)に変更できる。

ThunderMasterで,ブーストクロックを+150MHz,メモリクロックを+1000MHz相当(アプリ表記で+500MHz)に設定した様子
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 カード長は実測で約327mm(※突起部除く)だ。RTX 4080 Founder Editionが約305mmだったのに比べると,20mmほど長い。

カード長は約327mmと,かなり大きめ。PCI Express x16のカードエッジから後ろにクーラーがかなり伸びているところからも,その大きさが見てとれよう
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 カード長は長いが,基板自体は172mmほどしかなく,カード後方にGPUクーラーがはみ出た格好だ。GeForce RTX 40シリーズでよく見かける,前面から背面へとエアーが抜ける構造は,Palit 4070 Ti SUPER OCでも健在である。

カード後方は,前面から背面へとエアーが抜ける構造だ
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 カード背面には金属製のバックプレートが装着されているほか,GPUクーラーと基板の間には「反重力プレート」と称する金属フレームが装備されており,カードの剛性はかなりものだ。なお,LEDの類はまったく搭載していないので,「ゲーミングモデル」的な派手なイメージを期待する人には,かなり地味な印象かもしれない。

 マザーボードに装着したときは,ブラケットから垂直方向に21mmほど背が高くなっており,見た目の印象はかなり巨大だ。
 なお,重量は実測で約1449gで,RTX 4080 Founders Editionが約2126gだったのと比べると,700g弱軽くなっている。

重量は実測で約1449g。1.5Lのペットボトルに近い重さと言えば,イメージしやすいのではないだろうか
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 GPUクーラーは,3.1スロット占有タイプで,かなりの厚みだ。フィンの端がウィングレットという立った形状である点が特徴的な「GALE HUNTER FAN」という100mm径相当のファンを3基装備している。Palitによると,ウィングレットによってエアーの渦巻効果が解消され,エアフローが向上するという。

GPUクーラーの厚みや高さもかなり大きめ
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 なお,GPUに負荷がかかっていないアイドル時には。「0-dBテクニック」という機能により,ファンの回転を停止する。
 さらに,ThunderMasterを使用すると,両端の2基と中央の1基のファン回転数を変更可能だ。それぞれ30〜100%の範囲で1%刻みに固定したり,GPU温度とファンの回転数の関係を示したファンカーブから,任意の温度における回転数を自由に設定したりできる。

ThunderMasterでは,画面左の設定で両端の2基ファンを,画面右では中央ファンの回転数を変更できる
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 カードの隙間からのぞき込むと,GPU上の銅製ベースから6mm径のヒートパイプがカード前方に5本,カード後方に4本伸びる構成をしているようだ。銅製ベースは,メモリチップにも密着しており,冷却にはかなり力を入れているようだ。Palitによると,電源部にはDr.MOSを採用しているとのこと。

カードを横から見たところ。放熱フィンは,カード前方と後方の2ブロック構成で,それぞれと中央部の銅製ベースをヒートパイプで結ぶ構造となっている
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補助電源コネクタは,GPUクーラーから一段低い位置に実装されており,ケースとの干渉を抑えている
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 基板が短いこともあり,補助電源コネクタは,カード中央より少し前方に16ピンを1つ備えている。
 映像出力インタフェースは,DisplayPort 1.4を3つと,HDMI 2.1を1つという,近年のグラフィックスカードでよく見かける構成だ。

映像出力端子は,写真左からDisplayPort×3,HDMI×1という構成。ブラケットは一面,ハニカム構造の通気孔となっている
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クロックアップ状態とリファレンス状態をテスト


 それでは,テスト環境の構築に話を移そう。今回,比較対象にはRTX 4080とRTX 4070 Tiを用意した。置き換え対象のRTX 4070 Tiと比べて性能は上がっているのかどうかを確かめつつ,上位モデルとの差も確認しようというわけだ。
 また,今回扱うPalit 4070 Ti SUPER OCは,先述したようにクロックアップモデルであるため,素の状態に加えて,ThunderMasterでブーストクロックをリファレンスにまで落とした状態でもテストを実施する。なお,文中とグラフともに,リファレンス状態はRTX 4070 Ti SUPER,クロックアップ状態はPalit 4070 Ti SUPER OCと表記することで,区別している。

 グラフィックスドライバには,「GeForce 551.15 Driver」を利用。このドライバは,NVIDIAがRTX 4070 Ti SUPERのレビュワー向けに配布したものだ。「GeForce RTX 4070 SUPER」の発売と同時にリリースされたドライバのバージョンが546.55なので,それよりも若干だが世代が進んだものと理解してよさそうだ。それ以外のテスト環境は表2のとおり。

表2 テスト環境
CPU Core i9-14900K(P-core 定格クロック3.2GHz,P-core 最大クロック5.6GHz,24C32T,Intel Smart Cache容量36MB)
マザーボード ASRock Z790 Steel Legend Wi-Fi(Intel Z790,BIOS 12.03)
メインメモリ Corsair VENGEANCE RGB DDR5 PC5-48000 DDR5 SDRAM 16GB×2(DDR5-5600の40-40-40-76設定で利用)
グラフィックスカード Palit Microsystems GeForce RTX 4070 Ti SUPER JetStream OC
(GeForce RTX 4070 Ti SUPER,グラフィックスメモリ容量16GB)
Palit Microsystems GeForce RTX 4070 Ti GamingPro OC
(GeForce RTX 4070 Ti,グラフィックスメモリ容量12GB)
GeForce RTX 4080 Founders Edition
(グラフィックスメモリ容量16GB)
ストレージ CFD CDDS-M2M1TEG1VNE
(NVMe,1TB)
電源ユニット CoolerMaster V1200 Platinum(定格1200W)
OS Windows 11 Pro 22H2(Build 22621.3007)
チップセットドライバ Intel チップセットINFユーティリティ 10.1.19444.8378
グラフィックスドライバ GeForce:GeForce 551.15 Driver

 テスト内容は,4Gamerのベンチマークレギュレーション28に準拠。ただし,「3DMark」(Version 2.28.8217)において,レイトレーシングの性能を見る「Port Royal」と「DirectX Raytracing feature test」,DLSS性能をテストする「DLSS feature test」を追加した。DLSS feature testにおいては,解像度に3840×2160ドットと2560×1440ドットを選択し,DLSS modeは「Quality」に設定して実行している。

 また,「Fortnite」ではレギュレーションで規定するNVIDIAが用意したクリエイティブマップ「TILTED TOWERS BENCHMARK」が利用できないので,レギュレーション26の手法を踏襲しつつ,バトルロイヤルのマップが変更されているのでプレザント・ピアッツァから南西に真っすぐ移動するシーンでテストを行っている。

 テスト解像度は,NVIDIAがRTX 4070 Ti SUPERにおいて,2560×1440ドットにおける高フレームレートのゲームプレイを想定しているため,同解像度と3840×2160ドット,それに1920×1080ドットの3つを選択した。


RTX 4070 Tiより10%高性能。RTX 4080比では8割程度


 それでは,3DMarkの結果から順に見ていこう。Fire Strikeの総合スコアをまとめたものがグラフ1となる。

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 RTX 4070 Ti SUPERのスコアは,RTX 4070 Tiから3〜7%程度伸びているものの,RTX 4080には6〜22%程度届いていない。とくに,テスト解像度が高まるにつれて差が開いており,メモリバス帯域幅の差に加えて,L2キャッシュメモリ容量の差が,上位モデルとの性能における隔たりになっているようだ。
 Palit 4070 Ti SUPER OCは,RTX 4070 Ti SUPERから最大で約1%しかスコアが向上しておらず,ブーストクロックが30MHz高いだけでは,性能に表れにくい。

 続いてグラフ2は,Fire Strikeの総合スコアから「Graphics score」を抜き出したものだ。

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 RTX 4070 Ti SUPERは,RTX 4070 Tiからスコアを3〜8%程度伸ばしており,総合スコアよりも差が若干広がったものの,大勢に大きな変化はない。その一方で,RTX 4080との開きは13〜22%程度と総合スコアよりも大きい傾向が見えた。CPU性能の影響がなくなる状態では,上位モデルとの差がより一層顕著になっている。
 なお,Palit 4070 Ti SUPER OCとRTX 4070 Ti SUPERとの差は,最大でも2%弱で,やはりクロックアップの効果はあまり確認できない。

 グラフ3は,GPUとCPU両方の性能が効いてくる「Combined test」の結果をまとめたものだ。

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 RTX 4070 Ti SUPERは,RTX 4070 Tiよりも2〜6%程度高いスコアを発揮しているが,Fire Strike Extremeでは差が縮まっている点はおもしろい。ここではCPUの性能も影響してくるうえに,最も負荷が高いテストでもあり,Fire Strike Extremeまでであれば,メモリ容量の差やメモリバス帯域幅の差があまりスコアに表れないということなのだろう。
 それはRTX 4080と比べると顕著で,Fire Strike Extremeまでは約3%ほどの差しかないのに対して,Fire Strike Ultraでは約26%にまで広がっている。

 次に,DirectX 12のテストとなる「Time Spy」の結果を見てみよう。グラフ4は総合スコアをまとめたものだ。

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 RTX 4070 Ti SUPERとRTX 4070 Tiとの差は5〜7%程度で,Fire Strikeと傾向は変わらない。RTX 4080との開きも16〜18%程度あるものの,Fire Strikeよりもその差は縮まっている。これは,Time Spyの総合スコアが,CPU性能の影響を色濃く受けるためではないだろうか。
 なお,ここでPalit 4070 Ti SUPER OCはRTX 4070 Ti SUPERとほぼ同じ結果で,クロックアップの効果は見られない。

 続くグラフ5は,Time SpyのGPUテストの結果となる。

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 RTX 4070 Ti SUPERは,RTX 4070 Tiから6〜8%程度向上しており,このあたりはCPU性能の影響がなくなり,純粋にGPUの性能差がついたということなのだろう。またRTX 4080とは,20〜21%程度と総合スコアから若干差が広がっている。
 Palit 4070 Ti SUPER OCとRTX 4070 Ti SUPERとの差は1%にも届いておらず,性能にクロックアップの利点は表れていない。

 もうひとつのDirectX 12のテストであるSpeed Wayの結果をグラフ6に示す。

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 ここでは,RTX 4070 Ti SUPERがRTX 4070 Tiに対して,約13%とかなりの差を見せつけた。RTX 4070 Ti SUPERは,RTX 4070 Tiよりメモリ周りが向上しており,それが明確にスコアに表れた形だ。一方で,RTX 4080との差は約18%ほどあり,GPUの地力の差は明らかだ。

 リアルタイムレイトレーシングの性能を計るPort Royalの結果が,グラフ7だ。

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 RTX 4070 Ti SUPERのスコアは,RTX 4080から約18%ほど低く,RTX 4070 Tiから約11%高い位置に収まった。RT Core数を比べると,RTX 4070 Ti SUPERはRTX 4080の約87%ほどであるから,RTX 4070 Tiの10%増であることを考慮すると,ほぼ順当な結果と言えるだろう。

 もうひとつのレイトレーシングテストであるDirectX Raytracing Feature testの結果が,グラフ8となる。

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 RTX 4070 Ti SUPERとRTX 4070 Tiの差は約8%ほどで,RTX 4080との差も約19%ほどとなっている。Port Royalよりも,若干下位モデルとの差が縮まり,上位モデルとの差が開いた結果だが,これはRTX 4070 Ti SUPERの動作クロックがRTX 4070 Tiと近く,それがネックとなってRT Coreの性能差が縮まったのではないだろうか。一方で,RTX 4080はL2キャッシュ容量の優位性を発揮して,RTX 4070 Ti SUPERとの差を広げているのかもしれない。

 続いて,DLSSの性能を見るNVIDIA DLSS feature testの結果がグラフ9となる。

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 DLSS onのスコアを比較すると,RTX 4070 Ti SUPERは,RTX 4070 Tiから7〜10%程度伸びた一方で,RTX 4080には16〜18%程度の差を付けられている。DLSS onとDLSS offでどれだけスコアが向上しているかを計算すると,RTX 4070 Tiは2560×1440ドットで約248%,3840×2160ドットで約298%であるのに対して,RTX 4070 Ti SUPERは順に約238%,約296%と,2560×1440ドットにおいてDLSSの効きが若干低い。RTX 4080でも同様の計算をすると,2560×1440ドットで約239%程度となっており,これはAD103コアの傾向と言ってもよさそうだ。

 それでは実際のゲームでどうなのか,Call of Duty: Modern Warfare III」(以下,CoD:MW3)の結果(グラフ10〜12)を見てみよう。

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 RTX 4070 Ti SUPERの平均フレームレートは,RTX 4070 Tiから7〜11%程度向上している一方で,RTX 4080には16〜19%程度届いていない。
 1パーセンタイルフレームレートはCPU性能も影響するためか,平均フレームレートとは異なった傾向が出ているが,それでもRTX 4070 Ti SUPERは,最大で約11%もRTX 4070 Tiを引き離している点は立派だ。ただ,1パーセンタイルフレームレートでもRTX 4080には19〜25%程度離されているので,上位モデルとの差は明確だ。

 グラフ13〜15は,「バイオハザード RE:4」の結果となる。

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 RTX 4070 Ti SUPERの平均フレームレートは,RTX 4070 Tiに7〜10%程度の差を付ける一方で,RTX 4080には17〜21%程度離されている。1パーセンタイルフレームレートも同じ傾向だが,RTX 4070 Ti SUPERは,RTX 4070 Tiに8〜11%程度の差を付けており,3840×2160ドットでも60fpsを上回った点は評価できよう。
 Palit 4070 Ti SUPER OCはRTX 4070 Ti SUPERとの差は,平均フレームレートと1パーセンタイルフレームレートともに最大で2fps程度しかなく,クロックアップの効果を実感することはないだろう。

 続いて,Fortniteの結果がグラフ16〜18となる。

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 RTX 4070 Ti SUPERの平均フレームレートは,RTX 4070 Tiから6〜10%程度伸びているものの,RTX 4080との差は15〜20%程度もあり,差は埋まっていない。一方,RTX 4070 Ti SUPERの最小フレームレートは,RTX 4070 Tiから5〜11%程度向上しており,実フレームレートでも10fps以上も伸びている点は見どころと言えよう。
 Palit 4070 Ti SUPER OCはRTX 4070 Ti SUPERから実フレームレートで2fps程度しか高くなっておらず,ここでもほとんど変わらないレベルだ。

 「Starfield」の結果がグラフ19〜21となる。

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 ここではRTX 4070 Ti SUPERの結果が良好で,平均フレームレートでRTX 4070 Tiに13〜15%程度の差を付け,1パーセンタイルフレームレートでは11〜12%程度引き離すなど威勢がいい。RTX 4080には,平均フレームレートで11〜15%程度の差を付けられてはいるが,3840×2160ドットで60fpsに迫る勢いを見せている点は特筆すべきだろう。
 Palit 4070 Ti SUPER OCとRTX 4070 Ti SUPERの差は1fpsもなく,Starfieldではクロックアップの効果がほぼないと言っていい。

 グラフ22は,「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」(以下,FFXIV暁月のフィナーレ ベンチ)の総合スコアをまとめたものだ。

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 RTX 4070 Ti SUPERとRTX 4070 Tiとの差は,2560×1440ドットまではCPUがボトルネックとなるためか,最大でも約5%ほどしか離せていない。しかし,3840×2160ドットになると,RTX 4070 Ti SUPERは約14%ほど差を付けている点は優秀だ。同じ理由で,RTX 4070 Ti SUPERは,RTX 4080に対して,2560×1440ドットまでは約9%まで差を詰めているものの,3840×2160ドットで約16%まで離されている。
 スクウェア・エニックスが示す指標では,スコア1万5000以上が最高評価とされているが,RTX 4070 Ti SUPERは3840×2160ドットでも基準値を大きく上回っているので,“重い”場面でも快適なプレイができそうだ。

 そんなFFXIV暁月のフィナーレ ベンチにおける平均フレームレートと最小フレームレートをまとめたものが,グラフ23〜25だ。

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 平均フレームレートは,総合スコアを踏襲したものとなっているが,RTX 4070 Ti SUPERは3840×2160ドットでも120fps以上の性能を発揮している点は立派だ。一方,最小フレームレートはCPU性能の影響が大きくなるため,いずれもほとんど差がない結果に終わっている。

 グラフ26〜28には,「F1 23」の結果をまとめている。

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 RTX 4070 Ti SUPERの平均フレームレートは,RTX 4070 Tiから4〜8%程度高いものの,RTX 4080との開きは21〜23%程度もあり,上位モデルとの差は埋まっていない。最小フレームレートでも,RTX 4070 Ti SUPERとRTX 4070 Tiの差は4〜8%程度に留まっている。
 Palit 4070 Ti SUPER OCとRTX 4070 Ti SUPERとでは,1920×1080ドットで平均フレームレートと最小フレームレートともに約2%の差が付いているものの,ほかの解像度では並んでしまっている。やはり,クロックアップの効果は限定的だ。

 グラフ29〜31が「Cities: Skylines II」の結果だ。

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 RTX 4070 Ti SUPERがRTX 4070 Tiに最も大きな差を付けたのは,3840×2160ドットという結果になった。2560×1440ドット以下の解像度では,平均フレームレートで7〜8%程度の差があるのに対して,3840×2160ドットでは約15%にまで広がった。それは,1パーセンタイルフレームレートでも同じ傾向で,メモリ周りが向上したRTX 4070 Ti SUPERが,その性能を遺憾なく発揮している。
 一方,平均フレームレートにおけるRTX 4070 Ti SUPERとRTX 4080の差は,10〜11%程度で,先のF1 23などと比べると,十分差を詰めていると言っていい。


消費電力は275Wほどで,RTX 4070 Tiから15Wほど上昇


 さて,先述したようにRTX 4070 Ti SUPERのTGPおよびAGPは,RTX 4070 Tiから変わっていない。では,実際の消費電力も同レベルなのだろうか。
 NVIDIA製の消費電力計測ツール「PCAT」(Power Capture Analysis Tool)を用いて,グラフィックスカード自体の消費電力を計測してみた。
 なお,今回の計測も,3DMarkのTime Spyにおいて,消費電力が高くなる傾向がでたGraphics test 2実行中に行った。その結果をグラフ32に示そう。

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 この結果では,RTX 4080が頭ひとつ高い。RTX 4070 Ti SUPERは,それよりも低いことは間違いないが,RTX 4070 Tiよりは消費電力が高いように見受けられる。

 そこで,グラフ32の測定結果から,分かりやすくなるように中央値を求め,最大値と合わせてまとめたものがグラフ33となる。

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 これを見ると,RTX 4070 Ti SUPERの中央値は約275Wで,RTX 4070 Tiから15Wほど上昇してしまっている。また最大値は約320Wで,こちらもRTX 4070 Tiから20W弱増加しており,RTX 4080と大差ない点も興味深い。
 なお,Palit 4070 Ti SUPER OCとRTX 4070 Ti SUPERでは,消費電力にほとんど差は付いていない。ブーストクロックが30MHzしか違わないので,至極当然の結果だ。

 さらに,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて,システム全体の最大消費電力を計測した結果も見てみよう。
 テストにあたっては,Windowsの電源プランを「バランス」に設定。さらに,ゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイ出力が無効化されないよう指定したうえで,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点をタイトルごとの実行時,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」としている。その結果がグラフ34だ。

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 ここでは,ピーク値を結果として採用するため,どうしても差が大きくなる。それを踏まえて結果を見ていくと,各ゲーム実行時において,RTX 4070 Ti SUPERは,やはりRTX 4070 Tiから9〜24Wほど高くなっており,消費電力が増加していることは間違いなさそうだ。また,RTX 4080よりも消費電力は13〜138W程度低くなっており,同じAD103コアとはいえ,RTX 4070 Ti SUPERは扱いやすい電力のGPUと言えよう。

 GPU-Zを用いて計測したGPU温度も確認しておきたい。ここでは,温度約24℃の室内で,テストシステムをPCケースに組み込まず,いわゆるバラックに置いた状態から,3DMarkの30分間連続実行時を「高負荷時」として,アイドル時ともども,GPU-Zから温度を取得することにした。
 GPUによって,温度センサーの位置や取得方法が異なっていることは想像に難くなく,またそれぞれファンの制御方法が違うため,同列に並べての評価にあまり意味はないことはお断りしておく。
 それを踏まえた結果はグラフ35のとおり。

画像集 No.055のサムネイル画像 / RTX 40 SUPERシリーズの2番手「GeForce RTX 4070 Ti SUPER」レビュー。メモリ16GBが特徴のRTX 4070最上位モデルの実力はいかに

 RTX 4070 Ti SUPERは,高負荷時でも70℃を切っており,GPUクーラーの冷却性能はなかなか優秀だ。ブーストクロックが30Hz高くなるだけだが,Palit 4070 Ti SUPER OCも高負荷時で温度はたいして変わっておらず,クロックアップモデルに見合ったGPUクーラーを搭載していると言っていい。

 最後に,筆者の主観であることを踏まえたうえで,Palit 4070 Ti SUPER OCの動作音について述べておくと,かなり静かな印象を受けた。もちろん,回転数が上昇するとそれなりの動作音はするのだが,ケースに入れてしまえば聞こえないレベルで,今どきのミドルハイ級GPU搭載カードとしては,静音性は高めだ。


想定価格はRTX 4070 Tiと同じ799ドル。消費電力もRTX 4080より低く扱いやすい


Palit 4070 Ti SUPER OCの製品ボックス
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 RTX 4070 Ti SUPERの米国における価格は799ドル(約11万8000円,税別)とされ,これは置き換え対象のRTX 4070 Tiが登場したときの価格とまったく同じだ。RTX 4070 Ti搭載カードは,想定価格が約15万〜18万円台半ばで登場し,2024年1月時点では11万〜13万円程度にまでこなれてきている。
 一方,Palit 4070 Ti SUPER OCの価格は,本稿執筆時点では判明していないものの,NVIDIAによるRTX 4070 Ti SUPER搭載カードの想定売価は税込12万7380円からとなっている。実際はもう少し上の価格帯で販売されることになりそうだが,おそらくはRTX 4070 Tiと似た価格推移をたどるのではないかと思う。
 ちなみに,本稿執筆時点でのRTX 4080は,18万〜22万円もするので,それに比べると1割程度の性能向上を果たしたRTX 4070 Ti SUPERはかなり魅力的だ。RTX 4070 Tiから消費電力が増加したとはいえ,RTX 4080に比べれば低く,扱いやすいGPUであることは間違いない。

 そんなRTX 4070 Ti SUPERのウィークポイントを挙げるとするならば,NVIDIAがすでに発表している上位モデルである「GeForce RTX 4080 SUPER」の存在だ。あと少し足せば購入できるようだと,RTX 4070 Ti SUPERの立場はかなり苦しくなってくる。とはいえ,RTX 4070 Tiの置き換えモデルとして,RTX 4070 Ti SUPERは十分な性能を備えており,多くのゲームが快適にプレイできるGPUとまとめたい。

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