レビュー
上位のRTX 4070 Tiに迫るゲームもある優秀なGPU
NVIDIA GeForce RTX 4070 SUPER Founders Edition
既報のとおり,米国時間2024年1月8日にNVIDIAは,デスクトップPC向けの新型GPU「GeForce RTX 40 SUPER」シリーズを発表した。その1番手となる「GeForce RTX 4070 SUPER」(以下,RTX 4070 SUPER)のレビューが解禁となった。
早速,NVIDIA純正のリファレンスモデルである「GeForce RTX 4070 SUPER Founders Edition」を用いて,そのポテンシャルを確かめてみたい。
RTX 4070 TiからSMを4基削減したモデル
まずは,RTX 4070 SUPERの仕様について説明しておこう。
Ada Lovelaceアーキテクチャでは,シェーダプロセッサである「CUDA Core」を128基と,L1キャッシュメモリやテクスチャユニット,そしてレイトレーシングにおける光線の生成と衝突判定を行う「RT Core」を1基と,行列積和算に特化したAI処理向けアクセラレータ「Tensor Core」を4基まとめて「Streaming Multiprocessor」(以下,SM)を構成している。
そのSMを12基集めてGPUクラスタ「Graphics Processor Cluster」(以下,GPC)を成しているが,RTX 4070 Tiでは,そのGPCを5基有する構成だ。RTX 4070 SUPERも5基のGPCを搭載しているが,そのうち1基のGPCで内部のSMが4基分無効化されている。そのため,CUDA Coreの総数は,(128×12×5)−(128×4)で7168基となる。RTX 4070 TiのCUDA Core総数は7680基,RTX 4070が5888基であったので,それぞれRTX 4070 Ti比で約93%,RTX 4070比で約122%の規模といえよう。
ほかの「GeForce RTX 40」シリーズと同様に,RT Coreは第3世代に進化しており,その総数はSM数と同じ56基だ。Tensor Coreも第4世代となっており,その総数は224基。どちらも上位および下位モデルと比べると,RTX 4070 Tiにかなり肉薄する規模を備えた仕様となっている。また,レイトレーシング映像の画質向上にも役立つ「DLSS 3.5」にも対応するほか,DLSS 3で実装されたフレーム生成ももちろん利用可能だ。
ちなみに後述するテスト環境において,「GPU-Z」(Version 2.56.0)でコアクロックの変動を追ってみたところ,2805MHzまで上昇しているのを確認した。同様のテストで,RTX 4070は2820MHzまで,RTX 4070 Tiは2760MHzまで,それぞれ上昇していたのと比べると,やはり回路規模が抑えられたことで動作クロックは伸びやすくなり,RTX 4070 Tiに迫っていると言えよう。
グラフィックスメモリには,RTX 4070 TiやRTX 4070と同様にGDDR6Xメモリを採用しており,メモリインタフェースが192bitである点や,メモリクロックが21GHz相当である点も変更はない。それゆえに,RTX 4070 SUPERのメモリバス帯域幅は504GB/sとなり,「足回り」と呼ばれるグラフィックスメモリに関しては,RTX 4070 TiやRTX 4070とまったく変わりはない。
ただ,大容量のL2キャッシュを搭載している点は,ほかのRTX 40シリーズと同様だが,RTX 4070 SUPERの容量は,RTX 4070 Tiと同じ48MBだ。RTX 4070のL2キャッシュは36MBだったので,下位モデルとはかなり差別化が図られていると言っていい。
RTX 4070 SUPERのTGP(Total Graphics Power)は220Wで,これはRTX 4070より20W大きいものの,RTX 4070 Ti比では65Wも消費電力が低い。NVIDIAによると,RTX 4070 SUPERにおけるゲームプレイ時の平均的な消費電力(Average Gaming Power,AGP)は200Wらしく,これはRTX 4070 TiのAGPが226Wであったのに比べると,やはり26Wほど省電力だ。
なお,RTX 4070 SUPERを利用するために,電源ユニットは定格出力650W以上のものを推奨とのことで,電源ユニットに対するハードルは低めだ。ちなみに,RTX 4070 SUPER Founders Editionは,補助電源コネクタとして12VHPWRに対応した16ピンを1基備えており,PCIe補助電源コネクタの8ピン 2系統を1本の16ピンに束ねる変換ケーブルも付属している。
そんなRTX 4070 SUPERの主なスペックを,RTX 4070 TiとRTX 4070,それに前世代の「GeForce RTX 3090」(以下,RTX 3090),「GeForce RTX 3080 Ti」(以下,RTX 3080 Ti)とともにまとめたものが表1となる。
前世代のハイエンドモデルとの比較も実施
RTX 4070 SUPER Founders Editionのカードそのものについては,開封記事を参照してもらうとして,テスト環境の構築に話を移そう。今回の比較対象には,表1で挙げたRTX 4070 Ti,RTX 4070,RTX 3090,RTX 3080 Tiの4製品を用意。RTX 4070シリーズにおける位置付けを明確にしつつ,前世代のハイエンドに対して,その程度のアドバンテージがあるのかハッキリさせようと言うわけだ。
使用したグラフィックスドライバは「GeForce 546.52 Driver」で,これはNVIDIAがRTX 4070 SUPERのレビュワーに向けて配布したものである。本稿執筆時点で,NVIDIAがWebサイトで配布しているドライバは,最新バージョンが546.33なので,これはそのRTX 4070 SUPER対応版と言ってよさそうだ。それ以外のテスト環境は表2のとおり。
CPU | Core i9-14900K(P-core 定格クロック3.2GHz, |
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マザーボード | ASRock Z790 Steel Legend Wi-Fi |
メインメモリ | Corsair VENGEANCE RGB DDR5 |
グラフィックスカード | GeForce RTX 4070 SUPER Founders Edition (グラフィックスメモリ容量12GB) |
GeForce RTX 4070 Founders Edition (グラフィックスメモリ容量12GB) |
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Palit Microsystems GeForce RTX 4070 Ti GamingPro OC (GeForce RTX 4070 Ti, |
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Palit Microsystems GeForce RTX 3090 GamingPro OC
(GeForce RTX 3090, |
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GeForce RTX 3080 Ti Founders Edition (グラフィックスメモリ容量12GB) |
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ストレージ | CFD CDDS-M2M1TEG1VNE (NVMe,1TB) |
電源ユニット | CoolerMaster V1200 Platinum(定格1200W) |
OS | Windows 11 Pro 22H2(Build 22621.3007) |
チップセットドライバ | Intel チップセットINFユーティリティ |
グラフィックスドライバ | GeForce:GeForce |
テスト内容は,4Gamerのベンチマークレギュレーション28に準拠したものだが,RTX 4070 SUPERのレイトレーシング性能を確認すべく「3DMark」(Version 2.28.8217)において,「Port Royal」と「DirectX Raytracing feature test」のテストを追加した。さらに,DLSS性能をテストする「DLSS feature test」も実施して,ここでは解像度3840×2160ドットと2560×1440ドットを,DLSS modeは「Quality」をそれぞれ選択している。
また,「Fortnite」ではNVIDIAが用意したクリエイティブマップ「TILTED TOWERS BENCHMARK」が利用できなくなったので,今回はレギュレーション26の手法を踏襲し,バトル ロイヤルのマップが変更されているのでプレザント・ピアッツァから南西に真っすぐ移動するシーンでテストを行っている。
テスト解像度は,いつもどおり3840×2160ドットと2560×1440ドット,それに1920×1080ドットの3つを選択している。
RTX 4070 Tiに迫るゲーム性能。RTX 3090を上回る場面も
それは,「3DMark」の結果から順に見ていこう。グラフ1は「Fire Strike」の総合スコアをまとめたものだ。
RTX 4070 SUPERは,RTX 4070に9〜23%程度の差を付けており,とくにテスト解像度が高くなるにつれて,その差が広がる傾向が見て取れる。また,RTX 4070 Tiとの差は3〜6%程度しかなく,上位モデルに肉薄する性能と言ってよさそうだ。
Fire Strike Ultraでは,RTX 3090が24GBのグラフィックスメモリ容量と912GB/sというメモリ帯域幅を活かして意地を見せるものの,それ以外ではRTX 4070 SUPERが4%前後の差を付けている点は評価できよう。
続いてグラフ2は,Fire Strikeの総合スコアから「Graphics score」を抜き出したものとなる。
ここではCPU性能の影響がなくなるためか,RTX 4070 SUPERとRTX 4070の差は12〜23%程度と,総合スコアよりも広がっている。RTX 4070 TiとRTX 4070 SUPERとの差は4〜7%程度で,やはり上位モデルに迫る性能を見せている。Fire Strike UltraだけRTX 3090に逆転を許している点は,総合スコアと同じだ。
GPUとCPU両方の性能が効いてくる「Combined test」の結果をまとめたものがグラフ3だ。
RTX 4070 SUPERは,RTX 4070に3〜30%程度の差を付け,テスト解像度が高くなるにつれてその差が広がるのは総合スコアと似た傾向だ。RTX 4070 Ti比では,Fire Strike“無印”でほぼ横並びとなっているが,これはCPU性能が加味されたことで,RTX 4070 Tiが伸び悩んだためと解釈するのが妥当だろう。また,RTX 3090に対しては勝ったり負けたりで,ほぼ肩を並べていると言っていい。
DirectX 12テストとなる「Time Spy」の結果に移ろう。グラフ4は,総合スコアをまとめたものだ。
RTX 4070 SUPERとRTX 4070の差は,約15%前後で,RTX 4070 Tiとの開きは5〜6%程度と,やはり上位モデルに近しい性能を発揮している。また,RTX 3090に最大で約5%ほどだが,RTX 4070 SUPERが確実に上回るスコアを叩き出している点は注目に値する。
続くグラフ5は,Time SpyのGPUテスト結果となる。
Fire Strikeと同様に,ここでもCPU性能の影響がなくなるためか,RTX 4070 SUPERとRTX 4070の開きは約18%ほどと,総合スコアより広がっている。RTX 4070 Ti比も同様で,その差は約7%前後と,若干だが総合スコアよりも差が開いた。また,ここでもRTX 4070 SUPERがRTX 3090を安定して上回り,その差は最大で約6%ほどとなっている。
もうひとつのDirectX 12のテストとなるSpeed Wayの結果をグラフ6に示そう。
RTX 4070 SUPERは,ここでもRTX 4070を約16%ほど引き離し,RTX 4070 Tiに約5%のところまで迫っている。RTX 3090にも約2%の差を付けている点も見逃せない。
リアルタイムレイトレーシングの性能を計るPort Royalの結果がグラフ7だ。
RTX 4070 SUPERは,RTX 4070 TiとRTX 4070の間に収まっており,下位モデルとの差は約16%,上位モデルとの差は約6%と,やはりRTX 4070 Tiに迫る性能を発揮している。RTX 3090も約2%ほど離しているが,RTX 3090のRT Core数が80基,RTX 4070 SUPERが56基と,大幅に少ないことを考慮すると,RT Coreが第3世代に進化したことで性能が伸びたと理解してよさそうだ。
その傾向は,もうひとつのレイトレーシングテストであるDirectX Raytracing Feature testでより顕著になる。その結果がグラフ8である。
RTX 4070 SUPERの位置づけは,RTX 4070から約20%以上スコアが向上しているが,RTX 4070 Tiに約6%弱届いていない。しかし,RTX 3090には約13%もの差を付けている点は立派である。RTX 4070 SUPERのレイトレーシング性能は,申し分ないできと言ってよさそうだ。
続いて,DLSSの性能を見るNVIDIA DLSS feature testの結果がグラフ9となる。RTX 4070 SUPERとRTX 4070 Ti,RTX 4070はDLSS 3,RTX 3090とRTX 3080 TiはDLSS 2を使用していることを断ったうえで結果を見ていく。
DLSS onのスコアを比べると,RTX 4070 SUPERは,RTX 4070より15〜16%程度高く,RTX 4070 Tiから約6%弱低い結果となった。ただ,DLSSによってどれだけスコアが伸びたかを計算すると,RTX 40シリーズは2560×1440ドットで247〜250%程度に揃っており,3840×2160ドットで多少差が開くものの,それでも300%前後に収まっている。DLSSの効き具合は,RTX 4070 SUPERが特別優れているということはなさそうだ。
なお,RTX 4070 SUPERは,RTX 3090に51〜60%程度もの大差を付けており,DLSS 3の恩恵は絶大だ。
RTX 3090に対して,RTX 4070 SUPERが良好な結果を残したのは,グラフ10〜12の「Call of Duty: Modern Warfare III」(グラフ内ではCoD:MW3と表記)も同じだ。
RTX 4070 SUPERの平均フレームレートは,RTX 4070に12〜14%程度の差を付け,RTX 4070 Tiからは5〜9%程度低い位置に収まった。RTX 4070 SUPERの1パーセンタイルフレームレートは,1920×1080ドットでRTX 4070を約5%しか離せていないが,これはCPU性能の影響によるものだろう。
RTX 3090比では,RTX 4070 SUPERの平均フレームレートは,すべての解像度では上回る結果を残している点は評価できよう。1パーセンタイルフレームレートになると,RTX 4070 SUPERは,RTX 3090に若干届いていないが,これはRTX 3090のメモリ周りが奏功したということなのだろう。
続いて,「バイオハザード RE:4」の結果がグラフ13〜15となる。
RTX 4070 SUPERの平均フレームレートは,RTX 4070に16〜19%程度の差を付け,3840×2160ドットでも60fpsを上回っている点は評価できよう。RTX 4070 Tiには,5〜8%程度のところまで迫っているが,解像度が高くなるにつれて差が縮まっている点は興味深い。テストではレイトレーシングを有効にしているが,その状況では,RTX 4070 SUPERは動作クロックの高さが生きて,RTX 4070 Tiに迫りつつあるということなのだろう。
なお,RTX 3090に対しては,さすがに3840×2160ドットで逆転を許すものの,それ以外の解像度ではRTX 4070 SUPERが優位な差を見せつけている。1パーセンタイルフレームレートを見ても,1920×1080ドットでRTX 3090を約11%も離しているあたりは要注目だ。
グラフ16〜18はFortniteの結果だ。
RTX 4070 SUPERの平均フレームレートは,RTX 4070から13〜21%程度向上しており,RTX 4070 Tiの92〜96%程度ほどと,RTX 4070シリーズでの位置付けはこれまでと似た傾向だ。
RTX 3090に対しては,1920×1080ドットこそ約5%ほど差を付けるものの,2560×1440ドットで追いつかれ,3840×2160ドットでは逆に約6%ほど引き離されてしまった。やはり,高解像度ではメモリ容量が多く,メモリバス帯域幅が広いRTX 3090に適わないようだ。最小フレームレートは,平均フレームレートと同じ傾向を示しており,RTX 4070 SUPERがRTX 3090より優位に立てるのは1920×1080ドットのみという結果になっている。
Starfieldの結果がグラフ19〜21となる。
RTX 4070 SUPERの平均フレームレートは,RTX 4070から13〜16%程度伸びているものの,RTX 4070 Tiには8〜10%程度届いていない。1パーセンタイルフレームレートも平均フレームレートと似た傾向だが,RTX 4070 SUPERは,2560×1440ドットで60fpsを上回り,1920×1080ドットで80fpsにまで達している点は評価できる。
また,RTX 4070 SUPERは,平均フレームレートと1パーセンタイルフレームレートともに,すべての解像度でRTX 3090を超えており,前世代から進化を実感できる。
グラフ22は,「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」(以下,FFXIV暁月のフィナーレ ベンチ)の総合スコアをまとめたものだ。
スクウェア・エニックスが示す指標では,スコアが1万5000以上が最高評価とされており,3840×2160ドットではRTX 4070がそれを満たせないのに対して,RTX 4070 SUPERは1万5000を超えている点は称賛できる。ただ,同ベンチマークはCPU性能の影響も大きく,1920×1080ドットではCPUがボトルネックとなってしまうようで,RTX 4070 SUPERが真価を発揮できているのは2560×1440ドット以上の解像度ということになる。
3840×2160ドットになると,RTX 4070 SUPERは,RTX 3090はもとよりRTX 3080 Tiにも届いておらず,前世代よりメモリバス帯域幅の狭さが,スコアに影響しているのがよく分かる。
そんなFFXIV暁月のフィナーレ ベンチにおける平均フレームレートと最小フレームレートをまとめたものが,グラフ23〜25だ。
平均フレームレートは総合スコアを踏襲しているが,RTX 4070 SUPERは3840×2160ドットでも100fpsを超えている点は立派だ。一方,最小フレームレートはCPU性能の影響が大きく,5製品で差はほとんど付いていない。
前世代に対してあまり優れた結果を出せていないのが,「F1 23」の結果(グラフ26〜28)である。
RTX 4070 SUPERは,RTX 4070 TiとRTX 4070の間に入る性能を発揮しており,上位GPUに迫る勢いを見せている点は,これまでのテストと同様だ。ただ,RTX 4070 SUPERの平均フレームレートは,RTX 3080 Tiにも届いておらず,先のFFXIV暁月のフィナーレ ベンチと同じくメモリバス帯域幅の狭さがネックとなっているように見える。最小フレームレートも同様で,すべての解像度でRTX 4070 SUPERはRTX 3080 Tiに届いていない。
今回から初お目見えの「Cities: Skylines II」はどうなるだろう(グラフ29〜31)。
レギュレーション28でも記載しているとおり,高フレームレートよりも描写の美しさや緻密さが重要なタイトルのため,全体的にスコアは低めだ。それでもRTX 4070 SUPERの平均フレームレートは,3840×2160ドットでもレギュレーションの合格ラインである30fps以上の結果を残しており,RTX 4070に差を付けている。
また,前世代と比較すると,1920×1080ドットであれば,RTX 4070 SUPERの平均フレームレートは,RTX 3090を約8%上回り,1パーセンタイルフレームレートも約10%ほどの差を付けている。しかし,2560×1440ドット以上の解像度になると,RTX 4070 SUPERはRTX 3080 Tiにすら逆転を許しており,L2キャッシュの増量があまり奏功していないように見える。
RTX 4070 SUPERの消費電力は220Wほどで,前世代より大幅に省電力
先述したように,RTX 4070 SUPERのTGPは220Wと,RTX 4070 Tiから65Wも低くなっている。では,RTX 4070 SUPERの実際の消費電力はどの程度なのだろうか。
いつものように,NVIDIA製の消費電力計測ツール「PCAT」(Power Capture Analysis Tool)を用いて,グラフィックスカード自体の消費電力を計測してみたい。今回の計測も,3DMarkのTime Spyにおいて,消費電力が高くなる傾向がでたGraphics test 2実行中に行った。その結果をグラフ32に示そう。
まず目に留まるのは,前世代であるRTX 3090やRTX 3080 Tiの消費電力が高いことだ。一方のRTX 4070 SUPERは,RTX 4070 Tiほど高くはないものの,RTX 4070から確実に消費電力が増えているのが見て取れる。
そこで,グラフ32の測定結果から,分かりやすくなるように中央値を求めたうえで,最大値と合わせてまとめたものがグラフ33となる。
RTX 4070 SUPERの中央値は約223Wとなり,これはRTX 4070より約23Wほど大きく,RTX 4070 Tiより約20Wほど低い値だ。消費電力に関しては,ちょうど両者の中間と言っていい。
次に,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて,システム全体の最大消費電力のみを計測してみた。テストにあたっては,Windowsの電源プランを「バランス」に設定。さらに,ゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイ出力が無効化されないよう指定したうえで,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点をタイトルごとの実行時,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」としている。その結果がグラフ34だ。
ここではピーク値をスコアとして採用するため,どうしても差が大きくなる傾向になる。それを踏まえたうえで見ていくと,各アプリケーション実行時で,RTX 4070 SUPERとRTX 4070の差は2〜69W程度と,消費電力は確実に増えている。しかし,RTX 4070 TiとRTX 4070 SUPERの開きも17〜65W程度あるので,RTX 4070 Tiよりも消費電力を抑えていると言えよう。また,ここでも前世代との消費電力差は一目瞭然だ。
GPU-Zを用いて計測したGPU温度も確認しておきたい。ここでは,温度約24℃の室内で,テストシステムをPCケースに組み込まず,いわゆるバラックに置いた状態から,3DMarkの30分間連続実行時を「高負荷時」として,アイドル時ともども,GPU-Zから温度を取得することにした。
GPUによって,温度センサーの位置や取得方法が異なっていることは想像に難くなく,またそれぞれファンの制御方法が違うため,同列に並べての評価はあくまでも参考値である。それを踏まえた結果はグラフ35だ。
結果を見ていくと,RTX 4070 SUPERは高負荷時で約74℃と,RTX 4070と大差ないように見える。前世代と比較すると,高負荷時の温度は下がっており,このあたりは消費電力の低さに拠るところが大きいのだろう。
なお,筆者の主観であることを断ったうで,RTX 4070 SUPERの動作音について述べると,十分静かな印象受けた。少なくとも,ケースに入れてしまえば,まったく聞こえないレベルで,RTX 4070とあまり変わらない。
価格はRTX 4070の初出時と同じ599ドル。RTX 4070 Tiよりかなり魅力的
以上のテスト結果から明らかなように,RTX 4070 SUPERの性能は,RTX 4070に15%程度上回り,RTX 4070 Tiに迫るものと言っていい。多くの場面でRTX 3090をも上回っている点は好印象だが,一部のゲームでは高解像度でメモリ帯域幅の狭さが露呈する場合もあることは留意しておきたい。また,RTX 4070 Tiに近い性能でありながら,消費電力が抑えられている点も好印象だ。
RTX 4070 SUPERの米国におけるメーカー想定売価は599ドルで,これは2023年4月にRTX 4070が登場したときの価格と同じだ。RTX 4070は,日本市場において12万円前後で登場し,2024年1月では8万5000円〜11万円程度にまで価格がこなれている。当時とはドル円相場など環境が異なるものの,RTX 4070 SUPERも同じ推移を辿るとするならば,RTX 4070 Tiが11万6000円〜14万3000円程度で販売されているのに比べると,なかなかお買い得感の高いGPUになりそうだ。
NVIDIAのGeForce RTX 4070シリーズ製品情報ページ
- 関連タイトル:
GeForce RTX 40
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