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RTX 40シリーズのミドルクラスGPU「GeForce RTX 4060 Ti」を検証。前世代と比べてどれくらいの性能差を見せるのか[レビュー]
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印刷2023/05/23 22:00

レビュー

RTX 40のミドルクラスは,前世代と比べてどれくらいの性能差を見せるのか

NVIDIA GeForce RTX 4060 Ti Founders Edition

Text by 宮崎真一

 2023年5月23日22:00,NVIDIAのミドルクラス市場向けデスクトップPC用GPU「GeForce RTX 4060 Ti」(関連記事,以下 RTX 4060 Ti)のレビューが解禁となった。

GeForce RTX 4060 Ti Founders Edition
メーカー:NVIDIA
メーカー想定売価:399ドル(約5万5500円,税別,国内未発売)
画像集 No.002のサムネイル画像 / RTX 40シリーズのミドルクラスGPU「GeForce RTX 4060 Ti」を検証。前世代と比べてどれくらいの性能差を見せるのか[レビュー]

 名称から分かるとおり,RTX 4060 Tiは,ほかのGeForce RTX 40シリーズと同じく「Ada Lovelace」世代のGPUで,「GeForce RTX 4070」(以下,RTX 4070)の下位に置かれるGPUだ。RTX 4070でも実売で10万円を超える製品が多い状況の中で,RTX 4060 Tiは,ゲーマーにとって購入しやすく魅力のあるGPUなのだろうか。いつものようにテストを実施し,RTX 4060 Tiの実力を確かめてみたい。


GPUコアにAD106を採用

大容量L2キャッシュ搭載でメモリ周りは抑えめ


 まずは,RTX 4060 Tiの基本スペックから紹介していこう。
 冒頭でも述べたように,RTX 4060 Tiは,Ada Lovelaceアーキテクチャを採用したGPUで,GPUコアには「AD106」を採用している。AD106は,上位モデルであるRTX 4070の「AD104」コアと同様に,NVIDIA向けにカスタマイズしたTSMCの「4N」プロセスで製造され,190mm2のダイサイズに,約228億個のトランジスタを搭載している。AD104が,295mm2のダイサイズに約358億個のトランジスタを搭載していたのと比べると,約64%の規模と言っていい。
 なお,前世代にあたる「GeForce RTX 3060 Ti」(以下,RTX 3060 Ti)比で論じると,ダイサイズは48%に抑えながら,トランジスタ数は132%に増えており,プロセスルールの微細化による恩恵がはっきり現れている。

RTX 4060 Tiのブロック図
画像集 No.003のサムネイル画像 / RTX 40シリーズのミドルクラスGPU「GeForce RTX 4060 Ti」を検証。前世代と比べてどれくらいの性能差を見せるのか[レビュー]
 Ada Lovelaceアーキテクチャでは,シェーダプロセッサである「CUDA Core」を128基と,L1キャッシュメモリやテクスチャユニット,レイトレーシングにおける光線の生成と衝突判定を行う「RT Core」を1基,さらに行列積和算に特化した「Tensor Core」を4基,これらをまとめて「Streaming Multiprocessor」(以下,SM)を構成。そして,そのSMを12基束ねて,GPUクラスタ「Graphics Processor Cluster」(以下,GPC)としている。
 AD106は,3基のGPCを有しているため,フルスペックでは12×3=36基のSMを備えることになり,CUDA Coreの総数は36×128で4608基だ。それがRTX 4060 Tiになると,GPCのうち1基でSMを2基無効化することで,SMの総数は34基となっている。そのため,RTX 4060 TiのCUDA Core数は4352基となり,これはRTX 4070の約74%の規模にあたる。なお,RTX 3060 Ti比では1割ほど減っている点は,注目すべきところだろう。

NVIDIAコントロールパネルで,RTX 4060 Tiのシステム情報を確認したところ
画像集 No.017のサムネイル画像 / RTX 40シリーズのミドルクラスGPU「GeForce RTX 4060 Ti」を検証。前世代と比べてどれくらいの性能差を見せるのか[レビュー] 画像集 No.018のサムネイル画像 / RTX 40シリーズのミドルクラスGPU「GeForce RTX 4060 Ti」を検証。前世代と比べてどれくらいの性能差を見せるのか[レビュー]

 ほかのRTX 40シリーズと同じく,RTX 4060 TiもRT Coreは第3世代に,Tensor Coreは第4世代に,それぞれ進化した。RT Coreは,SM 1基に対して1基を組み込むため,その総数は34基となる。NVIDIAの説明によると,RTX 4060 TiにおけるRT Coreの公称スループットは,51 RT-TFLOPSとなり,これはRTX 4070の76%,RTX 3060 Ti比では159%ほどの性能になる。
 一方で,RTX 4060 TiにおけるTensor Coreの公称スループットは,353 Tensor-TFLOPSとなり,RTX 4070の466 Tensor-TFLOPSと比べて76%ほど,RTX 3060 Tiの130 Tensor-TFLOPSと比べれば2.7倍以上の性能を誇っている。

GPU-ZでRTX 4060 Tiの動作クロック(赤枠内)を確認したところ
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 RTX 4060 Tiのベースクロックは2310MHzで,RTX 4070の1920MHzと比べてもかなり高めだ。AD106は,AD104より回路規模が小さいので,動作クロックを引き上げやすくなったのだろう。一方,ブーストクロックも2535MHzと,RTX 4070よりも高く設定されている。後述するテスト環境において,「GPU-Z」(Version 2.53.0)でコアクロックの変動を追ってみたところ,2745MHzまで上昇しているのを確認した。しかし,RTX 4070は同様のテストで2820MHzまで上昇していたので,動作クロックの上限に大きな差はなさそうだ。

 RTX 4060 Tiに組み合わせるグラフィックスメモリは,GDDR6メモリで,RTX 3060 Tiと変わらない。RTX 4070は,より高速なGDDR6Xメモリを採用していたので,メモリ周りは上位モデルと大きな差が付けられていると言っていい。
 なお,RTX 4060 Tiにおけるメモリクロックは,18GHz相当で,RTX 3060 Tiの14GHz相当からは引き上げられているものの,RTX 4070の21GHz相当に比べると14%ほど低い。
 しかもRTX 4060 Tiは,メモリインタフェースが128bitで,RTX 3060 Tiの半分しかない。そのためメモリバス帯域幅は288GB/sとなり,これはRTX 4070の504GB/sと比べて57%ほどしかなく,RTX 3060 Tiの448GB/sと比べても,約64%の規模だ。

 その代わりというわけではないだろうが,RTX 4060 Tiは,RTX 4070ほどではないものの,容量32MBという大きめのL2キャッシュメモリを内蔵している。NVIDIAの説明によると,この大容量L2キャッシュにより,メモリバスのトラフィックが減少するため,処理性能と電力効率の向上を実現でき,実効的なメモリバス帯域幅は554GB/sに相当するという。
 なお,メモリ容量は8GBと16GBが用意されるが,5月24日に発売となるのは8GB版だけで,16GB版の発売は7月になるそうだ。

CUDAの開発キットに付属している「devicequerydrv.exe」の実行結果。L2キャッシュ容量は33554432 bytes(=32MB)である
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RTX 4060 Ti Founders Editionと付属の電源コネクタ変換ケーブル
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 RTX 4070は,前世代と比べて消費電力の低減を実現していたが,その路線は,RTX 4060 Tiでも継承されている。RTX 4060 TiのTGP(Total Graphics Power)は160Wで,RTX 4070やRTX 3060 Tiの200Wと比べて8割まで下がっているのだ。さらに,ゲームプレイ時における平均的な消費電力は140Wとされており,推奨される電源ユニットも出力550W以上と,ハードルは低くなっている。
 なお,RTX 4060 Ti Founders Editionでは,補助電源コネクタとして12VHPWRに対応する16ピンコネクタを1基備えており,8ピンのPCIe補助電源コネクタ1本に変換するケーブルも付属している。

RTX 4060 Ti Founders Edition付属の変換ケーブルは,8ピンのPCIe補助電源コネクタ(左)を,16ピンの12HPWR(右)に変換する
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 RTX 4060 Tiの主なスペックを,RTX 4070と「GeForce RTX 3070」(以下,RTX 3070),それに3060 Tiとともにまとめたものが表1となる。

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カード長は約244mm,重量は約1021g


 それでは,RTX 4060 Ti Founders Editionのカードそのものを見ていこう。

RTX 4060 Ti Founders Editionの表面(上)と裏面(下)
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 カード長は実測で約244mm(※突起部含まず)で,RTX 4070 Founders Editionとほぼ同サイズだ。重量は実測で約1022gなので,こちらもRTX 4070 Founders Editionの約1021gとほとんど変わっていない。

カード長は約244mmで,RTX 4070 Founders Editionとほぼ同じ
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実測重量は約1022g。こちらもRTX 4070 Founders Editionと変わらない程度だ
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 前面と裏面に,90mm径相当のファンを1基ずつ搭載する点や,カードの中央でX字のようにフレームがクロスしたデザインなどは,RTX 4070 Founders Editionと似通っている。ただ,RTX 4070 Founders Editionでは,側面の金属パーツがガンメタリックであったのに対して,RTX 4060 Ti Founders Editionでは明るめのシルバーになっている。このあたりは,RTX 3060 Tiのデザインをそのまま踏襲しているのだろう。

カードを別の角度から。側面の金属パーツがシルバーになったため,全体的に明るめの印象だ
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 GPUクーラーは,2スロット占有タイプで,基板自体の長さは155mmほどしかない。カード後方でエアーが前面から裏面へと抜ける点は,RTX 4070 Founders Editionを踏襲した構造だ。

カードを横から見たところ。基板は中央の黒いヒートシンクのあたりまでしかない
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最近のFounders Editionにおける特徴でもあるエアーが抜ける構造は,RTX 4060 Tiでも健在だ
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 ファンのブレードが外枠と一体成型されている点や,GPUへの負荷が低い場合はファンの回転を停止する機能を備えている点なども,RTX 4070 Founders Editionと変わらない。

補助電源コネクタは12VHPWRに対応した16ピンを1基装備する
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 先述のとおり,補助電源コネクタは,12VHPWRに対応した16ピンを1基備える。ただ,基板が短いため,補助電源コネクタはカードのほぼ中央の位置に実装されている。

 映像出力インタフェースは,DisplayPort 1.4a×3,HDMI 2.1 Type A×1という最近のカードではよく見かける構成だ。ロゴを除くと,外観だけならRTX 4070 Founders Editionと見分けが付かないほどそっくりである。

DisplayPort×3にHDMI×1という構成は,今どきのグラフィックスカードの定番だ
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ドライバには531.93を使用,DLSSを有効にしてテスト実施


 テスト環境に話を移そう。
 今回の比較対象には,表1にあるとおり上位モデルのRTX 4070,置き換え対象となるRTX 3060 Ti,その上位モデルのRTX 3070を用意した。上位モデルとの差を見ながら,前世代からどの程度,性能が向上したかを確認しようというわけだ。

 グラフィックスドライバには,「GeForce 531.93 Driver」を利用した。これは,NVIDIAがRTX 4060 Tiのレビュワー向けに配布したものだ。5月23日時点で,NVIDIAが配布している公式ドライバソフトは,Version 531.79が最新バージョンなので,同じ531世代であることを踏まえると,テストに用いたドライバは,そのRTX 4060 Ti対応版であるようだ。それ以外のテスト環境は表2のとおり。

表2 テスト環境
CPU Ryzen 9 5950X(16C32T,定格クロック3.4GHz,最大クロック4.9GHz,共有L3キャッシュ容量64MB)
マザーボード MSI MEG X570 ACE(AMD X570,BIOS 7C35v1J)
メインメモリ G.Skill F4-3200C16D-16GIS PC4-25600 DDR4 SDRAM 8GB×2(DDR4-3200の16-16-16-36設定で利用)
グラフィックスカード GeForce RTX 4060 Ti Founders Edition
(グラフィックスメモリ容量8GB)
GeForce RTX 4070 Founders Edition
(グラフィックスメモリ容量12GB)
GeForce RTX 3070 Founders Edition
(グラフィックスメモリ容量8GB)
GeForce RTX 3060 Ti Founders Edition
(グラフィックスメモリ容量8GB)
ストレージ Samsung Electronics SSD 850 EVO(MZ-75E500,500GB)
電源ユニット Corsair CMPSU-1200AX(定格1200W)
OS 64bit版Windows 11 Pro(22H2,Build 22621.1702)
チップセットドライバ AMD Chipset Drivers 5.02.19.2221
グラフィックスドライバ GeForce 531.93 Driver

 テスト内容は4Gamerのベンチマークレギュレーション26.1に準拠したものだが,「Marvel's Spider-Man Miles Morales」(以下,Spider-Man)のみ,やむを得ない問題で削除した。
 今回はGeForceシリーズのみのテストであることと,RTX 4060 TiについてNVIDIAがDLSSの利用による性能向上を声高に謳っているため,できる限りDLSSを有効にしてテストを実施している。ただ,Spider-Manだけは,フレームレート計測に用いている「CapFrameX」で,DLSS 3の補間フレーム生成で作られたフレームを正常に計測できず,NVIDIA製のフレームレート計測ツール「FrameView」でも,ログの取得が正常にできなかった。そのため,時間切れで今回は省略した次第だ。
 ほかのベンチマークテストにおける設定の詳細は,以下のとおり。

●3DMark(Version 2.26.8098)
 「DLSS feature test」を追加し,解像度に3840×2160ドットと2560×1440ドットを選択し,DLSS modeは「Quality」で実行。ただし,RTX 4060 TiとRTX 4070は「DLSS 3」を,RTX 3080とRTX 3070は「DLSS 2」を用いている点は注意してほしい。

●Call of Duty: Modern Warfare II
 オプションのグラフィックにある品質タブで,「アップスケーリング/シャープニング」から「NVIDIA DLSS」を選択。さらに「NVIDIA DLSS」プリセットには「クオリティ」を指定している。テスト方法はレギュレーションと同じだ。

●Fortnite
 「設定」の「映像」で,「レンダリングモード」からグラフィックスAPIを「DirectX 12」に変更。さらに「アンチエイリアス&スーパー解像度」を「NVIDIA DLSS」に指定。さらに,「NVIDIA DLSS」を「品質」に変更している。テスト方法はレギュレーションと同じ。

●God of War
 「Settings」の「ディスプレイ」にある「DLSS」を「画質優先」に変更。こちらもテスト方法はレギュレーションと同じだ。

●F1 22
 「ゲームオプション」の「設定」にある「グラフィック設定」から,「ビデオモード」にある「アンチエイリアス」を「NVIDIA DLSS」に変更。さらに,「DLSS超解像度モード」を「クオリティ」に設定している。なお,RTX 4060 TiとRTX 4070に関しては,「DLSSフレーム生成」も「オン」に変更している。

 そのほかに,3DMarkは,レイトレーシングの性能を見る「Port Royal」と「DirectX Raytracing feature test」も実施している。
 NVIDIAは,RTX 4060 Tiが目標とする環境として,1080pにおけるフルオプションでのゲームプレイを想定しているため,テスト解像度は1920×1080ドットと2560×1440ドットを選択。さらに3840×2160ドットを追加した計3種類を選んだ。


RTX 4070の7割強,RTX 3060 Tiからの伸びは10%弱


 それでは,3DMarkの結果から順に見ていこう。グラフ1は「Fire Strike」の総合スコアをまとめたものだ。

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 RTX 4060 Tiのスコアは,RTX 4070の72〜82%程度といったところで,上位モデルとの差は明確だ。前世代との比較を見てみると,RTX 3060 Tiからの伸びは6〜9%に留まり,Fire Strike Ultraでは逆転を許してしまっている。このあたりは,メモリバス帯域幅の狭さが露呈した格好だ。

 続いてグラフ2は,Fire Strikeの総合スコアから「Graphics score」を抜き出したものとなる。

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 CPU性能の影響がなくなるため,差がより顕著だ。RTX 4060 Tiのスコアは,RTX 4070の71〜75%程度に留まる一方で,RTX 3060 Tiの差は8〜10%程度と,若干だが広がった。しかし,Fire Strike Ultraで順位が入れ替わる点は変わらず,高負荷な状況ではメモリバス帯域幅の狭さが看過できないようだ。

 GPUとCPU両方の性能が効いてくる「Combined test」の結果をまとめたものがグラフ3だ。

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 CPU性能が加味されるため,Fire Strike“無印”では,スコアが18000程度で丸まりつつある。そこで,それ以外の結果を見ていくと,RTX 4060 TiのスコアはRTX 4070の65〜73%程度しかない。一方で,RXT 3060 Tiに対しては,Fire Strike Ultraでも約5%の差を死守した格好だ。総合スコアやGraphics scoreとは異なり,このテストではRTX 4060 Tiの大容量L2キャッシュが奏功したのではなかろうか。

 では,DirectX 12のテストとなる「Time Spy」の結果を見てみよう。グラフ4は総合スコアをまとめたものだ。

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 RTX 4060 Tiのスコアは,RTX 4070の76〜79%程度といったところ。だが,Fire Strikeとは異なり,RTX 3060 Tiには安定して9〜12%程度の差を付けて,RTX 3070といい勝負を演じているあたりは評価できよう。

 続くグラフ5はTime SpyのGPUテスト結果となる。

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 Fire Strikeがそうであったように,ここでもCPU性能がスコアに影響しなくなるため,差が開く傾向にある。RTX 4060 TiとRTX 4070との差は25〜27%程度に広がり,RTX 3060 Tiには10〜15%程度の差を付けた。RTX 3070と肩を並べているあたりも,総合スコアと変わらない。

 もうひとつのDirectX 12のテストである「Speed Way」の結果が,グラフ6となる。

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 RTX 4060 Tiのスコアは,RTX 4070の約71%だが,RTX 3060 Tiには約7%の明確な差を付けた。しかし,RTX 3070との開きは依然として約6%ほどある。

 それでは,リアルタイムレイトレーシング性能を見てみよう。Port Royalの結果がグラフ7だ。

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 やはり,RTX 4060 TiのスコアはRTX 4070の約72%で,RTX 4060 TiのRT Core数がRTX 4070の約74%であることを踏まえると,至極順当な結果といえよう。一方,RTX 3060 Tiとの差は約15%ほどあり,RT Core数はRTX 3070のほうが多いにもかかわらず,スコアはほぼ迫っているあたりは,RTX 4060 TiのRT Coreが進化していることを実感できる。

 さて,もうひとつのレイトレーシングテストであるDirectX Raytracing Feature testの結果が,グラフ8となる。

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 RT Coreの進化が,より顕著となった。RTX 4060 Tiのスコアが,RTX 4070の約73%なのは,Port Royalの結果を踏襲しているが,RTX 3060 Tiとの差を約38%に広げたうえ,RTX 3070を約17%も上回る結果を残している。Port Royal同様,リアルタイムレイトレーシングに関しては,RTX 4060 Tiが優れた性能を見せた。

 続いて,DLSSの性能を見るNVIDIA DLSS feature testの結果がグラフ9となる。

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 先述したように,RTX 4060 TiとRTX 4070がDLSS 3を,RTX 3070とRTX 3060 TiがDLSS 2をそれぞれ用いた結果となる。RTX 3070やRTX 3060 Tiは,DLSSを有効にしてもフレームレートが71〜90%程度しか伸びていないのに対して,RTX 4060 Tiは3倍前後にまで向上しており,やはりDLSS 3がもたらすフレーム生成の恩恵はすさまじい。

 では,実際のゲームではどうなのだろうか。グラフ10〜12は「モンスターハンターライズ:サンブレイク」の結果となる。

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 CPUが足かせになるようで,1920×1080ドットでフレームレートの頭打ちが見られる。そこで,それ以外の解像度に目を向けると,RTX 4060 Tiの平均フレームレートはRTX 4070の71〜81%程度で,最小に当たる1パーセンタイルフレームレートも69〜89%程度といったところ。ただ,RTX 3060 Ti比で見ると有意な差を付けれておらず,あまりアドバンテージは見られない。

 「Call of Duty: Modern Warfare II」(以下,CoD MW2)の結果がグラフ13〜15だ。

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 RTX 4060 Tiの平均フレームレートは,RTX 4070の76〜85%程度だが,RTX 3060 Tiには14〜19%程度もの差を付けた。さらに,RTX 3070にも7〜10%程度の差を付けている点は優秀。今回のテストではDLSSを有効にしていることもあり,RTX 4060 Tiの第4世代Tensor Coreが真価を発揮した形だ。最小フレームレートを見ても,RTX 4060 Tiは,さすがに3840×2160ドットで大きく落ちるものの,それ以外ではRTX 3070を上回っており,1920×1080ドットで100fpsを超えている点は評価できよう。

 DLSSを有効にした「Fortnite」の結果をグラフ16〜18に示す。

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 CPUがボトルネックとなり,平均フレームレートは200fps強で頭打ちになっている。そこで,それ以外の解像度を見ていくと,RTX 4060 TiはRTX 3060 Tiに約8%の差を付け,2560×1440ドットでRTX 3070を上回ってみせた。CoD MW2と同様に,Tensor Coreが第4世代に進化したことで性能向上につながったということなのだろう。

 グラフ19〜21が「God of War」の結果だ。

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 RTX 4060 Tiの平均フレームレートは,RTX 4070の71〜81%程度で,解像度が高くなるにつれてその差が広がっている。RTX 3070に届かなかったが,それでもRTX 3060 Tiには3〜4%程度の差を付けている。1パーセンタイルフレームレートでは,それほど大きな差は生じていないものの,1920×1080ドットでRTX 4060 TiがRTX 3070を上回って見せた点は見どころと言えよう。

 グラフ22は「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」(以下,FFXIV暁月のフィナーレ ベンチ)の総合スコアをまとめたものだ。

画像集 No.042のサムネイル画像 / RTX 40シリーズのミドルクラスGPU「GeForce RTX 4060 Ti」を検証。前世代と比べてどれくらいの性能差を見せるのか[レビュー]

 スクウェア・エニックスの指標では,スコア1万5000以上が最高評価とされているが,RTX 4060 Tiがそれを満たすのは2560×1440ドット以下の解像度となる。RTX 4070比では,2560×1440ドット以下の解像度で,85〜86%程度までその差を詰めているが,RTX 3060 Tiとの差が1〜4%程度しかない点は少々残念だ。なお,3840×2160ドットでは,RTX 4060 Tiはスコアを大きく落とし,RTX 3060 Tiに約9%引き離されてしまっている。

 そんなFFXIV暁月のフィナーレ ベンチにおける平均フレームレートと最小フレームレートをまとめたものがグラフ23〜25だ。

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 平均フレームレートは,総合スコアを踏襲した形になっている。RTX 4060 Tiは2560×1440ドットでも120fpsを超えており,快適なプレイが実現できそうだ。一方,最小フレームレートはCPU性能の影響が色濃く表れるため,差が付きにくくなっている。それでも,2560×1440ドットであればRTX 3070を超えている点は評価できよう。

 グラフ26〜28には,「F1 22」の結果をまとめている。

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 F1 22は,DLSS 3のフレーム生成をサポートしているが,その恩恵がハッキリと表れる結果となっている。RTX 4060 Tiが不得手とする3840×2160ドット以外の解像度では,平均フレームレートがRTX 4070の76〜78%程度で,RTX 3060 Tiに40〜45%程度大差を付けた。とくにRTX 3070比で24〜33%程度の差を付けている点は立派で,フレーム生成のアドバンテージは絶大だ。RTX 4060 Tiの最小フレームレートも,2560×1440ドット以下なら優秀で,1920×1080ドットで170fpsに達している点は特筆に価する。
 しかし,そのフレーム生成の恩恵をもってしても,3840×2160ドットでRTX 4060 Tiは,RTX 3060 Tiを下回ってしまっている。


消費電力あたりの性能は大幅に向上


 先述したようにRTX 4060 TiのTGPは160Wと,RTX 4070やRTX 3060 Tiから40Wも低い。では,実際の消費電力はどの程度なのだろうか。
 NVIDIAが開発した消費電力計測ツール「PCAT」(Power Capture Analysis Tool)を用いて,グラフィックスカード自体の消費電力を計測してみたい。なお,今回も3DMarkのTime Spyにおいて,Graphics test 2実行中の結果を示している。その結果をグラフ29に示そう。

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 このグラフを見るに,RTX 4070やRTX 3070,それにRTX 3060 Tiが200W強で推移しているのに対して,RTX 4060 Tiは150Wほどと一段低く,その違いをハッキリと示している。試しにRTX 4060 Tiの消費電力が200Wを超える場面を数えてみると1回もなく,消費電力がかなり抑えられていることが分かるだろう。

 そこで,グラフ29の測定結果から,分かりやすくなるように中央値と最大値を求めたものがグラフ30となる。

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 この結果を見ると,RTX 4060 Tiの中央値は156Wほどで,RTX 4070より45Wほど低く,RTX 3060 Tiからも56Wほど抑えられている。最大値を見ても,RTX 4060 Tiは190Wすら超えておらず,消費電力の低さが際立つ結果だ。

 さらに,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いたシステム全体の最大消費電力のみを計測してみた。テストにあたっては,Windowsの電源プランを「バランス」に設定。さらに,ゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイ出力が無効化されないよう指定したうえで,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点をタイトルごとの実行時,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」としている。
 その結果がグラフ31だ。

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 ピーク値を採るテストであるため,差は広がる傾向となる点を踏まえて結果を見ていくと,RTX 4060 TiとRTX 4070との各アプリケーション実行時の差は26〜69W程度もあり,RTX 3060 Tiとも58〜120Wの差が付いている。RTX 4060 Tiの消費電力の低さは,こちらの結果からも明らかだ。

 さらに,GPU-Zを用いて計測したGPU温度も確認しておきたい。温度約24℃の室内で,テストシステムをPCケースに組み込まず,いわゆるバラックに置いた状態から,3DMarkの30分間連続実行時を「高負荷時」として,アイドル時ともども,GPU-Zから温度を取得することにした。
 GPUによって,温度センサーの位置や取得方法が異なっていることは想像に難くなく,また,それぞれファンの制御方法が違うため,同列に並べての評価にあまり意味はない。それを踏まえた結果はグラフ32のとおり。

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 RTX 4060 Tiは,高負荷時でも70℃を切っており,かなり低め。消費電力が低いこともあり,発熱量も少ないと言ってよさそうだ。なお,いずれのGPUもアイドル時の温度が高めなのは,ファンの回転が停止するためである。

 最後に筆者の主観であることを踏まえたうえで,RTX 4060 Tiの動作音について述べておくと,かなり静かな印象を受けた。消費電力が低く,発熱量も少ないことで,ファンの回転をさほど上げずとも冷却できるということなのだろうか。そのため,静音性に優れたオリジナルモデルの登場も期待できそうだ。


新世代のGPUとしては少々肩透かしだが,アップグレードとしては魅力ある存在


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 以上のテスト結果から,RTX 4060 Tiのゲーム性能はRTX 4070の7割強で,RTX 3070とRTX 3060 Tiの間に来る程度とまとめられそうだ。もちろん,F1 22で見られたように,DLSS 3対応タイトルでは性能が一気に向上して,RTX 3070を凌駕するケースも見られる。
 とはいえ,すべてのタイトルでDLSS 3が使えるわけではない以上,少々期待外れと言わざるをえない。新世代のGPUとして,少なくともRTX 3070を超える性能が欲しかったというのは,わがままだろうか。

 RTX 4060 Tiの価格は399ドルで,国内では6万9800円前後で発売されると見られる。RTX 3060 Ti搭載モデルが5万3000円〜6万円で販売されているのと比べると,それよりは若干高い。そのため,消費電力の低さを重要視するならともかく,性能目当てでRTX 3060 TiからRTX 4060 Tiへ乗り換えるのは,あまり必要性を感じないだろう。しかし,GeForce RTX 30シリーズよりも古いミドルクラスGPUを使っているユーザーが,アップグレードパスとしてRTX 4060 Tiを選択するのはアリだろう。

NVIDIAのGeForce RTX 4060 Ti/4060製品情報ページ

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