レビュー
8ピン×3で動くRTX 4090搭載カードの実力は
Colorful GeForce RTX 4090 NB EX-V
日本ではリンクスインターナショナルが代理店を務める,中国のPCパーツメーカーであるColorful Technology(以下,Colorful)から,「GeForce RTX 4090」(以下,RTX 4090)を採用したグラフィックスカード「GeForce RTX 4090 NB EX-V」(以下,Colorful 4090)が登場した。
本製品は,PCI Express(以下,PCIe)補助電源コネクタが16ピン×1仕様である点は,NVIDIA製のリファレンスモデルである「GeForce RTX 4090 Founders Edition」と変わらないものの,付属する電源コネクタの変換アダプタが,8ピンを3系統しか使用しない点が特徴だ。Colorful 4090は,8ピン×3だけの補助電源コネクタで,十分な性能を発揮できるのか? テストを行い検証してみたい。
ブーストクロックは2565MHzに引き上げ
高負荷時には2715MHzまで上がる
Colorful 4090は,ベースクロックはリファレンスどおりの2235MHzであるが,ブーストクロックはリファレンスから45MHz引き上げられた2565MHzというクロックアップモデルとなっている。なお,メモリクロックは21GHz相当で,こちらはリファレンスと変わらない。
なお,後述するテスト環境において,GPU-ZでGPUのコアクロック変動を追ってみたところ,最大2715MHzまで上がっていることを確認した。ちなみに,RTX 4090 Founders Editionも,同様のテストで2715MHzまで上昇していたので,Colorful 4090の高負荷時における最大動作クロックは,RTX 4090 Founders Editionと変わらないと言ってよさそうだ。
なお,Colorful製設定アプリケーションの「iGameCenter」(Version 1.0.3.2)を使用すると,ブーストクロックを1565〜3565MHzの間で1MHz刻みに変更できるほか,メモリクロックは,19〜27GHz相当の範囲で2MHz相当刻みに設定できる。さらに,GPUのコア電圧を1%刻みで最大100%上げること可能だ。
カード長は約313mmとかなり大きめ
それでは,Colorful 4090のカードそのものについて見ていこう。
本製品のカード長は,実測で約313mm(※突起部除く)。ただ,基板自体は約200mmほどの長さしかなく,GPUクーラーがカード後方に110mm強はみ出た格好だ。なお,RTX 4090 Founders Editionが約316mmだったので,それより3mmほど短い。
マザーボードに装着すると,垂直方向にブラケットから約30mmほどはみ出るほど高さがあり,その外観はRTX 4090 Founders Editionに負けず劣らず,かなり大きい印象を受ける。
重量も,実測で約1844gと,かろうじて2kgは切ったものの,RTX 4090 Founders Editionと同様に重量級であることは変わらない。
そのGPUクーラーは,3.3スロット占有タイプと厚さもかなりのもの。GPUクーラーには,98mm径相当のファンを3基搭載している。これらのファンブレードは,外枠のバリアリングと一体成型されており,Colorful曰く,「風圧の向上を実現している」という。
GPUコアの負荷が低い場合は,ファンの回転を停止して騒音を低減する機能もある。
先述のiGameCenterを用いると,ファンの回転数を30〜100%の範囲で1%刻みに固定したり,ファンカーブから任意の温度における回転数を設定したりすることが可能だ。Colorful 4090では,ブラケット寄りファン1基と,そのほかの2基で異なる回転数を設定できる。
カードを横からのぞき込むと,GPUクーラーには8mm径を4本,6mm径を2本で計6本のヒートパイプを用いているのが見てとれた。カード重量がかなりあるためか,基板とGPUクーラーの間には金属製のフレームを挿入しており,カードのたわみ防止に一役買っている。
GPUクーラーの側面にある「GeForce RTX」のロゴにはLEDが組み込まれており,iGameCenterからイルミネーションの制御が可能だ。ちなみに,LEDが搭載されているのはこの部分だけで,今どきのグラフィックスカードとしては,LEDイルミネーションはかなり大人しめである。
冒頭でも触れたとおり,PCIe補助電源コネクタは,16ピンを1基備える。また,映像出力インタフェースは,DisplayPort 1.4aが3つと,HDMI 2.1がひとつで,このあたりはごく一般的な仕様だ。
RTX 4090 FEに2〜3%の差を付けるも,高負荷で性能が伸びきらない印象
それでは,Colorful 4090のテスト環境の話を移そう。
今回,比較対象にはRTX 4090 Founders Edition(以下,RTX 4090 FE)を用意した。リファレンス仕様であるRTX 4090 FEと比べて,クロックアップモデルであるColorful 4090の性能はどれくらい上がっているのか確かめようというわけだ。
グラフィックスドライバには,テスト時に最新バージョンとなる「GeForce 526.47 Driver」を使用。また,RTX 4090 FEのレビュー記事と同様に,OSにはWindows 11 Proを選択している。そのほかのテスト環境は表のとおり。
CPU | Ryzen 9 5950X(16C32T,定格クロック3.4GHz, |
---|---|
マザーボード | MSI MEG X570 ACE(AMD X570, |
メインメモリ | G.Skill F4-3200C16D-16GIS |
グラフィックスカード | Colorful Technology GeForce RTX 4090 NB EX-V |
GeForce RTX 4090 Founders Edition |
|
ストレージ | Samsung Electronics SSD 850 |
電源ユニット | Corsair CMPSU |
OS | 64bit版Windows 11 Pro(22H2,Build 22621.755) |
チップセットドライバ | AMD Chipset Drivers 4.09 |
グラフィックスドライバ | GeForce: |
テスト内容は,4Gamerのベンチマークレギュレーション25.0に準拠。ただ,「Call of Duty: Warzone」においては,バージョンアップにより基本演習が使えなくなったので,今回のテストでは割愛している。
それに加えて,「3DMark」(Version 2.25.8043)においては,「Port Royal」と「DirectX Raytracing feature test」,それに「NVIDIA DLSS feature test」のテストを追加した。NVIDIA DLSS feature testでは,「DLSS 3」を指定したうえで,DLSS modeは「Quality」に設定してテストを行った。
テスト解像度は,いつもどおり3840×2160ドット,2560×1440ドット,1920×1080ドットの3つを選んでいる。
それでは,3DMarkから順にテスト結果を見ていこう。
「Fire Strike」の総合スコアをまとめたものがグラフ1となる。
ここで興味深いのは,Fire Strike“無印”とFire Strike Extremeでは,Colorful 4090がRTX 4090 FEに約2%の差を付けているのに対して,Fire Strike Ultraでは,差は1%にも満たないとはいえ,逆転を許してしまったことだ。Colorful 4090のPCIe補助電源コネクタが8ピン×3仕様であるため,電力供給が足りずに,スコアが伸びきっていないのではないだろうか。
グラフ2は,総合スコアから「Graphics score」を抜き出したものだ。
基本的に総合スコアを踏襲する形となっているが,Fire Strike“無印”では,CPU性能の影響がなくなるため,差が約4%にまで広がっている。なお,Fire Strike UltraでRTX 4090 FEに届いていない点は,総合スコアと同じだ。
続いてグラフ3は,ソフトウェアベースの物理演算テスト結果を「CPU score」として抜き出したものだが,CPUを統一していることもあり,スコアはほぼ横一線だ。
グラフ4は,GPUとCPU両方の性能が効いてくる「Combined test」の結果をまとめたものだ。
Fire Strike“無印”とFire Strike Extremeで,Colorful 4090がRTX 4090 FEに最大で2%の差を付ける点や,Fire Strike UltraでRTX 4090 FEに逆転される点は,総合スコアと同様だ。
続いては,DirectX 12世代のテストである「Time Spy」の結果を見ていこう。まずは,総合スコアをまとめたグラフ5からだ。
Fire Strike Ultraと同様にColorful 4090は,RTX 4090 FEにはわずかに届いていない。とはいえ,その差は0.1〜0.7%なので,ほとんど横並びと称していいだろう。
次のグラフ6はTime SpyのGPUテスト結果,グラフ7はCPUテストの結果をそれぞれまとめたものだ。
GPUテスト結果は,総合スコアの傾向を踏襲しており,Colorful 4090はわずかに届いていない。とはいえ,その差は1%にも満たないので横並びと称していいだろう。
CPUテストはFire Strikeと同様で,スコアはほぼ横並びだ。
リアルタイムレイトレーシングの性能を計るPort Royalの結果が,グラフ8だ。
ここでも,Fire Strike UltraやTime Spyと同様に,Colorful 4090はRTX 4090 FEにあと一歩のところまで迫っているものの,上回るにまで至っていない。その差は0.3%とかなり小さく,同等の性能と言っていいだろう。
グラフ9は,もうひとつのレイトレーシングテストとなるDirectX Raytracing feature testの結果だ。
Port Royalがそうであったように,ここでも,Colorful 4090はRTX 4090 FEに0.5%ほど届いていないものの,誤差を考慮すると横並びと言っていいだろう。ただ,クロックアップモデルでリファレンス仕様の製品を上回れていない点は残念だ。
続いて,DLSSの性能を見るNVIDIA DLSS feature testの結果となるグラフ10を見ていく。
ここでは,DLSS on時のフレームレートに着目すると,Colorful 4090とRTX 4090 FEはほぼ横並びだ。DLSSの性能は,あまり差がないと言っていい。
では,実際のゲームではどうなのだろうか。グラフ11〜13は「Far Cry 6」の結果となる。
平均フレームレートに着目すると,Colorful 4090は,1920×1080ドットこそRTX 4090 FEに約4%の差を付けるものの,それ以外の解像度では逆に約1〜5%の差を付けられている。3DMarkで見られた,高負荷になると性能が伸びにくいというColorful 4090の特徴が,Far Cry 6でも確認できたわけだ。
続いて,「バイオハザード ヴィレッジ」の結果がグラフ14〜16となる。
ここではどの解像度でも,Colorful 4090がRTX 4090 FEを上回る結果となった。平均フレームレートにおける差は最大約3%。一方,最小フレームレートでの差は1%未満とさほど大きくないものの,クロックアップモデルの面目を保った格好だ。
「Fortnite」の結果をグラフ17〜19に示す。
平均フレームレートでは,Colorful 4090は1920×1080ドットこそRTX 4090 FEに1%強の差を付けているものの,2560×1440ドットでは並ばれて,3840×2160ドットになると,差は1%未満だが逆転を許してしまっている。最小フレームレートでは,Colorful 4090が終始RTX 4090 FEに対して優位に立つものの,クロックアップモデルとしては物足りない印象だ。
グラフ20〜22は「Borderlands 3」の結果だ。
ここでのColorful 4090は,RTX 4090 FEと勝ったり負けたりのいい勝負を演じている。ただ,やはりクロックアップモデルであるなら,RTX 4090 FEを超える性能を見せてほしかったところだ。
グラフ23は「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」(以下,FFXIV暁月のフィナーレ ベンチ)の総合スコアをまとめたものだ。
ここでもColorful 4090は,RTX 4090 FEに1%弱届いていない。ただ,スクウェア・エニックスの指標では,スコアが1万5000以上で最高評価となっており,Colorful 4090は3840×2160ドットでも基準を満たしているので,4K解像度でも,同ゲームをかなり快適にプレイできることは間違いない。
そんなFFXIV暁月のフィナーレ ベンチにおける平均フレームレートと最小フレームレートをまとめたものがグラフ24〜26だ。
平均フレームレートは,総合スコアを踏襲した形となっており,やはりColorful 4090は,RTX 4090 FEに若干だが差を付けられてしまっている。一方の最小フレームレートは,CPU性能の影響が色濃くなるため,今回のテストではCPUが統一されているため,キレイな横並びになっている。
グラフ27〜29には,「Project CARS 3」の結果をまとめている。
ここでは,Colorful 4090とRTX 4090 FEはほぼ横並びの結果となった。細かく見ていくと,2560×1440ドット以下の解像度では,平均フレームレートでColorful 4090がRTX 4090 FEを上回り,3840×2160ドットで逆転を許す。この傾向は,3DMarkなどで見られたものと同じだ。
消費電力は350W前後と控えめ
それでは,Colorful 4090の実際の消費電力はどの程度なのだろうか。Colorfulは,本製品のTGP(グラフィックスカード全体の消費電力)を480Wと説明しているが,実際はどうなのだろうか。
そこで今回は,NVIDIAが開発した消費電力計測ツール「PCAT」(Power Capture Analysis Tool)を用いて,グラフィックスカード自体の消費電力を計測してみたい。なお,テストは3DMarkのTime SpyにおけるGraphics test 2実行中のものを結果として採用した。なお,PCATは,8ピン×3までのPCIe補助電源コネクタにしか対応していないため,ここではColorful 4090のテストのみ実施している。
その結果をグラフ30に示す。Colorful 4090は,最大で450W程度にまで達する場面があるものの,おおむね350W程度で推移しているようだ。
このグラフから,GPU消費電力の中央値を求めると,約364.6Wで,TGPを大きく下回る結果になっている。8ピン×1で150W,PCIe x16スロットから75Wを供給できるので,本製品の仕様であれば,PCIe補助電源コネクタは8ピン×3だけでも十分と,Colorfulは判断しているということなのだろう。ただ,瞬間的に消費電力が高くなる場面があり,そのタイミングでは電力不足になる可能性がある。それが足かせとなって,性能が伸びきらないのではないだろうか。
さらに,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いたシステム全体の最大消費電力のみを計測してみた。なお,テストにあたっては,Windowsの電源プランを「バランスに設定」。さらに,ゲーム用途を想定して,無操作時にもディスプレイ出力が無効化されないよう指定したうえで,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点をタイトルごとの実行時,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」としている。
その結果がグラフ31だ。
各アプリケーション実行時を見ると,Colorful 4090は,RTX 4090 FEから10〜33W高い値となっている。消費電力はRTX 4090 FEから増加しているわけで,これであれば,余裕を持ってPCIe補助電源コネクタは,8ピンを4系統にしたほうがよかったのではないかと思われる。
GPU-Zを用いて計測したGPU温度も確認しておきたい。ここでは,温度約24℃の室内で,テストシステムをPCケースに組み込まず,いわゆるバラックに置いた状態から,3DMarkの30分間連続実行時を「高負荷時」として,アイドル時ともども,GPU-Zから温度を取得することにした。
その結果はグラフ32のとおり。
Colorful 4090は,高負荷時でもGPUの温度は70℃に達しておらず,GPUクーラーの冷却性能は優秀だ。なお,アイドル時に温度が高めなのは,ファンの回転が停止するためである。
最後に,筆者の主観であることを断ったうえで,Colorful 4090の動作音について触れておくと,かなり静かな印象を受けた。もちろん,高負荷時になると動作音も聞こえてくるのだが,そのレベルはさほど大きくなく,RTX 4090 FEといい勝負だ。試しに,iGameCenterでファンの回転数を100%に設定すると動作音はかなり大きかったので,初期状態のファンの回転数制御は,かなり静音性を重視する方向で設定されているようだ。
RTX 4090としては電源ユニットに優しいのがColorful 4090の利点
以上のテスト結果を顧みるに,Colorful 4090は,1920×1080ドットなどの低負荷ではクロックアップモデルのアドバンテージを活かして性能が高いものの,3840×2160ドットのような高負荷条件になると,電力供給が足枷となってか性能が伸びきらない。3840×2160ドットでの快適なプレイを望んで購入するユーザーが少なくないだろうことを考慮すると,その点では,Colorful 4090の性能は少々物足りない。
ただ,PCIe補助電源コネクタに8ピン×3しか必要としない点は,電源ユニットに対するハードルが低いのは確かだ。既定のクロックどおりで使用するならば,このColorful 4090は扱いやすいカードと言っていいだろう。
海外での販売価格を考慮すると,Colorful 4090の国内価格は,ほかのRTX 4090搭載モデルと同程度の30万円ほどになるだろう。そう考えると,オーバークロックには興味がなく,現在使っている850W級で「80PLUS GOLD」以上の電源ユニットをそのまま流用したいと考えている人には,魅力的な選択肢になるのでないだろうか。
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