インタビュー
[インタビュー]基地ビルドと基地襲撃を組み合わせた新作「Meet Your Maker」は,皆がポジティブな気持ちで楽しめる対戦ゲームを目指す
本作はポストアポカリプス世界を舞台とし,FPSとステージクリエイトを同時に楽しめるという“ビルド&レイドゲーム”を謳うタイトル。ある時は「レイダー」としてほかのプレイヤーが作った基地「アウトポスト」を襲撃し,ある時は「ビルダー」としてアウトポストの地形を作り,番兵やトラップを配置してレイダーを待ち受けるのである。
プレイヤーたちが制作したアウトポストの方向性はさまざま。狭い空間に番兵がギッシリ詰め込まれた撃ち合い重視のものもあれば,複雑な迷路のあちこちにトラップが仕掛けられた探索重視のものもあって飽きさせない。プレイヤーがアウトポストを作る限り,無限にステージが増えていくというわけだ。
ビルダーとレイダーはアウトポストを通じて間接的に対戦するが,アウトポストは予めプレイヤーが登録したものを用いる非同期型であり,直接プレイヤー同士でメッセージのやりとりができないのも印象的だ。今回はそんな「Meet Your Maker」について,クリエイティブディレクターのAsh Pannell氏と,リードゲームデザイナーであるPierre Rivest氏に話を聞いた。
ある時は基地を襲撃するレイダー,またある時は基地を作るビルダー。対戦ゲームの新たな形を目指す
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。まずはおふたりの経歴と「Meet Your Maker」にどのように関わっているのか聞かせてください。
Ash Pannell氏(以下,Pannell氏):
クリエイティブディレクターのAsh Pannellです。Behaviour Interactiveには長年勤続していて,「Dead by Daylight」のクリエイティブに携わった後,3年ほどかけて「Meet Your Maker」の制作に携わっています。
Pierre Rivest氏(以下,Rivest氏):
リードゲームデザイナーのPierre Rivestです。25年ほどゲームデザインに携わった後,4年前にBehaviour Interactiveへ入り,「Meet Your Maker」のプロジェクトに合流しました。
4Gamer:
「Meet Your Maker」の制作経緯を教えてください。
Pannell氏:
我々の会社では常にさまざまな種類のマルチプレイヤーゲームを開発しています。
ほかのゲームとは違ったものを作ることを重視して模索を続けており,そうした取り組みの1つが「Dead by Daylight」です。「Dead by Daylight」では,ホラーをテーマに,サバイバーが脱出を目指し,キラーはこれを妨害するという,異なる目的を1つのゲームに入れました。「Meet Your Maker」では,ポストアポカリプス世界を舞台に,誰かが作ったアウトポストを別の人が襲撃する,まったく異なるゲーム性とテーマを取り入れています。
Rivest氏:
「Meet Your Maker」では,アウトポストという形でUGC(プレイヤー生成コンテンツ)を導入しました。できるだけシンプルな操作で奥深いアウトポストを作れるようにしてあり,トラップや番兵,地形を自由に組み合わせていけます。
4Gamer:
プレイヤーがアウトポスト作りをすることでゲーム全体のステージ数が増えていくというのは,UGCの効果的な使い方だと感じられました。
Pannell氏:
ダンジョンを探索するような遊びをしたい人と,スキルを試されるアクションやシューティングを好む人。まったく異なる方向性を持つ2人を1つのゲーム内で競争させることができるなら,面白い体験が作れると思い,「Meet Your Maker」を開発しました。
2人は同じゲームをプレイしているんですが,勝つために使うスキルやリソースが違います。1人は心に描くものをアウトポストのマップで表現する創造性,もう1人は敵を打ち倒すスキルでゲームに勝つわけです。
4Gamer:
方向性の異なるプレイヤーたちが,自分の得意な手段で競い合えるのは面白いですね。
Pannell氏:
「Meet Your Maker」では,できる限り多様なプレイスタイルを許容するものとしています。アウトポスト構築の自由度を高め,襲撃においてもさまざまな戦術を用意する。問題に対していろいろなアプローチができるようにすれば,興味深いゲーム体験が生み出せるんじゃないかと。
Rivest氏:
そのうえで,自分のアウトポストに攻めてきたレイダーの様子を,後からリプレイで観察できる機能が有効に働いていることに気づきました。自分が仕掛けた罠でレイダーをうまく撃退できたら「やった!」という気分になりますし,アウトポストをどう改良するかの参考にもなります。オープンβテストでは,リプレイでレイダーを撃退した様子がYouTubeなどにアップロードされ,これがさらに拡散されたことで正のループを生み出していましたね。
Pannell氏:
我々は非常にポジティブなプレイヤーコミュニティを作りたいと考えてきました。なので,プレイヤーさん同士がリプレイという形で成果を見せ合ってくれたのは願ったり叶ったりですね。
4Gamer:
オープンβテストのお話が少し出ましたが,結果をどのように捉えていますか。
Rivest氏:
大成功だと考えています。3万2000のアウトポストが作られて300万回襲撃され,リプレイの視聴時間も30万時間を超えましたから。どのアウトポストもクリエイティブで驚きましたし,今後どんなものが作られるかとても楽しみですよ。
Pannell氏:
我々が意図したとおりのパーフェクトなオープンβテストでしたね。期間が8日しかなかったにもかかわらず,プレイヤーやコミュニティが見せてくれたクリエイティビティはすさまじいものでした。もっと長い期間があれば,さらに深く理解されたでしょうし,今後解禁されるさまざまなツールやパーツを使えば,これまでとまったく違ったレベルで面白いアウトポストを作れると思います。
4Gamer:
8日間で3万2000ものアウトポストが作られたというのはなかなかすごい量ですね。
Rivest氏:
本当に素晴らしいアウトポストが構築されていましたね。見た目が芸術的なアウトポストや,罠の仕掛け方が巧妙かつ邪悪で,悪魔的と呼べるアウトポストなどさまざまでした。人気のあるクリエイターの方が自作のアウトポストを公開して,ファンが挑戦し,そのリプレイをクリエイターの方が配信で取り上げるという例もありました。自分が好きなクリエイターが作ったアウトポストに挑戦し,リプレイの形で配信に登場できるわけですから,非常に特別な瞬間だったと思いますし,UGCの力を感じました。
4Gamer:
おふたりが考える,良いアウトポストとはどのようなものでしょうか。
Pannell氏:
面白い質問ですね。私が個人的にアウトポストを構築する際は「経験を創る」ところを重視しています。曲がりくねった通路やスペースなどを作り,実際にある建物を旅しているような経験を与えられる,これが私にとっての良いアウトポストです。私はビルダーとしての側面が強いので,彼らがクリアした際にくれる評価を集めれば成功を感じられますし,これを参考にアウトポストに対する考えをより高めていけると思っています。
Rivest氏:
レイダーの「経験を創る」ことが重要であるという点は私も同じ考えです。そのうえで,アウトポストを作るにはレイダーに何か新しい発見をしてもらいたいと考えて作ります。
そういったアウトポスト作りには,3つのステップがあります。まず第1のステップでは,ブロックを積み重ねることでシェルを作ります。シェルは箱であり,エンバイロメント(環境)であり,ルームであり,部屋であり,通路であり,スロープです。
こうした基盤ができたら,第2ステップに入ります。使える「キャパ」(地形を構成するブロック,トラップ,番兵を置ける数)のうち4〜50%を用いてトラップや番兵を配置していくわけです。その際は「レイダーに体験して欲しいのは何なのか」というビジョンについて考え,ルートを考えたり,トラップや番兵にMODを使ってパワーアップさせたりします。
第3のステップは,アウトポストのデコレーションです。自分のビジョンに合わせて絵を描くように飾り付けていくわけですね。こうした3つのステップが終わったら,最後に検証を行います。自分がレイダーになったという観点でアウトポストを攻略し,思い描いたような経験をしてもらえるかを試して最終仕上げをするんです。
4Gamer:
漫然と作るのではなく,意図を持って構築し,検証も行うのが大事なわけですね。オープンβテストではいろいろなアウトポストが作られたそうですが,今後Behaviour Interactiveがその中身に干渉することはあるのでしょうか。
Pannell氏:
どのようなアウトポストを作ろうと,我々が干渉することはありません。素晴らしい経験をしてもらうためのものであろうが,恐ろしいキルゾーンのようなものであろうが,それはもうプレイヤー次第です。
襲撃を終えたレイダーは「面白い」「残忍」「巧妙」「芸術的」という4つの基準からアウトポストを評価できます。つまり,美しいものも暴力的なものも,本作におけるスタイルなのです。最終的にはレイダーを倒すことが目的ではありますが,その中でできるだけ高い自由度をプレイヤーさんに提供したいと考えています。我々から「こういう風に遊んでほしい」という希望はないんですよ。
4Gamer:
ゲームの根幹であるステージをプレイヤーに委ねているというのは,ある意味プレイヤーを信じる“性善説”に基づいた姿勢のように感じられます。運営型のゲームを作る中では,作り手がプレイヤーを敵視するような例も見られないわけではありませんが,ここまでプレイヤーを信じられるというのはBehaviour Interactiveの社風なのでしょうか。
Pannell氏:
社風であるかどうかは分かりませんが,私たちは「本質的にプレイヤーは,我々が意図している自由な形でのプレイをしてくれる」と信じています。もちろん,競争的な側面を持つゲームだと,プレイヤーが善良な意図を悪用する可能性もないではありません。そのため,「Meet Your Maker」を作るに当たっては,いろいろなメカニズムを仕込んであります。
その1つが,レイダーとビルダーがメッセージをやり取りすることはできないというものです。レイダーとビルダーはアウトポストという同じ空間を経験はするのですが,意図的にコミュニケーションを欠如させることにより,相手を直接傷つけられないようになっています。最終的には,遊んだ人全員が善良なプレイヤーになってほしいと願っています。
Rivest氏:
我々の理念の1つは,ゲーム全体において容赦なく(Relentlessly)ポジティブになってほしいということですね。プレイヤーがゲームでミスしても「何らかのチートのせいで不当に打ち負かされた」というネガティブな気持ちにならず,「これは自分のミスが原因なので,次はもっとうまくやろう」とポジティブになれるようにゲームを設計していきました。
また,アウトポストを作るにしても,プレイヤーがどんな自己表現を行いたいかに合わせてカテゴリーの登録を可能にしています。暴力的なものはもちろん,わざと簡単なアウトポストを作るのも自己表現であるというわけです。なので,性善説に基づいたゲームであると感じてもらえたのは非常に嬉しいですね。
4Gamer:
現在,ゲームの開発において「いかにしてポジティブなコミュニティを作るか」が大きなテーマとなっています。Behaviour Interactiveにおける,コミュニティ作りの信念やコツがあれば教えてください。
Pannell氏:
最終的にはそれぞれのケース次第ということになると思いますので,何か科学的な根拠があって「こうすればコミュニティがポジティブになる」というものはないですね。
ただ,我々はこれまでにもさまざまなタイプのマルチプレイヤーゲームを開発しており,そうした経験からある程度のパターンは見えてきています。どういったパターンでトキシック(有害の意。ゲームにおいては,周囲に悪影響を及ぼすということ)な振る舞いが生じるかを踏まえ,ある種類のプレイヤーをサポートし,そうでないプレイヤーはゲームをしにくいといった設計を盛り込むといったことができます。
「Meet Your Maker」の場合は,レイダーとビルダーが直接コミュニケーションできないようにしており,ポジティブな感覚を持ちやすくなっています。とはいえ,我々も学んでいる最中であり,コツのようなものはありません。ゲームをできるだけポジティブにプレイしていただくことを追及しており,サービス開始後も走りながらの修正ができると思っています。
4Gamer:
先日,2023年4月4日の発売日と同時に,PlayStation Plusでの無料プレイ枠「フリープレイ」で配信されることが発表されました(関連記事)。この施策について狙いを聞かせてください。
Pannell氏:
「Meet Your Maker」は非常にオリジナルであるがゆえに説明も難しいゲームで,その面白さはUGC次第で変わってくる側面があります。PlayStationで提供されるゲームの幅広いスタイルや,オーディエンスの数を考えるとPlayStationとのパートナーシップはパーフェクトなものだと考えました。
Rivest氏:
異なるタイプのプレイヤーたちに1つのゲームで競争してもらうのが「Meet Your Maker」です。より幅広い層にアクセスしたいとも考えていて,PlayStationとのパートナーシップはそれにピッタリです。我々は,「Meet Your Maker」制作の最初期からコントローラのことを考えて設計してきましたし,PCのプレイヤーが作ったアウトポストをPlayStationプレイヤーが攻略するようなクロスプレイも可能にしてあります。
4Gamer:
正式サービスに向けて,どんなアイテムやキャラクター,機能が追加されるのか教えてください。
Pannell氏:
具体的なところはまだ言えませんが,ゲームの広がりを多様な形でサポートしていきたいとは考えていますね。1つの新規アイテムを追加すると,「Meet Your Maker」の面白さは指数関数的に広がっていくようになっていて,より多様性を増したものになっていきます。今後はコミュニティの反応が,どんなコンテンツを追加するかの道標になると思っています。
4Gamer:
最後に日本の読者へメッセージをお願いできますか。
Pannell氏:
日本の方々は,我々の「Dead by Daylight」を好意的に受け入れてくださっています。「Meet Your Maker」についても,どれだけ独創的なアウトポストを作ってくださるか,どんな形でトラップを組み合わせるのか,本当にワクワクしています。発売後はぜひとも「Meet Your Maker」の世界に加わっていただきたいですし,皆さんのプレイを心待ちにしています。
Rivest氏:
私は8歳の時から日本の文化に慣れ親しみ,任天堂のゲームもずっと楽しんできました。なので,日本の皆さんが我々の「Meet Your Maker」でどんなコンテンツを作られるのかが本当に楽しみですし,レイダーとしてどんな風に攻略していくかの戦術的な部分も興味深く拝見したいと思います。
「Meet Your Maker」公式サイト
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