インタビュー
[インタビュー]「ドラゴンズドグマ 2」が目指すのは,プレイヤーごとに体験が異なる「人に話したくなるゲーム」
[プレイレポ]「ドラゴンズドグマ 2」メディアプレビューで体験できた魔剣士とマジックアーチャー,そしてさまざまなハプニングを紹介
「ドラゴンズドグマ 2」の発売が2024年3月22日に迫るなか,カプコンは同作のメディアプレビューを開催した。今回のプレビューでは,新ジョブである「魔剣士」と人気ジョブ「マジックアーチャー」を使用でき,ハプニング満載の冒険を4時間ほど楽しめた。その模様を動画付きで紹介しよう。
「ドラゴンズドグマ 2」公式サイト
目指すのはプレイヤーごとに体験が異なる「人に話したくなるゲーム」
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。メディアプレビューで遊んだ最新バージョンをもとに「ドラゴンズドグマ 2」の諸々について聞ければと思います。発売まで間もなくというタイミングですが,現在はどのような作業を行っている段階でしょうか。
伊津野英昭氏(以下,伊津野氏):
発売日に遊べる部分の開発はすべて終わっていまして,現在はPC版の修正をしているところです。
4Gamer:
メディアプレビューでは,魔剣士とマジックアーチャーをプレイしました。「魔弾」が当たった先にワープするなどアクションがテクニカルな魔剣士と,今回もマルチに活躍できるマジックアーチャー,どちらも面白いジョブでアクションとしての手ざわりの良さがあり,いろいろと工夫しがいがあるという印象でした。
伊津野氏:
魔剣士は打たれ弱いので,常時「魔弾」をタメておくと1ランク上の戦いができるかと思います。敵の攻撃を引きつけて天竜ノ牙(空中から突き刺すアクション)を発動して回避するなど,テクニカルなアクションを楽しめますよ。
平林良章氏(以下,平林氏):
それこそ魔剣士だけでゲームを1本作れてしまうくらいにアクション要素が豊富なジョブになっています。
4Gamer:
オープンワールドアクションRPGとジャンルを謡っていますが,今回はアクション寄りのゲーム性になるのでしょうか。
伊津野氏:
ゲームの方向性は前作から変わっておらず,アクションだけでなくプレイヤーごとの得意分野でゲームを進められるようになっています。「アクションゲームのテクニック」「時間を掛けてお金を貯め,装備を買って自分を強化する」「クエスト攻略や戦闘の立ち回り,パーティ編成といった知識」。いろいろなアプローチで楽しんでもらえるようにしています。
カプコンはアクションゲーム作りはお手の物なので,アクション部分に力を入れるのはもちろん,RPG的な遊びにも同様に注力しています。アクションが得意ではない方でも,ワクワクして楽しめるようなアイデアを盛り込んでいるんです。
例えば,前衛はポーンに任せて自分は後方から支援する,といった指揮官のような戦い方もできまして,今回初登場する「幻術師」はこのような戦い方に特化したジョブになっています。ただ,こういったジョブは開発するうえで,リスクをどこで負うかはよく考えて作っています。例えば魔法使いは,詠唱するのに長い時間を必要としますが,詠唱後は自由に動けるようになります。この場合,リスクを先払いしているといった形になるわけです。
4Gamer:
魔剣士はアクション特化といった印象でしたが,今回触れられたもう1つのジョブであるマジックアーチャーはいろいろな役割を持てて,マルチに活躍できて面白かったです。「ドラゴンズドグマ 2」にはさまざまなジョブが登場しますが,全体的にどのようなコンセプトを持って開発を進めたのでしょうか。
伊津野氏:
前作のジョブをそれぞれの要素に分解し,再構成したのが「ドラゴンズドグマ 2」のジョブになります。コンセプトは「より偏りが出るように」です。近接戦闘が好きな方が楽しめるジョブ,戦場全体を見渡してコントロールしつつ戦いたい人に向いたジョブ,それぞれのジョブでまったく違う遊びが楽しめるところを目指しました。
4Gamer:
偏りというのはジョブごとの個性ということですね。
伊津野氏:
その通りです。例えば,対戦格闘ゲームを遊んでいる時も「このキャラに飛び道具があれば!」「ここで対空技を持っていれば!」と思うときってあるじゃないですか。でも,そこで飛び道具や対空技を持たせてしまうと,みんな似たようなキャラクターになってしまい,ゲームとして面白くなくなってしまいます。飛び道具や対空技なしでどれだけ面白くするかを考えるべきです。
4Gamer:
なるほど。確かにザンギエフ(※)を使っていると飛び道具や立ち回りで使いやすい技がほしくなりますが,それらを持たせてしまうとゲームとしては面白くなくなってしまいそうです。
伊津野氏:
「痒いところには手が届かない代わりに,痒くないところを充実させる」という方向性でキャラクターを尖らせていくわけです。「ドラゴンズドグマ 2」の魔剣士ですと,テクニックを使いこなさなければたどり着けない領域がある代わりに,攻撃されると打たれ弱いという設定にしてあります。開発では「豪鬼調整」(※)と呼んでいますね(笑)。
※ザンギエフ:ストリートファイターシリーズに登場する投げキャラクター。飛び道具を持たず,機動力もないため接近するまでに苦労するが,接近戦の爆発力は随一
※豪鬼:同じくストリートファイターシリーズに登場するキャラクター。万能キャラでテクニカルになんでもこなせるが,体力が少なくワンチャンスで逆転されやすい
4Gamer:
ここで豪鬼の名前が出るあたり,カプコンが積み上げ続けてきたアクションゲーム作りのノウハウや考え方が「ドラゴンズドグマ 2」にも生かされているという感があります。
伊津野氏:
アクションゲームで言うと,「デビル メイ クライ 5」のノウハウも「ドラゴンズドグマ 2」に生かされています。同作ではフォトリアルなキャラクターに非現実的なアクションをさせるうえで,“両者の間に存在する不気味の谷”をどのようにして埋めるか”というテーマに挑戦しました。
「ドラゴンズドグマ 2」ではよりフォトリアルな映像が多くなっているなか,レスポンスを損なわず,かつゲームっぽい動きにならないようにしています。このあたりはまさに「デビル メイ クライ 5」で培われたノウハウを使っています。まさに何十年と継ぎ足されてきた「秘伝のタレ」ですよ。
4Gamer:
アーケードゲームからアクションゲームを作り続けてきたことで醸成された,極上のタレですね。
伊津野氏:
先日発表させていただいた新ジョブ「アリズン」はこうした秘伝のタレの集大成です。アリズンはあらゆるジョブの武器を装備でき,これを一瞬で取り替えるマスタースキルを持っています。
平林氏:
それぞれのジョブを深く知っておくと,より楽しめるジョブですね。先日公開されたトレイラーでは,アリズンの戦闘シーンをご覧いただけます。“杖で氷の台を作ってそこに登り,ジャンプして斬りかかる瞬間に大剣へ切り替えてサイクロプスに兜割りを叩き込む”“弓で遠距離攻撃をしつつ,敵が突進してきたら片手剣と盾に切り替えてガードし,その後に大剣で一撃する”など,プレイヤーの発想次第で自由に戦えるのが持ち味になっています。
4Gamer:
戦いの中で武器をどんどん切り替えていけるわけですね。
伊津野氏:
ええ。実際にプレイされた方からは,ダンテ(※)の武器切り替えの発展系という感想をいただいています。ただ,カスタムスキルを装備できるのは最大4つであるというところはほかのジョブと変わりません。すべての武器で合わせて4つまでです。武器の取り替えをするスキルで1枠使うことになりますから,実質的に3つでやりくりする必要があります。
ちなみにノーマルスキルやジョブ固有アクションはそれぞれの武器で習得したものが反映されます。また,ほかのジョブのマスタースキルはセットできません。
※ダンテ:デビル メイ クライシリーズの主人公。剣,銃,格闘,バイクなどさまざまな武器を切り替えて戦う
4Gamer:
かなり自由度の高いジョブなんですね。いろいろな武器を持ち歩くとなると,重量はどうなるのでしょうか。
伊津野氏:
「持っている武器の中で,最も重いもの」1振り分の重量になります。いくつ武器を装備しても最も重いもの1振り分のみですが,装備から外してしまうとすべての武器の重量が一気にかかることになります。
4Gamer:
重量を気にすることなくいろいろな武器を装備できるのは大きいですね。武器を切り替える際,どの武器にするかの選択はどのように行うのでしょうか。
伊津野氏:
武器切り替えのスキルを使うたび,1つ目の武器,2つ目の武器……という感じで,順番に変更されていきます。武器を置く順番も考えないといけないので,個人的には3つくらいの武器を扱うことをオススメします。ちなみにアリズンになるのはかなり難しいので,がんばってみてください。
4Gamer:
事前のセッティングが重要になるという意味で,先ほどお話のあった知識で戦う側面も強いのかもしれませんね。幻術師についてはどうでしょうか。
伊津野氏:
幽体離脱,自分の煙でデコイを作って,敵に憑依させるなど,いろいろなアクションが用意されています。こちらも知識が重要になるジョブですね。
平林氏:
幻術師本人は,ほぼ攻撃力がないようなもので,先ほど伊津野から話があった「特徴を伸ばして際立たせる作りの極致」にいるようなジョブとなります。
4Gamer:
アクションゲーム的なテクニックというよりは,知識や発想力が重要になるわけですね。
プレイ中は野営も印象的でした。やたらリアルな肉を焼けたり,焚き火に薪をくべることができたりと,キャンプ感が楽しかったです。特に肉は見ているだけでお腹が空いてきました。
伊津野氏:
実は野営で焼ける肉は実写なんです。チーム内のキャンプ好きを集めて「キャンプって何が面白いのか会議」を何か月もやっていたんですが,「肉を焼いている画なら,いくらでも見てられますよね」という話が出たことがきっかけになって,ゲーム内に導入されました。
お金をかけたCGで肉を表現してもいいんですけど「同じお金をかけるなら,いい肉を買うことにお金をかけよう」ということで現在の形になりました。ゲーム内で手に入る肉の種類ごとに,焼いたときの画も違いますよ(笑)。
4Gamer:
キャンプ好きだからこそ分かるキャンプの醍醐味ですね。
伊津野氏:
キャンプ好きといっても,方向性がいろいろと違うんですよ。車に大量の荷物を積み込んでキャンプする者がいれば,バイクに積めるだけの荷物を持って一人でキャンプするのが最高だという者もいる。彼らの全員から聞いた話を絞り込んでいき,残ったのが肉焼きと薪だったわけです。
薪をくべることにゲーム的な意味はないんですが,薪もキャンプの魅力として外せない要素なので取り入れています。僕らとしては,プレイヤーの皆さんに「バカだな,DD2(ドラゴンズドグマ 2)チーム」って言ってほしくてやっていますから(笑)。「ドラゴンズドグマ 2」が“ファンタジー世界シミュレータ”を目指すうえで,押さえるべき所を抑えたい,ということですね。
4Gamer:
メディアプレビューでは,新たに獣人たちの国「バタル」の街「バクバタル」を探索できましたが,これまでの街と雰囲気が違っていて驚きました。
伊津野氏:
空気が変わる異国感を大切にしています。ほかの街とは違ってベッドが低いなど,細かなところで文化の違いを演出しています。
平林氏:
どこか特定の国に寄った描写をするというわけではなく,基本的にはミックスカルチャーになります。
4Gamer:
自宅を買うことができましたが,これを飾り付けたりするハウジング的なフィーチャーはあるのでしょうか?
伊津野氏:
装飾などはできませんが,一定以上仲良くなったNPCが自宅に遊びに来てくれることがあります。ここから生まれるドラマもあるでしょうね。このあたりの企画には,僕の妄想が詰まっています(笑)。
4Gamer:
例えば,バクバタルのクエストではナデニアを警護する獣人族の女性がいましたが,この人も遊びに来てくれるわけですか?
伊津野氏:
ええ,もちろんです。「できそうなことは全部できるようにしましょう」がコンセプトですから。そうした中でも対人関係はプライオリティが高いですね。
4Gamer:
アクションの自由度が高いこととあわせて,「遊び場は用意したので自由に遊んでください」という姿勢が見てとれます。プレイヤーが想定外の遊びをした際のバグチェックも大変ではないですか?
伊津野氏:
バグチェックのほとんどはそういった部分に時間を使っています。できそうなことは全部できるように,起こりうることは起こるようにし,制作側の都合でオミットしないようにしました。
4Gamer:
街に「死体安置所」があったのも印象深かったです。結構面積が大きかったうえ,ロード中のTIPSにも「蘇らせる死体を間違えないようにしよう」という内容のものがありました。
伊津野氏:
「ドラゴンズドグマ 2」ではNPCが死ぬことがあり,死ぬと生き返りません。死んだNPCは死体安置所に移送されるんですね。前作同様に蘇生アイテム「竜の鼓動」はNPCにも使えます。例えば「クエストの進行上,どうしても必要なNPCが死んでしまった」という時はこれを消費していただければ生き返ります。
4Gamer:
なるほど。普通ならNPCを不死身にするなど,ゲーム的な手段を使うところですが,そこもリアルに処理されていると。ただ,NPCが死んでしまったら,クエストをどう進めればいいか分からなくなってしまうのではないでしょうか。
伊津野氏:
そういう時は,占い師に頼るといいかもしれませんね。きっと「その人は死んでいます」的な結果が出ると思います。制作側の都合でオミットしないと話しましたが,オミットしないかわりにフォローするシステムをいろいろと入れてあります。
平林氏:
実はこれまでのプロモーションで占い師の存在も明かしてはいるんです。皆さん「何か分からなくなった時にヒントをくれるんでしょう」という認識をされていると思いますが,「何が分からなくなるか」まではお伝えしていませんでした。ただ,占い師も万能というわけではないです。
伊津野氏:
死体安置所に移送された遺体もずっと残っているわけではなくて,数日で埋葬されてしまいます。そうなると生き返らせるのも不可能になってしまいます。
4Gamer:
ファンタジー世界シミュレータとしての方向性が追求されているわけですね。
伊津野氏:
「この世界でロールプレイするんだ」という気持ちで遊んでみてほしいです。プレイヤーが想像することをできるだけ実現できるシステムにしています。
4Gamer:
「ドラゴンズドグマ 2」を遊ぶ時には,先入観を持たずにいろいろなことを試してみるのが大事なんじゃないかと思えてきました。
伊津野氏:
先入観といえば,こんな話があります。「デビル メイ クライ 4」を東京ゲームショウに出展した際のことです。事前に「敵を掴んで投げられます」と繰り返しアピールしていたんですが,初日の会場では誰もボスを投げようとしてくれないんです。そこで,PVにボスを掴んで投げ飛ばす映像を入れてみたところ,2日目からは皆さんが投げを試してくださるようになりました。
4Gamer:
ゲームに慣れているほど「ボスは投げられないだろう」と先入観を持ちがちですからね。
平林氏:
ストーリードリブンのアクションRPGはイメージしやすいと思いますが,今回我々は体験ドリブン型としてのアクションRPGを目指しました。プレイヤーが発見して楽しめる要素をたくさん用意していますので,与えられるのを待たずに,自身でいろいろ試していただきたいですね。
4Gamer:
先ほどのプレイ中の話ですが,ロープウェイのゴンドラに乗って移動している最中にグリフィンにちょっかいをかけたら,ゴンドラを破壊されて落下し,致死ダメージをもらいました。ゲームとして考えてゴンドラは壊れないだろうと思っていたので,これも先入観が働いていました。
平林氏:
「ゲームだと移動イベントの乗り物が壊れるわけがない」って先入観がありますからね。でも「ドラゴンズドグマ 2」では当たり前のできごとが起こるので,ゴンドラも壊れるし,覚者も落下してダメージを受けます。
伊津野氏:
我々が作ろうとしているのは「人に話したくなるゲーム」なんです。SNSでのネタバレ上等,ある人が体験を語ると,別の人は違った体験をしている。「牛車で移動していたらゴブリンに襲われたんだ」「俺はグリフィンに襲われて,牛車ごとブッ飛ばされたよ」というように,人に話したくなる体験が偶然起こるようになっています。
4Gamer:
細かな点ですが,パラメータ成長の仕様はどうなっているのでしょう? 前作ではレベルアップ時に就いていたジョブで上がるパラメータが変化していましたが。
伊津野氏:
そこは今回も同じですね。ただ,レベルキャップに引っかかってパラメータが上がらなくなるという事態は起こらないようにしています。
4Gamer:
なるほど。まだまだ聞きたい話はありますが,時間切れのようです。最後に発売を楽しみにしている読者にメッセージをお願いします。
平林氏:
みなさんごとの冒険という体験を用意させていただきました。正解や不正解がない世界で,ご自身が選んだところに楽しさや責任を持っていただければと思います。ぜひ本作を手に取ってファンタジー世界へダイブしてください。
伊津野氏:
なにぶん自由度の高い作りなので,お怒りになることもあるかもしれませんが,ぜひそうした出来事も楽しんでください。
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