プレイレポート
【PR】「台北大空襲 Raid on Taihoku」は自分で操作し体感する戦争ドキュメンタリーだ。ゲーム性が重苦しさを良くも悪くも緩和
台湾のMizoroit Creative Companから2023年2月16日にリリースされるサバイバルアドベンチャーゲーム「台北大空襲 Raid on Taihoku」。本作は,同社が台湾で公開し大きな話題を呼んだ同名ボードゲームをベースにしたPC(Steam)向けタイトルだ。価格は2800円(税込)となる。
舞台は第二次世界大戦のなか,日本の統治下にあった台湾の台北。プレイヤーは記憶喪失の少女「清子」と台湾犬の「クロ」を操作し,この戦火を生き延びる術と,清子の記憶を探していくことになる。
今回,リリースに先駆けて本作をプレイできたので,ゲーム内容やそれに対する印象を紹介していこう。
先に全体的な感想を述べておくと,本作はどちらかというと操作できるドキュメンタリーといった色が濃く,ゲーム性よりは戦時下の台北で描かれる少女の物語に重きを置いている印象だ。舞台などは異なるが,制作者が「火垂るの墓」をインスパイアするというだけあって,あの感じを体験できるゲームと言えばイメージが付きやすいだろう。
なお,この記事とは別に,本作の制作指揮を担当している張 少濂氏に行ったオンラインインタビューも掲載しているので,興味があればこちらにも目を通してほしい。
「台北大空襲 Raid on Taihoku」インタビュー。第二次世界大戦下のリアルな台北を再現したアドベンチャーゲームを作る
Mizoriot Creative Companyは新作タイトル「台北大空襲 Raid on Taihoku」を,Steamでリリースを予定だ。本作は第二次世界大戦の末期,台北への行われた大規模な空襲をモチーフにしたアドベンチャーゲームだ。今回は,本作の制作指揮をとる張 少濂氏へのオンラインインタビューの模様をお届けしていく。
戦火で生き延びる人々と失われた記憶の謎を描く
「台北大空襲 Raid on Taihoku」というタイトルどおり,本作はいままさにアメリカ軍の空襲を受けている台北が舞台となっている。主人公の清子は空襲のなかで傷つき倒れ,自分の名前と「マコト」という名前以外の記憶を失った状態で目を覚ます。
空襲はいまだ終わっておらず,両親が亡くなったことを告げられた清子は生き残った人々と関わり合いながら生き延びる道を探し,そのなかで記憶を取り戻していく。
ゲームとしては人物との会話などを通して進行するアドベンチャーパートと,空襲や危険な相手から逃れつつ目的地を目指すアクションパートの2つで構成されている。
アドベンチャーパートは若干の奥行きがある2.5D的なマップで展開し,右に左にと歩きながら人に話しかけたりアイテムを調べたりして物語を進めていく。調べられるポイントなどは光で明示されるので,進行で迷うことはほぼないだろう。
日本の統治下という時代性もあってか,町には日本を感じさせる建物も見られる。各地にあるビューポイントのような場所を調べると,こういった建物にフォーカスが当てられ,アイテム同様に図鑑に追加されていく。
戦後に日本との交流が途絶えたこともあり,日本由来の建物などは取り壊されて現代には残っていないとのことで,本作はその失われた景色の再現にも力を入れているという。時代感も含めて一風変わったノスタルジーを味わえるのも本作の特徴だろう。
アクションパートではカメラが見下ろし型になり,上下左右への移動とアクションボタンを使った行動が可能になる。アクションは傘で身を守る,石を投げて相手の気を引く,消火栓を使って火を消すといったものだが,そこまで精密な操作は要求されない。
操作自体は複雑でなく,ギミックも単純なものが多いので,アクションが苦手な人でも問題なく遊べるだろう。ただし空襲の爆撃を受ければ当然一発アウト。そこは主人公が抵抗する力を持たない一般人だと痛感させられる部分であり,プレイにも若干の緊張感を与えている。
アドベンチャーパートとアクションパートでは,清子に付き従う台湾犬のクロも操作できる(アドベンチャーパートは場面により操作可能)。清子の移動は左スティック,クロの移動は右スティックで行えるのが独特で,その気になれば同時にふたりを別々に動かすことも可能だ。
片方ずつ操作していってもまったく問題はないのだが,同時に別々の動きをさせるのは普段と違った脳の使いかたをしている感もあり,本筋とは違った面白さがあった。
各パートでアイテムを発見したり持ってきたりするクロは,物語内でもマスコット的な存在となっており,プレイを進めていけば自然と愛着が湧いてくる。ただし後半にはショッキングな場面もあるため,愛犬家の場合はそういった描写があることも承知のうえでプレイしよう。
冒頭でも触れたとおり,本作はドキュメンタリー的な色合いが強く,主軸となるのは物語だ。戦時下ということもあってゲーム序盤に発生するイベントから心を痛める内容になっている。くすっとなる場面もあるが,全体的に雰囲気はシリアスだ。
純粋に戦争のむごさや戦火のなかで生きる人々の前向き,あるいは後ろ向きな姿が描かれる作品だが,一方で清子の失われた記憶が少しずつ戻り,その過去が明らかになっていく様子は,謎が生まれては紐解かれていくミステリアスな面白さもある。
物語やビジュアル,静けさや不穏さを演出するサウンドなど,全体的に戦争を真面目に描く姿勢が見られる本作。中盤で他作品の主人公がゲスト的に登場するイベントがやや唐突ではあったものの,戦禍に巻き込まれた人々に思いを馳せるキッカケになるという意味で,いわゆるエンタメ性とは違った価値がある作品と言えるだろう。
戦争を扱うとなると気が重く,手を出すのをためらう人もいるだろう。実際気が重くなる物語ではあるのだが,クリア時に晴れやか……とまではいかないものの,一筋の光が差したような心持ちにさせてくれるので,読後感はさほど暗くない。
また,アクションパートはシステム面でゲームらしさが前に出ているのだが,これが全体の重苦しさを多少緩和してくれている。冒頭で「火垂るの墓」を体験するゲームという例えを出したが,このゲームらしさのおかげで戦争ものながら,やや手に取れるようになっている印象だ。
4時間程度でクリアできる手軽なボリュームの本作。記憶を取り戻すという流れの関係で2週目になって気づくこともあるほか,回収できるアイテムのコンプリートを目指すといった遊び方もできるだろう。戦争を扱うドキュメンタリー作品が好きな人はもちろん,作中で扱われている時代や日本統治下の台湾などに興味があるなら,ぜひ体験してみてほしい一本だ。
なお,本作は2023年2月16日〜2月21日の期間にリリース記念割引が行われ,10%オフで購入できる。気になる人は早めにチェックしよう。
- 関連タイトル:
台北大空襲 Raid on Taihoku
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