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[台北2023]「台北大空襲」試遊レポート。それぞれ異なる表現で戦争の恐ろしさと悲しさを描く,アドベンチャーパートとアクションパートを体験
Steamの「台北大空襲 Raid on Taihoku」ストアページ
「台北大空襲」は,第二次世界大戦末期の台北を舞台としたアドベンチャーゲームだ。1945年5月に連合国軍が行った大空襲がモチーフとなっており,空襲のさなかに記憶を失った少女・清子を主人公に,戦渦を生きる人々の物語が描かれる。原案はMizoriot Creative Companyが2017年にリリースした同名のボードゲームで,世界観は共通のものながらまったく異なるシステムのシングルプレイ用ゲームして,同社とFun2 Studioが制作を進めている(パブリッシングはLoftstar Entertainmentが担当)。
Indie Houseでは,サイドビューのアドベンチャーパートと,見下ろし視点のアクションパートを試遊できた。アドベンチャーパートでは,わずかながら記憶に残っていた言葉や人の名前を頼りに,周囲の人たちやオブジェクトなどにインタラクトしながら物語を進めていく。
今回プレイした範囲は,当時の台北駅や蓬莱町大聖堂がスポットとなっていたが,そのほかにも台湾総督府(現・総統府)や台湾神社(現・台北圓山大飯店)といったさまざまな場所が登場し,それらは資料や研究家のアドバイスなどによって正確に,そして精巧なビジュアルで描かれているという。精巧なビジュアルで描かれているのは建物だけではなく,空襲によって焼かれた街や被害にあった人々も同様だ。それらも資料や助言をもとに丁寧に作られているそうで,目を覆いたくなるような痛ましい場面も表現され,戦禍の“現実”を伝えてくれる。
アクションパートは2種類プレイできた。1つ目は爆撃を避けながら防空壕に向かうという空襲のシーン。清子を操作し,表示される爆弾の着弾地点を避け,ときに道をふさいでいる木箱などのオブジェクトを動かしながら防空壕を目指す。爆撃に巻き込まれてしまうとゲームオーバーとなり,最初の地点からリスタートとなる。
操作自体はシンプルだが,気が抜けない要素がある。一緒に行動する台湾犬のクロと,空襲のなかで出会った少女を連れて行かなければならないのだ。清子より少し遅れてついてくるので,考えなく突き進むと,自分が通り過ぎたあとの爆撃にクロと少女が巻き込まれ,ゲームオーバーとなってしまう。これには,自分自身(清子)が受けたときとはまた違った辛さがあった。迫り来るアメリカの大型爆撃機B-24の影,着弾し爆発炎上する爆弾の表現もおぞましい。
もう一つが,空襲後のとある出来事。清子が知り合った女性のカバンが盗まれ,その犯人の男性を追いかけるというシーンだ。物陰に隠れながら後を追い,石をオブジェクトに投げつけて音を立て,犯人がカバンから離れたときにそれを取り返し,また見つからないようにその場を離れる。もちろん見つかったらそこでゲームは終了し,リスタートとなる。盗みを働いた男性は,なぜ,どういった経緯でそれを行ったのか。今回の試遊ではそこまでは分からなかったが,空襲の凄惨さだけではなく,戦禍の中を生きる苦しさを伝えるようなエピソードにも感じた。
歴史と人間性の融合と繊細さに注目し,プレイヤーに戦争の恐ろしさや悲しみといった体験を提供することが目的の一つであるという本作。サラエヴォ包囲などをモチーフに制作された「This War of Mine」,第二次大戦期のハイドリヒ暗殺事件を題材とした「Attentat 1942」など,戦争や戦時下の出来事をテーマとした作品はさまざまあるが,アジアの,そして日本が直接関わりのある題材というところでも,2月16日にリリースされることを覚えていてほしい一作だ。
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