プレイレポート
[プレイレポ]昼はダイバー,夜は寿司屋。海産物に囲まれた多忙な生活がとても楽しい海洋アクションADV「デイヴ・ザ・ダイバー」
本作は,日中は潜るたびに地形が変わる“ふしぎなブルーホール”でさまざまな海洋生物を捕らえ,日没後はその獲物を食材とした寿司屋を営むという,ユニークなアクション&経営ゲームだ。
プレイヤーは,ぽっちゃり体型の中年ダイバー「デイヴ」を操り,ある時にはサメなどの危険生物に立ち向かい,またある時は海賊や過激な活動家といった人間たちにも対処しつつ,新鮮な海産物を使った寿司屋の経営を軌道に乗せるべく,奮闘していく。
早期アクセス版がSteamに公開されたのは,2022年10月。あまり類を見ない異色の作品ながら,アップデートを重ねて現在も「圧倒的に好評」の評価を得続け,正式版のリリースを心待ちにするプレイヤーも多かった本作のプレイレポをお届けしよう。
なお今回主にプレイしたのは,基本的に早期アクセス版と同じだが,短時間だけ正式版のデモ(プレビューバージョン)を体験することができたので,その様子にも少しだけ触れてみたい。
[インタビュー]おじさんが南国でダイビングして寿司屋も経営する風変わりなローグライト「デイヴ・ザ・ダイバー」は,どのように誕生したのか?
おじさんダイバーが昼は海で魚を捕まえ,夜は寿司屋でお客をさばく。南国スローライフ系海洋ローグライト「デイヴ・ザ・ダイバー」(DAVE THE DIVER)のPC向け正式版が,明日配信される。ユニークな設定が話題を呼んでいる本作について,ディレクターを務めるファン・ジェホ氏に聞いた。
「デイヴ・ザ・ダイバー」公式サイト
中年ダイバーのデイヴ,
謎に包まれたブルーホールに(ちょっとだまされた感じで)挑む
本作の主人公は,プロの中年ダイバーであるデイヴ。ヒゲとぽっちゃり体型がトレードマークの彼は,ある日友人で怪しいビジネスマンのコブラから「うまい寿司を食わないか?」と,巨大なブルーホール(自然の洞窟などが海中に水没した,浅瀬の深い穴)近くの海岸に誘われる。寿司に目がないデイヴが喜び勇んで駆けつけると,まさにその日,頑固だが抜群の腕を持つ料理人であるバンチョと共に,寿司屋を開店させたのだという。
さっそく食事を……と店に行こうとするデイヴだが,コブラと話すうちに雲行きが怪しくなっていき,いつの間にか店で出す食材をブルーホールで調達する役目に。おまけに店ではたらふく寿司を食うどころか,なぜか接客と配膳を任されることになり,昼はダイバー,夜は飲食業と二足のわらじ生活を送ることになってしまったのだ。
以前からのコブラとの付き合いもあり,かつダイバーとしての仕事にもなることから,(主に体を張る形で)寿司屋の経営に関わることになったデイヴ。しかしこのブルーホールは単に深いだけでなく,内部に予想もできない数多くの謎が眠っていた……というのが,本作の導入部分となる。
冒頭でも触れたように,本作は「ブルーホールでの漁と探索」そして「寿司屋の運営と管理」の二本立てとなったユニークなゲームだ。午前中から夜と段階的に時間が流れる1日を,昼はブルーホールに潜って食材となる魚介類をゲットすることを目指し,夜はその食材で寿司屋を訪れる客をもてなすことに費やす。
両者のゲーム内容はかなり異なり,昼の部はサイドビューのアクション,夜の部は経営シミュレーション的な作風だ。とはいえ夜の寿司屋で出せるネタは,基本的に昼の漁の結果にかかっており,ゲームとして想像以上にシームレスにつながっている。そのため少しプレイすれば,1日の流れに違和感を覚えることはなくなるはずだ。
浅瀬から海底深くまで,
さまざまな海産物やアイテムを狙ってブルーホールに潜れ!
“昼の部”となるダイビングパートでは,毎回地形や魚の配置が変わるブルーホールに潜って魚介類を集めたり,特定の食材やアイテムを集めるといった,さまざまなクエストを進めることが目的となる。水中ではサイドビューに固定され,基本的には360度どこにでも泳げるようになっている。海の中には小型の熱帯魚から中型のタイやサバ,そして巨大で危険なサメなど多種多様な魚類がひしめいており,選り取り見取り。その中から好きなものを選び,持てる範囲で海上まで持ち帰るのが,基本的なルールだ。
デイヴは基本として3種類の漁具(道具)を海中に持ち込むことができ,それぞれ無限に使えるが射程距離が短めの銛(スピアガン),使用回数の制限はあるが射程が長かったり大ダメージを与えられる銃器,近距離攻撃に特化した近接武器に分かれており,潜水中は好きなタイミングで切り替えて使用できる。
基本は,対象に銛を突き刺して一定のダメージを与える,あるいはほかの武器で体力をゼロにすることで獲物としてインベントリに入り,それが釣果になる。
とはいえ多くの魚はデイヴが近づくと逃げるし,武器は左右どちらかの一定の範囲にしか撃ち込むことができない。最初のうちは,なかなか獲物に命中させることができず,やきもきするかもしれない。
獲物は,基本的に“生きが良い”ほど価値が上がるようになっており,銃で撃ち殺すよりも銛で引き寄せたほうがランクが高くなるし,網の中に閉じ込めたり眠らせてから回収したほうが,さらに価値は高くなる。メインの漁は銛を撃ち込む手法になるだろうが,インベントリの容量は全体的にきつめで,さらに生け捕りにしても殺しても重量は同じなので,状況が許せばなるべく生け捕りしたほうが効率がいい,というわけだ。
ただしクラゲのような毒を持つ生き物は,触るだけでダメージを受けてしまうし,何よりサメやウツボといった一部の獲物は,こちらを見かけ次第,積極的に襲ってくるのでなかなかに脅威だ。デイヴはプロダイバーであるが,水の中では魚のほうが動きは速い。
したがって効率的に漁を進めるには,海底に沈む箱などから入手できる,追加ダメージを与えたり麻痺させたりできる特殊な銛先や各種の銃器,高速移動が可能な水中スクーターなどを活用していきたい。だがこれらは謎の力により持ち帰って再利用することはできないため,その回限りの使い捨ての存在であることに注意したい。
前述の「地形が毎回変わる」という表現でピンときた人も多いだろうが,本作のダイビング部分はいわゆる“ローグライク”な仕組みを採用しており,潜るたびに内容はリセットされるし,持ち込めるアイテムには制限がある。そのため,前回の漁はうまくいったけど,今回はサメの邪魔が入ってさっぱり……なんてことも珍しくなく,釣果にはだいぶムラがでるのだ。
潜水の機会自体は,基本的に午前と午後で2回あるので(ゲームが進むと制限はあるが,夜間潜水も可能になる),例え午前はダメでも午後があると切り替えて,ダンジョンっぽい不思議に満ちたブルーホールに挑もう。
またダイビング時は,左下に表示される酸素ゲージを常にチェックしておきたい。時間経過で減り続けるほか,ダッシュ機能を使ったり,敵に攻撃されたりすることでも減少していくからだ。実質的な時間制限(タイムアップ機能)だが,同時にスタミナでもあり,ライフでもあると言える。ゼロになれば当然,その回の潜水は失敗してしまい,取得した獲物やアイテムをほぼ失ってしまう。
海中には固定式の酸素タンクや携帯型の酸素ボンベなども落ちているが,タイミング良く入手できるかは運。インベントリの重量制限を睨みつつ,どれだけ潜水を続けるか。デイヴ(プレイヤー)の腕の見せ所というわけだ。
多種多様なネタが並ぶバンチョ寿司は大忙し!
メニューを決め,人を雇い,自分自身もホールで働こう
“夜の部”となる寿司屋パートは,昼に苦労して集めた魚介類を調理し,寿司としてお客に振る舞うターンだ。何がネタになるかはもちろんプレイヤー次第だが,料理を担当するバンチョの腕は超一流。タイやイカといった一般的な寿司ネタはもちろん,サメやクラゲや深海魚など,あまり見かけない食材でもお客を満足させる寿司を握ってくれる。
具体的な手順は,取得した獲物から選択できるメニュー一覧で好きなものを選び,その日に出したいものをお品書きに並べるだけ。ただし寿司以外の料理,例えば煮付けや塩焼きなどは別途調味料等が必要になるので,事前にダイビングなどで入手しておく必要がある。
メニューが決まれば店はオープンとなり,配膳タイムとなる。こちらも手順自体はシンプルで,座席に着いたお客にバンチョが完成させた料理を運ぶだけだ。注文と調理は自動で行われ,デイヴは運ぶだけだが,注文前にアガリ(お茶)を頼む客がいたり,調理に必須のワサビが切れたりと,ちょくちょくミニゲームが挟まるので意外と緊張感がある。放置しすぎた客は怒って帰ってしまうので,吹き出し型のゲージをよく見て,配膳の順番にも気を配りたい。
また定期的にVIP待遇のお客が登場し,特別な料理を振る舞う機会が出てくる。大概は新たな食材が必要になるので手間がかかるが,新規のメニューや施設のアンロック要素になっているので,手を抜くわけにはいかない。彼らを満足させた暁には,インパクト抜群のムービーも流れるので,慣れてくるとこれを見ることもちょっとした楽しみになってくるのだ。
さて深夜になれば営業は終了し,リザルト画面が表示。経費などを除いた売上げの一部がデイヴの懐に入り,1日が終了だ。またお客の満足度が一定まで上がれば,クックスタというアプリで評価が上がり,お客も増えて一度に出せるメニューも増えたりする。
ただしお客が増えるということは,デイヴやバンチョの仕事もそれに比例して増加するということ。二人では回らなくなっていくので,新たに従業員を雇う必要が出てくるし,初期の簡素な店が気に入らないなら,改装も考える必要がある。デイヴは終始気のいいオッサンという感じだが,こうなるとなかなかのビジネスマンに見えてくる……かもしれない。
ただしいずれにしても,必要なのはお金だ。デイヴの主な収入源は寿司屋の売上げだが,残念なことに浅瀬で簡単に手に入る魚で作った寿司は,単価が安い。というわけで少しでも高いネタを……となるわけだが,それにはより深く潜ったり,流れが速かったり危険な魚が多い場所にも立ち入って,レアな魚を入手しなくてはいけない。
本作のデイヴにはレベル的なモノはなく,ダイビング用品のアップグレードで能力を上げる仕組みだ。酸素残量の容量を上げる空気タンク,限界水深を上昇させるダイビングスーツ,インベントリを広げる積載箱,そして銛のダメージを上げるスピアガンに分かれているが,どれも重要度が高い。また銃器も作成やアップグレードが可能で,船上で作成したものならば,失うことなく海中に何度でも持ち込める。
基本的にはバランス良く上げていくのが良いと感じたが,あえて優先するなら積載箱とスピアガンだろう。積載箱をアップグレードすれば単純に持ち帰れる獲物が増えて,寿司屋の収益も上げやすいし,魚は水深が深くなるにつれ耐久力がかなり上がっていくので,スピアガンが弱いままでは漁はままならないからだ。
とはいえ予算は限られる関係上,デイヴの装備も寿司屋もと,一気にまとめて強化することは不可能だ。特にダイビング用品はレベルを上げるほど,強化資金も飛躍的に上がっていく。懐と相談しつつ,メリハリをつけたアップグレードを行っていきたい。
ダイビングと寿司屋に加えて,
探検家や農家(?)としても大忙しのデイヴを操り,
魅惑の深海を満喫しよう
漁師に寿司屋にと大忙しのデイヴだが,実はこれは序の口。ゲームが進めば魚の養殖場や農地がアンロックされ,好きな魚を増やしたり,寿司用の米を育てることになったりする。朝から夜まで,一層ビジネスで忙しくなっていくのだ。
また寿司屋を営む傍ら,なりゆきでブルーホールの謎に迫る探索も任され,イベントとして巨大な海洋生物の退治,過激な自然活動家や海賊への対処,イルカやクジラとの交流,栄えスポットでの写真撮影,果ては謎の魚人族(人魚)の探索など,さまざまな依頼をこなしていくことになる。デイヴもこれだけ働けば痩せるのでは……というか,過労死しないかちょっと心配になるほどだ。
とはいえ裏を返せば,これはプレイヤー向けのコンテンツが山盛りということ。恐らく大概は,海に潜るときは漁はもちろんのこと,アイテム探しや何かしらのクエストを抱えてダイビングすることになるはず。前述のとおり酸素の残量で潜れる時間は限られているので,寿司ネタを優先するか,クエストのクリアを優先するか悩む機会も多いのではないかと思う。
以上のように早期アクセスでも密度が高いプレイが可能な本作だが,製品版では途中で終わっていたチャプター3以降の物語が描かれるほか,デイヴのダイビング装備のさらなる強化が解禁され,より強力になった姿でブルーホールに挑める。またバンチョ寿司の様子をスマホから確認できるアプリの追加,農場で育てられる作物の充実,大型の魚をそのまま捕まえられる水中ドローンの解禁など,それ以外のコンテンツも追加されていた。
なおブルーホール内で登場する魚の種類も追加されていて,待望のマグロが登場したのも印象的だった。また早期アクセスでは,特に海底の魚の耐久力が(最強の銛でも)かなり高く感じたが,その辺りも修正されて若干捕まえやすくなっているようだ。
ダイビングと寿司屋経営という一見すると異色の組み合わせである本作だが,プレイしてみるとその要素は想像以上にうまく噛み合っていた。寿司屋でお金を稼ぐにはダイビングパートを成功させるしかなく,逆にダイビングの効率を上げるには寿司屋でしっかり稼ぎ装備をアップグレードをしなければいけない……と,しっかりとした車の両輪になっており,実は無駄がないからだ。
恐らく気がつけば,昼のダイビングではどの魚が高いネタになるか考えながら銛を突き,夜の寿司屋では稼いだお金でどの道具をアップグレードするか悩んでいることだろう。また油断すると結構あっさり危険生物に絡まれて酸素が尽きたりするので,特に深く潜っている最中は,慣れてきても緊張感を覚えることも少なくない。
グラフィックスはドット絵とローポリゴンな3Dモデルを組み合わせたものだが,統一性は高く特に獲物となる魚介類の特徴は十二分に捉えているし,ときおり流れるドット絵のムービーシーンは見応えがあるもので,全体的なクオリティはかなり高いと感じた。またそれぞれ特徴があり,概ね一癖二癖あるキャラクターたちも魅力的。個人的には,料理シーンが格好良すぎる料理長のバンチョがお気に入りだ。
前述のように進行に応じて,やること(できること)が増えすぎる感もあるが,実は時間制限があるクエストも含めて,取り返しのつかない要素はほぼないようだ。面倒なら自分のやりたいことを優先し,後回しにしても問題ない。その気になれば,店の在庫や養殖場にネタを任せて,潜らないことだってできる。
プレイ時間の関係上,作品の全体的なボリュームは判断できなかったのだが,早期アクセス版でもプレイヤーを飽きさせない工夫と,全体的な作りの丁寧さを感じることができた。一見イロモノなゲームだが,Steamなどでの高評価も納得できる作品だ。興味があればぜひ,正式な製品版となった本作を手に取ってみてほしい。
- 関連タイトル:
デイヴ・ザ・ダイバー
- この記事のURL: