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「キングダムハーツ」シリーズのナンバリング新作が発表された「KINGDOM HEARTS 20th ANNIVERSARY EVENT」をレポート
このイベントの模様をレポートしていこう。
会場限定で,ディズニーへのプレゼン用に制作した最初の動画が公開
イベントのオープニングでは,「キングダムハーツ」シリーズのディレクターを務める野村哲也氏をフィーチャーした映像が公開された。その中で野村氏は「KINGDOM HEARTS III」について,「シリーズが完結したわけではないが,終わった感がすごすぎて抜け殻。燃え尽き症候群です。やることはやって後悔はない」と発言していた。
また1作めの「KINGDOM HEARTS」はあまり認知度が高くなかったので何でもできたが,この20年間でシリーズが広く知られるようになり,以前ほど無茶ができなくなったという。ただ,開発にあたって「キングダムハーツとはこういうもの」という信念は20年間変わっておらず,「ほかのどのタイトルよりも厳しく作っている」そうだ。
加えて,「KINGDOM HEARTS」の企画をディズニーにプレゼンテーションするために作ったという動画も披露された。野村氏によると,開発するかどうかが決まる前にここまで映像を作ることはしないそうで,「自分が初めてディレクションすること,ディズニーから許諾を得ないといけないことから,かなり気合いを入れて準備した」という。さらに当時のタイトルは「KINGDOM」だったことや,世界観やゲームの構造は決まっていたが,ストーリーはまだ固まっていなかったことなどが明かされた。
主人公のルックスは当初,ディズニーっぽさを出すために亜人風だったとのこと。のちに人間にしたことについて,野村氏は「変えてよかった。人間じゃなかったら,ストーリーがああはならなかった」と話していた。
また企画初期から海がフィーチャーされていたが,それは野村氏が海の近くで育ったからだという。
ジャンルをアクションRPGにしたのは,自由に動き回れるRPGを作りたかったというのが理由だ。野村氏自身も含めて,アクションは苦手という人であっても楽しめるよう意識して開発したという。
野村氏が,何でもありだからという理由で,ファンタジーすぎる世界観をあまり好んでいないことも明かされた。一方,現実そのままでも面白味がないので,現実から少しズレたあたりを描いてワクワク感を提供したそうだ。
シリーズを通して描いているのは,「心のつながり」と「誰もが主人公になれる」の2点。「KINGDOM HEARTS III」でソラは消えてしまうが,野村氏は「心はつながっているということです」と語った。
続いて,「キングダムハーツ」シリーズの楽曲が,室内楽(ピアノ五重奏)アレンジで披露された。演奏されたのは,「Dearly Beloved」「Sola」「Vector to the Heavens」「Nachtflügel」「Link to All」の5曲だ。
演奏のあと,今回の選曲とアレンジを手がけた作曲家の下村陽子氏が登壇。「20周年にふさわしいものにしようと,シリーズ初の室内楽アレンジにした」とのことで,さらに選曲に関しては,タイトルに偏りが出ないようにしたこと,絶対に外せない曲やファンが多い曲などを選んだと話していた。
また下村氏は,この20年を振り返り「嬉しいこともしんどいこともたくさんあったが,こうしてファンの皆さんの顔を直接見られる機会が得られてよかった」と語っていた。
開発陣のトークコーナーには,野村氏と「キングダムハーツ」ブランドマネージャーの間 一朗氏が登壇した。最初の話題は,上記のオープニング映像について。野村氏とディズニーとのファーストコンタクトは1997年だったそうで,つまり披露されたプレゼン動画は今から25年前に作られたものだったという。なおこの動画は会場限定公開で,一般に公開する予定はないとのこと。
次の話題は「キングダムハーツ」シリーズについて。現在,同シリーズは派生を含めて13タイトルあり,累計販売本数が3500万本に上っているそうだ。その中でも,2021年9月時点で一番売れているのは「KINGDOM HEARTS III」で,670万本に達したとのこと。間氏は,「一番売れたということは,そこからシリーズに触れた人も一番多いということで,我々としては嬉しい限り」と感想を口にした。
ここでスマートフォンゲーム「KINGDOM HEARTS Union χ Dark Road」の最新トレイラーが公開され,8月に「Dark Road」のアップデートを予定していることが明かされた。このアップデートにより,「Dark Road」をオフラインでエンディングまで楽しめるようになる。ストーリーは大幅に加筆されているとのことで,野村氏は「皆さんが気になっていることの大半が解き明かされる」と説明していた。
続いて,各社から発売される20周年記念グッズが紹介に。すでに公開されている「KINGDOM HEARTS Tamagotchi」や「一番くじ KINGDOM HEARTS 〜20th ANNIVERSARY〜」,Zoffのアイウェア「KINGDOM HEARTS collection」に加え,SuperGroupiesから20周年記念モデル腕時計を筆頭に45種類のグッズが,サマンサタバサのプチチョイスから財布小物などのスペシャルコレクションがそれぞれ発売されるとアナウンスされた。
スクウェア・エニックスからも,20周年記念グッズが発売される。詳細はスクウェア・エニックス e-STOREの特設ページで確認してほしい。会場の20周年特別展示コーナーには,各商品が並べられていた。
今回,「キングダムハーツ」シリーズのモノグラムを和柄に落とし込んだ「和柄グッズ」も発売されるが,野村氏によると「いいデザインがたくさん上がってきたので,全部使いたいと思った結果こうなった」という。
また「KINGDOM HEARTS 20th ANNIVERSARY × 江戸切子 オールドグラス」は,江戸切子協同組合に加盟している工房職人と作り上げたことも紹介された。価格は1つ7万7000円と,ほかの江戸切子グラスと比較するとかなり高めだが,切り子の数が圧倒的に多いなど手が込んでいることが理由だという。とくに野村氏の希望で作られた黒いグラスは,かなりの技術を要するそうだ。
そのほか「ライトアップキーブレード <キングダムチェーン>」や「20th Anniversary オートマティック ウォッチ」「20th Anniversary クォーツウォッチ」も紹介された。
また,スクウェア・エニックスのオフィシャルショップ「ARTNIA」にて開催中の「KINGDOM HEARTS 20th ANNIVERSARY CAFE」の期間が,延長されることもアナウンス。延長期間の予約は,4月15日に開始される。
続いては,新作スマートフォンゲーム「KINGDOM HEARTS Missing-Link」のトレイラーが公開となった。「KINGDOM HEARTS Union χ」の最後に登場した「多層都市スカラ・アド・カエルム」や「エフェメラの像」が再登場し,「秘密結社のキーブレード使い」の話になるという。時代設定は,「Union χ」から「Dark Road」の間となるようだ。
画面は縦横両対応で,「キングダムハーツ」らしいアクションを最大6人で楽しめる。さらに現実の世界とリンクしたマップを探索してバトルをしたり,ゲーム内の世界を自由に歩き回って,世界中に設置されている「ピース」と呼ばれるアイテムを集めたりして,さまざまな強化をしていくという。こちらは2022年内にクローズドβテストを実施する予定だ。
ファンからの質問に野村哲也氏が回答
ファンから寄せられた質問に,野村氏が直接回答するコーナーも設けられた。以下の質問には,当日発表された新作を含め,今後シリーズを展開していく中で描いていくとの回答がなされた。
・デミックスは何者か
・「KINGDOM HEARTS Union χ」でプレイヤーがゼアノートの心に溶けたあと,ずっとゼアノートの中にいたのか
・「KINGDOM HEARTS II」でリクがカイリにキーブレードを渡すが,どこで手に入れたのか
・「KINGDOM HEARTS Union χ」の最後に,エフェメラはプレイヤーの真意に気づいていたのか
・アイザの顔の傷はいつ,誰に付けられたのか
・マスター・ゼアノートは,若い頃もそれなりに力があったように思えるが,なぜ若いうちにことを起こさなかったのか
「ノーバディのシンボルマークは誰が付けているのか」という質問には,「生まれながらに付いているが,人型ノーバディには付いていない」との回答がなされた。
「宇多田ヒカルさんの楽曲からインスピレーションを受けることは」という質問には,毎回,曲が上がってからオープニングムービーを考えているので,常にインスピレーションを受けているそうだ。
「ヨゾラ戦の勝敗でストーリーが分岐する演出にした理由」は,ヨゾラが非常に強いので,何度挑んでも勝てないプレイヤーのために,負けたときに何かあったほうがいいと考えたからとのこと。
「ナミネと賢者アンセムは,どのタイミングで出会ったのか」については,忘却の城からXIII機関もソラもリクも出ていって,ナミネだけになったときだという。プレイすれば察せられると思い,あえて描写しなかったそうだ。
「『KINGDOM HEARTS 3D』でリクが髪を切った理由」は,「リクの髪を切れ」というファンが多かったからだという。このように,どうしようか迷っている部分はファンの要望を採用するケースもあり,例えばロクサスとシオンの復活もそうだったという。
「マスター・オブ・マスターが姿を消そうとした『※』の世界の『※』とは」という質問には,「伏字」との回答がなされた。台本にはきちんと書いてあり,察しのいい人には分かるそうだ。
「『KINGDOM HEARTS Union χ』でエフェメラとスクルドが2人きりになったとき,データ世界から脱出したにも関わらず空にノイズが走っていた理由」は,データ世界も現実世界も崩壊に向かっていることを表現したエフェクトとのこと。ストーリー上の大きな意図はないという。
「闇に落ちることと,ハートレスになる(ノーバディが生まれる)ことの違い」については,前者は心が闇に落ちても心が残っているのに対して,後者は心が身体から抜けてしまうとの説明がなされた。
「マレフィセントが黒い箱の中身を予知書だと思っている理由」は,明確には明かしていないが,「KINGDOM HEARTS Union χ」にて「そうではないか?」と思える描写をしたとのこと。分かりにくかったようであれば,今後マレフィセントから何かいわせるかもしれないそうだ。
「『KINGDOM HEARTS III』で,リアがゼムナスにキーブレードを砕かれ,『キーブレードを失ったお前に〜』と言われるが,そのあともリアがキーブレードを使っている理由」については,完全に失ったわけではなく,「その場で破壊されて消滅した状態」との説明がなされた。仮に,その場ですぐアクセルがキーブレードを出したとしても,「また壊すので使えないぞ」というメッセージが込められているという。
声優陣と音響監督が語る「キングダムハーツ」シリーズ
ソラ役の入野自由さんとカイリ役の内田莉紗さん,そして音響監督の清水洋史氏が,「キングダムハーツ」シリーズの20年間を振り返るコーナーも設けられた。清水氏は,主にセリフ収録時の演出を手がけているとのことで,さまざまなディズニー作品が登場する「キングダムハーツ」シリーズでは1タイトルあたり100〜150体前後のキャラクターを扱うことになるという。
最初のオーディションに関しては,入野さんは覚えていないとのこと。一方,内田さんは海が大好きだったので,オーディションでデスティニーアイランドのシーンを演じられたのが印象に残っているそうだ。
リク役の宮野真守さんから寄せられた,ビデオメッセージも披露された。宮野さんは「キングダムハーツ」シリーズを「僕の人生を作ってくれた作品」とし,「声優として演じることの楽しさ,素晴らしさを教えてくれた」「世の中に知られるきっかけを作ってくれた」と表現。入野さんや内田さんと一緒だったことで,リクの役柄や立ち位置なども掴みやすかったとも話していた。また,リクの名ゼリフ「どうしたソラ? もう終わりか? だらしないな」や「ソラの友達でいられる」に触れ,リク自身をよく表していて,自分もお気に入りだという。
会場では,ソラやカイリの名ゼリフが映像とともに紹介された。入野さんは,成長に伴って以前のような声がなかなか出せず,リテイクを繰り返したエピソードを披露する一方,内田さんはずっと声が変わらないと称賛していた。
王様,ドナルド,グーフィーなど主要キャラクターの名ゼリフも紹介され,それらを見た清水氏は,当初「キングダムハーツ」シリーズとディズニーという,まったく異なるカルチャーのキャラクター同士にどうやって掛け合いをさせるか相当悩んだことを明かした。
さらに清水氏は,収録時に客観性を保つようにしているそうだが,アクセル役の藤原啓治さんの「おまえらが何度逃げようが,俺が何度だって連れて帰ってやる!」を収録したときだけは,感動したとも話していた。
最後に「KINGDOM HEARTS IV」が発表
イベントの終盤には,野村氏と間氏,Co.ディレクターの安江 泰氏が登壇し,シリーズのナンバリング最新作「KINGDOM HEARTS IV」をトレイラーとともに発表した。野村氏は,トレイラーの映像がすべてリアルタイムレンダリングであるとしつつ,最初に森の映像を観たとき実写だと思ってしまったエピソードを披露。また安江氏は,今回の映像はUnreal Engine 4を使ったが,検証の結果,製品版はUnreal Engine 5で開発を進めることが決まり,ライティングやディテールのクオリティが上がると述べた。
加えて野村氏は,ソラがリアル寄りになっていることに言及し,「あの世界だからこその表現」であり,いつもの感じのソラの表現もあると語った。
また「ダークシーカー篇」が前作で終わり,新たに「ロストマスター篇」が始まることに伴ってロゴが変更されたことにも言及。ただ,今後しばらく「KINGDOM HEARTS IV」の続報はないとのことだ。
さらに「KINGDOM HEARTS IV」と「KINGDOM HEARTS Missing-Link」のトレイラー双方のナレーションを担当した声優が同一人物であるとし,「それがどのキャラクターなのか推測してほしい」とファンの期待を煽っていた。ちなみにブレインではないそうだ。
イベントのエンディングでは,宇多田ヒカルさんからのビデオメッセージが披露された。宇多田さんは20周年を祝うとともに,自身ではRPGをプレイしないので「キングダムハーツ」シリーズにもまだ触れていないが,お子さんがゲームに興味を持つ年頃になったら一緒にやってみたいと話していた。
続いて,「キングダムハーツ」シリーズ 前ブランドマネージャーの橋本真司氏も登壇した。開発陣から花束を贈呈された橋本氏は,「『キングダムハーツ』の世界は今後も広がっていきます。皆さん,よろしくお願いします」とコメント。
最後に,登壇者を代表して入野さんと間氏が改めて「キングダムハーツ」シリーズが20周年を迎えたことを喜ぶとともに,来場者に感謝の言葉を述べた。そして野村氏が「水面下では着々と物事が進んでいます。『KINGDOM HEARTS Missing-Link』は長らく作ってきましたし,『KINGDOM HEARTS IV』もかなりすごいものに仕上がると思っています。次は25周年で皆さんのお目にかかれることを願っています」と述べて,イベントを締めくくった。
20周年特別展示「MEMORIES OPEN LOCKER」
会場には,「キングダムハーツ」シリーズにつながる思い出ということで,展示コーナーも設けられていた。具体的には台本やグッズ,フィギュア,レコード,そして原画などが展示され,一部は来場者が引き出しや扉を開けて見ることができるような演出が施されていた。
- 関連タイトル:
KINGDOM HEARTS IV
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