インタビュー
待望のリメイクとなる「ライブアライブ」時田貴司氏へのメールインタビュー。新要素を取り入れつつ“感情移入”はオリジナルと同じものを目指す
本作は,1994年9月にスクウェア(当時)がスーパーファミコン向けに発売した同名タイトルのリメイク版。オリジナル版は,原始時代や幕末,現代,近未来など,さまざまな時代を舞台にしたオムニバス形式の物語や,著名な漫画家7名※がデザインを担当したキャラクターなどが話題となった。
※原作は小学館との共同企画で,参加していた漫画家は青山剛昌氏,石渡 治氏,小林よしのり氏,島本和彦氏,田村由美氏,藤原芳秀氏,皆川亮二氏の7名
ファン待望のリメイク版は,「OCTOPATH TRAVELER」などでも採用されているHD-2Dグラフィックスや,オリジナル版にはなかったキャラクターボイスの実装などで,大きく生まれ変わることが明らかになっている。
7月22日の発売に向けて期待が高まる本作のプロデューサーを務めるのは,オリジナル版のディレクションを担当した時田貴司氏だ。4Gamerは時田氏へのメールインタビューの機会を得て,約30年ぶりとなる本作の企画が立ち上がった経緯や,開発のコンセプトなどを聞いた。オリジナル版開発時のエピソードもうかがっているので,じっくり読み進めてほしい。
「ライブアライブ」公式サイト
4Gamer:
「ライブアライブ」は,以前から移植やリメイクが熱望されてきました。オリジナル版のリリースから28年経った今,リメイクが決まった経緯を教えてください。
「OCTOPATH TRAVELER」や「トライアングルストラテジー」を制作している浅野チームに合流したことが大きなきっかけです。
そこで企画を模索する中,HD-2Dを使って「ライブアライブ」をリメイクしては? という話になり,遂に実現の機会が来た! と一気に動いていきました。
「オクトパストラベラー」のドット絵と3Dの新しい融合の仕方を見て,こういうアプローチがあったか! と,初めて見たときから注目していました。
4Gamer:
発表後の反応で印象深かったものを教えてください。当時,英語版が発売されていなかった海外でも反響があったようですね。
時田氏:
当日,リアルタイムでみなさんの反応を見させていただきました。熱く応援してくださっている方々を始め,本当に多くの方々が驚き,喜んでいただき,そして祝福してくださいました。
Twitterでもたくさんのリプライやお祝いのイラストをいただき,本当に感無量でした。
原作は海外で未発売でしたが,長く「ライブアライブ」を愛してくださる方々もいて,動画での反応など拝見させていただき,国内に負けないくらい熱烈に喜んでくださって感激しました!
4Gamer:
今回のリメイクにあたって,3Dグラフィックスではなく,HD-2Dを採用した理由を教えてください。
時田氏:
先に述べたように,浅野チームに合流したことが一番の理由ですが,ドットを活かしたHD-2Dならば,原作の雰囲気を継承しつつ,新たなアプローチの画面が創れると確信しました。
最初に中世編を作っていったのですが,「オクトパストラベラー」とはまた違ったエフェクトの使い方,特に空気感を作る煙などの描写で,さらに斬新なHD-2Dの絵作りをしようとスタッフたちと開発を重ねていきました。「ライブアライブ」は世界観も編ごとに違うので,色のトーンや3Dのアプローチなど,編ごとに個性的な方向性を打ち出してきました。
4Gamer:
リメイクにあたって,重きを置いている点,そしてオリジナルから変えたいと思っているところ,また,変えないつもりでいるところを教えてください
時田氏:
やはりオリジナル版の「体験」が一番重要ですね。僕は以前からRPGとは「どんな気持ちで戦うか」に尽きると思っていますので,オリジナル版でもその部分はこだわりました。声優さんのお芝居が入るからこその間にしつつ,感情移入の感覚は変えずに,というところが一番調整を重ねた部分です。
原作から変えねばと思った部分は,マップやバトルなど攻略全般です。当時のRPGは“やって考えてみてください”というスタイルでしたが,30年の間にゲームが進化した結果,UIを含めた分かりやすさ,遊びやすさが重要視されています。この部分は開発陣が本当に丁寧に工夫して実装,調整してくれています。
その中でも「ライブアライブ」といえばコレ! といったツボの部分は変えずに,テンポ良くメリハリの効いた遊び心地になっていると思います。
4Gamer:
オリジナル版になかったキャラクターボイスはリメイク版の特徴の1つになると思いますが,キャスティングや収録はどのような方針で行われたのでしょうか。
時田氏:
キャスティングは,僕がさせていただきました。原作開発当時のイメージ,昨今の声優さん,今までにご一緒させていただいた声優さん,「ライブアライブ」を遊んでくださっていた声優さんなど,オールスター感を意識しました。
とあるキャラだけ,オーデイションでキャスティングさせていただきましたが,こちらは追って発表させていただきますので,お楽しみに!
収録はコロナ禍の中行ったため人数制限も必要で,声優さん一人ずつ,制作陣もプロジェクトからは僕だけがスタジオに行き,ディレクションさせていただきました。
他スタッフはリモートで立合いさせていただく方式で,丁寧に,本当に時間をかけて収録しました。30年をかけて,素晴らしい声優のみなさんに演じていただき,収録時は毎回鳥肌が立つほど感動させていただきました。ご期待ください!
4Gamer:
かつてご自身が手がけたタイトルが生まれ変わっていく様子を見るのは,どんな気持ちでしょうか。
時田氏:
原作の開発に2年,発売から28年,合わせるとちょうど30年になります。
初ディレクションでやりたいことを可能な限り詰め込んで,仲間たちとがむしゃらに制作した「ライブアライブ」。当時は続編を制作できるほどヒットせず,悔しい思いをしました。
それからも何度かリメイクや続編企画にトライしましたが,なかなかハードルが高く断念してきました。
ですが,その間も遊んでくださった方々がSNSやゲーム実況で熱く語り継いでくださいました。みなさんに勇気をいただき,20周年を機に周年LIVEの開催や,バーチャルコンソールでの配信など,具体的なアクションを続けることができました。
そのうねりがあってこそ今回のリメイクは実現できました。制作,開発,声優さん,音楽のみなさん,関係各所のみなさん。「ライブアライブ」を愛してくださっているみなさんと一緒に遂に実現できたリメイクを制作できることには,こんな幸せがあったのかと日々感謝と感動をかみしめています。
クリエイターとしては,移植やリメイクよりも新しい作品にこだわってきたのですが,こんな思いができるとは……。
本当に「ライブアライブ」を愛してくださっているみなさんのおかげです。感謝と魂を込めて7月22日目指してお送りします!
4Gamer:
オリジナル版開発当時のお話も聞かせてください。企画が立ち上がることになった経緯はどのようなものだったのでしょうか。
時田氏:
「ファイナルファンタジーIV」を経て,「半熟英雄 ああ,世界よ半熟なれ…!!」が終了し,ゼロから自分の作品を創りたい! と思ったことが始まりでした。
当時ドラクエ,FF,サガ,聖剣とすでにIPとして確立しているRPGブームで,「クロノトリガー」もすでに始動していました。
「クロノトリガー」を仮想敵として,ではこちらはオムニバス形式で複数の世界を,キャラクターデザインも世界毎に違ったものを,と考えて小学館さんにご相談させていただき,素晴らしい漫画家のみなさんにキャラクターを描いていただきました。
単なるオムニバスではなく,その物語がどう集結するのかが勝負所だと,王道である中世編を軸に構成しました。
4Gamer:
オリジナル版開発時の印象深い出来事には,どんなものがありますか。
時田氏:
漫画家のみなさんが開発現場にいらっしゃって,制作中の画面を見て激励してくださったことは嬉しかったですね。スタッフ一同喜んで,そして熱いエネルギーをいただきました。
島本和彦先生と喫茶店で相談しながらキャラクターのラフを描いていただいたり,石渡 治先生の仕事場にお邪魔させていただいたことは鮮明に覚えています。
後は,みんな会社に泊まり込んでいましたね。自分の家に帰るのは週末くらいで,スタッフみんな20代でとにかく作りたくて仕方ない,そんな熱気にあふれていました。
仕事の合間(最中)に「ストリートファイターII」や「ファイヤープロレスリング」「ぷよぷよ」で熱く戦ったのも覚えています。
4Gamer:
オリジナル版は時田さんが初めてディレクションを担当したタイトルだと聞きましたが,開発を通して得られた経験・教訓などで,今でも役に立っているものはあるでしょうか。
時田氏:
当初予定していた発売時期が遅くなったことで,調整期間はたっぷり取れましたね。おかげで演出のタイミングなども細かいレベルで調整し練り上げることができました。
100点のパーツを積み重ねて制作するより,現場の担当が並走して制作,粗くともゲームとしてつなげ,全体を見て調整していく。当時の開発人数,ゲーム機のスペックもありますが,作品全体のうねりやメリハリを付けダイナミックにできる手法を体得できたと思います。
あとはプロデューサーとしては,発売時期の重要性ですね。「ファイナルファンタジーVI」と「クロノトリガー」の間,しかも「MOTHER2 ギーグの逆襲」の翌週発売というSFC後期の激戦に敗れ,シリーズ化ができなかったのは本当に大きな反省です。
とはいえ,だからこそ遊んでくださったみなさんが,その火を消さず語り継いでくださったことが今につながっています。
さまざまなコンテンツが,プロアマ,過去現在問わず溢れている現在だからこそ,作り手の熱い思いを貫いた作品こそがチャンスを得ることができると,長い時間をかけて改めて知ることができました。
4Gamer:
オリジナル版開発当時と現在で,ゲームの開発手法の変化も感じられているのではないでしょうか。
時田氏:
ゲーム機のスペックはこの30年で他に類を見ないほど進化を遂げていますよね。それに伴い,開発人員,制作期間,予算,仕事量などが莫大になっています。
ですが,ミドルウェアを始め制作環境の充実,それらを使いこなす若き優秀な熱い開発陣。彼らのおかげで今回のリメイクは僕の想像をはるかに超える作品に仕上がっています。
僕が原作を遮二無二作っていた30年前。若く熱いモノづくりへのパワーが大事なのは,今も昔も変わらないと実感しています。
4Gamer:
最後に,オリジナル版からのファン,「ライブアライブ」の名前は知っているものプレイの機会がなかった人たちに向けて,それぞれメッセージをお願いします
時田氏:
原作を遊んで,愛してくだっているみなさん。本当にお待たせしました! みなさんのおかげで今回のリメイクは実現することができました。
今回のリメイクは原作開発2年,その後遊んで,語り継いでくださったみなさんと30年かけて制作した作品です。本当にありがとうございます。感謝を込めまして,ボードゲームやブリキ大王プラモデル,アートブックレット付サントラ,ロゴバッグのコレクターズエディションも用意させていただきました。ぜひ7月22日,新たな,しかし変わらぬ熱さの「ライブアライブ」と再会していただければと思います!
そしてタイトルや「あの世で俺に詫び続けろ」は知っているが,遊んだことのないみなさん。毎日1編ずつ遊べるオムニバスの各編,そしてそれらが集結し紡ぎだされるゲームならではの衝撃の展開。現代のゲームとして遊びやすく新生した「ライブアライブ」の物語をぜひ体感してください。よろしくお願いいたします!
今後も続報にご期待ください!
「ライブアライブ」公式サイト
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Gosho Aoyama, Yoshihide Fujiwara, Osamu Ishiwata, Yoshinori Kobayashi, Ryouji Minagawa, Kazuhiko Shimamoto, Yumi Tamura