プレイレポート
「Voice of Cards できそこないの巫女」プレイレポート。アナログ感にこだわったシリーズ第2弾は,GMの速水 奨さんがシリアスな物語を紡ぐ
速水 奨さんのGMが,深く艶のある声で物語を彩る
2021年10月に配信された「Voice of Cards ドラゴンの島」は,カードやダイスを用いたボードゲームで遊んでいるかのような画面,そしてGMの語りでゲームが進むTRPG風の演出で話題を呼んだタイトルだが,これと同じシステムを持つシリーズ第2弾として発売されたのが,本作である。物語的には単体で楽しめるものなので,気になった方からプレイしても問題ない。
「できそこないの巫女」の舞台となるのは,精霊が住まう島々。それぞれの島には,精霊に仕える「巫女」とこれを護る「従者」がいて,彼女らの儀式が精霊と島を生き長らえさせている。しかし,主人公・バランが住む島には巫女がおらず,滅ぼうとしている。バランは島を救うため,ほかの島の巫女たちから力を借りることを決意。声を失った謎の少女・ラティ,自称精霊のラックとともに,島々を巡る航海に出るのだった。
「Voice of Cards」シリーズの大きな特徴は,有名声優がGMとなり,1人の語りでゲームを進めてくれることにある。キャラクターそれぞれに声優がキャスティングされてリアルな演技をする作品と違い,GMが情景描写からキャラクターたちの台詞までを,フラットな表現で賄う。本の朗読に近いといえば,イメージしやすいだろうか。それも「友達とTRPGで遊んでいる」ような独特の空気感を出すために,あえて素人っぽい演技となっている。
前作のGMは安元洋貴さんだったが,本作でプレイヤーを導いてくれるのは速水 奨さんだ。声優歴40年以上の大ベテランであり,ロボットアニメから乙女ゲームまで幅広いジャンルで活躍し続けている。その声には深みと艶があり,平坦な表現に徹しているとはいえ,何気ないひとことにも「何か裏があるのでは……」と勘ぐってしまう。詳しくは後述するが,キャラクターに意外な側面がある本作において,速水さんの起用は成功していると思う。速水さんを専属GMとして耳元で朗読してもらえるのも,そうそうない機会なので,ヘッドフォンでのプレイをオススメしたい。
カードをめくりダイスを振る
アナログ感溢れる演出
マップの地形からキャラクターまでが,テーブルの上に置かれたカードとして表現されているのも前作と同様だ。未踏破の地形カードは裏返しに置かれているのだが,マップ上で駒を動かしていくと,これがパラパラめくられて視野が広がっていく。
今回はバランの船で広い海を自由に動けるシーンもあり,こうした気持ち良さが強調されている。前作では,カードをめくる処理でゲームテンポがやや遅くなっているという声を受け,アップデートによって高速化オプションが追加されたが,本作では最初からこの機能を使えるのも嬉しいところだ。
マップはカードが並べられている。海原では,船の形のコマを動かす |
新たな街に到着。話しかける前の住民はシルエットのカードで表される。中央にある2枚のカードは闘技場だ |
「Voice of Cards」シリーズでは,リアルなカードでできることにこだわった表現が行われている。例えばとある沼のマップでは,カードが並べられたテーブルに雨が降っているのが面白い。不可能ではないが,カードが傷むため実際にはためらわれる演出も,デジタルなら簡単に実現できて雰囲気も盛り上がる。デジタルだからこそのアナログ風表現がユニークだ。
マップでイベントが発生した際,選択肢がカードで表現されているのも前作と同様だ。ボタンを少しずつ押すと,選択肢のカードをソロソロと引っ張り上げ,中身がチラ見えする。
個人的に面白かったのが,「航海していると海中から何かが飛び出して来た,さあどうする!?」というイベントだ。何が飛び出すかはランダムで,最良の選択肢はそれぞれ異なるのだが,下から勢いよく飛び出してくるカードをよく見ていると,実は何であるか分かる。
海中から「何か」が飛び出して来るイベント。品物が何かはランダムだが,カードが飛び出すとき一瞬だけ見えるようだ |
パーティが力を合わせて大岩を押す。メンバーも岩もカードで表現されていて,あくまでカードを手で動かしているかのように動く |
バトルシステムも前作と変わらず,ターン制のコマンド選択式だ。キャラクターやスキルはカードであり,状態異常やバフはカードにラベルが貼られる。そして,スキルを使う際のリソース「ジェム」は宝石として配られ,スキルの効果や成否は6面体や10面体のダイスを振ることで判定される。
今回は新要素として,2人が力を合わせる大技「連携スキル」が登場している。技がカードの動きで表現されているのはこれまでと同様だが,2人の合体技だけあって,より派手になっている。“2人が1枚のカードになって巨大な剣を振るう”“1人が敵に攻撃し,もう1人は後方から力を与える”“2人同時に闇の弾を放つと,これが合体して巨大な渦になる”などバリエーションに富んでいる。表現としては,あくまでカードがぴょこぴょこと動く可愛らしいものだが,それだけに想像力を刺激してくれるのだ。
バトルの基本はランダムエンカウント式だが,特殊なルールが適用されるイベントも存在する。「洞窟の出口を目指して複数のモンスターが動く中,パーティを限られた歩数で動かし,モンスターの脱出を阻止する」というボードゲーム的なもので,カードによる表現と合わせて,アナログゲーム感が楽しい。
前作の物語はコミカルな側面が強調されていたが,今回は結構シリアスである。巫女と従者たちはそれぞれに事情を抱えていて,意外な事実が明かされたり,ダークな展開があったりで驚くことも少なくない。サブイベントでも,良かれと思ってやったことが意外な結果を招くといった展開がある。
条件を満たすと,NPCやモンスターについて語るカードの裏面がアンロックされ,真の姿が分かるというシステムも健在だ。「イヤな感じのひとが実は……」と第一印象と中身が違っていたり,意外なオチが付いたりという感じで面白い。
基本的に本作は,「Voice of Cards」の新作として,違うシナリオを違うGMで楽しめるタイトルである。シナリオの雰囲気がガラっと変わったので,シリアスな展開が楽しみたい人には本作のほうが向いているかもしれない。
尖った部分が明確なシリーズであり,このままシリーズ第3弾,第4弾と続いていくことにも期待したい。
「Voice of Cards できそこないの巫女」公式サイト
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