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なぜ,今「アパシー」をリブートするのか。飯島多紀哉氏が語るシリーズの今後。実況できないゲームも制作中[TGS2024]
「アパシー」シリーズは,「鳴神学園」という高校を舞台に,そこから派生する物語を描く作品群だ。作品を越えて登場人物が顔を出したり,ストーリーがリンクしたりと,時代や環境を越えたつながりを見せる独特の世界観が特徴となっている。
2022年には「学校であった怖い話」などをベースにしたリブート作品「アパシー 鳴神学園七不思議」がNintendo Switch向けに発売され,そして2024年12月19日には新作「アパシー 男子校であった怖い話」の発売が予定されている。
飯島氏は,「アパシー」シリーズの始まりについて興味深い経緯を語った。「学校であった怖い話」は内容の性質上,規制が厳しく,本来載せる予定だった要素の多くがカットを余儀なくされたという。そこで,同人なら表現の自由度が高いのではないかという発想から「アパシー」シリーズが誕生した。全年齢を対象にしつつも,やりたいことを表現できる道を選んだわけだ。
当初はPC向けの同人作品として展開していたが,2010年代後半からユーザーの環境変化によって,PCソフトの売り上げが落ち込んでいった。そんな中,ゲームの販売や開発を手がけるメビウスから,コンシューマ機への参入を打診された。
飯島氏は当初,「アパシー」シリーズのコンシューマ展開には懸念を抱いていたが,試験的に短編ADV「送り犬」をリリースしたところ,予想以上の反響を得た。この成功を受けて,本格的に家庭用ゲーム機への参入を決意し,「アパシー 鳴神学園七不思議」の制作へとつながっていったそうだ。
しかし,コンシューマ機向けの全年齢対象作品となると,当然ながら表現の規制は避けられず,いろいろな葛藤があったようだ。また,当初は過去作のベスト版を出すことを考えていたという。これまで携わった「学校であった怖い話」から続く10作品の中から面白い話を選んで一本にまとめる計画だった。約100万文字,スーパーファミコンで出した『学校であった怖い話』と同等のボリュームを想定していたそうだ。
ところが,制作を進めていく中で,プロジェクトの規模は徐々に拡大していった。飯島氏は,ベスト版では自身が書いた物語が一本道で終わってしまうことに気付いた。昔は根幹シナリオを飯島氏が書き,スタッフが派生した選択肢を入れていく形だった。
つまり,飯島氏のシナリオだけをベスト版で出すと話の展開が一本道になり,ゲームとしての魅力が失われてしまうことになる。
「学校であった怖い話」のファンは膨大な選択肢に魅力を感じていたはず――そう考えていた飯島氏は,選択肢も含めてすべて書き直すという大胆な決断を下した。
その結果,「アパシー 鳴神学園七不思議」は飯島氏の作品の中でも最大のボリュームを誇る作品となった。ゲーム内の文字数は360万文字以上,選択肢は3000以上,エンディングは650以上という驚異的な規模だ。飯島氏は,この360万文字以上という数字が重複なしのものであることを強調した。選択肢を選んだ後のテキストが同じような場合はカウントしていないという。
リブートにあたっては,キャラクターの統一感にも細心の注意を払った。「学校であった怖い話」では,キャラクターにブレがあった部分もあったが,今回はすべて飯島氏自身がチェックしたことで統一感が生まれた。登場人物が生きているという感じを出すことにこだわり,多面性を大事にし,プレイを進めるにつれて深掘りされていくよう作り込んだという。
とくに「殺人クラブ」というシナリオは,そうした多面的なキャラクター描写が如実に表れている。このシナリオだけで60万文字という膨大な量となり,キャラクターの深みと物語の奥行きを存分に楽しめる内容となっているという。
続いて,2024年12月19日に発売予定の「アパシー 男子校であった怖い話」についても言及があった。これはリメイクの要望が多かった作品だという。最初は「アパシー」シリーズとは異なる世界観の作品にする予定だったが,メビウスとの話し合いの結果,第2弾として「男子校であった怖い話」を選んだという。舞台も当初の中野から茨城県水戸市,鳴神学園の近くに移動させ,シリーズとしてのつながりを持たせた。
「アパシー 男子校であった怖い話」は,これまでのシリーズとは一線を画す作品となる。飯島氏は,ほかの作品と違って完全に一本道のホラー映画のような体験になると語る。途中でいろいろと分岐はあるものの,「鳴神学園七不思議」が5分,10分で終わるショートストーリーの集大成だったのに対し,これは1話終わるのに何時間もかかるようなじっくりしたものになっているという。
男子校を舞台にした理由については,飯島氏自身の経験が大きく影響している。13年間男子校で過ごした経験から,男子校のほうが書きやすかったのだそうだ。ゲームに出てくる怖い話も実体験が元になっているという。ただ,そのままでは怖くないので,いくらか脚色して嫌な感じを出すように工夫したそうだ。
同人版と今回のリブート版の違いについても触れた。同人版では男子高校生のありのままをストレートに書いたが,今回のリブートでは全面的に書き直しを行った。規制されたのは主に日常会話の部分(とくに猥談)で,怖い場面はそのまま残したという。
さらに,「鳴神学園七不思議」のセーブデータがあると楽しめる特典シナリオについても言及があった。全10章以上あり,登場人物は50人にも及ぶという。
飯島氏はアイデアの源泉について尋ねられると,映画を年間1000本以上見ることもあるとし,そこから物語のパターンがストックされていき,それをどう組み替えていくかを考えるという。そのため,1日2日あればシナリオが書けてしまうという,驚くべき創作スピードの秘訣を明かした。
今後の展望についても興味深い話があった。「アパシー」シリーズは評判が良ければ第3,第4弾も考えているという。それとは別に,約35年前に手がけたあるRPGが近々発表になる予定だそうだ。
さらに,まったく新しい構想として,「ゲーム実況できないゲーム」というテーマの作品を考案中だという。ゲーム実況者がこの作品を見たら,まず間違いなく嫌な顔をするだろうと飯島氏は予想する。本当にこれを実況できるのか,それを自分に問うような斬新なシナリオだという。
この斬新なアイデアの背景には,ゲーム制作者と実況者の関係性への問題意識がある。制作者と実況者はどうしてもうまくいかない関係にあるという。制作者が多大な費用をかけてゲームを作っても,実況者がそれを使って制作者以上に稼ぐ時代になっている。しかし,飯島氏にとって最も大切なのは,ゲームを売ってくれるお店だという。ゲームを売ってくれる人がいるからこそ,制作者は生活していけるのだと強調した。
だからこそ,実況を見るのではなく,自分で遊ばないと分からない,そんな世界を取り戻したいという強い思いを込めて,この新作の構想を練っているという。こんなゲームも作れるんだという,面白い切り口に挑戦したいと,飯島氏は意気込みを語り,場を締めくくった。
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(C)Shannon.Developped&Published by mebius.
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◎はじめに このソフトは「アパシー 殺人クラブ」の製品版です。 この作品はフィクションであり、登場人物、団等は全て架空のものです。 ◎著作権 このソフトの著作権は「株式会社シャノン/飯島多紀哉」にあります。
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このソフトは「アパシー 学校であった怖い話 極」の製品版です。
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