プレイレポート
[プレイレポ]長い年月を経て初の単独ゲーム化。「UFOロボ グレンダイザー:たとえ我が命つきるとも」は,国境を越えたグレンダイザー愛あふれるタイトルだ
フランスからグレンダイザーに捧げられた愛
ゲームの原作となった「UFOロボ グレンダイザー」は1975年〜1977年に日本国内で放映されたTVアニメだ。人がロボットに乗り込む元祖巨大ロボットアニメ「マジンガーZ」,その続編である「グレートマジンガー」の流れを汲むシリーズ3作目の作品である。
「なぜ日本のロボットアニメをフランスのデベロッパがゲーム化するのか」と疑問に感じる人もいるかもしれないが,そこには「UFOロボ グレンダイザー」の高い海外人気がある。
1978年にフランスで「ゴールドラック」として放映された際は,脅威の視聴率100%を記録し,本作に影響を受けた「ゴールドラック・ジェネレーション」がフランスのオタク第一世代として,後の日本ブームを牽引していったという。この辺りの事情はCEDEC 2013で行われた講演のレポート(関連記事)に詳しいので,気になる人は一読されたい。同年にはイタリアで視聴率80%以上を記録。1982年からはイラクの国営放送も「グレンダイザー」を繰り返し放映して,好評を博したという。
2022年にはサウジアラビアの「ブールバード・ワールド」にグレンダイザーの立像が公開され,「世界最大の架空のキャラクターの金属製彫刻」としてギネス世界記録に認定されたのも記憶に新しい(外部リンク)。2024年には豪華スタッフによる新作「グレンダイザーU」の放映も予定されている(関連記事)。日本だけでなく,海外でも愛され続けているのが「UFOロボ グレンダイザー」であり,海外でゲーム化されても何の不思議もないことが分かる。
グレンダイザーはフリード星の守護神であり,支援UFOスペイザーとスぺイザークロス(ドッキング)することで多彩な状況に対応できる。
今年で放映49周年を迎える「UFOロボ グレンダイザー」だが,実は単独でのゲーム化は初めて。とはいえ「スーパーロボット大戦」シリーズの常連であるため,あらすじなら知っているというロボット好きも多いだろう。
本作は,物語の発端から第7話に相当する部分をゲーム化しているため,特に原作を知らなくてもストーリーを理解できるはず。ベガ大王のフリード星襲撃を冒頭に持って来るアレンジがなされているので,デュークとグレンダイザーのオリジンがより分かりやすくなっているのもポイントだ。
本作をプレイして驚かされるのは,あちこちに散りばめられたグレンダイザー愛である。ゲームのオープニングはアニメの前期オープニングを再現しており,「とべ!グレンダイザー」をバックに3DCGで再現された懐かしいカットが次々と展開するのだからたまらない。
ゲームの流れもアニメ1話分の流れを踏襲している。エピソードは大介が暮らすシラカバ牧場からスタート。兜 甲児にひかる,団兵衛や吾郎に番太といった皆と日常を過ごすなかで事件が起こり,グレンダイザーでの戦いとなる。話の流れもアレンジこそあれ,原作における同タイトルの回を踏襲しているのがディープである。
印象的な出撃シーケンスも,もちろん再現されている。大介は宇宙科学研究所の壁にあるシューターに飛び込み,グレンダイザーの格納庫へダイブ。「デュークフリード!」の掛け声で戦闘服姿に変身,そのままグレンダイザーに乗り込む。グレンダイザーがダムの水流を割って飛び出す様はスーパーロボットのロマンにあふれており,当時を知らない人でも胸が熱くなるはずだ。また,スペイザーとグレンダイザーが分離/合体する際の透視図表現も再現されていて,操縦席がクルクル回りながら移動するカッコ良さに痺れる。
戦闘モードは大別して3つのシステムが存在する。1つめは,甲児が乗った地球製UFO「TFO」での縦スクロールシューティング,2つめは,スぺイザーとグレンダイザーが合体した状態での3Dシューティング,そして3つめは,グレンダイザーを操作しての3Dアクションだ。さまざまなゲームモードが用意されている作りは懐かしいキャラクターゲームを思い起こさせるが,この辺りは意図的なゲームデザインだろう。
シューティング2種はプレイにエッセンスを添える存在。どちらも無敵になって敵弾を避ける緊急回避があるため,慣れていない人でも問題なくクリアできるはずだ。
3Dアクションモードの舞台は,広めの箱庭フィールドだ。あちこちにクエストが散らばっており,これをクリアしていくことでボスの円盤獣に迫っていく。スペイザーと任意に合体分離してフィールドを探索することはできないが,グレンダイザーのダッシュが速いため,ストレスを感じることはないだろう。
クエストはベガ星人の侵略に苦しむ人々を助けるものが多い。火災を消したり,医療機関のヘリを護衛したりする。クエストを通して,地球を守るスーパーロボットとしてのグレンダイザーとデューク像が強調されている。フィールドにはビルや民家も建っているが,グレンダイザーで突っ込んでも壊れない辺りも,こうした演出の一環だろう。
2Dシューティングと3Dシューティングが懐かしいシステムであるのと対照的に,3Dアクションモードのバトルはモダンなゲームデザインになっている。多数の敵を相手に立ち回り,状況に合わせてさまざまな攻撃手段を使い分け,時には敵の攻撃をギリギリまで引きつけて避けるという,現代的なアクションを楽しめるのだ。
グレンダイザーが格闘やダッシュ攻撃,ハーケンといった攻撃を当てると「エネルギー」が生成される。エネルギーを使えば,反重力ストームやスクリュークラッシャーパンチなどお馴染みの武器を使用可能だ。これらの武器はアクションゲームとしてのアレンジが加えられており,それぞれに使い道が異なる。
例えば,本作のダイザーパンチは当たった敵を掴んでそのまま地面に叩きつける投げ技だ。投げ中は無敵なうえ,叩き付けは周囲の敵を巻き込むので乱戦に有効だ。
反重力ストームは,食らった敵を浮遊させ無防備状態にする。盾を持った敵に当てて無防備にしたところを仕留める,敵に囲まれた際に安全を確保する,といった使い方が可能である。
ダブルハーケンは投げると回転しながらその場に留まり,多段ヒットする。グレンダイザー本体は自由に動けるため,耐久力の高い敵を回転に巻き込み,本体の格闘で追撃するような使い方も面白い。
スクリュークラッシャーパンチの威力は非常に高いが,発動前にタメが必要。そのため,出会い頭に使ったり,敵をダウンさせるなどしてタメの時間を確保したい。
エネルギーは耐久力を回復させる「自己修復」にも必要だが,自己修復が終わるまでグレンダイザーは無防備になってしまうため,無闇に使うことはできない。つまり,1対多のアクションゲームとしての立ち回りをしつつ,攻撃にも回復にも必要なエネルギーを配分しなければならないわけで,現代的なアクションゲームの作りといえるだろう。
バトルでは敵の攻撃を見切るのも重要である。グレンダイザーは前転して敵の攻撃を回避することが可能。タイミング良く前転すれば,周囲の時間が遅くなって反撃のチャンスが訪れる。そのためには攻撃をギリギリまで引きつけなければならず,なかなかにスリリングだ。
敵の攻撃をギリギリで避ければ,時間の流れが遅くなる
グレンダイザーの戦法を,さまざまな武器を使ったスーパーロボットの殺陣へ誘導する工夫もポイントだ。円盤獣の中にはバリアーで身を守っているものもいて,これを破るには指定されたタイプの攻撃を当てなければならない。複数のバリアーを張っていることも珍しくなく,自然とさまざまな武器を使うことになる。
加えて,反重力ストームの後にショルダーブーメランを使うといったように,攻撃を特定の順番でつなぐと威力がアップする。アクションゲームでは効率を求めて同じ武器ばかりを使いがちだが,本作ではゲームデザインによって多彩な武器を使ったスーパーロボットらしいアクションシーンが生まれるようになっている。
そして,敵にダメージを与えるなどして「サンダーゲージ」を一杯まで溜めれば,大技「スペースサンダー」を発動可能だ。射線上の敵に大ダメージを与える必殺技で,発動時にはグレンダイザーの周囲に岩くれが浮かぶ演出がカッコ良い。
ボス円盤獣との戦いは,円盤獣形態での殴り合いと円盤形態の高速移動を追う2つの局面のメリハリがある。激しい攻撃と回復に時間を要する仕様が相まってスリリングだ。ボスに攻撃を加えて紫色のゲージを溜めれば気絶するが,このゲージは時間が経つと減少してしまう。ボスの攻撃をかいくぐり,回復されないように立ち回るのだ。
最初のグレンダイザーは限られた武器しか使えないが,敵やフィールドのあちこちにあるカプセルから得られる素材を使えば,さまざまな武器や機能をアンロックできる。スペースサンダーやダブルハーケンといった武器はもちろん,回避の直後にエネルギー消費なしで高威力の追撃ができるハンドビーム,敵の耐久力に関係なく破壊する「トドメの一撃」など特殊な機能もあり,グレンダイザーがどんどん強くなっていく。カプセルの中には見つかりにくいものもあるため,探索も楽しい。
「UFOロボ グレンダイザー」が長年の時を経てゲーム化されるというのは思っても見なかった嬉しい出来事である。「スーパーロボット大戦」での客演も多いが,単独でのゲーム化はなく,近いようで遠い存在だったという人も多いはずだ。
故郷の星が滅ぼされた苦しみを乗り越え,地球のために命を懸けるデュークの気高さは時代を越えた魅力があり,本作をプレイすることで「UFOロボ グレンダイザー」の良さを再確認できるはず。キャラクターの絵柄が当時のままである辺りも原作へのリスペクトが感じられ,フランスでのグレンダイザー人気がいかに大きなものであるかうかがえる。
箱庭フィールドでの探索時にスペイザーを使えない,初期状態のグレンダイザーの攻撃力が低い(逆にハンドビームやトドメの一撃など,一通りの装備が揃うと一通りの装備が揃うとサクサク進む),高低差がある場所で敵がちょいちょい地形に埋まるなどの気になるところはあるが,ゲームを通してグレンダイザーへの愛がこれでもかと感じられる。
原作の序盤をテーマにしているだけに,残念ながらダブルスペイザーやドリルスペイザーといった支援機は登場していないが,エンディングが続編を作る気満々のものになっている辺り,パート2があればシステム面の改良と支援機の活躍を期待できそうだ。そして,2024年には最新作「グレンダイザーU」も控えている。本作をプレイして,放映に備えるのもいいかもしれない。
「UFOロボ グレンダイザー:たとえ我が命つきるとも」公式サイト
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UFOロボ グレンダイザー:たとえ我が命つきるとも
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(C)Dynamic Planning・TOEI ANIMATION, LTD. Is a licensing company established in April 1974 by Go Nagai, the original author of Mazinger Z, UFO Robot Grendizer and Devilman.
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