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「シンクロ」ストーリー制作陣にインタビュー。第3界層はここまでの総決算,選んできた積み重ねが本格的に絡み合う
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印刷2022/04/28 14:55

インタビュー

「シンクロ」ストーリー制作陣にインタビュー。第3界層はここまでの総決算,選んできた積み重ねが本格的に絡み合う

 セガのスマホRPG「シン・クロニクル」iOS / Android。以下シンクロ)に関して,ストーリー制作陣へのインタビューを行った。

 奈落や境界騎士団といった世界設定,その人自身が決断せねばならない運命の選択などは,果たしてどのような意図で作られたのか。
 今回は総合ディレクターの松永 純氏を含む,計4名に話を聞いた。

左から「シン・クロニクル」ディレクターの小林久志氏,総合ディレクターの松永 純氏
画像集#001のサムネイル/「シンクロ」ストーリー制作陣にインタビュー。第3界層はここまでの総決算,選んできた積み重ねが本格的に絡み合う

左からプランリーダーの高田暁子氏,ADVプランナーの西居氏
画像集#021のサムネイル/「シンクロ」ストーリー制作陣にインタビュー。第3界層はここまでの総決算,選んできた積み重ねが本格的に絡み合う 画像集#022のサムネイル/「シンクロ」ストーリー制作陣にインタビュー。第3界層はここまでの総決算,選んできた積み重ねが本格的に絡み合う

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物語はテキストだけじゃない


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。まずは新タイトルで心機一転としまして,松永さんも含め,おのおの自己紹介をお願いします。

松永 純氏(以下,松永氏):
 総合ディレクターの松永です。
 私はディレクターと言いつつ,主にメインストーリーの執筆や,シナリオシステムの設計をさせていただいており,全体を広く見るというよりは,「シン・クロニクル」で提示したいコンセプト部分の制作に深く携わらせてもらってきました。

小林久志氏(以下,小林氏):
 ディレクターの小林です。
 私は松永の補佐と,開発チーム内への指揮が主な仕事ですが,本日の主題であるストーリー関連のお話でいくと,物語構成の見せ方とバトルや育成などのゲームメカニクスをどう組み合わせるのか。いわばナラティブなRPG体験の計画・設計を担当しています。

高田暁子氏(以下,高田氏):
 プランリーダーの高田です。
 私はプランナー全体の統括と,シナリオやダンジョン,キャンプの構成など,メインストーリー制作に関わる全般を担当しています。

西居氏:
 ADV(アドベンチャー)プランナーの西居です。
 ドラマパートにおける演出の設計・監修,2Dイラスト素材の発注・ディレクション,それらの制作進行などを担当しています。

4Gamer:
 膨大なストーリーは一目で分かるとして,このゲームはいろいろと複雑な設計になっていそうですので,高田さんや西居さん,そしてプログラマー陣はとくに大変なのでは思いながら遊んでいました。

高田氏西居氏
 (笑)。

4Gamer:
 では話を進めて,シンクロの物語とはどういったものでしょう。

松永氏:
 シンクロはあらためて“王道ファンタジー”を多くの方々に楽しんでもらうべく制作させていただきました。とくに,自分自身が主人公として物語を切り拓いていく感覚を大切にしており,仲間とともに冒険をする感覚を味わいながら,ストーリーの節目で熱い「運命の選択」を体験できるというゲームになっています。
 また,その感覚を強く味わってもらうために,物語をテキストだけで表現するのではなく,画面演出やバトルも含め,ゲームプレイの全体を通して感じてもらえることを目指しています。

画像集#002のサムネイル/「シンクロ」ストーリー制作陣にインタビュー。第3界層はここまでの総決算,選んできた積み重ねが本格的に絡み合う

4Gamer:
 文字の物語ではなく,体験や画面も含めて表現すると。

松永氏:
 はい。コンセプトである運命の選択はとくにこだわっています。
 本作ではクライマックスの運命の選択で,「とてもじゃないけどどっちかなんて選べない!」といった緊張感と葛藤が感じられるようになっていますが,それはテキストによるストーリーだけでなく,そのシーンの熱い画面演出や,そこに至るまで運命のカギを握るキャラクターとともにバトルや冒険をしてきたことが,熱さにつながるように,いろいろな工夫をさせてもらっています。

4Gamer:
 なるほど。そんな物語を作るチームはどんな構造でしょう。

小林氏:
 大きく分けると,シナリオを執筆するチーム,プレイヤーさんにシナリオを読んでもらうためのゲームシステムを構築するチーム,そしてドラマパートの画面演出などをデザインするチームとなります。
 簡単に言うと,松永らが書き,それをもとに松永と私が指示をし,高田がシステムを設計して,西居が画面演出を作るといった流れです。

画像集#003のサムネイル/「シンクロ」ストーリー制作陣にインタビュー。第3界層はここまでの総決算,選んできた積み重ねが本格的に絡み合う

4Gamer:
 シナリオは何名で書いているんですか。

松永氏:
 メインストーリーに関しては,ここまで私ともう1人の計2名で書いていますね。そのほか,キャラクターごとのワールドクエストや,さまざまなシナリオ関連のテキストが存在しているので,シナリオチームとしてはもっとたくさんの人数がいます。

4Gamer:
 ディレクターがテキストを執筆するというのは,いやまあゲーム業界の裏話ではよく耳にする台所事情の例もありますが。
 シンクロでそうしている理由はなんでしょう。

松永氏:
 それはやはり,シンクロのストーリーがゲームシステムと深く絡んでいるためです。本作では自分なりのストーリーを体験してもらい,クライマックスにそこまでの物語が集約するような熱さを味わえるようにしていますが,それを実現するのはシステムを作りながらだったので,「こういう物語を書いてください」と誰かにお願いするのが難しくて。
 仕組みを共有するために私が第1界層を書き,そこで理解を得られたもう1人と第2界層を書き,といった流れで続けてきました。

画像集#009のサムネイル/「シンクロ」ストーリー制作陣にインタビュー。第3界層はここまでの総決算,選んできた積み重ねが本格的に絡み合う

4Gamer:
 「こう書いて」と頼んだところで,運命の言葉が関わる時事性の前後やシステム面を加味すると,そうするほかなかったと。
 ちなみに制作陣に伝えられている掟みたいなものはありますか。

小林氏:
 開発チーム内で意識してきたのは,シンクロのキーコンセプトとして皆さんに提示してきた“あなたが 結末を選ぶRPG”についてですね。
 ゲーム全体を通して主人公(=プレイヤー)の主観視点であることを守り,作中での一つ一つのアクションが「読み物を読んでいる感覚」ではなく,「自分が体験している感覚」として味わえるようにしたいと考え,そのための方法論を開発陣で長いこと練ってきました。

高田氏:
 ヘルドラは危機に瀕した世界で,境界騎士たちも奈落踏破という,誰も成し遂げたことのない片道切符の決死行に挑むとあって,作中では常に“死への意識”がまとわりつくようにしています。
 ですからメインストーリーのみならず,和やかに見えるキャンプストーリーやワールドクエストであっても,「帰ってきたヤッホー!」といった安息をそのまま描くのではなく,「今日が最後の日常かもしれない」といった心情を伝えられるよう,空気感に気を配っています。

西居氏:
 私の場合は,ドラマシーンの登場人物たちに“実在感”を与えてほしいと言われ,画面内のキャラクターの立ち位置や,キャラ同士の物理的な距離感をなるべく意識して調整してきました。そうした画面のすべてを使って,世界観を表現できるよう心がけています。

4Gamer:
 西居さんはなんて言うのか,ゲームプランナーには違いないんでしょうが,感覚的には「人物の表情や構図,カットをどうするのか」などを考える,撮影監督のようなお仕事にも聞こえてきますね。

西居氏:
 そうですね(笑)。「ここでカメラがグッと近づけて,距離感を縮めてドキッとさせる」みたいな考え方はよくしたりしています。

4Gamer:
 現状,物語に対するプレイヤーからの反応はいかがですか。

松永氏:
 とくに各章のクライマックスで起こる運命の選択で,どちらかを選ばなければならない葛藤を,皆さんなりにドキドキしていただけた感触があります。なかには「今までのゲームでは味わえなかった」という感想をいただくこともできて,我々が感じてほしかったことをきちんと受け取っていただけたことに,とてもうれしく思っています。


第1界層&第2界層は作ってみてどうです?


4Gamer:
 ここから,メインストーリーの中身について聞いていきます。
 序層については物語の立ち上がりとあり,説明よりも体験な部分かと思いますので,まずは先んじて「奈落」「黒の軍勢」「境界騎士団」など,世界観設定を作るにあたって考えたことを教えてください。

松永氏:
 先ほども触れましたが,死が身近な世界であることの緊張感をプレイヤーさんに感じてもらえるよう,設定を一つ一つ積み上げていきました。運命の選択というドキドキに相乗効果を生むのであれば,生命の危機というテーマはとても自然なので。
 目の前の困難があまりに強大で,危機感に迫られる。ひとたび油断すれば,いつでも命を落としてしまう。そして,そんな世界だからこそ,運命を切り拓いていく冒険に熱さと重みがある,ということを皆さんに感じてもらいたいと考えていました。

4Gamer:
 ストーリーと世界観,どちらが先に生まれたとかは?

松永氏:
 それで言うと,始まりはゲームシステムですね。
 先に挙げた「運命を切り拓く,熱さと重さ」をテーマに,最初に(今のシンクロのような)運命を選ぶシステムや構成を提案させてもらい,物語や設定はそこに必要なものを作っていった,という流れです。

4Gamer:
 へえ。そこはまさにゲーム屋さんっぽい。

松永氏:
 とはいえ,当初考案したシステムからだいぶ変わりましたが(笑)。

4Gamer:
 それもまたゲーム開発っぽく(笑)。
 運命の選択に至るまでの「運命の言葉」もゲーム進行のカギとなりますが,さまざまな場面に散りばめられている言葉の数々はいつ用意しているのでしょう。物語が先か,言葉が先か,的な意味で。

画像集#010のサムネイル/「シンクロ」ストーリー制作陣にインタビュー。第3界層はここまでの総決算,選んできた積み重ねが本格的に絡み合う

松永氏:
 シナリオ執筆と同時並行で,どちらかを先に作ってしまうということはあまりないですね。そのうえで,ストーリー上で少しずつ伏線が解き明かされていくのを楽しんでいただくために,「どのタイミングでどの言葉を出すか」を,プロットや初稿のタイミングで細かく調整しています。

4Gamer:
 プレイヤーにテキストを読ませるための工夫はしていますか。

松永氏:
 シナリオをなるべく多くの人に楽しんでもらえるよう,ドラマパートのシーンごとの文字量はできる限り減らし,文字を読むのではなく,ドラマを体験していると思える分量に抑える努力はしていますね。
 シナリオ執筆中も「ここは書ききりたい!」といった欲求を抑え,テキストボックス内の行数も「文章が3行だと話し言葉にならない」と考えて,意識して2行に絞っていたり。

4Gamer:
 シナリオの制作から実装までの詳しい流れも教えてください。

高田氏:
 まずストーリーのプロットが用意されたら,プランナー陣が章全体の構成やアートワーク,エフェクト,ダンジョン設計など,メインストーリーに必要な制作物の規模感を割り出し,各チームでやることを決めます。
 その後,ストーリーの本稿が完成したら,テキストを細かく割って,どのクエストでどのシナリオを公開するか,画面演出はどうして,バトルはどうするかを決めます。運命の言葉もこの段階で設定します。

4Gamer:
 ふぇー……複雑。

高田氏:
 そして一通り済んだら,最も大事な作業「全クエストに個々のテキストだけを設定して,実際に遊んでみるシナリオレビュー」をチーム全体で行います。このときにストーリーの流れやテキストの配置は適切か,バトルだけのクエストにも意味があるかなどを全体で確かめます。
 シナリオレビューをすると,チームメンバーから毎回100件以上の意見が集まるので,それをフィードバックし,さらに磨きをかけるんです。

画像集#011のサムネイル/「シンクロ」ストーリー制作陣にインタビュー。第3界層はここまでの総決算,選んできた積み重ねが本格的に絡み合う

4Gamer:
 なんていうか,シンクロにおけるストーリーのプロットは,そのままゲームの仕様書のようになる重要書類みたいな感じなんですね。

高田氏:
 まさにそうですね。シンクロは基本的に,シナリオとシステムをまったくの別ラインで作るという作品ではありませんので。

松永氏:
 シンクロのように「プロットを軸にシステムも順序立てて作る」という開発は,珍しいかもしれませんね。

高田氏:
 でも,第1界層と第2界層の制作は試行錯誤の日々でした。私たちのやり方が今のようになるまでにも,かなりの時間を費やしましたし。
 私や西居がプロット段階で作業量やその分担をちゃんと割り出せるようになったのも,ごく最近のことです。

西居氏:
 私の場合はそもそも,人生で初めて関わったプロジェクトがシンクロなので,自分の肌感を得られたのもサービス後のことでした。
 それでも高田などの各チームのリーダーが仲介してくれていたことで,ゲーム制作の見方も徐々に身についてきています。

4Gamer:
 運命の言葉と同じく,画面演出における「ここの表情は笑顔」「ここで倒れる」といった指示は誰がしているのでしょう。

高田氏:
 基本はシナリオ制作から指示を受けています。

松永氏:
 とはいえ,演出チームにお任せしている場面はけっこうあります。ストーリー中に挿入されるイベントスチルやムービーに関しても,西居たち演出陣がより最適な露出場面を考え出してくれたりするので,本当にみんながみんなと相談し合って,作っているイメージです。
 シンクロは物語1章分を作り上げるまでの工程がめちゃくちゃ長いこともあり,チームスタッフには日々感謝しています。本当に,たくさんの工夫が込められているので。

4Gamer:
 ほんと,トップダウンで作れるゲームではなさそうで。

松永氏:
 1人1人の努力を積み重ねてきたゲームですね。
 なのでぜひ,プレイしていただきたいです。

画像集#004のサムネイル/「シンクロ」ストーリー制作陣にインタビュー。第3界層はここまでの総決算,選んできた積み重ねが本格的に絡み合う

4Gamer:
 そんな努力の結晶について,ようやく中身に入りましょう。
 第1界層「辺獄の森」では,どんな物語を描こうとしましたか。

松永氏:
 第1界層では,本格的に奈落に踏み入った主人公たちが,同じ南方騎士団に所属する騎士隊のメンバー「ギュンター」と「アンネ」に出会います。意識した点は,主人公たちと同じ目線,同じ立場の騎士たちを描くということです。この世界がどんな場所で,奈落ではどういう戦いが繰り広げられていて,騎士たちはどのような人生を歩んで奈落にたどり着いたのか。ヘルドラにおける“身近な境遇”がどういった姿なのかを書かせてもらっています。それを通して,プレイする方々に,ともに戦う騎士たちを近くに感じてもらえればと思って書きました。

4Gamer:
 運命の選択までに見せるべきとしたことはなんでしょう。

松永氏:
 ギュンターとアンネは,この世界の等身大の騎士として描きました。それぞれ必死で生きて,戦って,この不条理な場所でなにかを取り戻そうとしている,そういうところを見てもらいたかったんです。
 そのうえで,すべてが等しく報われるわけではない戦いの厳しさを,クライマックスまでに表現したいと思っていました。

4Gamer:
 個人的に印象深いのは運命の選択以前,ストーリー中の選択肢もです。それらはなんとなく選ぶにも,セラに迫られてるときに「えー,この場面でクロエの肩持つ(選択肢を選ぶ)の気まずー……」みたいな。コミュニケーションのキリキリ感に常に襲われていた気がして。
 セラとクロエはけっこう容赦なくバチバチするので,中間にいるビスケがちょうどいいね……ってなる人は私以外にも多いだろうと。

松永氏:
 口は悪いものの,ビスケは癒やされますからね(笑)。

高田氏:
 そういった選択肢を手がけましたが,シンクロでは普段から「どっち選ぼう……」と選ぶのに悩んでもらえるようにしたかったからですね。それと選択肢が画面上下ではなく“左右に出る”のも,プレイヤーさんが無意識に正解・不正解を上下位置で判別しないよう,かつ返事の重みを並列化させるのが大切だろうと考えての表示形式です。
 選択肢がかすかに揺れるのも,天秤をイメージしてのことです。

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画像集#013のサムネイル/「シンクロ」ストーリー制作陣にインタビュー。第3界層はここまでの総決算,選んできた積み重ねが本格的に絡み合う

4Gamer:
 たしかに。上下だと「上が正解か」みたいな先入観が出るかも。

高田氏:
 選択肢の裏側にキャラクターを配置しているのも,どちらの選択がどちらの相手の肩を持つのか,視覚的に分かりやすいようにと配慮してのことで,UIも含めた演出面の作りにこだわりました。

松永氏:
 プレイヤーの発言だと分かるように,選択時に主人公のキャラクタービジュアルを表示させるのもその一貫です。
 テキストだけでカッコいい発言をさせると,場合によってはプレイヤー自身の心情が置いてきぼりになるので,なるべく「自分が言った」という体感を持ってもらうため,これらの工夫を丁寧にやってくれています。

4Gamer:
 では,第1界層でシンクロがやりたいことは提示できましたか。

松永氏:
 はい。一番大事なことが描けたと思います。

高田氏:
 私も,まるで違う形だった第1界層を今の構造になるまで何度も作り直してきて,物語と冒険が一つにつながった完成品を遊んだとき,シンクロが目指す体験というものをようやく実感できました。ギュンターやアンネ,運命の選択などの要素は当初から存在していましたが,そこにたどり着いたときにドキドキできるか,自分でも分からなかったんです。
 けれど「最後の選択肢で,好きなキャラが違う選択を推している」のを見て,ああそっちいっちゃうんだ……と葛藤しまして。2回目のテストプレイで別のキャラをパーティーに入れて遊んだときも,キャラへの想い入れも変わるせいか,1回目とはまったく別の感情が沸いて。これが,自分なりの仲間と歩んで決断する物語なんだなと分からされましたね。

4Gamer:
 私もギュンターとアンネ,目の前の脅威と対抗策に悩まされましたが,最後は「ギュンターの絆アビリティが1個多い」が決め手でした。

松永氏:
 そういった人それぞれの葛藤で選んでもらうのが目標でもあったので,ありがたいです。2人のキャラクターの生き様,ゲーム的な性能,2人以外のキャラクターの関り方など,たくさんの理由で迷えるのが,本作の魅力だと思っています。

4Gamer:
 続けて,第2界層「俯仰の断崖」についても。
 こちらの物語ではなにを描こうとしたのでしょう。

松永氏:
 第2界層でも主人公たちと同じ立場の探査騎士隊を登場させましたが,ここからは亜人の少女「ステンノ」を中心に,騎士団のなかでも主人公たちとは異なる出自を持つキャラクターたちを登場させ,この世界における異なる価値観や信条を感じてもらえるようにしています。
 端的に「境界騎士団にはいろんなヤツがいるんだな」と思ってもらい,人類の立場や多様性を知ってもらって,そのうえで自分はなにをすべきかを選ぶ……という流れです。

4Gamer:
 奈落のロケーションもガラッと変わりましたね。

松永氏:
 はい,新たな冒険を感じてもらえるよう,舞台も毎回ガラッと変わりますので,そのあたりは今後もご期待ください。

4Gamer:
 2人に1人を選ぶ第1界層と違い,第2界層はステンノに集約しています。選択という行為の解釈として,対象は1人だが二つに一つを選ぶ構図だったなと。対象を狭めながら幅を広げてきたという感じで。

松永氏:
 プレイヤーの皆さんにステンノの内面を深く知ってもらったうえで,最終的に彼女の生き方にどう答えるのか。同じキャラクターでも選択の重さや熱さがあるようにというのを目指しました。
 第2界層は物語のボリュームも増していて,その中心に「ステンノ隊」と「バグ隊」がいますが,クライマックスに至るまでの道中も登場人物を増やしただけにとどまらないよう,ステンノが抱える過去や,そこから垣間見える世界の理不尽さ,それでいて主人公は彼女に対する大きな決断をしなければならないという,第2界層なりのチャレンジをしています。

西居氏:
 第1界層と比べて,第2界層は衝撃的なシーンが増えたため,私もそういった場面をより魅力的に描くためにどうしようか悩みました。
 ステンノの事情が明かされていくにつれ,画面上でも心情の距離感の変化を描けるよう,葛藤や後悔が表情に映り出されるよう,「もっと悔しそうな顔にしたいんです」と相談させてもらったりして。

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4Gamer:
 私は片方の選択しか存じませんが,ステンノの運命の選択はショッキングなだけの結末にはしない,といった意図はありましたか。

松永氏:
 はい。そこはすべての運命の選択でそうしたいと考えています。プレイヤーさんに意志を持って選んでもらったからには,悲劇だけでなく,前に進むためのなにかも必ずあるようにしたいと思っています。

4Gamer:
 逆に言うと「Aはハッピーエンド,Bはバッドエンド」といった,極端に良しあしがハッキリするような構図は作らない?

松永氏:
 そうですね。どちらの結末もあり得た,と思ってもらえることも大切だと思っているので,そういう極端なものはあまり考えていないです。

小林氏:
 シンクロでは個人の体験として悩んでもらいつつ,ほかの人と比べたときに「私はAだった」「俺はBだった」と,意見が分かれる面白さも提供したかったので,選択の内容に葛藤を持たせられるかは重要でしたし,できるだけ50:50の分布になることも目標としています。
 それだけに,どちらの選択でも得るものがあり,失うものがある。システムとしても着地点としてもこれが最善な構図だと思っています。

4Gamer:
 運命の選択の集計データは特番などで発表してくれるものとして。開発・運営的に「50:50になりそうな選択肢」が最善なんですね。

松永氏:
 とはいえ,選択の状況にもっとバリエーションは作っていきたいので,いろいろな形のクライマックスを今後も考えていきたいですね。

高田氏:
 運命の選択後についても補足しておきたいのですが,それらの結果はワールドクエストや次の界層のキャンプなど,さまざまななシーンで反映されます。各界層のキーキャラクターのワールドクエストは,対象のメインストーリーをクリアすると開放されますが,そのとき,運命の選択の結果もシナリオに反映されるようになっています。
 例えばギュンターとアンネのどちらを選んだかで,「アルカン」や「テレーザ」たちのワールドクエストも内容が変化します。第2界層のキャンプでは,ギュンター隊の仲間である「アルス」「モモ」の内容も変化しているんです。選択の結果は“次のステップに入ってから”強く体感してもらう作りにしているので,ステンノに関する結末も人それぞれかと思いますが,第3界層ではぜひ煩悶していただければと思います。

4Gamer:
 現状,レアム隊が奈落を進むことで本筋を達成しつつ,物語の視点自体はゲストキャラクターに寄っていますが,当面はこの形式ですか。

松永氏:
 そうですね。これからも多くの魅力的なキャラクターが,メインストーリーに登場していきます。もちろん,セラやクロエが抱える謎や,大きな物語もどんどん描かれていきますので,ぜひご期待ください!


開発はすでに第7界層まで着手


4Gamer:
 ちょうど話題に挙がったメインストーリー新章「第3界層」ですが(本日2022年4月28日に実装),こちらはどんな内容になりますか。

松永氏:
 これまではレアム隊を含む南方大騎士団が中心の物語でしたが,第3界層では新たに「北方大騎士団」と遭遇し,大騎士団ごとの毛色の違いを描いていきます。シナリオのテイストもシリアスさは保ちつつ,この章はかなりヒロイックというか,熱くなれる内容に仕上げているので,味の違いをぜひ体感してみてください。
 それとキャラクターのほか,ダンジョンにも新たな工夫を取り入れているので,ゲーム攻略の部分もぜひ楽しんでいただければと思います。

■第3界層の登場人物たち
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■聖騎士を守る衛士「リザ」
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■寡黙なイケメン騎士「ジュリアン」
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■聖盾エイギスを操る聖騎士「ソフィア」
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■ケンカ上等のヤンチャ騎士「フレイヤ」

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[2022/04/27 12:00]

4Gamer:
 ストーリーは付帯物が半端ないので,大型アップデートレベルの作業になりそうですし,更新頻度はやはり2か月間隔の想定ですか。

松永氏:
 はい,続く「第4界層」は6月末の実装予定としています。
 一応,開発自体はすでに第7界層のプロットを制作し,第6界層はシナリオが完成といった進捗ではありますが,やはりテキスト以外のキャラクターやダンジョンなど用意するものがたくさんあるため,お届けするまではまだしばらくかかりますね。

4Gamer:
 第7界層なんて内容も想像できず。あと,シンクロではイベントストーリーの提供が控えめですが,このあたりはいかがです。

松永氏:
 すでにメインストーリーを最深部までクリアしているプレイヤーさんも増えてきており,酒場で仲間になった他のキャラクターの背景を知りたい……という声も多く寄せていただいたので,追加の外伝ストーリーを5月以降に予定しています。
 メインストーリーとは異なる切り口で,この世界に住むさまざまなキャラクターたちの生き方をお見せできればと思っています。

4Gamer:
 では,まずは第3界層から着々と挑みます。

小林氏:
 「運命の選択」の重大さを感じてもらうには,選択肢の重みの源,つまりキャラクターへの愛着が不可欠です。なのでシンクロはシナリオテキストはもちろん,ほかにも「ダンジョンの探索」「戦いでの連携プレイ」「夜のキャンプで冗談を言い合う場面」など何気ない過程の集積で,少しずつ仲間への愛着が増していく構成にしています。これまでの旅路で「ギュンターやアンネ,ステンノがだんだん好きになってきた!」と感じてもらえていたら,そこはうまくいったのかな……と思います。
 第3界層もまた,新たな仲間と出会い,ともに旅をします。彼らが主人公たちとどんな絆を結び,そしてどんな運命に見舞われるのか。ぜひプレイして味わっていただけますと幸いです。

4Gamer:
 かしこまりました。
 それでは最後に,今後の意気込みを1人ずつお願いします。

高田氏:
 第3界層,続く第4界層では物語体験の深さをよりブラッシュアップしていきたいと考え,「ダンジョンの行き先次第でストーリーも変化する」といった試みにもチャレンジしていきます。いわば“プチ運命の選択”みたいなものですので,そちらもぜひ楽しんでみてください。

西居氏:
 第3界層では,これまでに見られなかった演出を導入したり,今までにいなかった異質な登場人物が現れたりと,プレイヤーの皆さんを驚かせる新しい体験が次々と起こっていきます。
 私たち演出チームも,それらをどのように表現し,いかに驚きを伝えられるかに尽力しましたので,ぜひ遊んでいただきたいです。

小林氏:
 私たちにとって第3界層は“ここまでの総決算”でして,開発・運営としてやりたかった「多様性のある分岐」を表現すべく,これまで積み重ねてきた運命の選択をさらに色濃く反映するターンとなります。
 コンセプトである「あなただけの物語」が,いよいよ顕著になっていくのが第3界層からですので,ギュンターがいる世界,アンネがいる世界,自分自身にしか見られない物語を味わいつつ,自分では見られない他者の展開も想像しながら,新たな冒険を楽しんでください。

松永氏:
 ここまでに体験してもらったドキドキはもちろん,運命が積み重なっていった先で見られる物語をぜひ味わってもらえたらと思っています。第3界層はもちろん,鋭意制作中の第4界層も第5界層も,魅力的な物語になっていますので,ぜひ楽しみにしていただければと思います。
 そして未プレイの方々,シンクロは新章が加わったことで,さらにしっかり楽しめる内容になりました。どの章も心に残る熱いクライマックスを用意しておりますので,ぜひプレイしていただけたらうれしいです!

4Gamer:
 第2界層までで助走が終わったと。
 今後の展開,さらに楽しみに待たせてもらいます。

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