プレイレポート
[プレイレポ]キム・ヒョンテ氏率いるSHIFT UPの最新作。「Stellar Blade」は,幅広いACTファンを受け入れるゲームデザインにも注目
「マグナカルタ」(2004年)や「ブレイドアンドソウル」(2012年),「勝利の女神:NIKKE」(2022年)などの話題作を手がげてきた韓国のゲームクリエイター,キム・ヒョンテ氏と同氏が率いるSHIFT UPが初のPS5用タイトルとして開発を進めてきた本作。2019年に「Project EVE」のコードネームで発表された話題作が,「Stellar Blade」と改められ,いよいよ発売を迎える。
3月29日には,序盤をプレイできる体験版が配信され,主人公「イヴ」のフェティッシュな美しさと,ハードな手応えのアクションとのギャップを楽しんだ人も多いのではないだろうか。
本稿ではその体験版の内容を踏まえ,製品版で味わえた本作のさらなる魅力についてお伝えする。
[プレイレポ]「Stellar Blade」体験版インプレッション。運命の戦いに身を投じる“天使”イヴの物語を描く,高難度アクションRPG
キム・ヒョンテ氏のSHIFT UPが開発を手がけるPS5タイトル「Stellar Blade」が,2024年4月26日に待望の発売を迎える。それに先駆け,3月29日に体験版が配信される。近未来の荒廃した地球を舞台に繰り広げられる高難度アクションの序盤をプレイできるものだ。一足先に体験できたのでインプレッションをお届けしよう。
「Stellar Blade」公式サイト
人類最後の都市「ザイオン」にたどり着いてからが本作の真骨頂
配信中の体験版は,コロニーから派遣されたイヴら第7空挺部隊が地球へと降下し,正体不明の生命体「ネイティブ」と戦う導入部分からスタート。地球で生きていた回収屋の「アダム」によって助けられたイヴが,人類最後の戦場となった「エイドス7」を探索し,立体駐車場の屋上で遭遇するボスネイティブの「アバドン」を倒すまでをプレイできた。
製品版も序盤の展開やゲームシステムは基本的に同じ。アクションなどについては体験版のインプレッション記事で触れているので,そちらをご覧いただきたい。
第7空挺部隊の隊員のひとりとして地上に降り立ったイヴ |
体験版で対峙するネイティブのアバドン。ここまでの展開は製品版でも基本的に同じだ |
イヴが地上に降りてきた目的は,全ネイティブの殲滅だ。そのため彼女はアダムと協力関係を結び,地上の各地を巡りながら,目的を果たすための旅を続けていく。
ゲームはネイティブたちが跋扈する特定の広いマップを探索をしながら,次の目的地へと向かう流れで展開するのだが,いくつかの場所を経てたどり着く人類最後の都市「ザイオン」では,その流れが大きく変わっていく。
アダムとリリーといった2人の仲間とともにたどり着いたザイオン。住人の姿はまばらだが,物語を進めると少しずつ様子が変わっていく |
ネイティブの侵攻から逃れた人々が住むザイオンは,人の気配がしなかったこれまでのマップとは雰囲気が一転する。そしてコロニーから降りてきたイヴを「天使」と呼ぶ住人たちは,彼女に対して何かしらの依頼をしてくることがあり,それがマップの探索と並行して進められるミッションとして提示されるのだ。
ここにやってきたのを機に,ある程度自由度のあるプレイスタイルが開放されるわけだ。そしてストーリーにおいては,これまで自身の使命のために行動していたイヴの心境の変化や,仲間以外のキャラクターと絡む彼女の物語も見どころとなるだろう。
ザイオンでは,人々からサイドクエスト的なミッションを依頼されることも |
ザイオンを中心とした世界観は,アジアを舞台としたサイバーパンクと終末世界をかけ合わせたようなイメージで,街中を歩いているだけでワクワクする。ここに来るまでは,常にネイティブと遭遇する緊張感もあったので,マップ上にあるキャンプ以上にホッとする場所でもある。
ザイオンから直接行ける「荒野」は,それまでの閉ざされた構造のマップとはずいぶんと雰囲気が異なる。セミオープンワールドの広大な台地が広がっていることもあり,ゲームプレイの手応えもひと味違ってくる。マップ上にはさまざまな仕掛けが存在しており,動き回っていれば何かしらの発見があるだろう。スキャンの範囲も限度があるので,探索のし甲斐もあるはずだ。
もちろんネイティブも多く存在するのだが,閉じられた場所とは異なり,戦っても戦わなくてもいいのがポイント。倒してもキャンプで休めば敵が復活する仕組みはこれまでと同じなので,鍛錬や経験値稼ぎにも向いている。
遙か遠方まで見渡せる荒野のフィールド。探索をしていると,いろいろなものが見つかる |
荒野以外にもセミオープンワールドのマップは存在し,さらに雰囲気の異なるマップも登場する。マップによって戦いや探索の仕方も変わってくることもあり,クリアまで飽きることなくゲームを進められるのではないだろうか。
ネイティブも無数に登場する。複数を相手にしなければならないこともあるが,周囲が開けている地形であれば逃げるのもたやすい |
こちらは中盤で訪れる砂漠のフィールド。砂嵐や流砂がイヴの行く手を阻む |
イヴをプレイヤー好みのアクションスタイルへと育てていく楽しさ
主に戦闘で活躍するイヴのアクションは,片手剣ブラッドエッジによる強弱のコンビネーションや,ジャストパリィ&ジャスト回避,ベータエネルギーを消費して繰り出すベータスキル,アクティブスキルのブリンクなど。
これらのアクションに関わるイヴの戦闘能力は,装備や身に付けたスキルによって大きく変わるので,アクションの腕前やプレイスタイルなどに合わせて楽しめる。
髪飾りが変化したブラッドエッジがイヴのメイン武器。戦闘で溜まっていくベータエネルギーを使用することで,強力なベータスキルを繰り出せる |
装備には「エグゾスパイン」と「ギア」の2種類がある。エグゾスパインは,イヴの戦闘スタイルに影響をもたらすもので,攻撃系ならコンビネーションの強化やダメージを減少させるものなどがある。
ステルス戦闘や遠距離攻撃の強化,ジャストパリィ&ジャスト回避がしやすくなるなど,特定の戦闘スタイルに特化したものも存在し,それぞれ3段階まで強化できる。
装備することでパッシブスキル的な力を得られるエグゾスパイン。道中で入手し,素材を使って強化することで効果が増える。2個まで装備可能 |
ギアは,イヴの特定のパラメータを上昇させるもので種類も豊富だ。こちらは,道中で入手できる素材で開発や強化を行える。
攻撃面を集中的に強化すれば敵を素早く倒せるメリットを得られる。代わりに防御が薄くなるが,そちらは回復アイテムでカバーすればいいだろう。
逆に防御を強化すれば回復アイテムを使う機会が減るので,持久力のある戦いが可能となる。もちろん攻守をバランスよくセットしてもいいが,ギアの装備ソケットが限られているのが悩みどころだ。また,これらの装備は戦闘中には変更できないということも頭に入れておきたい。
攻撃力や防御力,スピードなどを上げるギア。こちらは4個まで装備可能 |
装備とは別にスキルもセットできる。戦闘によって得られるSPによって取得できるもので,身に付けてしまえばいつでも使えるものだ。アクションや攻撃手段に直接影響するものが多く,最初に選べるカテゴリーは3つ。ゲーム進行に準じて5つまで増えていく。
スキルツリー。戦闘に限らないアクションもあるが,一部は条件を満たさないと身に付けられないものもある |
ゲームを中盤まで進めていくと,合流したエンジニア「リリー」によってイヴに遠距離攻撃の手段が追加される。こちらは同行するドローンを装備し,射撃モードに入り銃撃を行うもの。遠距離から敵にダメージを与えられるが,発射には専用の弾丸が必要となる。
射撃モード中は動くのが遅くなるという大きなデメリットもある。しかしメインの攻撃手段ではないものの,遠距離攻撃に関連する装備やスキルも存在し,さらには射撃に特化したエリアも存在する。
お供のドローンが腕に装着され銃器になる。弾丸は性能が異なるものが5種類あるので,用途によって切り替えて使用する |
体験版のノーマルモード(デフォルトの高難度よりの設定)をプレイした際は,本作の難しさを痛感した筆者だったが,製品版をある程度プレイしたところ,その印象が大きく変わった。
先に進むことでプレイヤーが行える選択肢が増えていき,最初は先に進めないと思った場所も,いろいろな手段を試して突破口を見つけ出したくなる。その流れが実に面白く,また強敵を倒したときのときの達成感もカクベツなのだ。
アクションが苦手な人は難度を抑えたストーリーモードで進めてもいいが,アクションアシスト機能で敵の攻撃パターンを理解し,2周目はノーマルモードに挑んでみるというのもいいだろう。
ストーリーモードのアクションアシスト。敵の一部の攻撃に対して,うまく対応できるボタンが表示される。間に合うタイミング内に指定のボタンを押せば,該当するアクションを繰り出せる |
キム・ヒョンテ氏のセンスと好みが随所に盛り込まれ,アクションアドベンチャーとしての魅力を引き立たせる
イラストレーターでもあるキム・ヒョンテ氏。キャラクターをより輝かせるデザインセンスや演出はさすがで,その筆頭となるイヴは,アップになったときの表情や肌の質感,全身のプロポーション,そしてアクション時の身体の動きにまで強いこだわりが見られる。近年のCGキャラの流行りのルックスに寄せすぎていないのも好感が持てるところだ。
体験版では,ゲーム中に常に見せているバックスタイルにプレイヤーからの評が集まったイヴ |
とあるミッションをこなすと,イヴの髪型を変えることも可能になる |
イヴが作中で着用している「ナノスーツ」は,ストーリーや性能にまったく影響しない外見を変えるだけのコスチュームだ。しかし,新たなものを手に入れたときは,何よりも早く着用した姿を見たくなるのも,本作ならではの魅力だろう。
また,ゲーム途中で仲間になるリリーは,イヴとは対象的な可愛さを持っているので,個人的には注目していきたい。
設計図と素材でクラフトができるナノスーツ。見た目が変化するだけだが,とても大事。リリーやアダムの着衣もある |
リリーはショートカットで青い瞳の女の子。イヴたちよりも先に降下した第5空挺部隊のサポートエンジニアで,ドローンを改造して銃器に変形できるようにしてくれる |
美しい主人公が織りなす物語は想像以上にハードだ。さらに出会う人々とのミッションもドラマチックに描かれており,プレイ時間を忘れて,先の物語を見てみたくなる衝動にかられる。翻訳や演者のキャスティングも堅実で,さらに設定言語に合わせてキャラクターをリップシンクさせているという演出も高く評価したいところだ。
会話時のリップシンクは,言語によって変えているという(リリース時は3言語に対応) |
本作を開発するにあたりディレクターのキム氏は,木城ゆきと氏のコミック「銃夢」や,スクウェア・エニックスの「NieR:Automata」など,日本のエンターテインメント作品からも大きなインスピレーションを得たことを公言している。
実際にプレイしてみると,確かにそれらの影響を感じられるところもあるが,劇中のあらゆるところにキム氏ら開発陣のセンスが光っていて,筆者はそちらのほうに強い魅力を感じていた。
やり込み要素も充実。これはコレクションの「缶」で,集めるといいことがある |
アクションアドベンチャーを愛するすべてのPS5ユーザーに,イヴという“天使”が紡ぐ物語をぜひ体験してほしい。
「Stellar Blade」公式サイト
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