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「セインツロウ」プレイレポート。おバカで爽やかなスタートアップ物語を描く本作で,オープンワールドクライムアクションの魅力を再確認
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印刷2022/09/10 10:00

プレイレポート

「セインツロウ」プレイレポート。おバカで爽やかなスタートアップ物語を描く本作で,オープンワールドクライムアクションの魅力を再確認

 2022年8月23日に発売された「セインツロウ」PC / PS5 / PS4 / Xbox Series X / Xbox One)は,クライムアクションの名門シリーズがリブートされた最新作だ。本作では,犯罪都市「サント・イレソ」で成り上がりを目指す,主人公「ボス」と仲間たちの姿が描かれる。オープンワールドを気ままに暴れる,ジャンルの面白さを再確認させてくれるゲームだ。

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ブラックユーモアとおバカな展開の「セインツロウ」がついにリブート


 「セインツロウ」シリーズは2006年から続く,オープンワールドのクライムアクションゲームで,ブラックユーモアとおバカな展開で他作品との差別化を続けたシリーズだ。後期作では主人公が大統領になったり,地獄で戦ったりと,その悪ノリっぷりもエスカレートしていった。
 今回の「セインツロウ」はリブート作と位置づけられており,これまでの歴史を知らなくても単体で楽しめる作品へと生まれ変わっている。2000年代に流行したクライムアクションゲームというジャンルをリブートによって現代に問い直すとでも言うべき内容で,このジャンルが好きな人ならたまらない作品と言えるだろう。

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 本作の舞台となるサント・イレソは,さまざまな勢力が入り乱れる無法地帯だ。力と車を信奉するマッチョ集団の「ロス・パンテロス」,物質文明を憎み犯罪を繰り返すアナーキスト「アイドルズ」,街の治安を過激な手段で維持する「マーシャル防衛産業」が入り乱れ,己が利益のために暴れ回っている。

サント・イレソに入り乱れる勢力の1つ「アイドルズ」。物質文明を憎むと称し,あちこちで犯罪を繰り返す
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 そんな中,「殺人マシーン」を自称し,腕っ節なら誰にも負けない主人公「ボス」,常に上半身裸で筋トレ大好きな「ケブ」,タフで車への愛情は人一倍な「ニーナ」。頭脳派でオタク気質の「イーライ」たちは,不遇の日々を過ごしている。
 ボスはマーシャルに就職し,持ち前の行動力で大仕事を任されるも失敗してあっさりとクビに。ケブとイーライも所属しているアイドルズやロス・パンテロスからいいように使われた挙げ句に切り捨てられてしまう。

左から,頭脳派でオタク気質のイーライ,常に上半身裸で筋トレ大好きなケブ,腕っ節なら誰にも負けないボス,タフなドライバーのニーナ
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マーシャルをクビになってしまったボス。落ち込むあまり,ワッフルを焼くだけのことにQTEが必要な有様
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しかし,仲間の危機となれば瞬時にして気力を取り戻し,パンツ一丁で銃撃戦に飛び込んでいく。友情に篤い等身大の青年であり,その様が感情移入を呼ぶ

 能力はあるが,運に恵まれないなら自分で“起業”するしかない。かくして4人は第4勢力とも言えるギャング団・セインツを結成することになる。若者たちによる事業スタートアップ物語風なのがなんとも面白い。

 彼らは,ボロボロの廃教会を非合法な手段で手に入れてアジトに改装。起業したということで,これまで友達同士でダベっていただけの集まりを会議だなんだと大仰な名前を付けて大はしゃぎする。
 そして,前の職場で知り合った人が新たな仕事を始めるというので,いっちょかみして収入を確保してみたり,メンバーを集める宣伝のためにWeb番組に出演して,殺到する申し込みにコーヒーを入れたマグで乾杯してみたり……そんな,何かを始めるときの熱気と,自分たちを裏切った既存勢力を出し抜く爽快感は,旧来のギャングものとは一風変わった爽やかさがある。

ついに手に入れた自分たちの城となる廃教会。いまは殺風景だが,夢は無限に広がっていく
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“起業”したセインツ。ホワイトボードに書かれたやることリストに「名前」だとか「ロゴ」だとかといった項目が並ぶあたりが微笑ましい
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セインツの名を売るため,Web番組のデスゲームに参戦するボス。貧乏くじを引かされているわけでも,利用されているわけでもなく,自分の才能を活かして仲間に貢献する
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ボスの奮闘でセインツも一躍有名に。加入希望者も殺到してコーヒーで乾杯。爽やかなスタートアップ物語だ
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 イベントの中にも,仲間の人となりを描くものがあり,感情移入も深まる仕組みだ。
 例えばイーライは,現実世界でRPGの登場人物になりきってプレイするLARP(ライブRPG)にハマっており,ボスがこれに付き合うイベントがある。このLARPでは中世とポストアポカリプスがごっちゃになったような世界観(イーライ曰く『崩壊後の世界と円卓の騎士を合わせた感じ』)のもと,サント・イレソにある建物がダンボールで中世風に装飾されている。参加者はダンボールで作った甲冑を着込み,大仰で時代がかった言い回しでロールプレイするのだ。
 ボスは当初この遊びに馴染めないのだが,イーライと行動をともにするうちノリノリになるのが可愛らしい。“知り合いの趣味に付き合わされて戸惑いもあったけど,終わるころには自分もハマっていた”というのは男子の友達関係における“あるある”であり,セインツの皆が身近に感じられる。
 さらに,本作ではゲージを消費して敵にトドメを刺す「テイクダウン」というシステムが存在する――打撃コンビネーションを決めたり,地面に引き倒して拳銃で一撃を放ったりといった,立ち回りの演出が発動する――のだが,LARPのイベント中は攻撃を当てない“寸止め”になっているのも面白い。

 こうしたイベントはメンバーそれぞれに用意されており,ケブの場合だと,ハンバーガーのオマケについてきた変形ロボ玩具にまつわる事件が起こる。玩具が復刻されることを聞きつけたボスとケブは,これを求めて街中のハンバーガー屋をめぐるのだが……いつしか銃撃戦になってしまうあたり,セインツロウらしい。こうしたイベントをこなすと,仲間たちもパワーアップする仕組みだ。物語とゲームプレイを合わせたシステムと言えるだろう。

イーライがハマっているLARPに付き合うボス。ダンボールの甲冑を着込み,オモチャの武器で戦う。モノホンの銃撃戦をくぐり抜けてきたボスとしてはお遊びのようなものだが,やがてノリノリに
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 なお,主人公である「ボス」は自分でキャラクターメイキングできる。体型や筋肉量,肌のテカり具合,股間に入る修正の種類,入れ歯の種類にタトゥーの有無,声の種類など,いろいろな項目を設定できる。肌の色をメタリックにしたり,全身傷だらけにするようなこともでき,工夫次第でいろいろなボスを作れる。また,作ったボスはセーブしておくことができるし,姿はいつでも変えられる。気分次第でいろいろなボスになるのも楽しいだろう。

さまざまな項目を設定でき,自分なりの「ボス」を作り出せる
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多彩すぎる肌の色や股間の修正など,ユニークな項目も多い
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オープンワールドクライムアクションの面白さを再確認


 ゲームのシステムはオープンワールドクライムアクションのお作法に忠実なもので,このジャンルが好きな人なら,少し遊ぶだけで理解できるはずだ。
 車が欲しければそこらに走っている車両をボタン1押しでカージャックできるし,走行中は逆走やニアミス,ジャンプといった危険運転で経験値が入る。通行人とすれ違いざま「何となく気に入らないから撃っとくか」なんて衝動的に暴力を振るうこともできるし,飛行中のヘリを乗り捨ててウイングスーツによるスカイダイビングも楽しめる。高度が下がってきたら通行人を踏んづけて再上昇するのもオツなものだ。

 ただし,いくらサント・イレソと言っても,治安維持組織は存在する。上記のような無法を続けていると「悪評度」が上昇し,マーシャル(要するに警察)が出張ってくるのだ。無数のパトカーでこちらを追い回し,先回りしては検問を作るなど結構手ごわく,死にたくなければ時間が過ぎて悪評度が下がるまで大人しくしなければならない。
 要するに,罪には報いがあるというわけで,リアルタイムでオープンワールドクライムアクションのブームを追っていた人なら,良い意味で「ああ,お馴染みのシステムだね」となるだろう。

パトカー(上画像)から水上バイク(下画像)まで,いろいろな乗り物をジャックできる
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ヘリを乗り捨て,ウイングスーツでスカイダイビング
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ウイングスーツのスカイダイビングから,流れるようにカージャックも可能だ
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 また,サント・イレソの街には,多くのアクティビティやチャレンジが点在する。誰かを暗殺したり,銀行強盗の片棒を担いだり,お店の悪評をSNSに書き込むと襲ってくるギャングを倒したりと,明らかに犯罪寄りの仕事をスマホから気軽に請け負えるのだ。
 これらの仕事をこなすとお金と経験値が手に入り,ボスはよりリッチかつ強くなっていくのだが,とくに重要なのがHPのシステムと,先ほど話題に出したテイクダウン,「スキル」といった要素だろう。というのも,ボスは自動回復能力を持っており,銃弾を食らおうが車にはねられようが,しばらく静かにしているとHPも元通りになる。しかし,ボスのHPは複数のブロックに区切られていて,最大でもそのブロックまでしか回復しない。例えば,ボスのHPが最大3ブロックある状態で,残り1ブロックまで削られたとしよう。この場合,1ブロック分までしか自動回復しないのである。

 つまり,あまり好き放題に暴れ回っているとHPの最大値が下がって苦戦するわけだ。ここで注目したいのがテイクダウンだ。前述の通り,これを決めるとボスがさまざまな立ち回りを演じて敵を瞬殺してくれるのだが,この際にHPの最大値も回復する。しかしながら,テイクダウンの使用には敵にダメージを与えると増える専用ゲージが必要だし,銃撃戦の中で近距離に接近しなければならず,そこでダメージを受けていては元も子もない。遮蔽物を利用して,スマートに立ち回らなければならないわけだ。

「テイクダウン」はさまざまなアクションで敵を倒す
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 こうしたバトルを彩ってくれるのが,発売前から話題になっていたスキルである。相手のポケットに手榴弾を入れた上でもろともに投げ飛ばす「パイナップル・エクスプレス」を始めとし,地雷を仕掛けたり,防御力をアップさせたり,スナイパーライフルを持ち出したりとさまざまなスキルが存在する。
 使用するにはバトル中に溜まる「フロー」というゲージが必要だが,使いこなせば効果は抜群だ。とくに敵の中には「シールド」と呼ばれる特殊なゲージを持つ者がいて,テイクダウンを取ることができない。しかし,パイナップル・エクスプレスであれば,そのシールドを無視して一気に倒すことができる。敵の脅威度を判断し,ピンポイントで使えば効果的というわけだ。

 また,本作は持てる銃弾の数に限りがあるため,よく弾切れが発生する。弾は敵を倒すとドロップするが,拾いに行けない場合などは,スキルやテイクダウンがとくに有効となる。
 このように,本作のバトルは意外に頭を使う。ボスのHPとその最大値,手持ち武器の残弾,テイクダウンゲージにフローというリソースを管理しつつ,周囲の敵を観察し,危険な者がいれば惜しみなくリソースをつぎ込んで対処していかなければならない。ちょっと歯ごたえはあるが,ゲームの難度自体はいつでも下げられるので安心だ。

炎を纏った拳で敵を一撃するスキル「フレイミングパンチ」。スキルを使うには画面右下の◆形ゲージで表される「フロー」が必要
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 さて,本作を象徴する要素と言えば,犯罪帝国の構築だ。サント・イレソのあちこちでシノギを手に入れるとアクティビティが増え,これに伴ってボスの収入も増していく。例えば,廃棄物を違法に処理する会社を作れば,街のあちこちにヤバげな廃棄物を満載したトラックが置かれるので,震動を与えないように素早く送り届ければ報酬をもらえる……という具合だ。

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廃棄物処理会社を作るとアクティビティも増える。トラックを揺らさないようにしつつ,ヤバげなドラム缶を運ばなければならない
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タコス屋を開くと,愉快なトラックに乗れるようになる。ライバル店を潰しに出発だ

 お金が増えたら,サント・イレソに点在するブティックで服を買ってもいいし,車のカスタマイズをしてもいいし,好きに使えばいい。そうして,本拠地である「セインツHQ」も充実していくだろう。当初はボスたち4人しかいなかった拠点だが,手下がたむろするようになり,ヘリパッドやボートハウスといった施設が増えていく。
 使われる側から使う側へ。スタートアップ物語の体裁を取っているからこそ,セインツたちの出世が感慨深いのだ。

セインツのメンバーも増え,アジトも賑やかに。だが目指すはサント・イレソの帝王だ
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アジトにヘリパッドが増設され,いつでも空中散歩を楽しめるようになった
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 本作は,良い意味で伝統的なオープンワールドクライムアクションだ。ジャンルの面白さと魅力を2022年に問いかけ,経験者には懐かしさを,そうでない人には新鮮な楽しさを与えてくれる,まさに“リブート”というに相応しい作品と言えるだろう。このジャンルが好きな人であれば,サント・イレソでの大暴れを存分に楽しめるはずだ。
 その一方,今回使用したPC版には動作が不安定なところがあったのが残念で,今後のアップデートによる対応を期待したいところだ。

「セインツロウ」公式サイト

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